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マイア・バルーとアート・リンゼイのセッションをDSDで!
レコーディング・スタジオでの一発録りをライヴとして公開し、DSDで収録した音源をDSDファイルのまま配信するというSound & Recording主宰のPremium Studio Live。第4回目となる今回は、ピエール・バルーを父に持つ、東京生まれパリ育ちのシンガー&マルチ・ミュージシャンのマイア・バルーと、アメリカ生まれブラジル育ちで、DNAやアンビシャス・ラヴァーズでの活動のほか、ソロとしてもギタリスト/コンポーザーとして活躍しているアート・リンゼイが登場。フル・オーケストラの収録も可能という広大な空間で、アートが繰り出すノイジーなギターと、マイアの声そしてフルートの息づかいが、粒子のようにきめの細かいサウンドとなって流れていきました。初共演で奏でられた、まったく新しい音楽を体験あれ。
マイア・バルー+アート・リンゼイ / ambia
1. Atè Quem Sabe / 2. 生きる [VIVRE] / 3. Reentry / 4. ポプリ1 / 5. Invoke / 6. Ma Bohème
>>DSDの聞き方はこちら
※DSDの聞き方は、本ページ『How to enjoy DSD?』と、ダウンロードしたファイルに同封されている資料「DSDの楽しみ方改訂4(PDF形式)」を参考にしてください。また、ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)ototoy.jpまでお問い合わせください。
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音単体の奥深さまでも伝わる
「誰々と誰々のセッションなんて絶対良いに決まってるじゃないか」なんて事を言う人がいるが、素晴らしくなることが保証されているセッションなどあり得ない。音楽を数字で表すなんて無粋なことかもしれないが、例えば100を持っているミュージシャンが2人集まったからといって必ずしも200になるとは限らない。フリー・ジャズ・ピアニストのスガダイローが「七番勝負」と銘打ち、7組のミュージシャンと行った即興セッションでは、呼吸を合わせるのではなく互いに睨みあい技を仕掛け合うことで100を10000、100000、計測不可能なほどにまで膨張させた。逆に、高田漣と中島ノブユキは二人とも十分な実績、演奏力を持つミュージシャンでありながら、その数字を0から1の間で揺らがせることで密な会話のような空間を作り出した。片方のミュージシャンがもう片方のミュージシャンを食う激しいセッションがあり、2人の関係を映し出すような和やかなセッションもある。何が起こるかわからないからこそのセッションなのだから、聴く前から絶対に良いなんて言いきるべきではない。それが例えマイア・バルーとアート・リンゼイのセッションだとしても。
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2011年6月10日、ロシア大使館近くにあるサウンド・シティA Studioで彼らのセッションが公開録音された。アーティストの細かな息遣いまで拾うDSDでの録音なので、見る側は息を飲むことにすら神経を使ってしまう。そんな緊張が張り詰めるスタジオの中で、2人は和気あいあいと笑いながら演奏を始める。フルート、エレアコ、パンデイロ(ブラジル風タンバリン)、拡声器やおもちゃなどを気の向くままに扱うマイア・バルー。そんな彼女を温かな目で見守りながら、時にギターでいたずらをしかけ、観客とマイアを惑わせるアート・リンゼイ。1曲目はマイアの持ち曲、「Ma Bohème」。チュール・ランボーの詩を基にしたと言うこの曲で、彼女は歌とも朗読ともつかぬ発声で、文節と文節の切れ間にフルートを吹く。アートはその音に寄り添うのか、マイアが築いた世界観に亀裂をもたらすのか、どちらともつかないギター・ノイズを鳴らす。
その後も互いの持ち曲を交互に3曲ずつ演奏する。アートがボーカルを取る「Reently」では、マイアがパンデイロでリズムを刻んだ。穏やかでありながら猟奇的な印象も与える声と、空間に緊張を走らせるノイズ。マイアは会場の中を歩きまわりながら、拡声器を使って声を出し、付属のボタンを押しサイレン音を鳴らした。ノイズというジャンルの音楽は盤になることで音が平面になり、狂気だけが浮き彫りにされた退屈な音源に仕上がることが度々あるが、このDSDで録音された音源からは、ライヴで感じた以上の臨場感を味わうことができる。続く「生きる[VIVRE]」では再びマイアがボーカルを取った。この曲の詞は彼女の父、ピエール・バル―によるもので、それを彼女が日本語にアレンジ。この曲を聴きながら、マイアの言葉選びと音楽センスの奥深さに全身全霊が刺激され、鳥肌が立ち、鼓動が速くなり、目に涙がにじんだ。恐らく私が聴いてきた中で最もプリミティヴな音楽だ。幼い頃から父に連れられ世界中を旅し、世界中の人と音楽に触れあい、培われた彼女の体験を追想させる。
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「Premium Studio Live」シリーズ前作の大野由美子+zAk+飴屋法水のセッション音源でも感じたことだが、高音質DSDで録音された音源は音楽をただ追うだけのものにはならない。声や音をはらんだ空気、その揺れから読みとれる情感の動き、その瞬間のミュージシャンたちの関係をそのまま閉じ込め、ライヴに訪れた人は再生ボタンを押すことによりその空間に何度でも戻ることができる。言うなれば音のタイム・カプセルだ。もちろん、その現場に行くことが出来なかった人がその場を追体験できるという画期的なツールでもある。録音方法というよりは、発明じゃないだろうか。この発明がしっかりと音楽文化に根付き、当たり前のものになればいい。そして多くのライヴをDSDで追体験したい。そう願ってやまない。(text by 水嶋美和)
Sound & Recording Archive
大野由美子+zAk+飴屋法水
存在感のある非楽音が、よどみない流れで音楽へと変貌する瞬間
1. scribe_i / 2. scribe_ii / 3. scribe_iii / 4. scribe_iv
坂本龍一 NHK session
5人のアーティストとのセッションを特典PDF付きで完全収録
1. improvisation inspired by Ornette Coleman (坂本龍一+大友良英) / 2. adaptation 02 - yors (坂本龍一+大谷能生) / 3. adaptation 03.1 - acrs 〜adaptation 03.2 thousand knives - acrs (坂本龍一+ASA-CHANG) / 4. adaptation 04 - nkrs (坂本龍一+菊地成孔) / 5. adaptation 05.1 - eyrs 〜 adaptation 05.2 ballet m_canique - eyrs (坂本龍一+やくしまるえつこ)
原田郁子+高木正勝
隣の家で演奏している感覚から紡がれていく音楽
1. TO NA RI - op.12 / 2. TO NA RI - op.14 / 3. TO NA RI - op.18 / 4. TO NA RI - op.20 / 5. TO NA RI - op.25 / 6. TO NA RI - op.26
大友良英+高田蓮
アンビエントなサステイン・サウンド、ノイズ、電子音… さまざまな音源によって繊細かつ濃厚に描かれたサウンドスケープ
1. 街の灯 / 2. It's Been A Long, Long Time / 3. 教訓1 / 4. At The Airport / 5. BOW
清水靖晃+渋谷慶一郎
バッハを下敷きにしてサックスとピアノとで空間を作り上げる
1. Kiwa / 2. フーガの技法 コントラプンクトゥス 第1番 / 3. パルティータ 第4番 アルマンド / 4. 無伴奏チェロ組曲 第2番 サラバンド / 5. Dolomiti Spring / 6. Samayoe Renga / 7. Ida / 8. Stardust