完成されたバンドアンサンブルの背景にあるものとは──Glimpse Groupの結成から楽曲制作までを探る
ブルースとソウルをベースに幅広いジャンルの楽曲をリリースしているバンド、Glimpse Group。地元である湘南のカルチャーシーンではすでに話題となっていたが、〈FUJI ROCK FESTIVAL'22〉への出演以降はさらにエリアを拡大して活動している。そんな彼らが待望のセカンドEPをリリース。ドリーミーで瑞々しいサウンドと藤本慎平(Vo / Gt)の伸びやかな歌声の相性が抜群で、再生すると気持ちのいいそよ風が吹き抜けたような気になる。とにかくバンド全体のアンサンブルが心地のいい1枚だ。今作の制作はもちろんのこと、2018年に結成されてからあまり明かしてこなかったバンドのプロフィールからまずはきいていこう。
湘南発の注目バンドが2枚目のEPをリリース!
INTERVIEW : Glimpse Group
生々しくみずみずしい魂の発露としてロックンロールもソウルも同一線上に存在するバンドが久々に登場した──Glimpse Groupの音楽に抱いた最初の印象はそれだった。とてつもなくむき出しの歌を歌うヴォーカリストと複数の人間が音を出すことを至上の喜びとするミュージシャン。出自である湘南カルチャーシーンというものにぼんやり抱くイメージを豪快に超えてくバンドアンサンブル。昨年の〈FUJIROCK FEATIVAL〉の新人バンド登竜門、ROOKIE A GO-GOでも異彩を放った4人が、バンドの転機となりそうなEPを完成させた。メンバーの誰もが音楽的な影響を話したがらず、フロントマンの藤本慎平の存在を押し上げようとするスタンスの理由はなんなのか。話を聞くほど、この4人が羨ましくなってしまった。
取材・文:石角友香
撮影:斎藤大嗣
この男(藤本)をどうやって世に出すのかしか考えていない
──みなさん藤沢なんですか?
TeeDee(Gt):そうです。(大内)岳以外は、ほぼほぼ。
大内 岳(Dr):僕は神奈川は神奈川ですけど、海老名です。
──じゃあ高校で4人が出会った?
塚田 智(Ba):最初にバンドやったのはこのふたり(藤本慎平とTeeDee)。
TeeDee:高校卒業してからふたりで組んで、すぐに解散しちゃったんですけど。
──その時はどういう意図のもとで?
TeeDee:(藤本)慎平とは小学校は別で、中学校は一緒、高校でまた別々だったし、全然別に仲良くなかったんですよね。けど高校を卒業して「バンドやりたいなあ」っていう状態の時にたまたま最寄り駅で久しぶりに慎平と会ったんです。そのとき、彼が金髪のマッシュルームになっていて。でもすごいおとなしいタイプだったから「髪の毛どうしたの?」って聞いたら「いや、ちょっとバンドやりたくて」と。「どんなん聴いてんの?」ってiPod見たら毛皮のマリーズのアルバム『戦争をしよう』を聴いてて、俺もめちゃめちゃ好きだったんで、「いいじゃん。一緒に(バンド)やるか」ってなって。で、組んだのが19歳の時ぐらいですね。メンバーそれぞれをいちばん長く知ってるのは僕なんですけど、塚田は小中高一緒で、岳は藤沢のライヴハウスで。
大内:行きつけというか、溜まり場のライヴハウスが藤沢にあって。
TeeDee:岳はその時もうバンドでドラム叩いていたんですけど、まあすごいうるさいドラムだったんで、気になってて。なんやかんやで慎平とやってたバンドが解散して、でも大人になってからもう1回やろうってなって、暇人を集めた結果がGlimpse Groupというか(笑)。地元のやれそうな人たち4人が集まったって感じですね。
──共通する好きな音楽があったんですか?
TeeDee:共通項で言うと60年代70年代の音楽はたぶん4人とも好きで。
大内:ビートルズとクラシックソウル。
TeeDee:後はでも4人結構バラバラですね。
──なるほどね。2020年のシングル「See What’s There」にたどり着くまではどんな感じだったんですか?
TeeDee:基本的にはこの男(藤本)をどうやって世に出すのかっていうのしか僕ら3人は考えてないんで(笑)。絶対ヤバいやつだって確信してるんで。
大内:うん。ファンスタート?
TeeDee:ファンスタートですね。
──藤本さんがおもしろいやつだなっていう片鱗は昔からあったんですか?
TeeDee:ありましたね。小学校中学校の時に部活は一緒だったりしたんですけど、そんなにガッツリ遊ぶような仲でもなかったんです。だからバンドを一緒にやりはじめてから思うことがほとんどですけど、とにかく無口なんですよ。ただ、掘れば掘るほどおもしろいというか、バンドやっててひとつの目標がこいつの2万字インタビューとか読みたいっていう。
大内:なるべくこうかき集めて(笑)。
TeeDee:かき集めて喋らせてえ、みたいのがあって。僕はほぼ幼馴染なんで、どういう境遇で育ってきたかとかはだいたい知ってるんですけど、多分周りには一切語ってないので、それは喋っちゃえばいいのにってずっと思ってるんですけど。
大内:毎年発見がありますもん(笑)。
TeeDee:いつかバンドがいい感じになったらそれを暴く記事をお願いして(笑)。
──でも藤本さんはそういうことは喋る気はない?
藤本慎平(Vo):うん、そう。話す必要がないかなと思っちゃいます。すみません(笑)。
──(笑)。じゃあ最低限、歌を歌いはじめたり曲を作りはじめたきっかけだけでもきいていいですか?
藤本:はい。ギターを触りはじめたのが中学後半ぐらいかな。高校になって、ロックバンドやりたいなってなって、高校卒業して専門学校とか入ろうかなと思ったんですけど、それもやめて。とにかくバンド組みたいってなっていたときにTeeDeeに会って。そんな感じで流れで。
──ロックバンドのヴォーカリストになりたかったんですか?
藤本:スター。
一同:ははは。
塚田:専門学校行こうかなみたいな話は、はじめて聞きました(笑)。
TeeDee:俺もいま知った。そんな心があったの(笑)。
──藤本さんがスターになりたいと思った動機は特定の人なのか、天啓のようなものなのか。
藤本:基本的には特定の人が時期ごとに心にいて。特に言いたくはないですけど。
一同:(笑)。
藤本:結構特定の人がいるんです。日本人なんで日本語が大好きで。リスペクトしてる人がいて、影響受けまくって吸収して、吸収し終えたら離れていくっていう。
──ヴォーカルスタイルに関しては一貫してるんですか?
藤本:そうっすね。まあ気合いを入れてやるっていうところに関して。そこはなんだろう、キングブラザーズが昔から好きなんですけど。マーヤさん。そのソウルはずっと一貫してあるかもしれない。
大内:気合いですよ。すべては気合で。
──これだけ藤本さんの個性があって、共通項が60年代70年代ソウルやビートルズってなったらおのずと曲も決まってきますよね。あとはもう藤本さんのその時のモードっていうか。
大内:うん。あんまり「こういう音楽作ろう」みたいなのを言葉で詰めるっていうよりは鳴らして出来ていく感じがありますね。
TeeDee:こういうジャンルのこういう音楽をやろうとはしていなくて。たぶん本当に4人音楽の趣味バラバラなので。でもたまたま付き合いが長いから成り立ってるという、スレスレのところでやっている感じはしてますね。最近知り合った4人でこの感じをやろうとしたらめちゃめちゃすぐ喧嘩になる(笑)。