イズミカワソラ×ニラジ・カジャンチ ── 新作『Continue』の意外な制作過程を語る

2021年末にインタビューをした、イズミカワソラがはやくも再登場! 今回はなんと、マイケル・ジャクソンなどの海外アーティストから三浦大知や[Alexandros]、SKY-HIらを手がけるエンジニアのニラジ・カジャンチとの対談が実現。新作ミニ・アルバム『Continue』のサウンドメイクについて、深堀していく。透明感のある歌声、イズミカワ自身が奏でるピアノ、一発録りだからこそ生まれたバックバンドが生み出すグルーヴは一体どのようにミックスされたのか? これまで数々の作品にエンジニアとして参加しているニラジ・カジャンチも驚いたというユニークな制作過程とは? またハイレゾの聴きどころもエンジニア目線で語ってもらったので、ぜひ新作を高音質で楽しんでもらいたい。
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INTERVIEW : イズミカワソラ × ニラジ・カジャンチ

イズミカワソラがミニ・アルバム『Continue』を2月16日にリリースした。オリジナル作品としては約4年ぶりとなる今作には、野崎マスケ(Dr)、雲丹亀卓人(Ba)、藤井謙二(Gt)とともに一発録りした4曲を収録。そのレコーディングは、今回エンジニアを務めたニラジ・カジャンチのハウススタジオ=NK SOUND TOKYOで行われたという。また、そもそも『Continue』というアルバムはニラジとの出会いがなければ生まれていなかったとのこと。そこで今回はイズミカワとニラジの対談を行い、2人の出会いからアルバムの制作エピソードまで存分に語ってもらった。NK SOUND TOKYOで撮影した写真も併せて楽しんでほしい。
インタヴュー・文 : 蜂須賀ちなみ
写真 : 作永裕範
なかなかすごい作り方だったと思います(笑)
──イズミカワさんとニラジさんは配信アプリ「17」をきっかけに知り合ったんですよね。
イズミカワソラ(以下、イズミカワ) : はい。ニラジさんはとても有名なエンジニアさんで、正規ルートだと絶対に会えないような方なので、「17」での出会いがなかったらこのミニ・アルバムを一緒に作ることもまずなかったと思います。だけど最初から「いつか一緒にレコーディングを……!」という思いがあったわけではないんですよ。私はただニラジさんの配信が好きだから観にいっていただけなんです。
ニラジ・カジャンチ(以下、ニラジ) : むしろガツガツこられていたら、多分こうはなっていなかったと思います。僕もソラちゃんも、コロナ禍に入って、仕事がなくなっているこの世の中で「仕事探さないと!」という気持ちで「17」をはじめたわけではないし、「17」でお金を稼ぎたいわけでもなくて。そういうテンションがフィットしたんでしょうね。長い時間をかけて、だんだん打ち解けていくなかで、はじめて会った時に「いつか一緒に制作できたらおもしろいかもね」という話をして。お互いに忙しくても興味があればなんとでもなるものだから、そのあとすぐに実験をしちゃったわけですよ。そしたらこのミニ・アルバムがすぐに出来上がっちゃったね。あはは。
──イズミカワさんは前回のインタビューで、曲を作るよりも先にニラジさんとミュージシャンの3人のスケジュールを押さえたと仰っていましたよね。
イズミカワ : 私は計画性がないので(笑)、思ったらすぐにやるたちなんですよ。確か、ニラジさんのところにアーミー(※「17」内の有料ファンクラブのような機能)の特典Tシャツを取りに行った日があって、その時お願いしたら「いいよ」と言ってもらえて。その場はそれで終わったんですけど、「ニラジさんはお忙しいだろうしなあ」と思ったので、まずニラジさんのスケジュールを押さえて、次にミュージシャンを押さえて、そのあと曲を作りはじめました。
ニラジ : このやり方はだいぶ特殊ですよ。普段我々は、いちばんプライオリティが低いので。普通はアーティストさんの「このミュージシャンと一緒にやりたい」という希望からはじまって、みんなのスケジュールを合わせたあと、最後に「じゃあどこのスタジオで、どのエンジニアさんに録ってもらおうか」と探っていくやり方なんですけど、今回はなんか真逆だったのでおもしろかったです。
──制作の流れとしては、イズミカワさんが作ったデモを、事前にバンドメンバーやニラジさんに共有しておいて、レコーディング当日を迎えるという感じですよね?
イズミカワ : そうですね。
ニラジ : でもソラちゃんって、結構ギリギリに曲を作るんですよ。デモが来るのがレコーディングの前日とか2日前だから、僕らからするとイメージが膨らむ前に当日が来ちゃう感じで……(笑)。
イズミカワ : ご迷惑をおかけしました……(笑)。
――しかも“Continue”はレコーディング当日の朝に完成したと仰っていましたよね。ということは……。
ニラジ : はい、だいぶスピーディーでした。なかなかすごい作り方だったと思います(笑)。でも天才なのでなんとかなっちゃうんですよね。ミュージシャンも、トップ中のトップの人たちが集まっているわけですから。
イズミカワ : ふふふふ。
──ちなみに、他のアーティストの場合はどのくらい前に曲が共有されるんですか?
ニラジ : まあ、だいたい1~2ヶ月前には来ていますよね。
イズミカワ : あ、本当ですか!?
──ははは。ということは、事前のやりとりはほとんどなく、実際に音を鳴らしながら固めていった感じですか?
ニラジ : そうですね。ミュージシャンもそうなんですか?
イズミカワ : はい。持ってくる楽器もあるので、「1曲目はチャールストンです」「2曲目はちょっとエモい8分の6拍子の曲です」というふうに、だいたいのイメージは伝えていたんですけど、基本は当日です。
──でも、その伝え方もわりとざっくりしてますね(笑)。
ニラジ : そうなんです。ざっくりしてるんですよ(笑)。
イズミカワ : あはははは!

ニラジ : アーティストの場合、自分でアレンジをしている人も多いから、ディレクションもしたがるタイプの人が多いんですけど、ソラちゃんはそうではなく、「ひとりひとりが思うようにやってほしい」「いい感じにやってくれると嬉しい」というスタンスで。それが形になったのが今回のミニ・アルバムなんですよね。こういうやり方って結構珍しいかもしれないです。
イズミカワ : ニラジさんやフジケンさん、マスケさん、ウニさんだからこそ、みなさんにお任せできたんですけどね。
ニラジ : とはいえ、僕とソラちゃんはまだ知り合って数ヶ月じゃないですか。1回しか会ったことがなくて、2回目に会った時にはもう当日だったわけだから、「やりたいようにやってくれればいい」と言われても、そもそもなにを求めているのかが分からなくて。
イズミカワ : 確かに(笑)。
ニラジ : でも最初に作ったサウンドを聴いてもらって、「この方向性でどうかな?」という話をした段階から、「いや、全然任せるよ」という雰囲気だったよね。だから僕としては「ほう、なるほど……」と思いつつ、ミュージシャンたちもいろいろなアイデアを出してくれたので、みんなで音を出したり、実際に録ったものを聴いたりしながら、「じゃあもうちょっとこうしようか」という感じで進めていきました。
