明るく楽しい未来のために「踊らなソンソン」──佐藤タイジが阿波おどりで日本を変える!
徳島出身のロック・ミュージシャン、佐藤タイジが、高円寺を拠点としている阿波おどり“華純連”と作り上げた、新たな阿波おどりの形ともいえる「踊らなソンソン」を配信リリース! 2018年4月〈アースデイ東京2018〉にて初ステージを行い、その後〈フジロックフェスティバル '18〉にも出演、多くの観客を躍らせた佐藤タイジ&華純連。佐藤タイジはなぜ阿波おどりを、彼の表現の方法として選択したのか、単独インタヴューを敢行した。
佐藤タイジ、阿波おどりが華純連とコラボ!
INTERVIEW : 佐藤タイジ
シアターブルックのリーダーであり、インディーズ電力、The SunPaulo、加山雄三とのTHE King ALL STARS、さらには〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉の発起人など様々な顔を持つ佐藤タイジ。彼が新たに始めたプロジェクトが佐藤タイジ&華純連。故郷・徳島県に400年前から伝わる阿波おどりをタイジの解釈によって、生み落としたのが9月14日に配信された「踊らなソンソン」である。タイジは言う「自分にとって阿波おどりが音楽の根幹である」と。インタヴューをしていくと、この言葉の重みをずっしりと思い知らされた。そして、阿波おどりが、これまでの日本を支えてきたのがうかがえる内容となっている。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 作永裕範
これはもう真剣に阿波おどりをやらなくてはいけない
──早速ですが「踊らなソンソン」はどのような経緯で生まれたんですか?
曲ができたのは3年くらい前。曲の冒頭で言ってる〈踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らなソンソン〉というのは、400年前からある阿波おどりの言葉で。徳島人にとっては完全に哲学なんです。戦後に徳島新聞の社長に就任した前川社長は阿波おどりを見て「なんだ、この美しい踊りは。これを日本全国に見せましょう」ということになって、徳島新聞などが中心になって阿波おどりの魅力を他の地域の人にも広めて行って。
──タイジさんは今の阿波おどり自体をどう見ているんですか?
利権がらみの問題もあるみたいで観光協会が倒産したり、「戦後の阿波おどりの曲がり角」だと思っているので、金儲けの事だけでなくて志のある人達が知恵を出し合って、いい方向へ持っていけばいいと思っています。今年、阿波おどりの時期に(徳島に)帰ったら、友達とか知り合いがお囃子をやっているんですよ。いつもライジング(〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉)と日程が被っているからなかなか見れてなかったんですけど、久々に見たらお囃子組が異常にうまくなっていた。
これを俺は「久保田麻琴効果」と呼んでるんですけど(笑)。久保田麻琴さん(夕焼け楽団 / Sandii & The Sunsetz)が、ここ何年か阿波おどりのお宝音源を掘ってくれていまして。自身でも「ぞめき」という阿波おどりを録音したCDを出していらしたり、「お鯉さん」という芸者さんで伝説的阿波おどりのスターのお宝音源を探し当てたり、いまの世代の人たちへ「こういう音があるんだ」と繋ぐことになったわけです。結果、徳島の人たちは久保田さんのおかげで、うまくなった面もあると思うんです。
やっぱりね、レベルの高いお囃子を聴いていると感動するんです。俺がロックとかファンクとか言って徳島を30年間も留守にしてる間に、みんな踊りが上手くなり、歌も上手くなった。俺の知らない阿波おどりの30年間がここにあったんだな、と。「これはもう真剣に阿波おどりをやらなくてはいけない」と50歳になって思ったんです。それで以前、アース・デイを運営している南兵衛さんに高円寺の阿波おどりの人達を紹介してもらったことを思い出して。
──それが、高円寺の阿波おどり・華純連。
そうです。それで佐藤タイジ&華純連が生まれました。
──伝統的な阿波おどりを目指しつつ、「踊らなソンソン」はタイジさんらしいファンク・サウンドが存分に含まれていて。より心から踊る感覚を味わいました。
華純連のみなさんにも忙しい中、こちらからの申し出を面白いチャレンジとして受け止めて頂いて、本当に感謝してます。阿波おどりといえど、何十年もロックやファンクをやってきたのに、この曲だけ三味線に持ち替えるなんてできなくて。俺はエレキギターに対して特別な思い入れがある。三味線に替えようものなら、エレキギターがヤキモチを妬きますから(笑)。人によっては「エレキで阿波おどりを表現するなんて、お前のやっていることは邪道や」という考えがあっても致し方ないとは思う。…… せやけど俺は、阿波おどりに対する愛情は誰にも負けないつもりなんで新しいチャレンジをしてみたいんです。
──8年前に出版された著書『やめんかったらロックスター』で「自分の音楽の根幹にあるのは阿波おどりだ」と書かれてましたよね。
そうなんですよ。「ギターの音が大きければロックか?」と言われれば、絶対そんなわけない。最も大事なのはサウンドの中にあるコンセプトというか、考え方だと思います。俺が三味線を弾こうがギターを弾こうが阿波おどりは阿波おどり。だから、「踊らなソンソン」を“阿波おどりとロックの融合”と言ってほしくないんですよね。あるとするならば「阿波おどりはロックだ」ということ。阿波おどりとロックが完全に別物だと感じる人には一生別物だけど、それがどこか一緒だと感じる人は絶対にいるはずなので、まずは、そういう人に聴いてもらいたいです。阿波おどりとロックが別だ、という人はいまは理解ができないだろうから、俺らがグラミー賞を獲ってから聴いてください。さすがにグラミー賞を獲ったら聴きたくなるでしょ?(笑)
──だからこそ、ラジオ番組『Love On Music』(InterFM897)でも「グラミー賞を狙う」と豪語してるわけですね。
そうなんです! 俺らのやっていることを1回見てもらえたら、わかる人は必ず増えていくと思うんですよね。見てもらうために何ができるか、いまはそれを考えています。そのためにはグラミー賞を獲りたい。それだけ佐藤タイジ&華純連に自信があるし、阿波おどりのなんたるかは誰よりも知っているつもりです。
世の中が変わったのは阿波おどりが生まれたタイミング
──タイジさんが思う「阿波おどりのなんたるか」とはなんですか?
400年間「踊る阿呆に見る阿呆」と言っている意味が何かというと、庶民が殿様に向かって「踊る阿呆」と言ってるんです。思いきり身分差別社会の頃に権力者に向かって「踊る阿呆だろ、お前も」と言える人達が踊って繋いできたわけです。つまり、超レベル・ミュージックなんですよね。で、維新になり「四民平等でええじゃないか ええじゃないか」という「ええじゃないか騒動」があった。実はあれって阿波おどりのリズムなんです。
──「ええじゃないか」は阿波おどりがルーツになっているんですか。
そうなんですよ。鐘と太鼓があったら日本人はああなってしまうのよ。そこには巨大な広がりがあったに違いない。日本を変えた立役者として、西郷隆盛や坂本龍馬などが取り沙汰されてますが、アンダーグラウンドで本当に世の中が変わるということを実感したのは、絶対に阿波おどりが生まれたタイミングやったと思います。「四民平等でええじゃないか ええじゃないか」というのは完全に社会が変わるリズムじゃないですか。そうやっていろいろと気がついてくると、俺が「踊らなソンソン」を作ったのは超必然。世の中に変な権力者が多い、いま、権力者に向けて「もうちょっとまともでもええんちゃう?」みたいなノリを阿波おどりなら楽しく表現できるかな、というのが発端です。
──音楽を通して、自分たちの主張を訴えるわけですね。
あの(阿波おどりの)リズムに乗せてメッセージを伝える、という行為は日本人がずっとやってきた世の中の変え方だと思う。しかも、今年は阿波おどりでいざこざがあったでしょ。
──徳島市長が「今年は総踊りを中止にする」と言った件ですよね。
殿様の時代にも「阿波おどり禁止!」となったことがある。でも、阿波おどりがなくなることがなかったんよね。要するに阿波おどりは民衆・消費者のお祭りであって、権力者のお祭りではないのよ。そこが根本的に違う。いくら止めようと努力したって、権力者には止められない。今回だって総踊りは止められなかったじゃないですか。ずっと前からあの図式を守るために頑張ってきた民衆がいたんですよ。
──徳島で生まれた阿波おどりには、長い日本の歴史感が現れている、と。
踊りや音楽で400年間も存在し続けるということは、大変なことだし想像がつかない。ロックの歴史なんて、まだ70年や60年くらいでしょ。自分もロック・ミュージシャンの立場やけど、日本のロックなんて果たしてここから本当に続いていくかどうか心配です。
──ロックは続いていくものじゃないんですか?
音楽としてのクオリティじゃなくて、客が入るというだけの理由でロック・フェスにアイドルを呼ぶ、という時点で危険だと思いますよ。ギブソンが倒産なんて話もあるし。小さい頃、ロックはずっとあるものだと思っていたけれど、決してそういうわけではない。そういう危機感をミュージシャンが持つということが大切だろうし、ずっと現状維持なんていうのはあり得ないですからね。
ロック・ミュージシャンに課せられた仕事はでかいと思うよ
──タイジさんが阿波おどりを継承していく上で、考えていることはなんでしょう。
これまでは見せる阿波おどりで、聴かせる方にはあまり重点を置いてこなかったと思うんですよ。だから、お囃子のPAやサウンド・システムの発達はなかったんです。俺が阿波おどりをハイブリッド化するのであれば、ロック・フェスの要素を入れていきたいと。そうじゃないと成長できないと思うから、俺は聴かせる阿波おどりを目指したいんです。
──聴かせる阿波おどり?
アイヌ出身のミュージシャンでOKI DUB AINU BANDのOKIさんがトンコリというアイヌの伝統弦楽器をPAシステムに乗っかるように開発したんですけど、あれはものすごいことなんですよ。視覚的要素で訴えかけてくるものと耳に訴えかけてくるものは違うやん。阿波おどりをさらに進化させる為に音をもっとハートに近づけたいと思ったんですよね。
──「踊らなソンソン」は楽しく聴くだけにとどまらない、強力なメッセージ・ソングだと思います。タイジさんが活動を通して願うことはなんですか?
自分がなぜ音楽を愛しているのかといえば、日常の世界とは全く違う別世界に連れていってくれるからなんです。そうするとソーラーでフェスをやるみたいな、利己的なアイデアではなく、みんなで共有できるアイデアが降ってくる。きっと阿波おどりもそうで。俺が音楽を通して願うことは、音楽が連れていってくれる別世界に、自分にとってもプラスだけど、みんなにとってもプラスなアイデアが満ちているということ。みんなも、その別世界に住んだほうがいいんじゃないの? こっちは楽しいよと。それが願いですかね。
──佐藤タイジ&華純連は、どのような課題がありますか?
いま考えているのは、ロック・フェス用の阿波おどりのシステムの開発・構築をしたいですね。今年はフジ・ロックに出してもらって、来年は他のフェスにも出られるように、より音響的に、サウンドとしても楽しめる阿波おどりを作っていきたい。OKIさんもリズム隊として距離が近いから、すごく勉強させてもらっているし。俺は俺で阿波おどりの歴史をもっと紐解いて、もっとそこにみんなが乗っかってこれるような話をしたいし、これから楽しみです。
──これからもっと発展していく、と。
させたいですね。新しい阿波おどりも必要だと思う。そろそろ日本人は脱皮するタイミングだと思います。脱ぎ捨てなきゃいけない皮がいっぱいこびりついているから、そんなもんは捨てなあかん。先に阿波おどりが皮をむいて、「脱皮するとこんな素敵なものになりますよ」というものを見せたいですね。阿波おどりを広めた徳島新聞の前川社長が戦後に阿波おどりに魔法をかけた。でもその魔法も切れていって。他にもいまの日本のいろんな魔法が切れていったじゃん。
──不景気の影響で、日本の伝統も崩れていきましたよね。
「明るい未来」といっていたけど実際は違かった。いま、みんなが待っているのは“新しい魔法"だと思う。
──タイジさんは「踊らなソンソン」はもちろん〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉や10月13日に開催される徳島県の無料イベント〈阿波国 THE SOLAR BUDOKAN〉も立ち上げた。音楽を通して、社会の在り方を問うてますよね。そのバイタリティがすごいな、って。
いまは幕末や第二次世界大戦と同様の大きな時代の変わり目だと思っていて、ここで誰かが頑張らないと本当にまずいことになるんじゃないかな、と。戦わなくてはならないときに、戦えない奴でいたくない。「戦いたいか?」って言われればそうでなくて、戦わなければいけない時って人生において絶対ある。たとえば、こんなに地震の多い、どこに活断層があるかわからない国で、リスクの高い原発に高いコストを払うより、再生可能エネルギーにシフトしませんか、と言い続けるのが僕のひとつの戦いだと思っていますし。
また、2013年に中津川ソーラーをやりはじめて、岐阜県の中津川の皆さんや多くの方に協力してもらって定着してきたので、今年はじめて徳島で〈阿波国THE SOLAR BUDOKAN〉をやります。徳島は商店街のシャッター街っぷりがすごくて、「これ、本当になんとかしないとマズいな」と帰る度に思っていて、地元を少しでも盛り上げたいと。唐突ですけど、いまの徳島には大きな課題があって、それは消費者庁移転という話で、僕は断然、省庁の分散に賛成なんですよ。
──タイジさんはどうして、省庁が分散した方が良いと思いますか?
一極集中だと東京に災害が来た時に全部がリスクになってしまう。加えて省庁が分散することで、人的交流もあって地方の経済も必ず膨らむ。徳島に消費者庁が移転する話は官僚側が「なぜそんな田舎に消費者庁が行かなければならないのか、理由が無い」と言って頓挫しているらしいんです。俺はしっかり理由を説明してあげたいのよ。それは阿波おどりがあるからです、と。その平等の哲学が消費者目線だと思っていて、それを広めることで徳島から日本の地方都市の状況が変わって行くと思っていて。
南アフリカのアパルトヘイトで、ピーター・ガブリエルの「ビコ」を聴いたブルース・スプリングスティーン & E ストリート・バンドのスティーブ・ヴァン・ザントが多くのミュージシャンに声かけて「SUN CITY」をリリースしたり、スペシャルAKAが「フリー ネルソン マンデーラ」と歌ったり、ロックが当時の南アフリカで起こっている人種差別を世界中に発信するという大事な役割を果たしたじゃないですか。そういう音楽を聴いて育ってきた日本のロック・ミュージシャンに課せられた仕事はでかいと思うよ。日本でも清志郎さんとか、いろいろ頑張って来た先輩もいたし、俺はロックで繋がった仲間たちと、それと真っ向から戦っていきたい。
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佐藤タイジ関連作品をチェック!
THEATRE BROOK
インディーズ電力
『自由の証 春号』はOTOTOY独占配信中!
【配信ページ】
DSD : https://ototoy.jp/_/default/p/21165
ハイレゾ(24bit/48kHz) : https://ototoy.jp/_/default/p/21166
【アルバム購入特典】
デジタルブックレット(PDF)
LIVE SCHEDULE
太陽光発電のエネルギーを活用したロック・フェス!!
〈阿波国 THE SOLAR BUDOKAN 2018〉
2018年10月13日(土)@徳島・月見ヶ丘海浜公園内特設ステージ
時間 : OPEN10:00 / START11:00
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佐藤タイジ、高野哲、iCasによるロック・バンド、インディーズ電力
〈「みんなして感電」ツアー〉
2018年10月19日(金)@東京・下北沢440
2018年10月21日(日)@千葉・柏Cafe Line
2018年11月2日(金)@大阪・梅田ムジカジャポニカ
2018年11月3日(土・祝)@愛知・名古屋Music Bar Perch
2018年11月16日(金)@宮城・仙台Live Music Cafe Dimples
2018年11月17日(土)@岩手・盛岡Diningわかんたんか
2018年11月18日(日)@福島・いわきMusic Bar burrows
2018年12月8日(土)@広島・広島LIVE cafe Jive
2018年12月9日(日)@徳島・徳島Funky Chicken
2018年12月21日(金)@東京・下北沢風知空知
>>>詳細はこちらから
シアターブルック
〈Play That Funky Music Again vol.5〉
2018年11月11日(日)@吉祥寺STAR PINE’S CAFE
時間 : OPEN18:00 / START19:00
出演 : シアターブルック、DJ 吉沢dynamite.jp、yasuhiro yonishi
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PROFILE
佐藤タイジ (シアターブルック・THE SOLAR BUDOKAN主宰)
圧倒的なカリスマ性と独自の感性を持ったギターサウンドでシアターブルックのサウンドを牽引し、作詞・作曲を担当。またJAM系、ダンスミュージックを主体とした別ユニットThe SunPauloなどでも活動を行い、数多くのFesやLIVEで賞賛を集めてきた。
2011年3月11日震災以降は“LIVE FOR NIPPON"という復興支援イベントを毎月開催。原発問題に関しては【再生エネルギー賛成!】の姿勢をしめし、「インディーズ電力」としても活動を始めた。
「日本武道館クラスのライブをソーラーエネルギーだけで実施する成果が我々には必要だ!」という目標を掲げて2012年12月20日『THE SOLAR BUDOKAN』を数多くのアーティストの賛同を集めて開催した。2013年からは大規模な野外フェス『中津川THE SOLAR BUDOKAN』をソーラーエネルギーのみで実施し、地元の企業、自治体などの協力も得て成功をおさめた。
また2014年シアターブルックのシングル『もう一度世界を変えるのさ』、インディーズ電力のファーストアルバム『はじめての感電』、2015年シアターブルックのメジャーデビュー20周年記念作品『LOVE CHANGES THE WORLD』はすべてソーラーエネルギーでレコーディングされている。
インディーズ電力は2018年10月24日にニューアルバム「みんなして感電」をリリースし、ツアーを行う。
【佐藤タイジ公式HP】
http://taijinho.com
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https://twitter.com/_theatrebrook_
【シアターブルック公式HP】
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【インディーズ電力公式HP】
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