2025/07/31 18:00

Samara Cyn 『backroads』

もはやラッパーかシンガーか、という分類は彼女の前では意味をなさない。サマラ・シンの新作『backroads』で聴けるのは、その境界線を完全に溶かした、驚くほど柔らかくソウルフルなフロウだ。ネオ・ソウルやヒップホップ、インディー・ポップの垣根を軽々と越えていくサウンドは、ジャンルを縦横無尽に旅するかのよう。Sminoとの"Brand New Teeth"では、プロデューサーにシルクソニックも手掛けた名匠D・マイルを迎えながらも、その豪華さを忘れさせるほどオーガニックな響きに満ちている。これほど心地よくジャンルを越境するアーティストの登場を、祝福したい。(Cookie)

GIVEON 『BELOVED』

唯一無二のバリトン・ボイスで聴き手を魅了するギヴィオンが、テディペンやギャンブル & ハフら70年代フィリーソウルを研究したクラシカルなサウンドを纏った新作を発表。ピーター・リー・ジョンソンのストリングスが光る冒頭曲〜アル・グリーン"Let's Stay Together"を匂わせる"RATHER BE"など、ギッティやマシュー・バーネットら腕利きミュージシャンらが脇を固め、浮き沈みが激しかったという数年の恋愛を歌うギヴィオンの表現力も情感が倍増。とりわけ"NUMB"〜"I CAN TELL"、カシミア・キャットが関わる"BLEEDING"のメロディが胸を締め付けて離さない。今年の屈指の傑作R&B作品だ。(Yacheemi)


JANE HANDCOCK 『It's Me, Not You』

スヌープ・ドッグが舵取りを担ってから良心的なR&B作品を連発する新生〈デス・ロウ〉で、オクトーバー・ロンドンらと並び寵愛を受けるジェーン・ハンドコックの2年ぶり新作。ローラースケートが映えそうなアンダーソン・パークとの"Stare At Me"をはじめ、アニタ・ベイカーの同名曲をレゲエ調にリメイクした"Same Ol' Love"、BJ・ザ・シカゴ・キッドとのデュエットなど、前作以上にオーセンティックなソウルマナーに重心を置き彼女のハートウォーミングな歌声にフォーカスする。それでいて決して懐古的にならないバランス感が絶妙な快作だ。数曲で名前が伺える西の重鎮スーパフライの手堅い仕事ぶりにも感動。(Yacheemi)

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