【真っ白なキャンバス連載】「不安もあるけど、やるしかない」──浜辺ゆりなが抱く、アイドルとしての葛藤
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新メンバー募集や、ライバルでもあり仲間でもある新グループの結成など、めまぐるしい変化を迎えているアイドル・グループ、真っ白なキャンバス(通称、白キャン)。いったい彼女たちはいま、どんな想いを抱いているのか。その気持ちを探るべく、OTOTOYではメンバー5人に個別インタヴューを実施。まず、1番手として登場するのは昨年2020年7月11日に新メンバーとして加入した、浜辺ゆりな。アイドル活動の葛藤について、正直な気持ちを話してもらいました。
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真っ白なキャンバス Road to Be the IDOL、その他の記事はこちら
INTERVIEW : 浜辺ゆりな (真っ白なキャンバス)
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インタヴュー&文 : 宗像 明将
写真 : YURIE PEPE
2021年5月のある夜、真っ白なキャンバスの浜辺ゆりなは、ツイキャスの配信中に大粒の涙を流していた。2020年7月11日に新メンバーとしてお披露目された浜辺ゆりなは、加入後半年足らずで20曲以上ある白キャンの全曲を習得。しかし、2021年7月の新メンバー加入へと向けたオーディションが進むなかで、天真爛漫な末っ子キャラであるはずの浜辺ゆりなは、「自分じゃない人が入ったほうが良かったんじゃないのかな」「いなくなったほうがいいのかな」とまで思い詰めていたという。「自己肯定感が低い」と葛藤する理由を聞いた。
自己肯定感を高めるメモがあります
──もともとは白キャンのファンだったんですよね。
浜辺ゆりな(以下、浜辺) : アイドルがもともと好きで、最初は乃木坂さん、特に堀未央奈さんが好きだったんですけど、いろんなアイドルを見るようになって、白キャンを見つけてよく聴いてました。
──ヴィレッジヴァンガード渋谷本店でのリリースイベントにもいたんですよね。
浜辺 : そのヴィレヴァンで初めて見たのがいちばん思い出深い白キャンで。それが2020年の1月とか2月です。
──メジャー・デビュー・シングル「桜色カメラロール」のリリースイベントの頃ですね。
浜辺 : ずっとめちゃくちゃSNSで見てたアイドルだったから「本物だ! すごいいいなー」って思ってました。本当に人がいっぱいいて、盛りあがりもすごくて、そのときはまだコールもあったから、「熱いライヴしてるなあ」って思いました。
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──そこから白キャンに加入して、2020年7月11月にお披露目ステージに立ってみて、どんな感覚でしたか?
浜辺 : ずっとアイドルには憧れてて。お披露目ライヴのときって、背後に大きいモニターがあったんですよ。そこに自分が映ってて、嬉しくて泣きました。とりあえず嬉しいという気持ちが大きかったですね。
──その「嬉しい」という気持ちだけで過ごす日々は、どのぐらい続きましたか?
浜辺 : 2、3か月。
──そうすると2020年9月、10月にはいろいろ考えていたわけですね。でも、2020年11月18日のZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライヴでは、全曲踊れるようになっていたじゃないですか。すごいと思いました。
浜辺 : 家でめちゃめちゃ振りを覚える日々でした。一回本当に切羽詰まっちゃったことがあって。テレビの企画の催眠術と学校のテストが本当にヤバくて、振りも一気に3曲ぐらい覚えなきゃいけなかったりして、それでレコーディングもあったんです。そのときはもうぐちゃぐちゃになっちゃって。レコーディング中にけっこう崩壊したことがあります(笑)。自分が全部嫌になっちゃって、「なんで全部できないんだろ?」みたいな。一気に全部やろうとしちゃうから、全部中途半端で終わっちゃって。「なんか思い通りに行かないなあ」みたいな感じになって。自分に自信がなかったり、ネガティヴ志向だったりで、スマホに病んだとき用の自分へのメッセージが書いてあるんです(笑)。
──それを私に送ってくれませんか?
浜辺 : 恥ずかしい(笑)。自己肯定感を高めるメモがあります。
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──そういう気持ちは誰かに話していたんですか?
浜辺 : メンバーにはけっこう話しちゃったりして。レコーディング中に歌えなくなって泣いちゃって、(橋本)美桜ちゃんが「どうしたの?」って言って話してくれて、戻って歌いました(笑)。
──でも、そういう部分ってSNSで見せないですよね。
浜辺 : たしかにあんまり書いたことないかもしれない。アイドルって人に元気を与えるみたいなイメージがあるから、自分の裏側を見せていいのかなっていう思いだったんですけど、すごい自分が嫌になってた時期があって、「個性がないなぁ」って悩んでたんですよ。それでファンの人にちょっと相談というか、ツイキャスで「どうしよう」と話して泣いちゃって。
──その配信、たまたま見ていました。「自己肯定感が低い」って言っていたけど、苦しくて泣いたわけではなくて、ファンの反応の優しさに涙を流していたのが良かったです。でも、なんでそんなに自己肯定感が低くなっていたんですか?
浜辺 : 今、新メンバーが入ってくるとかいろいろあって、「自分が入った意味ってなんだろう?」みたいなことを考えることが多くて。最初は本当に初めてのことばかりで、アイドルを楽しんでたんですけど、もうすぐ入って1年経つことになって、「もっと力にならなきゃいけないのにな」って思って。白キャンが売れるには自分は何の力になれるんだろうって考えて。ライヴでもいつも足を引っ張っちゃうし、メンバーに助けられてばかりだなって思って、「自分しか出せないものってなんだろう?」と考えてたら、わからなくなって。「自分じゃない人が入ったほうが良かったんじゃないのかな」とかも思っちゃいました。
──そういうことを考えはじめたのはいつ頃ですか?
浜辺 : Zeppが終わったぐらいからですね。Zeppまでは覚えたことが増えるたびに褒めてもらってたんですけど、全部覚えきっちゃってからは、どうやって成長していくかを見られると思うから、自分も成長したいと思っているけど、「できてるのかな?」と思ってしまって。
──Zeppから半年以上が経ちましたが、答えは見つかりましたか?
浜辺 : 全然。いまも自信を持って「私のここが他のメンバーと違います」って言えるところがなくて、本当にダメだなって思ってて。いちばんは歌がうまくなりたくて。アルバムの「共創」の発売のときに自分の歌割りを見て、本当に1曲に1フレーズしかなかったんだ、って。それは本当に悔しくなって友達に電話したりしてたんです。「ゆりなはできるから大丈夫だよ」みたいな感じで応援してくれたんですけど、でもファンの人は歌割りが少なかったら悲しいと思うし、応援してくれてるからにはもっと魅力があるアイドルになりたいなと思ってはいるんです。
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遊べるぐらいの歌唱力になりたい
──2月に浜辺さんの生誕祭があって、何曲も落ちサビを歌っていたじゃないですか。でも、まだ自分は足りていないっていう感覚がある?
浜辺 : 歌唱面では力になれて無いし、SNSでもそんな力になれてないし、まだまだだなって思っちゃいますね。「個性あるよ」って言ってくれる人が多くて、アイドルって本当の自分を出していくべきなのか、作った方がいいのかまだわからなくて。優柔不断だったり、他人の意見にすぐ乗っちゃったりするタイプだったから、自分をもっと出していきたいなって思って。自分が思ったこととか感じたこととかを個性に変えられたらいいなって思っています。
──浜辺さんが日々感じることって、たとえばどんなことでしょう?
浜辺 : 毎日人生のことを考えてて(笑)。もう人生を肯定してくれる歌ばっかり聴いてます。BiSHのアユニ・DさんのPEDROを聴いてて、めちゃめちゃ歌詞が好きで共感します。
──自分が素のままのキャラクターを出すとしたら、どんなキャラクターになると思います?
浜辺 : 今まで友達は、すごい天真爛漫とか、人懐っこいとか言ってくれたり。美桜ちゃんには「猫」って言われたり、変な考え持ってるとか言われたり。
──初期は煽りキャラって言われてましたよね。
浜辺 : 知らない間に人を煽っちゃうらしくて(笑)。それを個性にしていいのかなと思うけど、勝手に人を煽ることはできます(笑)。
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──あはは。この間、TikTokをやりたいと言っていましたね(その後6月に開始)。
浜辺 : 今、青木さん(青木勇斗/プロデューサー)によく言われるのはSNSのことで。SNSでもっとゆりなのことを知ってもらって。白キャンのことも知ってもらえるようになったらいいねって話をよくされて。TikTokとか、今やれるSNSを全部やってみたいなって思ってます。でも、バズることが目的だけど、バズるために自分を作るのもなんか変だなと思うんです。難しいな……。アイドル活動を始めてから、「自分を出せたな」と思ったことは一度もないんです。人の目を気にしてしまうからツイートの下書きもめちゃめちゃ溜まっちゃうんですよ、よくログアウトしちゃうし(笑)。「浜辺ゆりな」がすごい嫌いになっちゃうんですよ。一時期は「浜辺ゆりな嫌い」ってずっと言ってました(笑)。
──SNSなら、家に猫が2匹いるのは大きいですよ。
浜辺 : 本当ですか? じゃあちょっと上げてみます(笑)。
──今、ボイトレも多いと思うんですが、歌には自信を持ててきましたか?
浜辺 : 自信を持てなくても自信を持つように歌おうとしてて。ライヴ前に好きなアイドルさんのライヴ映像を見たりして自信を持つようにしてるんですけど、やっぱり自分のライヴ映像を見返すと、歌い方に「もっとここを工夫したらいいのに」とか思ったりするので、遊べるぐらいの歌唱力になりたいなと思います。
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幕張メッセや武道館に立つ自分を想像して気を楽にする
──そして、白キャンの新メンバーのオーディションと聞いたときはどう思いましたか?
浜辺 : 5人でやっていくって、ずっと勝手に思ってたんですよ。だから「えっ」と思って。しかも発表する2日前とかに言われて、もう変えれないじゃないですか(笑)。「入れる意味あるの?」みたいな。最初は(小野寺)梓ちゃん以外、全員反対だったんですよ。なんで新メンバーを入れるのか、メリットがあまりよくわからないなと思って。で、美桜ちゃんと青木さんと私で、その日に電話して。「白キャンを大きくするため」みたいな感じで、納得してきて。やっぱり新メンバーとして入った身から言うと、自分の実力がなさすぎて足を引っ張ってるだけだから、もっと強い子が欲しいです。
──いまはオーディションに納得できていますか?
浜辺 : うん、まあ。青木さんは折れない方じゃないですか(笑)。ちゃんと考えてるし。新メンバーを入れるメリットは何個もあったので。最初、私は新メンバーを入れることによって、ファンの人がついてこれなくなるんじゃないかと思っちゃったんですよ。(鈴木)えまちゃんと(麦田)ひかるちゃんが抜けて、私が入ってたことさえもまだ受け入れられてない人もちょこちょこいるのに、「またメンバー変わった」みたいなこと言われるのが……。対バンした後にTwitterを見るんですけど、「なんか新しい人いる」とか書かれてることもまだまだ多くて、そういうのを見ると、いまだにちょっと悲しいから……。
──メンタル的には今、大丈夫ですか?
浜辺 : いまは大丈夫なんですけど、ツイキャスで泣いたときは、自分が力になれてなさすぎて、自分がいちばんそれをわかっていたんです。「いなくなったほうがいいのかな」と思いました。今後も何も変わらないまま、自分ががんばっても「何も成長できてないな」って感じたら考えます。とりあえず今は全力でやりたいなと思います。
──浜辺さんは白キャンの末っ子的なポジションですが、新メンバーが入ってきたら末っ子ではいられないかもしれないですね。
浜辺 : そしたらお姉さんキャラにしようかな?(笑)なんか本当に末っ子みたいな感じでやってきちゃってるから。自分以外のメンバーはみんなすごい個性を持ってるなと思ってて、だから「自分はなにもない」って思っちゃうんですよね。
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──ちなみに浜辺さんから他のメンバーはどう見えていますか?
浜辺 : 梓ちゃんは、アイドルにママキャラなんて初めて聞いたんですよ。セクシーなところとか大人っぽいところとかもあるけど、中身はけっこう子供のところもあったり(笑)。(三浦)菜々子ちゃんは歌がすごくうまくて、もう完璧みたいに見えるけど、意外と中身は子供のところがあったり、アイスが大好きっていう偏食を持ってたり。(西野)千明ちゃんは、なんかもう存在自体が個性の塊だなって。一番うらやましいなっていつも思っているんです。美桜ちゃんは本当にしっかりしてて、もうどんなこと言っても返してくれる。特典会でもすごくて、そう考えると「自分は本当にダメだな」って思っちゃうんです。
──そんなことはないですよ。7月21日から7月25日には 5日間連続ライヴ〈Be the IDOL〉が開催されます。該当者なしの可能性もありますが、新メンバーが加入するとなったらどう感じると思いますか?
浜辺 : でも、いまは新メンバーに前向きになれて。いまのままだと本当に大きくなれるのかなっていう不安があるから、一緒にがんばりたいなって思います。
──白キャンとしてどこまで行きたいというイメージでしょうか?
浜辺 : 青木さんは幕張メッセのホールでやりたいと話してて、梓ちゃんは武道館でやりたいと言ってて。そこに行けるぐらいの規模になったら、自分の人生はすごいなって思います。周りの友達と比べると、自分は白キャンだけの生活じゃないですか。迷いが増えました。おうちにいる時間が増えて、レッスンだけで帰ってくると物足りなく感じてしまって。「人生は限られているのに、こんなに家にいていいのかな、なにかやりたい」って思っちゃいますね。だから、幕張メッセや武道館に憧れたり、そこに立つ自分を想像したりして、気を楽にするようにしてます。たくさんアイドルっているじゃないですか、そのなかでバーンって売れるかなって不安もあるけど、やるしかないなって思います。いままで飽き性で習い事も2年続かなかったんですけど、アイドルは好きな歴も長いし、ずっとやりたいなと思います。
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編集 : 西田健
LIVE INFORMATION
〈Be the IDOL〉
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2021年7月21日(水)東京都 TSUTAYA O-nest
2021年7月22日(木・祝)東京都 TSUTAYA O-crest
2021年7月23日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-WEST
2021年7月24日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
2021年7月25日(日)東京都 duo MUSIC EXCHANGE
PROFILE:真っ白なキャンバス
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2017年9月結成。2020年3月にキングレコードよりメジャーデビュー。以降、Zepp DiverCityでのワンマンライブや1st Major アルバム『共創』の発売などを行い、武道館や幕張イベントホールでのワンマンライブを目指し、活動中。
【公式HP】
https://shirokyan.com/
【公式Twitter】
https://twitter.com/info_shirokyan
【公式Instagram】
https://www.instagram.com/shirokyan_staff/