前向きに解散をしたSUNNY CAR WASH ── 愛と敬意、軌跡を記録した最後のベスト作品
惜しまれつつも解散をしたバンド、SUNNY CAR WASHの岩崎優也(Vo/Gt)へ単独インタビュー! 彼らは2016年に結成し、2017年より作品をリリースしはじめ、同年の〈未確認フェスティバル〉では審査員特別賞を受賞。その後もリリースを続けていたが、2019年に活動休止を発表。2020年には活動を再開するも、2021年12月末のラストライヴにて解散。という、紆余曲折なバンド人生を歩んできた。今回はそんな約5年間だったからこそ芽生えた想いを全て収録した『ハネダ!ハネダ!ハネダ!』について、また当初からともに歩んできた羽根田剛(Ba)へのリスペクトも語ってもらった。「解散」となると寂しく思うリスナーがたくさんいると思う。しかし今回の取材を通して、SUNNY CAR WASHの解散は決してネガティヴなものではないと確信することができた。このインタビューがそう思えるきっかけになってもらえたら幸いだ。
ラストにしてベスト作品『ハネダ!ハネダ!ハネダ!』はこちら
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INTERVIEW : SUNNY CAR WASH
2021年12月28日にZepp DiverCity TOKYOで開催した〈さよなラストLIVE 2021~はじめてのラストライブ~〉をもって解散したSUNNY CAR WASHが、ファースト(にしてラスト)アルバム『ハネダ!ハネダ!ハネダ!』をリリースした。解散の理由は、同年10月に発表したときのベーシストの羽根田剛によるコメント「音楽以外にも新しくチャレンジをしていきたいことがみつかり、そのことに挑戦するにはバンド活動をしながらだと難しいと岩崎に話し、今回解散を報告することになりました」の通り。CDには元メンバーの畝狹怜汰をサポート・ドラマーに迎えた〈さよなラストLIVE〉の模様を収録したDVDが同梱されている。今後はソロで音楽を続けていくというヴォーカルとギターの岩崎優也にとって、インタヴューは人生2度め、商業メディアでははじめてだそう。リモートということもあって緊張気味だったが、音楽との出会いから現在、そして今後のことまで、言葉を選びながら丁寧に話してくれた。
インタヴュー・文 : 高岡洋詞
同い年3人が集まってでかい音を鳴らすのが楽しくて
──音楽を好きになって、自分もやってみたいと思ったのはいつぐらいですか?
岩崎優也(以下、岩崎):父が音楽好きで、ロックとかバンドの音楽は保育園とかのころから聴かせてくれていたんです。中学生のときにASIAN KUNG-FU GENERATIONとかRADWIMPSを聴いてワクワクして、日本語で歌いたいと思うようになりました。友達のバンドのライヴを見て、自分もできるんじゃないかと思ってやり出したのが最初だったと思います。
──アジカンやRADWIMPSのどんなところがグッときたんでしょう。
岩崎 : 自分があんまり触れたことのなかったよさを感じて、ギターを弾いてみようって思った感じですかね。友達とスタジオに入ってアジカンのコピーとかしてました。
──強く影響を受けたバンドというと?
岩崎 : いっぱいあるんですけど、ブルーハーツ〜ハイロウズ〜クロマニヨンズです。洋楽も好きです。オアシスとかグリーン・デイとか。自分の作るメロディはウィーザーの影響を受けてると思います。
──好きなバンドに共通するものは何だと思いますか?
岩崎 : んー……元気、ですかね(笑)。あと、なんて言うんですかね……優しい。
──優しい、か。ガガガとやかましい音のなかに優しさを感じたというのが岩崎さん独特なのかもしれませんね。
岩崎 : ガガガっていう衝動のなかに、「あ、でもこの音って優しい人じゃないと出せなくないですか?」みたいに感じるときがあって。そういうのが好きなんです。
──なるほど。「優しさ」は今日のキーワードっぽいですね。
岩崎 : 優しさってなんなんですかね……自分でもわかんないです(笑)。でもなんか、聴いてると自分が受け入れられるような感覚があって。そういう曲を自分もみんなに届けたいなっていう気持ちで音楽をやってます。
──2017年からオーディションに出たりリリースもし始めて、あちこちで取り上げられたりするようになってきましたが、手応えは当時ありましたか?
岩崎: ありました。当時はブッキングのイヴェントに出てたんで、チケットの取り置き表っていうのがあって、ツイッターのDMとかメールから予約してくれたお客さんの名前を書くんですけど、それが“キルミー”のミュージック・ヴィデオを出した後(2017年4月)ぐらいから1枚じゃ足りなくなったりして。「えっ、今日こんなに来るの?」みたいな衝撃があったし、みんなですごく喜んでました。ウネ(畝狹怜汰)が加入したころからお客さんが増えた気がします。
──ウネさんのドラムがSUNNY CAR WASHにとっては大きかったんですね。
岩崎 : 大きかったと思います。その前のなほちゃん(柴原菜帆)のドラムもかっこいいし、ウネが抜けた後にサポートで叩いてくれてた(久保)たかひろさんもかっこいいんですけど。解散ライヴのときもウネに入ってもらったんです。同い年3人が集まってでかい音を鳴らすのが楽しくて、青春な感じでした(笑)。
──「未確認フェスティバル」で審査員特別賞をもらったり、最初のミニ・アルバム『週末を待ちくたびれて』がCDショップのおすすめに選ばれたり、『バズリズム』や『関ジャム』で取り上げられたりと、2018年にかけての勢いはすごかったですよね。「いっちゃうぞ!」みたいな気分もあったのでは?
岩崎 : そういう気持ちでいました。どっちかっていうと「いっちゃうのかな?」みたいな感じですけど。自分らの趣味というか、ただやりたいだけで全然まとまってない変な世界を、お客さんが受け入れてくれて、感じたくて来てくれてるんだなって思って。むちゃくちゃなライヴしてたのに(笑)。
──どんなライヴをしていたんですか?
岩崎 : 汗だくでこう(体を大きく前後に揺する)なりながら弾いてたらギターのネックに頭をぶつけちゃって、ここ(眉の上)から血を出しながら、とか(笑)。ベースの羽根田くんもウネも「ウワー!」みたいな感じで、みんな頭クラックラになってやってました。
──自分のなかでモヤモヤしていたことを曲にして演奏して、受け入れてもらえたのはうれしかったでしょう。
岩崎 : すっごくうれしかったです。本当にモヤモヤだった……というかいまもモヤモヤなんで、自分自身。それがみんなにもわかってもらえることがあるんだ、って驚きながらライヴしてた感じです。
──ところが2019年に岩崎さんの体調不良で活動休止しちゃったんですよね。
岩崎 : たくさんの人がバンドの活動にかかわってくれるようになってたので、自分の体調とかメンタルの部分で止めちゃうのは、本当に心苦しかったです。でもそれはバンドのせいじゃないって後から自分で気づいたりして、いろいろ考える機会になりました。
──1年近くお休みしていた間にウネさんが脱退したけれど、羽根田さんは待ってくれていたんですね。
岩崎 : そうです。一緒にまたライヴを再開してくれた羽根田くんには本当に感謝です。
──そういう話をふたりでしたことはありますか?
岩崎 : ないです(笑)。あんまり深い話とかしないんで。今日もそうなんですけど、ひとから言われて気づくことがいっぱいあります。
──男同士ってあんまり内面の話はしないですよね。特に若いときは。
岩崎 : しないですね……なんなんですかね、本当に(笑)。自分の気持ちを言ったり、相手の気持ちを探ったりするのはあんまりよくないかな、とか思ったりします。