エレクトロ・スウィングとファンキーなラップで描く、愉快でダークなFAKE TYPE.ワールド
ポップでトリッキーなビートを自在に操るラッパーのトップハムハット狂と、ぼくのりりっくのぼうよみへの楽曲提供でも話題のトラックメーカーDYES IWASAKIの2人による音楽ユニット・FAKE TYPE.。新作アルバム『FAKELAND』には、思わず体が動いてしまうようなダンサブルなエレクトロ・スウィング・サウンドをベースに、変幻自在なラップが乗る愉快な楽曲が揃っている。OTOTOYでは、彼らがどのようにしてこの唯一無二の世界を描きだしているのか、話を伺った。一度聴いたら病みつきになるFAKE TYPE.の音楽。ぜひインタヴューと併せてお楽しみください。
一度聴いたら抜け出せなくなるほど愉快でダークなFAKE TYPE.ワールド
INTERVIEW : FAKE TYPE.
3年間もの間、活動休止をしていたFAKE TYPE.がここにきて大きな注目を集めている。去年発表したMVが軒並みYouTubeで百万回以上の再生数となっただけでなく、『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎、声優の宮野真守、女優の奈緒などの著名人が彼らの楽曲を評価している。そんな多くの期待が寄せられる中、約3年半ぶりにリリースされたアルバム『FAKE LAND』は、これまでの物語性のある歌詞ではなく、今まで見せてこなかった素の一面が露わになっている。一体、何があったのか?アルバムをきっかけに彼らの現在地を探った。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 興梠真穂
3年ぶりに活動再開したら「こんなにも聴いてくれる人が増えたんだ!」と驚いてます
――僕の持論なんですけど「1番好きなドラマは何か?」で、その人の人間性が見えてくる気がしてるんですよ。
DYES IWASAKI(以下、DYES):あぁ、なるほど。どうなんだろう?
――好きなドラマはなんですか?
トップハムハット狂:月9の『人にやさしく』が好きでしたね。
――『人にやさしく』が好きということが、AO(トップハムハット狂)さんの人間性を表していると思います?
トップハムハット狂:ハハハ、それは全然ないですね。……そういえば、マフィア系の映画が好きなんですよ。『ゴッド・ファーザー』、『グッドフェローズ』は何回も観ました。あと『仁義なき戦い』とか(笑)。
――マフィアとヤクザ系が。
トップハムハット狂:バイオレンスものに惹かれるんでしょうね。自分がああなれないからこそ、憧れがあるんですよ。だから映画を通して、こういう人たちカッコイイなって。
――一時、「舐達磨を聴いてる」と言ってたのは同じ理由で?
トップハムハット狂:そうですそうです。同じラッパーとはいえ、やっぱり舐達磨のメンバーが過ごしてきた世界は俺とは全く違う。自分の経験してないことをやってる人って、大きく見えるじゃないですか。そういう憧れがあるんですよね。DYES はどう?
DYES:そうですね……古いですけど、『池袋ウエストゲートパーク』が一番好きなドラマで、未だに見返します。まあ、HIPHOPが好きっていうのが大きいですかね。
トップハムハット狂:IWGPの音楽ってKREVAが担当してるしね。
DYES:そうそう。それもあって、当時からすごい熱心に観てましたね。
――ドラマ繋がりでいうと、AOさんの好きな『あなたの番です』に出演してた奈緒さんが、『バズリズム』で「Stress Fish」が好きと紹介してて「めっちゃ嬉しかった」って。
トップハムハット狂:言ってましたね!それこそ『あな番』はリアルタイムで観てたので超嬉しかったです。
――ここ2年くらいで、トップハムハット狂やFAKE TYPE.好きを公言する著名人が増えましたよね。
DYES:いやぁ、単純に嬉しいです。活動休止前は今のような広がりはなかったですから。手応えを感じてるよね?
トップハムハット狂:うん。休止中はFAKE TYPE.として何もしてなかったのに名前がどんどん広がってくれて。で、3年ぶりに活動再開したら「こんなにも聴いてくれる人が増えたんだ」と驚いてます。
――最初に盛り上がったのは、2019年に『週刊少年ジャンプ』で尾田栄一郎さんが「Princess♂」を推したことですよね。トップハムハット狂名義ではありますけど、作曲したのはDYES さんだから、実質はFAKE TYPE.の曲とも言える。
DYES:そうですね。普段は先に曲を作って、そこにAOのラップを乗せてもらう流れなんですけど。「Princess♂」しかり「Mister Jewel Box」しかり、最初にAOからヴァースだけのアカペラ音源が送られてきて「これに曲をつけてくれ」という今までにない作り方でした。
――どうでしてアカペラから作ったんですか?
トップハムハット狂:FAKE TYPE.で初めて実践したのが「Princess♂」だっただけで、その作り方自体は前からやってたんですよ。
DYES:俺はめちゃめちゃプレッシャーだったけどね(笑)。ラップを音として捉えて、それを一番カッコよく映えるビートにできたらと思って作りました。元々、エレクトロ・スウィングとトラップを掛け合わせた音楽をやる構想はあったんです。温めていたアイデアを「Princess♂」でトライしましたね。
――2021年2月現在、「Princess♂」のMVはYouTubeで約1800万回再生もされてますけど、ここまで伸びたのはどうしてだと思います?
トップハムハット狂:んー、わからないですね(笑)。MVが全編アニメーションなんですけど、メインキャラクターがどう見ても女の子なんです。だけど、タイトルには♂マークがついてる。そこに対して「これは女性なの?男性なの?」みたいなコメントがありえないくらい多かった。「Princess♂」はオタサーの姫の話なんですけど、なぜ♂マークをつけたのかといえば、俺の実体験だからなんですよ。そこにまんまとみんなが引っかかってくれたので、しめしめと思ってます(笑)。
――「Princess♂」がヒットして、その後に発表した「Mister Jewel Box」も注目されました。その後、FAKE TYPE.は3年ぶりに活動再開し、新曲「Yummy Yummy Yummy」をリリース。そしたら『バズリズム』で宮野真守さんが「踊りたくなる曲No.1」に選んで、こちらも大きな反響がありましたよね。
トップハムハット狂:海外の人からも注目されているのが分かってたから、世界に共通していることにスポットを当てた曲を作ろうと完成させたのが「Yummy Yummy Yummy」なんです。要は、食べ物についての曲なんですけど、国によってソウルフードは違うわけですよね。そういう文化の違いを楽しんでもらえたらと思って作りました。特徴的には、ヴァースがエレクトロ・スウィング調で、サビがトラップなので「Princess♂」や「Mister Jewel Box」と同じ構造なんです。