INTERVIEW
躍動し続ける魂と、それを祝福する花。ソウル・フラワー・ユニオンというバンド名は、何と彼らの音楽性と姿勢に合致している事だろう。彼らの新譜が出る度に、ライヴを観る度に、ここまで生命力にあふれた音楽は今までもこれから先ももう無いんじゃないかと思う。そして今回彼らがリリースする新譜『死ぬまで生きろ! 』は彼らが今までリリースした中でも最上級の人生賛歌だ。タイトルの言葉から発される熱からどんな熱いサウンド迫り来るのかと思いきや、軽快なカリビアン・ビートにテンポよく浮遊するメロディ。この熱の出所は意外にも体温ではなく、太陽の熱光線だったようだ。
25年の音楽人生の中で熱烈な支持を受けながら、歌って踊って、歌わせ躍らせ、自らの道を突き進んできたバンドの中心人物、中川敬。彼にとって音楽とは何か? なんて大きなテーマに1時間のインタビューで足りる訳もないが、この記事の中にその答えの片鱗ぐらいは垣間見えるはず。そしてそれは音楽活動のみならず生きる姿勢として、私達をゆさぶり起こす言葉なのだ。
インタビュー&文 : 水嶋美和
“勘違い”の中にこそ今の自分の強靭な土台になる要素がある
——『死ぬまで生きろ! 』って、今までにないぐらい直球で明快なタイトルですね。
今までがややこしいだけに(笑)まあ、“死ぬまで生きろ! ”っていうタイトルの曲が欲しかったんよ、前から。
——タイトルが先なんですね。この言葉はどこから出てきたんですか?
以前から、ラジオとかに出演して「それでは中川さん、リスナーの方に何かメッセージをお願いします」とか急に締めの言葉を振られたりすると、よく冗談で「死ぬまで生きろ! 中川敬でした! 」とか言っててね。
——歌詞の最初に出てくる“死亡率100%”って言葉にもびっくりしました。“死ぬまで生きろ! ”なのにいきなり(笑)。
ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザンのライヴで、メンバーのリクオが突然曲中に「人間の死亡率は100%やで! 」とか即興で歌って、即、インプットされた。インスピレーション・バイ・リクオやね。だから“死ぬまで生きろ! ”と“死亡率百%”の二つのキーワードは以前からあって、作りかけてる曲のテーマに重なっていった。今年の一月、ちょうどハイチ大震災が起こった頃で、ヘイシャン・ミュージックばっかり聴き漁ってた感覚も、曲調に入ってる。曲作りって、時間がかかるときもあるけど、これは書き始めてから歌詞も合わせて一、二時間で出来たから、早かったね。まあ“適当”とも言える(笑)。
——ええ! ? 明るい曲調の割に厳しい歌詞だとか、意味深な言葉が多いとか、曲を聴いていろいろ考えたんですが… 深読みでしたか(笑)。
当たり前のことばかり歌ってるような気もする(笑)。でもまあ、“勘違い”はウェルカム。俺も十代の頃からロックやらパンクやらいろいろ聴く中でたくさんの“勘違い”をしてきたんやろうけど、その“勘違い”の中にこそ今の自分の強靭な土台になる要素があったんじゃないかな。例えば、Twitter上なんかでも見掛ける岡本太郎とかゲバラとかの名言があったとしても、それは誰かが長文から一行だけを抜き出して、次に進むために自分に都合よく解釈して、その言葉に背中を押してもらおうとしてたりする。勝手に自分の武器にするっていう、いわば“勘違い”も表現文化の根幹にはあったりするから、俺は歌詞を細かく説明したりする気はないんよね。歌詞を書いている段階では確かに特定の個人が対象であったりもするけど、聴く人に届いた段階で、未知の個人紹介なんてする必要は無い。それぞれ聴く人が、自分に引きつけて、都合よく自分のモノにして欲しいよね。
——前作『アクア・ヴィテ』収録の忌野清志郎、マイケル・ジャクソンの追悼カヴァーに引き続き今作には浅川マキさんの<かもめ>が入っていますね。
浅川マキさんは以前にも、うつみようこボーカルで<ちっちゃな時から>をカヴァーしたことがあって(シングル集『満月の夕〜90ユsシングルズ』に収録)、三月のツアーで久々にやろうかっていう話をした時に、ミホちゃんが桃梨(ミホの別ユニット)で<かもめ>をカヴァーしてるって言うから、じゃあそっちで行こう! っていう風になった。感触も良かったし、ソウル・フラワー・ユニオンとしてのミホちゃんボーカル曲は今まで作品化してなかったということもあって、制作の最終段階に駆け込みでシングルに入れることにした。“追悼”がカヴァーをする機会になるっていうのは、ホンマ嫌やけど、あんたのことが好きやったんやで〜って具合にこういう形で盤に刻み込んでいくのもミュージシャン同士のリレーションシップやし、常にバトン渡されたみたいなところもあるわけやから、好きな人の好きな曲をカヴァーするぐらいのことはちゃんとやっておきたいんよね。
——このカヴァーをきっかけに浅川マキさんの曲をいくつか聴いてみたんですけど、どの曲もしばらく頭から離れませんね。
もちろん。いい映画を観た後の余韻のような世界を作る人やね。
——他にもライヴ音源が多く収録されていますが、全部で46分! アルバムの長さですよ!
俺もマスタリングの段階で驚いた。入れ過ぎ(笑)。いわゆるライヴ代表曲は“ライヴ盤”(『ハイタイド・アンド.ムーンライト・バッシュ』『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』)に入ってるから、それ以外のレア曲のライヴ録音をマキシ・シングルに入れようっていうのがここ数年のスタイル。この『死ぬまで生きろ! 』を出したら、次はフル・アルバムの予定やし、シングルはちょっと先になるから、今溜まってるものを全部吐き出しちゃえ! っていう。
曲を書くのも歌うのも、もう息をするのに近い
——ソウル・フラワー・モノノケ・サミット(阪神大震災時に結成されたソウル・フラワー・ユニオンの別動ユニット)の活動や前作『アクア・ヴィテ』のジャケットに祝島(島民による反対運動が30年間続いている原発建設予定地)の猫の写真を使ったことなどもあって社会的なイメージが強いバンドですが、確かに曲自体の中にはそういう発言やメッセージは無いんですよね。
まあ、あくまで他と比べればやけど、“社会的な現場”に入り込むバンドではあるし、“現場”での出会いを唄に刻もうともする。でも、だからこそ、教条的社会的メッセージ・ソングみたいなのは出てこないんよ。ただでさえリアリティのない安易な説教に満ちたこの世の中に、もういらんでしょ、そんなの(笑)。居酒屋のトイレに貼ってあるやん(笑)。常に“いい曲を書きたい”とか、“突き動かされたままに書く”とか、それがもう25年以上続いてるから、曲を書くのも歌うのも、もう息をするのに近いんよね。
——25年… 長いですね。言葉じゃなくて体現で、本当に音楽が人生なんですね。
いや、他にも才能あると思うんやけどねー… 俳優の話も来ないしな〜(笑)。
——来たら受けますか(笑)?
演技指導はいらない。脚本と監督もやらせてくれるのなら受ける(笑)。
——それはそれで面白い作品が出来そうなんですけど、興味は無いんですか?
映画監督ならやりたいよね。“琉球処分”の頃の沖縄や、日本国に組み込まれてしまう頃のアイヌ・モシリとかを題材にしたヒューマン・ドラマ…。でもそんなん、セット作るのに莫大な金がかかるやん!
——そうですね(笑)。
まあ、音楽で充分(笑)。
自分のナマの実感と、時を経た記憶のあいまいさが、なによりの財産
——それだけ長い活動を経た今でも、曲が書けない状態になることってありますか?
あるあるあるある。いいメロディが既にあっても、それが全く言葉を喚起してくれない時とか。そういう時は無理に書こうとはせず、暫くの間、干しておく。一、二年後にふとそのメロディを思い出したりする時にすらすらっと歌詞が出てきたり。不思議なことに、“今の気分なら書ける! ”っていう時がやって来るんよね。
——、二年も置いておくんですね。
そういう曲もある。今作の『死ぬまで生きろ! 』みたいに歌詞もメロディも同時に出てくるものもあれば、前作の『アクア・ヴィテ』なんてメロディが出来たのは十年前やからね。メロディにしても、ギター持ってようが、三線持ってようが、出てこない時はまったく出てこない。出てきた! と思ったら、どこかで聴いたことある誰かの曲や、自分の過去の曲に似たものであったり。そういう時は、諦めて、街にでも出た方がいい。
——例えば、どういう所に?
銭湯で出来た歌詞は結構多いよ。ジェットバスの中で手指がふやけるまで曲作りのことを考えてたり(笑)。例えば、導入部分のメロディだけは出来てるのに、その先の展開が浮かばなかったりする時は、市民プールに行って、ずっと考えながら2キロぐらい泳いだりして。ある瞬間“出来たー! ”って(笑)。
——水面から顔を上げると同時に(笑)。
俺にとって、曲作りって、簡単に言葉で説明出来るもんじゃないねんな。あらゆる手法があるし、どれが正しいとか、間違ってるとかいうのも無いし。道々に音楽は転がってるよ。
——人に会って、曲を作る?
まあ、簡単に言うと、そういうことやね。何かがあったらいちいちメモをとるというノリでも無いし、曲を書こうっていう段になるといろんなことを思い出す。自分のナマの実感と、時を経た記憶のあいまいさ。この二つが何よりもの財産やね。その才能があって良かった。ホモサピエンスで良かった(笑)。
——中川さんだけではなく、人間全体の。
うん、俺らには記憶ってやつがある。それと抽象概念を表現できる才能。俺らは数万年も前から壁画を描いたりしてたわけやから、これはすごい才能やね(笑)寂しくて、哀しくて、嬉しくて、楽しくて…、何かと抽象概念を形にしたがる動物やねんな(笑)。まあ俺の場合、死ぬまで、ヨボヨボになっても、ひたすら曲を書き続けるんやろうね。
DISCOGRAPHY
NEWS
そして、2010年7月14日(水)には、ソウル・フラワー・ユニオンの傑作ミュージック・ビデオ群のリリースが予定されています。引き続きソウル・フラワー・ユニオンを追い続けましょう!
LIVE SCHEDULE
「ダンスは機会均等!」ツアー
※Artist-Direct Shop 405にて、チケット先行販売実施中!
9月18日(土)<大阪>umeda AKASO
9月19日(日)<京都>磔磔
9月23日(木・祝)<横浜>F.A.D YOKOHAMA
9月25日(土)<東京>duo MUSIC EXCHANGE
ニュー・アルバム発売記念ツアー(タイトル未定)
※Artist-Direct Shop 405にて、チケット先行販売実施中!
12月4日(土)<名古屋>CLUB QUATTRO
12月5日(日)<大阪>BIG CAT
12月7日(火)<福岡>DRUM Be-1
12月11日(土)<東京>赤坂BLITZ
イベント
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZO
8月14日(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
DAISEN MONDO MUSIC FESTIVAL 10
8月22日(土)鳥取県境港市 夢みなと公園特設ステージ(入場無料)
ガガガSP 野外フェス「長田大行進曲」
9月25・26日(土・日)神戸六甲山カンツリーハウス内人工スキー場