REVIEWS : 103 R&B(2025年7月)──R&B Lovers Club(Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回から新たな書き手に加わってもらいます。今回はR&B偏愛&紹介ポッセ、R&B Lovers Clubより、Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemiの4人による、現行のR&Bのエッセンシャルな新譜9枚のレヴューをお届けしおます。
OTOTOY REVIEWS 103
『103 R&B(2025年7月)』
文 : R&B Lovers Club(Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)
Aishia K, DJ Candlestick 『RED(CHOPPED NOT SLOPPED)』
タイトルは赤だけどアートワークは紫。なぜならチョップド&スクリュード版だから。歌だけではなくラップも聴かせるアイシア・Kは、スクリューの聖地であるヒューストン出身のシンガー。本作はサンダーキャットなども手掛ける名スクリュー職人のDJキャンドルスティックが地元仕様に改変した一作だ。スロウダウンすることでラップにもゆったりとした魅力が生まれており、R&Bのメロウネスをさらに増幅している。二枚使いによる反復で生まれる揺らぎも心地良く、スクラッチやエフェクトなどの使い方も実にセクシー。R&Bをスクリューすればどんな曲でもスロウジャムになるし、元々スロウジャムならもっと気持ち良くなるのだ。(アボかど)
Aqyila 「Falling Into Place」
トロントのシンガー、アキーラによる本作は、現行R&Bの中心からは微妙に外した一作だ。本作にはいわゆるトラップ系の細かく刻む808を使った曲はひとつもない。代わりに目立つのは、ドレイクを輩出したトロントらしいアフロビーツやダンスホールの要素だ。“Give Me More”や“Focus”のようにビートに導入するだけではなく、“Most Wanted”では歌い方にもレゲエっぽいニュアンスがある。また、ザ・ウィークエンドがやりそうなシンセポップの「Wolf」のような曲も収録。しかし、越境的な試みを行いつつも、全体の感触としてはあくまでもエレガントなR&Bとなっている。そのバランス感覚が見事な一作だ。(アボかど)
Honey Bxby 『Raw Honey』
ニュージャージーから現れた「ラッパーの魂を宿したシンガー」、ハニー・ベイビー。彼女のEP『Raw Honey』は、タイトル通り甘さと生々しさが混じり合う、極めてパーソナルな一作だ。甘美な歌声という衣の内側にソリッドで人間臭い感情の束を隠し、ヒップホップ由来のタフなアティチュードで惹きつけたかと思えば、今度は心をえぐるような力強いバラードで不意を突いてくる。怒りや脆さなど、あらゆる感情をフィルターレスで解き放つ表現のリアリティに、聴き手の心は鷲掴みに。本作は、彼女の心の深淵を覗き込む、スリリングでエモーショナルな音楽体験ができる。(Cookie)