多彩な"名場面"の結晶――Alfred Beach Sandal、新境地を開拓したアルバムをリリース!

ロックやブラック・ミュージックの他にさまざまなジャンルの音楽を吸収し、独自の音楽センスでこれまでに唯一無二な作品を世の中へ送り出してきた北里彰久(Vo, Gt)によるソロ・ユニット、Alfred Beach Sandal(以下、ABS)。『Dead Montano』以降のお馴染みの岩見継吾(Wb)、光永渉(Dr)はもちろん、ビートメイカーのSTUTS、さらに、フルートの池田若菜(吉田ヨウヘイgroup)、トランペットの高橋三太(1983など)が参加したアルバム『Unknown Monument』をこのたびリリースした。これまでのABSにさらなるエッセンスが加わった今作をレヴューとともにお楽しみいただきたい。

Alfred Beach Sandal / Unknown Monument

【配信形態】
16bit/44.1kHz (ALAC / FLAC / WAV) / AAC / mp3

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 2,160円(税込)

【アルバム購入特典】
歌詞ブックレット(PDF)

【Track List】
01. 名場面
02. Supper Club
03. Cool Rununings
04. Dynamo Cycle
05. 祭りの季節
06. おもかげ
07. Fugue State (feat. 5lack)
08. Town Meeting (prod. by STUTS)
09. Honeymoon
10. Swallow

REVIEW : Alfred Beach Sandal

「歳をとるほどに自由になっていく」という言葉を漫画で読んだのは、まだ高校生の時だったか。しかしいざ30の歳になってみれば、なんと制約の多いこと。そんな制約らに追われているうちに感覚は着実に年老いていく。自由で在り続けるのは難しいし、自由になっていくのはもっと難しく、冒頭の言葉なんて漫画ごと忘れていた。思い出したのは、Alfred Beach Sandal(以下、ABS)の新作『Unknown Monument』を聴いたから。

2010年に発表された自主制作CDR『Alfred Beach Sandal』は弾き語りのみで構成され、「エイブラハムの髭占い」「中国のシャンプー」など曲名だけで異国情緒が匂い立つ作品になっていた。2011年に発表された『One Day Calypso』はそれらの楽曲を軸に、多彩なゲスト・ミュージシャンを迎え、変拍子ドラムやスティール・パン、ホーンが踊り回る、即興セッションの一夜を切り取ったような作品だった。その後、2013年に発表された『DEAD MONTANO』ではそれまで彼の楽曲の中心を流れていた「異国情緒」というモチーフが薄まり、その代わりか、夏の景色が歌詞に度々映り込んでいたように思う。即興的なアレンジも減り、バンドの音になったという印象。この変化を経て次はどう来るのかと思っていたら、本作ではモチーフとなるものは見当たらず、今までになくジャンルに富んだ内容に仕上がっていた。

最初期から持ち味としてきた胸ににじむような弾き語りもあれば、混沌と爽やかさが駆け抜ける独特のポップ・ソングも健在。目新しき点は、先行シングル『Honeymoon』が予告していた通り、ファンクやR&B、HIP HOPなどブラック・ミュージックの要素が濃い楽曲が多々あること。以前ABSこと北里彰久にインタヴューした際、それまでは飄々としていた彼が、ブラック・ミュージックの話題になると熱くなって語ってくれたことを覚えている。しかし、それだけ好きなのになぜようやく今になって、その憧れを前面に出した曲を作ろうと思ったのだろう。やはり、メンバーとの出会いが大きかったのではないだろうか。

「その都度編成のことなるフリーフォームなソロ・ユニット」を名乗っていたABSだが、前作『DEAD MONTANO』からは岩見継吾(Ba)と光永渉(Dr)とのトリオ編成を軸に活動し始め、本作もこのメンバーを中心に制作されている。岩見はロック・バンド、ミドリのイメージが強いが、学生時代からジャズ・クラブで演奏するほどの根っからのジャズ・ミュージシャン。光永はファンクやジャズ、ソウルに乗せたラップが印象的なバンド、チムニィのドラマーであり、ブラック・ミュージックをシティ・ポップに昇華させたceroの名盤『Obscure Ride』にもサポートで参加している。つまり、ABSは今ブラック・ミュージックをやるに最良のメンバーを得ているという事。3人用のリズムが成熟したところで、満を持してかつてからの憧れに正面きって挑戦したのが本作なのではないだろうか。それはゲストにラッパーの5lack、ビート・メーカーのSTUTSを迎えていることからも窺える。それらの音を、熱を、包括して作品に落とし込んだのは、これまでFISHMANSやUAなど数多くの名盤を世に送り出してきたレコーディング・エンジニア、zAk。豪華、かつ意外すぎる面々を率い、北里は憧れを自らの音楽に取り込む。

なんて、聴けばそんな肩肘張った作品でもないのだけれど。冒頭の言葉にあるように、彼は音楽家として歳をとるほどにテーマを手放し自由になっていくので、次どこに向かうかは読めない。でも私が勝手にこの作品にひとつテーマを見つけるならば、1曲目の名前そのまま「名場面」。彼の書く詞は映画的な面があるので、この一言で多彩なジャンルも一作品としてまとまりだす。そんな風にABSを好きに解釈して楽しんでいるうちは、実は私もうまく歳をとって自由な大人で居られているような気がしなくもない。(text by 水嶋美和)

過去作はこちら

【過去特集】
『Alfred Beach Sandal』配信&レヴュー
『One Day Calypso』配信&インタヴュー
『DEAD MONTANO』配信&レヴュー

LIVE INFORMATION

Alfred Beach Sandal『Unknown Moments』発売記念 ミニライヴ&サイン会
2015年9月3日(木)@タワーレコード難波店 5Fイベントスペース

Unknown Tour
2015年9月4日(金)@岡山 YEBISU YA PRO
w/ トクマルシューゴ

2015年9月5日(土)@福岡UTERO
w/ NONCHELEEE

2015年9月6日(日)@京都磔磔
w/ 白い汽笛セクステット

2015年9月12日(土)@札幌Duce Sapporo
w/ 柴田聡子

2015年9月13日(日)@仙台FLYING SON
w/ ミツメ

2015年9月26日(土)@名古屋TOKUZO(※ワンマン)
2015年9月27日(日)@大阪Shangri-La(※ワンマン)
2015年10月4日(日)@東京代官山UNIT(※ワンマン)

PROFILE

Alfred Beach Sandal

2009年に北里彰久(Vo, Gt)のフリー・フォームなソロ・ユニットとして活動開始。ロックやラテン、ブラック・ミュージックなど、雑多なジャンルをデタラメにコラージュした上に無理矢理ABS印のシールを貼りつけたような唯一無二の音楽性で、真面目に暮らしている。2013年のアルバム『Dead Montano』以降は、岩見継吾(Wb)、光永渉(Dr)とのトリオ編成を軸として、美学をつきつめ中。

>>Alfred Beach Sandal Official HP

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インタヴュー

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筆者について
水嶋 美和 (bobbiiiiie)

酒と音楽と漫画と映画とお笑いに囲まれながら、何かしらとにかく書き続ければと思います。

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