REVIEWS : 091 ヒップホップ (2025年1月)──アボかど

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。自身のnoteを中心に、その他、各音楽メディアなどで、ヒップホップ〜R&Bについて執筆中のアボかど。本コーナーではR&B Lovers Clubの一員としてR&Bの新譜に関しても書いてもらっていますが、今回はもちろんヒップホップの、ここ3ヶ月のエッセンシャルな新譜を9枚レヴューしてもらいました。
OTOTOY REVIEWS 091
『ヒップホップ(2025年2月)』
文 : アボかど
Count Bass D『Player Programmer』
1990年代から活動するベテランのカウント・ベース・Dは、ラップとビートメイクの両方をこなす名職人だ。本作は3分未満の短いビートをスムースに紡いでいくビートテープ的な作品。タイトなドラムや暖かいホーンでファンキーに決め、穏やかなメロウでとろけさせ、フリーキーな声ネタチョップで不穏さを演出する。どの曲もシンプルながらループの魔力に引き込まれる、まさにヒップホップ・ビートならではの魅力が詰まった一枚だ。タイトルもナイスな“He's a B-Boy”のようなブーンバップ寄りの路線も素晴らしいが、弾けるスネアが効いた“Sandhill Crane”などPファンクやR&B風味のある曲で特に良曲が多い。
Dc2trill 『Drank Babies 4Life』
テキサス出身のDc2トゥリルは、リル・ヨッティ率いるコンクリート・ボーイズに所属するラッパー。どこか脱力感のあるトラップ中心のビート選びはリル・ヨッティと共通するセンスだが、R&B的なメロウネスを積極的に取り込んで時にはスロウダウンするところにはテキサスらしい味がある。ミシガン勢っぽいハードなビートも柔軟に乗りこなしており、地元色を注入しつつも全体を包んでいるのは2020年代のモードだ。定番ネタを使った“Mossy Talk”でもしっかりと現行マナーに仕上げている。ラップ・スタイルは力を入れすぎず程良い荒さのあるもの。メロウ路線でもメロディアスにはならない、ラップらしいラップが楽しめる良作だ。
Dezzy Hollow 『OCEANSIDE』
LAのラッパーのデジー・ハロウは、古き良きGファンクを現代に繋ぐ。本作ではブリブリのベースにピーヒャラと鳴る高音シンセ、弾けるようなスネア……典型的なGファンクの音色をほぼ全ての曲でストレートに使用。そこに乗るリラックスしたスムースなラップもスヌープ・ドッグなどの系譜にあるもので、メロウでファンキーなサウンドと抜群の相性を見せてくれる。しかし、1990年代そのままかと言われると微妙にそうでもなく、“HOME”はヘヴィな808が効いた現行マナーだし、 “WE'RE HUNGRY”での早回しサンプリングは2000年代ヒップホップっぽい。それらを全体のムードを崩さず配置した構成力も見事な一枚だ。