四半世紀をアーティストとして過ごす、Sundayカミデ──「生きる」をテーマにしたシングルから哲学を探る
Sundayカミデのソロ作品が約3年半ぶりにリリースされると報せを受け、届いた作品資料をひらくと真っ先に目に飛び込んでくるコメントがあった。「月がcrazyなのか、自分がcrazyなのか。それだけだと思うし、それだけの人生がいいなと思っています。」これはSundayカミデが長いキャリアのなかで自問自答を常に繰り返しているからこそ生まれた言葉だ。そして今回リリースされた3曲入りのシングル「そのまま僕らは旅に出る」を象徴するものでもあり、アーティスとしての哲学にも直結している。リリース・コメントの真意や、ニュー・シングルからSundayカミデのアーティスト性に改めて迫る。
Sundayカミデの人生哲学を映したシングル
INTERVIEW : Sundayカミデ
人生について自分なりの考えを誰かに伝えようとすると、思わず仰々しくなってしまったり、綺麗事を並べてしまったり、どこか胡散臭さが出てしまいがち。大事なメッセージほどさらっと伝えるから、人の心にすんなり入ってくる。これってポップスの大きな魅力だと思う。Sundayカミデの3年半ぶりのソロ楽曲「そのまま僕らは旅に出る」がまさにそう。彼なりの人生観や死生観を軽やかなメロディーだったり、心地いいメロディーで届けている。Sundayは、なにを思って今作を完成させたのだろう。
取材・文:真貝聡
写真:山川哲矢
すごいものを見て圧倒されてしまえる人は、ピュアで美しい
──6月の東京キネマ倶楽部(編注)、拝見しました。3人が仲睦まじくて、すごくいい空気でしたね。
Sundayカミデ(以下、Sunday):うんうん、そうやね。
編注
2023年6月21日(水)開催 〈奇妙礼太郎 25th Anniversary Album『奇妙礼太郎』Release Special Live〉
出演:Sundayカミデ、奇妙礼太郎、菅田将暉
真貝聡が担当したオフィシャルレポート
──ライヴ写真を担当したカメラマンの村井香さんが、「奇妙さんがSundayさん経由で菅田さんとコミュニケーションをとっている感じが、見ていて微笑ましかった」と言ってましたね。
Sunday:奇妙くんが菅田くんに照れてね。菅田くんが真ん中にいたけど、(菅田くんを)通り越してずっとこっちを見ていた気がする。
──菅田さんと奇妙さん、お互いにリスペクトをしている空気がステージ上にも出ていて。
Sunday:そうね。それこそ2月にふたりで菅田くんの武道館ライヴを観に行って、奇妙くんが菅田くんの輝く姿に圧倒されていたんですよ。その姿がすごく美しかった。すごいものを見て圧倒されてしまえる人って、めちゃくちゃピュアで美しいなと思いましたね。僕はそういうところがないので、「わー……すごい」というよりかは、「あぁ、天使ってこんな感じなんかな」という感じだったんですけど、奇妙くんはもっと菅田くんのパワーを受け止めていたというか。そのパワーを受け止められることが、すごく美しいなと思いました。
──もちろん菅田さんは歌い手としても素晴らしいですけど、奇妙礼太郎ほどの人が圧倒されていたっていうのが。
Sunday:やっぱり、奇妙くんもそれほどの人やからそう思えるんやろうね。
──あと、最近だとSundayさんと奇妙さんが出演されたラジオ番組『MOTORING MUSIC by J-WAVE』のCMをよく見ますよ。
Sunday:はいはい、やりましたね。収録したのは1ヶ月前くらいかな? J-WAVEの企画やねんけど、トヨタの車で東京の街をドライヴをしながら、思い出の曲を話し合うみたいな内容でね。でも思い出のトークができる街が全然なかった(笑)。
──ふふふ、そうでしたね。気づけば今年も2/3が終わりましたよ。2023年はどんな年でした?
Sunday:今年はいっぱいなにかやろうとしていた気がする。形になっているかなっていないかまだ分からない、みたいな(笑)。とにかく途中のものがいろいろありますね。
──とはいえワンダフルボーイズとしてシングル「spring summer set feat. AFRA」をリリースをしたり、奇妙さんの25周年記念アルバム『奇妙礼太郎』とか菅田さんのシングル「美しい生き物」のプロデュース・ワークをしたり、ちゃんと大きなトピックがありましたよ。
Sunday:そうね、そうそう。近々だとナイツの塙(宣之)さんに新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」の替え歌をYouTubeに上げたいから「オトナブルー」みたいなトラックを作ってください、と言われた仕事が最近ではいちばん印象深いね。
──なんちゅうオーダーですか(笑)。
Sunday:ナイツの単独公演で毎回最後に歌を歌うパートがあんねんけど、去年はYMOの「君に、胸キュン。」と「テクノポリス」の替え歌をしたいのでYMOみたいなトラックを作ってください、とお願いされて。それがめちゃくちゃ大変で。YMO自体がすごいのに、それみたいなトラックっていちばん難しい。その延長線でリーダーズを最近勉強しました。前から知っていたけど、「オトナブルー」のトラックをめちゃくちゃ分解して勉強してね。
──Sundayさんが普段作る楽曲の雰囲気と違いますよね。
Sunday:アツムワンダフルくん(※ワンダフルボーイズのメンバー)が得意なジャンルで「ベースはすぐにできますよ! あとはSundayさんのインスピレーションで原曲をいい具合に変えてください!」みたいな。「オトナブルー」はそこまで大変じゃなかったけど、YMOは本当にイチから勉強したというか。もちろん昔から知ってるけど、ちゃんと分解して弾いたのは、はじめてでしたね。
──最近はどんなことをしているんですか。
Sunday:ソロのリリースに向けて、この夏はピアノのレッスンにめっちゃ通ってる。増谷紗絵香先生という、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団でピアノを弾いていたり、HIPHOPバンドのImproveでピアノと鍵盤、グラサンズでは鍵盤とハーモニカとかを担当している人で。その人に鍛え直してもらっているというか、ソロ・ツアーのために基礎から習ってる感じですね。
──Sundayさんほどのキャリアがあっても、まだ学ぶことがあるんですか?
Sunday:めちゃくちゃあるんですよ。僕、譜面が読めないし書けないんです。基礎的なことを飛ばしてやっているところもあるし、ジャズテイストも勉強しないと。だから学ぶことはたくさんある。いままでふんわり乗り切ってきていたところを、改めて頑張ってる感じですね。
──ピアノをはじめてかなり長いですよね?
Sunday:3歳から10歳まで習ってました。その後はほとんど弾いてなくて、20代の最後ぐらいから改めて弾きはじめました。もちろん当時も譜面を読めなかったんですけど、ピアノの先生が「譜面とか読まなくていいから、こうかなと思ったところを弾きなさい」という方針の人で。ホールで開催した1000人くらい集まるピアノの発表会では、ステージに立って譜面を置いてやるけど、全然譜面の通りじゃない。それっぽい感じで弾いてそれでオッケー。そう考えたら、それっぽいのを弾くのは昔からできるのかも。YMOと繋がる話でしたね。