アイドルぽくなくても、飾らない自分たちで挑む──かみやどのファースト・アルバム『HRGN』
神宿の研修生ユニットとして活動する、かみやどが活動開始から1年を経てリリースされたアルバム『HRGN』。もともとは神宿の新メンバーオーディションを受けた6人によって結成された、というストーリーから始まったかみやどだからこそ悩みも大きい。コンセプトや方向性がメンバーに委ねられ試行錯誤しつつも、『HRGN』に収録されるオリジナル曲ができる過程で彼女たちの中に芽生えた「かみやどぽさ」とは? メンバーそれぞれの葛藤や喜びをそのままに、Youtubeでの公開インタヴューを見た方も見れなかった方も必見の内容です。(※こちらのインタヴューは石綿なこの活動休止発表前に行われたものです)
かみやどの名刺がわりの作品
INTERVIEW : かみやど
かみやどが2020年8月12日にファースト・アルバム『HRGN』をリリースした。今作は神宿の新メンバー・オーディションの課題曲として歌っていた神宿の“始まりの合図”、まだオリジナル曲がなかった彼女たちを支えたGTPの“冷凍みかん”、そしてはじめてのオリジナル曲“もういちど”など、かみやどの歩んできた歴史が詰まった1枚となっている。そしてOTOTOYでは、アルバム購入者に向けてYouTube上で公開インタヴューを実施。アルバムへの思いはもちろんのこと、1年間のアイドル活動を経て感じたこと、グループのこれからについて語ってもらった。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : YURIE PEPE
どの曲にも「自分に自信を持って進んで行こうよ!」という熱い思いが込められている
──公開インタヴューがはじまったみたいです。
一同:よろしくお願いします!
──実は、今日発売のアイドル誌『BRODY』でもみなさんに取材をしてて。
一同:そうですね!
──なにを喋ったか覚えてます?
石綿なこ(以下、石綿):結構詳しくお話ししたね。
桜木こと(以下、桜木):話しすぎてなにを喋ったのか覚えてない。
──一番ズルいかわしかたですよ。
石綿:アルバムのことというよりも1年間の活動を通してどう変化したのか、みたいな感じでしたよね。
──そうですね。アルバムをリリースしたわけだからグループ名を改名しないんですか? とか、いつまで研修生なんですか? とかも話しましたね。
萩田ここ(以下、萩田):そうそう! そうですね。
──OTOTOY以外にもいろんな媒体でインタヴューを受けたと思うんですけど、アルバムのプロモーション活動はどうでした?
石綿:スタッフさんから「言ってることがほかのインタヴューと被っても、気にしないで大丈夫だよ」と言われていたんですけど、自分的には雑誌さんごとに内容を変えてお話しできた気がします。
藤田みゆ(以下、藤田):活動して1年が経ったと言っても、まだかみやどは「研修生」ということもあって、「どういうグループなの?」とか「コンセプトは?」と聞かれることが多くて。自分たちがどういうグループなのか明確にして売っていけたらと思いました。
──もともと、かみやどって結成する予定のなかったグループだから、はっきりしたコンセプトがなかったですよね。
藤田:そうですね。自分たちでイチから作りあげていく感じで。
──スタッフさんは「メンバーありきで作ったグループなので、この6人がもっとも輝く形を探していく、というのがコンセプトです」と言ってました。
石綿:なるほど。第三者から言われる方がコンセプトって明確なんですよ。自ら掲げていくのはすごく難しい。正解がないですし。
──アルバムをリリースして、これから具体的なコンセプトやグループのカラーが決まっていくんでしょうね。
高田もも(以下、高田):ももはアルバムを出しても、あまり実感がなかったんです。でも、この前の特典会でHMV&BOOKS SHIBUYAへ行ったら私たちのCDが置いてあるのを目にして。プライベートでよく行ってたお店だから、すごくうれしかったですね。本当にCDを出せたんだ! と思いました。あとHMVのスタッフさんには「誕生日おめでとうございます!」って言われた。
──何歳になったんでしたっけ?
高田:18歳になりました! みんなと出会ったのが16歳だから本当に早い。
石綿:16歳って! もはやどういうこと!? 結成してから時間が経つのが本当にはやい!
──それこそ『HRGN』は6人が神宿の新メンバー・オーディションで出会ってから、現在に至るまでの歴史が詰まっている作品だと思うんですよ。
桜木:まさに、かみやどの名刺代わりになる1枚だと思います。オリジナル曲、カヴァー曲が合わせて9曲入っていて、私たちの軌跡を表したアルバムになってます。歌声の変化とか容姿も変わったんじゃないかなと思うので、そこも楽しんでもらいつつ…… とにかく名刺代わりです!
萩田:しかもアルバムだからこそ、1枚の作品で私たちの歴史もカラーも全部を知ってもらえると思います。
──今回は神宿の“はじまりの合図”をはじめ、“冷凍みかん”、“ココロのちず”、“GO!!!”をカヴァーしていますけど、どういう心持ちで歌いました?
石綿:図々しいですけど、もはや自分たちの曲として歌ってますね。だからオリジナルもカヴァーも気持ちは変わらない。あの…… 私たちが他のアイドルさんと違うところって「オーディションに落ちた6人で結成したグループ」以外に、数々の楽曲をカヴァーさせていただいてるのも強みだと思ってて。これからアイドルさんが挑戦しないようなカヴァー曲も歌っていきたい。できたら「コレを歌った方がいいよ」みたいなオススメがあれば、教えていただきたいです(笑)。
──アニメの主題歌はハマりそうですけどね。光へ向かって走っていく系の。
石綿:そういえば、『ONE PIECE』のオープニング・テーマにもなっているBOYSTYLEさんの“ココロのちず”をカヴァーしたとき、スタッフさんから「このグループにいちばん合ってる」と言っていただいたから、やっぱりそうなのかもしれないです。熱い魂を込めた楽曲が合うのかなって。
──以前、インタビュアーの方から「見た目は王道アイドル、心は少年ジャンプみたいですよね」と言われたそうですね。
石綿:あ、言っていただきましたね!
桜木:本当に、私たちは少年ジャンプみたいだなと思うんです。見た目はみんな可愛いんですけど、やっている曲調とかライヴに対しての本気度とか、魂で歌っている感じにも負けず嫌いな6人の内面が出ていると思うし。うん…… 少年ジャンプですね。
──ジャンプ作品は主人公が一回ピンチになって、そこから形勢逆転するじゃないですか。それがいまのかみやどとリンクしますよね。それにオリジナル曲もそういったメッセージが込められてますし。
石綿:むしろ、そういう曲しかないよね。
辻ゆか(以下、辻):うん。私たちはオーディションを受けて落ちた、という挫折からはじまってる。そんな私たちだからこそ、みなさんが落ち込んでいたり、お仕事で大変なことがあったりしたときにエールを届けられると思ってます。“スーパーヒーロー”、“color”、“もういちど”、“I believe…”にしても、人生は人それぞれだから抱え込まなくてもいいし、みんなに良いことはあるんだよと歌ってます。要は、どの曲にも「自分に自信を持って進んで行こうよ!」という熱い思いが込められているんです。
歌詞の1行1行を噛み締めながら歌っていると「あぁ、私たちはこういうグループなんだな」って
──みなさんの普段のお喋りを聞いてから楽曲を聴いたら、ギャップを感じる人も多そうですよね。
藤田:へえ~!
──基本は女子校みたいにワイワイしてるじゃないですか。だけどステージに立っているときは、ひたむきに這い上がっていくような楽曲が映えるっていう。
石綿:うれしいなぁ。こういうアイドルってアリですか?
──アリだと思いますよ。
桜木:そもそもアイドルっぽくないんだよね。
石綿:そうなんだよ。この前、私とこっちゃん(桜木)、ここちゃん(萩田)とライヴ映像を観て「私たちってアイドルっぽくないね」って。
萩田:つい最近、言ってたね。
──アイドルっぽくないのは、どんな部分ですか。
石綿:それは自分たちでもわからないんです(笑)。みなさんからどう見えているのかも自分では分からなくて。みんな素なんだよね。アイドルになりきっている感じじゃない。
藤田:たしかに。王道のアイドル・ソングっていうのがないじゃん。だから素の感情を乗せて歌っているよね。
桜木:アイドルとしての私たちはいるんですけど、なにも繕わずに歌っているので。だからステージを観たらアイドルっぽく見えないんだと思います。
──素人時代から憧れていたアイドルがいると思うんですけど、桜木さんはいまその人に近づいてます?
桜木:私はモーニング娘。にいた工藤遥さんが好きなんですよ。落ち込んでいてもモーニング娘。さんの動画を観たときだけは「めっちゃカッコいい」しか考えられなくなって、落ち込んでいたことすら忘れるんです。私もそういう存在になりたいと思って。1年間がむしゃらに頑張ってきて、最近やっとファンの方から「歌っている姿を見ていたら、お仕事頑張れるよ」と言っていただけるようになりました。だから、ちょっとずつ近づけているのかなとは思います。とはいえ、まだ自分が思い描いていたアイドルになっていないので、コレから頑張ります(照)。
──辻さんは1年間の活動を通して、なろうとしていたアイドルに近づいているのか、それとも予想とは違う方向に進んでいるのかどっちでしょう?
辻:私はアイドルに憧れてアイドルになったわけじゃないんですけど、アイドルをはじめてから好きになったのは°C-uteさん。オールマイティというか、可愛い系からカッコいい系、セクシー系まで表現できるじゃないですか。私たちもいろんなジャンルの楽曲を歌わせてもらっているという意味では、近づけているのかな(笑)? どうなのかわからないけど、°C-uteさんに憧れているのはあります。
──藤田さんは自分がアイドルである、という実感は湧いてます?
藤田:あんまりないですね。ライヴをしててファンの方がコールをくれたり、特典会で「応援してるよ」と直接言っていただけたりすると「あ、私ってアイドルなんだな」と思うんですけど。日常生活を送っている中で、アイドルの実感はないです(笑)。
──普通の女の子が1年間のアイドル活動を通して、どう変わったのか興味があって。
藤田:結成した当初は、オリジナル曲がなかったので神宿さんやほかのアーティストさんのカヴァーだけのライヴをやることが何ヶ月も続いて。「私たちはどこへ向かっているんだろう」という不安を感じる時期はありました。だけどオリジナル曲をいただいてから、歌詞の1行1行を噛み締めながら歌っていると、「あぁ、私たちはこういうグループなんだな」って。オリジナル曲に全部詰まっている感じがして。ありがたいことに良い曲ばかりいただいてるので、私たちもかみやどの曲に勇気をもらってます。いまは1歩1歩たしかめながら歩いている感じですかね。まだ明確な目標は探り探りなんですけど、当時よりは6人が同じ方向へ進めているのかなと思います。
──石綿さん、話を聞きながらなんとも言えない表情を浮かべてますけど。
石綿:なにを聞かれても答えられるんですけど、アイドルとしての実感は一番難しいですね。私はずっとアイドルをやりたくて、何度もオーディションを受けてきて。だけど、かみやどに関しては「アイドルになれた! よっしゃー!」という清々しい気持ちでスタートしていないので、ずっと不思議な感覚で生きているんです。それに私は王道アイドルになれないタイプだと思うんですよ。アイドルが出来ているのか? と聞かれたら、出来ていないのかもしれないし…… みんながどう思っているのかわからないんですけど。
「いつまで研修生なの?」と言われなくなってから
──藤田さんや石綿さんが言ったように、最初はオリジナル曲もなくて、衣装もお店で売っているものをそのまま使っていて。アイドルという場所を自分たちで作るところからはじめたので、テレビで観てきたアイドルとは違うアプローチだと思います。
石綿:不思議ですね。アイドルってなんでしょうね? いま私の中で一番の問題なんですよ。
──これまでオーディションは何回受けてきたんですか。
石綿:えー! そう言われるとわからないくらい受けてますね。秋元康さん関連のオーディションは全部受けていて、事務所にもいたのでそのときのも数えると100回くらいは。
──そこまでアイドルを追い求めていた人が、いざグループを組んだら「アイドルってなんだろう?」という感覚になるのはおもしろいですね。
石綿:そうなんですよ。迷宮入りにならないように、必死に走っている感じですかね。
──アイドルになったら「アイドルとはなにか?」がわかると思ってました?
石綿:だと思ってました。というか自分が想像するアイドル像になれると思ってました。だけど環境も含めて、そうはならなくて。私、(萩田)ここちゃんのような立ち位置のはずだったんですよ。ニコニコしながら「んふっ、もうわかんないっ♪」みたいな可愛らしい感じ。いざ自分がアイドルになったら違うわけですよ。果たして、私のやり方でファンの皆さんを元気付けられているのかわからないです。
──萩田さんにアイドル・石綿なこはどう見えてます?
萩田:私が…… うーん。自分が苦手としているところを全部持っているというか。私は、なこちゃんのアイドルの力がほしいです!
──具体的にほしいと思っている力はなんですか。
萩田:なんですかね?しっかりしているというか、なんて言うんだろう? ん~~っ!
石綿:この感じですよね。
萩田:こういうところです! 言葉が出てこなくなっちゃうから、スッと答えられるようになりたい(笑)。
石綿:こういう子は王道アイドルを目指すうえで本当に大事だし、絶対的なエースだと思ってて。
──石綿さん自身は、王道アイドルじゃないと思っているんですよね?
石綿:メンバーが王道アイドルでいられるように、私は引き立たせるポジションでいようと思ってます。
桜木:どちらかといえば、私もなこちゃんと同じなんですよ。私も可愛い女の子になりたい時期はあって、ちょっと可愛い洋服を着てみたんですけど「自分じゃない感」があってソワソワしちゃうんです。だからファンの方と話しているときは素になっちゃう。それでも好きと言ってくれる方がいるので、アイドルできているのかなと思います。みんな個性が違うんですよ。だから「みんな違ってみんな良い」です!
──これからのことも聞きたいんですけど、研修生という肩書きはどのタイミングで外しましょうかね。
石綿:ここは最年少に聞きましょう。どうですか?
高田:いつが良いんだろう? いつが良いと思いますか?
──えーと……(笑)。
石綿:「いつまで研修生なの?」と言われなくなってからじゃないですかね。「研修生だっけ!?」という感じまで上がっていけたら、みなさんも名前について聞かなくなると思うんですよ。
──いやいや! プロフィールに書いてあれば気になりますよ!
石綿:そっかぁ(笑)。
高田:できればサプライズで発表してほしい!
桜木:ライヴが良いよね! いきなり曲が流れてきて「え、こんなの段取りにないんだけど」と言ったら、背後に「研修生を卒業します!」という垂れ幕が出て。
藤田:そして「新しいグループ名を発表します!」というアナウンスが流れて。
桜木:「いやぁ~~!!」ってね。
石綿:そういう知り方が良いよね。
一同:(スタッフに向かって)期待してま~す!