いま、インナージャーニーは『いい気分さ』!──4つの個性を同じ熱量でぶつけた結果生まれたサードEP
2019年に結成されたバンド、インナージャーニー。シンガーソングライターとして活動していたカモシタサラ(Vo / Gt)が〈未確認フェスティバル 2019〉へ出場する際、3人の現メンバーをサポートとして招いたことをきっかけに、そのままこの4人のバンドとして活動をスタートさせた。結成後にも関わらず、すぐコロナ禍になり、ライヴもできず、メンバーとのコミュニケーションも取りづらかったはずだ。しかし結成4年目に突入した現在のインナージャーニーは充実感で満ちており、全員が音そのものを楽しみながら、同じ熱量で個性をぶつけあっている状態だという。その結果バンドとしての自由度がグンと増したサードEPが完成。フロントマンのカモシタと、とものしん(Ba)に今作について語ってもらった。
充実感溢れる、サードEP『いい気分さ』
INTERVIEW : インナージャーニー
昨年9月にファースト・フル・アルバム『インナージャーニー』をリリースし、今年は初の書き下ろしタイアップソングとして映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』の主題歌“少年“を担当するなど、着実にステップアップを続けるインナージャーニー。そんな4人がサードEP『いい気分さ』を完成させた。バンドサウンドがパワフルかつ爽快な先行配信曲“ラストソング“を筆頭に、ライヴでの人気曲“手の鳴る方へ“、ギターの本多秀がはじめて作曲を担当した“ステップ“など全5曲を収録。どの楽曲もインナージャーニーが育んできた要素と新しい成分が融合し、成熟かつフレッシュなムードを纏っている。
ソロで活動していたカモシタサラ(Vo / Gt)のサポートバンドからスタートしたインナージャーニーは、結成から3年半を経て新しいフェーズに入ってきていることを実感できる今作。カモシタととものしん(Ba)の言葉からも、その喜びと充実が十二分に伝わってきた。
取材・文 : 沖さやこ
撮影 : つぼいひろこ
「らしさ」を考えすぎず、自由に作った
──『いい気分さ』、いいタイトルですね。
カモシタサラ(Vo/Gt):あははは、ありがとうございます。実は2曲目の“ステップ“の仮タイトルが「いい気分さ」だったんです。作曲者の本多秀曰く、その曲を作ったときにいい気分だったから「いい気分さ」とつけたらしくて(笑)。それでEPのタイトルをみんなでああでもないこうでもないと話し合っているときに、ふと「EPのタイトル、『いい気分さ』で良くない?」という話になったんですよね。
とものしん:仮タイトルの時点で「いいねえ~!」なんて話してたので、4人ともなくしちゃうのはもったいない気がしてたんだろうね。それでEPのタイトルに当てはめてみたらしっくりきて。
カモシタ:「サードEP『いい気分さ』……これだな!」みたいなね(笑)。
とものしん:タイトルの由来の話をすると、本多秀はニヤニヤするんです(笑)。
カモシタ:こだわりが強いタイプだから、相当うれしいんだろうね(笑)。
──『いい気分さ』は昨年リリースしたファースト・フル・アルバム『インナージャーニー』と今年デジタルリリースされた「少年」の成分を引き継ぎつつ、タイトルのとおりさらに身軽な印象を受けました。
とものしん:去年の9月に『インナージャーニー』をリリースして、10月にはじめて4人でライヴをしたduo MUSIC EXCHANGEで結成3周年記念のワンマンライヴをして、12月に大阪と名古屋で企画ライヴをして。それまで目標にしていたことを、ひとまず達成した感覚があったんです。だから最初のうちは燃え尽きみたいな感じでどうしようかなと思ってたんですけど、EPを作ることが決まったあたりから自然と「いままでとちょっと違う感じのアレンジをやってみよう」というモードになって。去年で区切りがついたから、気持ちを新たに制作できたのかなと思います。
カモシタ:ファースト・フル・アルバムは「インナージャーニーはこういうバンドです」というものが曲にできた感覚があって。映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』に書き下ろした“少年“はアルバムと制作時期が近くて、インナージャーニーの良さを残しつつ、いろんな人と距離を縮められるような雰囲気と、映画のラストを締めくくれる曲を目指していたんですよね。そのふたつを作った経験を経て、このEPではもっと自由になったかな。
とものしん:“少年“はギターソロが入っていないという面もありつつ、自分たちが好きな音や得意なことをそのままどんどんブラッシュアップしていった曲だなとは思っていて。ファースト・フル・アルバムでは「ここまでやっていいのかな?」と躊躇したところも、このEPでは挑戦できたし、でも劇的に新しいことをやってやろうとしていたわけでもなくて。
──それこそ先ほどカモシタさんがおっしゃっていた、「自由になった」という表現がしっくりくるのかもしれません。
カモシタ:いままでは「インナージャーニーはどういう音楽を鳴らすバンドなのか」というのを大事にしながら作っていたんですけど、それを1回やめてみたところはありますね。どんな音楽でも自分たちが鳴らしてたらインナージャーニーになるだろうし、インナージャーニーらしさとかをあまり考えすぎずに、自由に作ってみて。そういう意味では新しい気持ち挑んだ作品です。
──カモシタさん以外のメンバーさんが作曲した楽曲が入ることも、自由度が上がった象徴ではありますよね。
カモシタ:本多くんはもともとパソコンで音をいじったりするのが結構好きなタイプで、でもインナージャーニーに向けてなにかをすることはなくて。この曲を持ってきたときは「サラが書かなさそうなインナージャーニーっぽい曲を書いてみたんだけどどうかな」って聴かせてくれて、確かにわたしは書かないけどちゃんと爽快さが伝わるなと思いました。
とものしん:実は“ステップ“の原型のデモは、去年のアルバム制作時期くらいに送られてきたんです。でもなんとなくしっくりこなくて……それが本多秀も悔しかったんでしょうね(笑)。ちょっと編曲したものを送ってきて、すげえいい曲になってたんです。カモシタサラがやりそうだけどやらなさそうで、いままでのセオリーとはちょっと変わってくるなと新鮮でした。「秀ってこんなこともできるんだ」と感心しましたね。
カモシタ:曲の展開もいっぱいあるからおもしろいですよね。わたしでは絶対作れない。
──それでも“ステップ“が「インナージャーニーっぽくないよね」とならないのは、これまでも本多さんのロマンチックなギターがインナージャーニーを構成するうえで重要なフックになっていたからでしょうね。その反面カモシタさんがお書きになった歌詞は物語性が強くてロマンチシズムに富んでいるので、新機軸だと感じました。
カモシタ:自分以外の人が作ったメロディに歌詞を乗せるのがはじめてだったので、最初は結構苦労して。このメロディをどう色づけたらいいのか、どういうイントネーションで歌えばいいのか、なにを歌えばいいのか……。それでまず本多くんの第一印象を書いてみることからはじめました。そこを起点にこねくり回してるうちに、わりと物語っぽくなって。
とものしん:その結果歌詞に「グランパ」まで出てくるっていうね(笑)。カモシタサラが「グランパ」なんて書くとは思わないから、歌詞も最初本多が書いてるかと思った(笑)。
カモシタ:発音して気持ちいい言葉とかも入れてみたくて(笑)。それこそ作詞の自由度が広がったんだと思います。実は最初、本多くんが自分で歌詞も書いたらしいんですけど、本人的になんか違ったらしくて「ちょっと書いてみて」と言われたんです。それで書いたのがいまの歌詞なんですけど、見せたら「サラが書いたほうがいいわ」って自分の書いた歌詞は見せてくれませんでした(笑)。
──(笑)。その感じだと「作詞作曲本多秀」の楽曲が近いうちに生まれそうですね。
とものしん:この曲のサビのコーラスは本多が入れていて、カモシタサラ以外のメンバーがはじめてガヤ以外でコーラスをレコーディングしてるんです。……本多はそろそろ歌いますね。
カモシタ:あははは、期待してます(笑)。
とものしん:多分まだ「曲作り思春期」に片足残してるから、歌詞は見せられないのかもね(笑)。俺は思春期ど真ん中だから、本多秀が曲を書いていることに悔しさも感じつつ曲を書いてない厨二みたいな感じです(笑)。
カモシタ:(笑)。こんなふうにメンバーそれぞれやりたいことができていく感じは、すごくいいなと思っています。