CYNHNが最新アルバム『INVERSIOИ』で描く、新たな「青」の形──彼女たちは「歌」とどう向き合ったのか

CYNHNがいま、新たな進化を迎えている。現代のライヴシーンにおいて、“楽曲派”のグループとして高い評価を得ている彼女たち。4月16日にリリースされるフル・アルバム『INVERSIOИ』(読み:インヴァージョン)は、これまでにリリースしてきたシングル楽曲のほか、ポストロックに挑戦した“バニラ”など、自身の持ち味を大切にしながらも、グループとしての挑戦も感じられる作品に仕上がっている。今回OTOTOYではメンバー4人にインタヴューを実施。今作、そしてこれからのグループの進む目標について、話を訊いた。
ポストロックに挑戦したCYNHNの新境地
INTERVIEW : CYNHN

4人組ヴォーカル・ユニットであるCYNHN(スウィーニー)が3年ぶりのニューアルバム『INVERSIOИ』をリリースする。CYNHNというグループ名は「青」を意味し、『INVERSIOИ』というアルバム・タイトルは「反転」を意味する。その『INVERSIOИ』までの3年間、CYNHNはコンスタントにシングル、配信シングル、EPをリリースし、音楽ファンから強い支持を得てきた。2025年1月からスタートした全国ツアー「CYNHN TOUR 2025 - INVERSIOИ -」のSpotify O-EAST公演(2025年3月3日)での強烈な熱気も忘れがたい。CYNHNは『INVERSIOИ』で「歌」とどう向き合ったのか。綾瀬志希、月雲ねる、青柳透、広瀬みのりに聞いた。
インタビュー&文 : 宗像明将
撮影:星野 耕作
手応えはありました、と言えるでしょう
──3月3日のSpotify O-EASTは、すごい熱気だなと思ったんですよ。ああいう熱気はどこから生まれているとメンバーのみなさんは感じていますか?
月雲ねる(以下、月雲) : ファンの皆さんが広めてくださったのはすごく大きいと思います。ツアーファイナルに向けてファンの方が集客を気にしてくれて(笑)、メンバーみたいにSNSで「来てください」みたいにつぶやいて、広めてくださってるのを見ました。
青柳透(以下、青柳) : 「一発見せたらハマってくれるだろう」って、自分でチケットを買って友達にプレゼントしてライヴを見てもらうみたいな活動もあって嬉しいですね。それくらいライヴに信頼を置いてくれてるのも嬉しいです。
──実際ハマってくれている感ありますか?
青柳 : ありますね。「会社の同僚なんですけど」とか言ってくれる人もいます。
──会社の同僚はハードルが高いですよね。
青柳 : そうですよね、みんなありがたいです(笑)。
広瀬みのり(以下、広瀬) : ファンの方はもちろんなんですけど、私たちから届けたのも大きかったのかなと思います。Vlogで各地のツアーの様子をYouTubeに投稿したんです。それを見てみなさんのモチベーションが上がったり、CYNHNに会えるのが楽しみになったりするコンテンツになってもらえていたような感じがして嬉しかったし、初めての方にもCYNHNらしさや、「こういう一面もあるんだ」っていう部分を知ってもらえるきっかけになりました。ライヴ面では映像演出もあって、CYNHNの世界観をより青く届けられたイメージがあります。たくさんの方に支えていただいて、世界観を作り込めたのが熱気につながったのかなって思いました。
──なるほど、Vlogも9本ありましたもんね。
月雲 : Vlogの中にライヴの様子も分かりやすく入っていました。
青柳 : 初めての人や、対バンで見たけどワンマンには来たことがない人もいたみたいなんです。「ワンマン、どんな感じなんだろう」とVlogを見て雰囲気をつかんでいるのもXで観測してました。
綾瀬志希(以下、綾瀬) : 私たちが本気で「3月3日は埋めたい」ってずっと言ってて、こちらが本気を出したら、スタッフさんやファンの人たちが「そうだよね、CYNHNはいい音楽を定期的に届けてるし、埋まってほしいな」と思ってくれて、そういう方々の力のおかげで熱気が上がっていったんだと思います。
青柳 : しきちゃん(綾瀬)がリプを飛ばしてましたね。CYNHNの対バンを見てツイートしている人に「3月3日来てね!」ってリンクと一緒に(笑)。
綾瀬 : 無差別チラシ配り(笑)。

──Spotify O-EASTでのライヴの手応えはどんなものでしたか?
青柳 : 今回バンドセットが3回目っていうのもあるかもしれないんですけど、本当に初めて楽しかったなって思いました。どんなワンマンでもプレッシャーの方が大きくて、いつも緊張しちゃって(笑)、それに負けちゃうところがあったんですけど、今回は楽しめました。ファンの人が盛り上がってくれてるところを見て、さらに自分も上がるみたいな体験がいつもよりできたと思います。
広瀬 : 個人的にはライヴ後に涙を流してしまって……。自分自身の感情や、悔しかったこと、幸せな景色や、一生懸命みんなで駆け抜けてきたものとか、いろんな気持ちがごちゃごちゃになっちゃって。メンバーとダンスの先生が慰めてくれたんですけど(笑)。でも、それぐらいツアーに向き合ってこれた時間だったのかなと思います。バンドセットならではのライヴ感、フリーの感じもあんまりやったことがなかったんです。振り付けなしで歌を届けるパートや、アカペラもありましたし、全体的に満足度の高いライヴをお届けできたという感覚があります。
月雲 : 普段あんまり緊張しないタイプなんですけど、珍しく緊張していて、前半で初めての間違いをしちゃったりして、「やばい、自分焦ってる」って思ったんです。でも、途中からお客さんの歓声がイヤモニを貫通して聞こえてきたり、熱気がすごすぎて、自分もそれに引っ張られて楽しくなってきて、終わった時にはすごく楽しかったという感想でした。『INVERSIOИ』というタイトルが「反転」という意味じゃないですか。それに沿ったセトリや演出を考えていて、お客さんも「意外だった」という反応をくれたので、いいものが見せられたんだなと分かりました。手応えはありました、と言えるでしょう(笑)。
綾瀬 : 手応えは正直ありましたね。私も同じように緊張してたんですけど、ファンの皆さんの表情がすごくはっきり見えて、一人一人の顔を見ていくうちに、みんなにいろんな思いを持って帰ってもらいたいなという気持ちが先行していって、終わった時には「あー、CYNHNで良かったな」って思うぐらい晴れやかな気持ちだったので、手応えはありました(笑)。
