京都発インスト・バンドDrakskipの、3rd Albumが登場!
北欧の民俗音楽を軸に、独自のアレンジを凝らした伝統曲やオリジナル・ソングを奏でるインストゥルメンタル・バンド、Drakskip(ドレイクスキップ)。この取材の話を受けて彼らのことを調べる中、2011年4月に表参道の路地裏で突如始まったストリート・ライヴのことを思い出していた。と思ったら、まさかの本人たちだった。なぜ1年前に一度見たきりの彼らのことを鮮明に憶えていたかというと、まずは鍵盤とバイオリンが合体したような謎の楽器だったり、12弦のギターだったり、ドラム・セットに見たことのない打楽器がたくさん付いていたりと、とにかく楽器が変わっていたから。また、老若男女問わず多くの人が路上で鳴る音楽に足を止める光景を、それまであまり見たことがなかったから。そして、人が多く忙しない表参道を、異国情緒ある街並みへと瞬く間に変えたから。
そんなDrakskipだが海外での演奏経験はまだなく、来たる7月にスウェーデンで行われる音楽フェス「Eileens Folkfest 2012」への出演が初となる。「ターニング・ポイントになる可能性が高い」と早くも予想する彼らがとった行動は、憧れの地から刺激を受ける前の今の自分たちを切り取り、作品として記録しておくこと。そうして生まれたのが本作『それでも舵をとる-Steeling Through The Storm-』だ。Drakskipは何を経て、それでも、どこへ向かって舵をとろうというのか。バンド結成から今、そしてこれからの話を聞かせてもらった。
インタビュー & 文 : 水嶋美和
>>>「それでも舵を取る」のフリー・ダウンロードはこちらから(4/29〜5/7)
Drakskip / それでも舵を取る –Steering Through The Storm-
スウェーデンの伝統楽器ニッケルハルパ、フィドル、5弦ヴィオラ、12弦ギター、世界のパーカッションという編成で独自のサウンドを追求し、演奏活動を続けているDrakskip。2011年9月には、結成5周年記念ライヴを京都会館第二ホールで行い、大成功を収めた。国内のみならず海外での活動も期待されるDrakskip待望の3rdアルバムは、メンバーによる書き下ろし全10曲で構成。海外の活動も強く視野に入れており、ジャケットは日本語と英語でデザインされている。
【価格】
MP3 : アルバム1800円(まとめ購入のみ)
WAV : アルバム2000円(まとめ購入のみ)
【Track List】
01. 太陽を牽く馬 - Arvak & Alsvid (Y.Noma)
—北欧の空で、ひたすら太陽を牽くような前へ向き続けるエネルギー。旧い友人へ。
02. それでも舵を取る - Steering Through The Storm (S.Enomoto & Y.Noma)
—その答えに辿り着く。
03. 車輪 - Rolling Rundle (Y.Urakawa)
—寄り道とまわり道、楽しげな跡をたどる。
04. 七拍子の太鼓 - Seven For The Drummer (Y.Noma)
—人が初めて作り出した楽器は、太鼓である。
05.見世物小屋は大忙し - Raising Canvas (Y.Noma)
—楽しそうに働く人たちの姿は、とてもきれいな光景だった。
06. おじいさんの揺り椅子 - Grandpa’s Rocking Chair (S.Enomoto)
—やわらかな光のさす昼下がり、まどろみの間に過ごした時が去来する。
07. 銀杏の葉の落ちる頃 - Fallen Fans (Y.Watanabe)
—まっすぐのびる並木道を、ただ走っていれた。
08. 新月 - New Moon(Y.Noma)
—始まりの月の日、太古の人は何を見ていたのだろう?
09. そよぐ街 - Gentle Wind (Y.Noma)
—父から聞いた海の向こうの街には、やさしい風と時間がある。
10. 満ち潮/ブルーモーメント - Blue Moment (Y.Noma)
a・d.満ち潮「Flood Tide」 寄せては返す波の中、生命が満ちる時間は毎日やってくる。
b.引き潮ー「Renewal」作り上げたものを壊す力が、新たに作り出す。
c.ブルーモーメント「Blue Moment」夜明け前の一瞬、青に染まる空。ある日見上げた空には、予感に満ちた青があった。
Drakskip INTERVIEW
——スウェーデンの伝統音楽ってそれほど一般的なジャンルではないと思うのですが、メンバーはどのように集まったんですか?
野間友貴(5弦ヴィオラ / 以下、野間) : 元々は僕が北欧の音楽をやりたくて、一人ずつメンバーを集めて行きました。
——なぜ、北欧?
野間 : 3歳の時にバイオリンを習い始めて、大学ではオーケストラに入ったんですけど、もっと少人数のバンド形態で出来る音楽をやりたくて、どんな音楽なら出来るのか色々聴きながら探す中で、スウェーデンのVäsen(ベーセン)というバンドを知ったんです。CDを聴いて、映像特典も見て、音楽的に複雑なのにすごく楽しそうで、こういう音楽をやりたいなと。
——プロフィールを見ると、野間さんは一度京都産業大学に入られてから中退して、名古屋の音大に通い直しているんですね。その時の心境とは?
野間 : 元々、大学入学時は美術をやりたくて、フランスの大学に行こうとしていたんです。でもいきなり留学するのは周りに止められて、だから最初の大学ではフランス語を専攻してたんですよね。でも、それと同時に色んな国に行きたい欲求もあって、音楽があれば色んな国の人とコミュニケーションをとれると思ったので、そのタイミングで立命館大学の「出前ちんどん」という多国籍音楽サークルに出入りし始めました。目の前には音楽と美術の2本の道があったんだけど、段々どちらかをとらないと、どちらもものにならないなと思い始め、音楽を選び、大学を辞めて。
——Drakskipのメンバーはどのように集まっていったんですか?
野間 : ギターに上物が乗っていればひとつ形になると思ったので、まずはギターが欲しかった。で、京産時代のオーケストラにチェロで参加していた浦川(裕介)に声をかけて、彼も後でここに来ると思うんですけど。次に「出前ちんどん」に後輩で入ってきたパーカッションのナベ(渡辺庸介)にスウェーデンの音楽を聴かせて。
——渡辺さんはスウェーデンの音楽を聞いて、どう思いました?
渡辺庸介(パーカッション / 以下、渡辺) : 最初、興味があったかというと… そんなになかったんですよ。旋律がきれいだとか、こういう雰囲気が好きだとかは特になく、でも複雑なリズムが今まで耳に馴染みがなくて、かっこよく聴こえました。
——で、参加を決めた。
野間 : いや、遊んでたらいつのまにか、みたいな(笑)。
渡辺 : うん、流れですね。学生のノリでやってて、やっていくうちに徐々に惹かれていきました。
あれよあれよという間にこんなところまで(榎本)
——プロフィールによると、渡辺さんは鼓童(和太鼓集団)に衝撃を受けて打楽器を始めたとのことでしたが、最初は同じ伝統音楽でも日本の方だったんですね。
渡辺 : いや、野間と最初にセッションをした時もジャンベ(西アフリカの太鼓)だったし、和太鼓もやってはいたけど、要は打楽器が好きだったんですよ。家でも風呂桶を叩いたり机叩いたり、リズムを刻むのが好きだった。だから今も色んな国のパーカッションを叩いていますけど、自然な流れですね。
——で、最後に入ったのがニッケルハルパとフィドルの榎本翔太さん。8~14歳はスコットランドで暮らしていたんですね。
野間 : 彼も僕と同じでクラシックから入っていて、同志社ではジャズの部活に入ってたみたいなんですけど、当時組んでいたバンドが解散してしまったらしく。サークルの先輩が「バイオリンが一人で淋しそうにしてる」って言って連れて来て、ちょうどDrakskipもフロントが抜けたところだったので、「興味ある? 」って聞いてみて。
(榎本、登場)
榎本翔太(ニッケルハルパ、フィドル / 以下、榎本) : 遅れてすいません!
——今ちょうど、榎本さんが加入した頃の話を聞いていたところです。
榎本 : 僕がヘッドハンティングされた話ですか!
野間 : その時、バンドなかったやろ(笑)。
——(笑)。で、榎本さんが加入して、その頃はまだバイオリンですよね。ニッケルハルパを始めたのはいつ頃?
榎本 : 2年前ぐらいですね。そこから触り始めて遊んでいるうちに彼(野間)がどんどん曲をもってきて、無茶ぶりしてくるようになって、否応なくレパートリーが増えていきました。
——ニッケルハルパを入れようと言ったのは、野間さん?
野間 : うーん、どうだろう。
榎本 : 野間だねえ。
野間 : はっきり言ってそうですね(笑)。「弾いてよ! 弾いてよ! 」って。
榎本 : すごい褒め上手で、僕が弾くと「弾けるじゃーん! 」って言ってくれて(笑)、乗せられるんですよねえ。全般的に彼がみんなに楽器を持たせていると言っても過言じゃないですよ。
——誘われた時の気持ちは憶えてますか?
榎本 : まだみんな大学生だったので、学生の間に楽しくやるバンドなのかなーと思ってやっていたら、あれよあれよという間にこんなところまで。
——野間さん以外、みなさん始まりは何となくなんですね(笑)。
榎本 : そうですね。北欧音楽に運命を感じて「夢、どーん! 」って訳でもなく。
——やはり、北欧の音楽を日常的に聴かない者としては、「北欧」でひと括りに考えちゃうんですよね。でもDrakskipは北欧の中でも、スウェーデンの民俗楽器であるニッケルハルパを取り入れるなど、特にスウェーデンを前面に出している。他の国ではなくスウェーデンである理由は何でしょう?
野間 : 踊りが違うんですよ。ポルスカという三拍子のリズムがあるんだけど、3で割り切れなかったり、不思議なバリエーションがあったり、それに可能性を感じたんですよね。あと、音楽の作り方が日本のポップスと違って複雑なんです。
(浦川、登場)
浦川裕介(12弦ギター / 以下、浦川) : 遅れてすいません。あ、どうぞ続けてください。
——よろしくお願いします! では、遠慮なく。みなさん、日本のポップスは聴きますか?
榎本 : パフューム、大好きです!
渡辺 : 高校の頃は洋楽ロックを聞いていました。みんな音楽のバック・グラウンドはそれぞれなんですけど、彼(野間)は気持ち悪いですよ。先日「野間のipodちょっと見たろー」と思って勝手に見たら、何十ギガという音楽が入っているにも関わらず8割9割わからないんですよ。しかも、英語じゃない特殊文字がいっぱいあって、全然楽しめませんでした。
——(笑)。野間さんはクラシックと民俗音楽の間にポップスは挟まないんですか?
野間 : 小学校の頃、流行っている歌があるってことすら知らなかったんですよ。
——でも、クラスの会話で出てきますよね。
野間 : 何の単語かわからなくて、「スピッツ… ビーズ? 」って感じでした。高校に入って友達とカラオケに行くようになって、歌える曲がなくてようやくCDレンタル・ショップに行って勉強しました。
ギリギリ生きてるって感じです(笑)。(野間)
——浦川さんはどうですか? ギターを触り始めたきっかけは?
浦川 : ギターは家に転がっていたので何となく弾き始めたんですけど、中学の頃でしたかね。友達にゆずを聴かされて、コピーして歌ったりしてました。高校ぐらいまではポップスも聴いてましたよ。
——でも、大学の部活ではチェロだったんですよね。
浦川 : 無性にチェロが弾きたくなって。で、彼(野間)に京都の鴨川に「ギター持って来い」って呼びだされて、MDウォークマンに入っているスウェーデンの音楽を聴かされて、弾けって言われたから弾いてみたら意外と面白い音楽だなと。
——野間さんの布教っぷりがすごいですね(笑)。でも、同じギターでもDrakskipでは12弦ありますよね。どう違うんですか?
浦川 : 6弦のギターよりぼんやりとした、広がる音ですね。よくあるポップスとは違うチューニングにしていて、それで鳴らすとメジャーかマイナーかわからない独特な音が出るんですよ。Väsenもそういうチューニングをしていて、最初は6弦で練習してたんだけどやっぱりそういう音は鳴らず、彼らを真似て12弦を買いました。
——どれも珍しい楽器なので、それぞれ楽器の説明をしてもらえますか? 12弦ギターに続いて、次はニッケルハルパから。ちょうど1年前ぐらいに表参道でストリート・ライヴをされていましたよね? 実は、それを偶然見ていて、やっぱり一番最初に気になったのがニッケルハルパだったんです。どういう音なんだろうって。
榎本 : 弦は全部で16本張ってあって、そのうち弾くのは4本の弦で、残り12本は共鳴するためにある弦なんです。だからどの弦を弾いてもどこかの弦が振動してくれて、どこで弾いても教会やコンサート・ホールで弾いているような響きが出てくれるんですね。あと、目立つ!
野間 : 目立ちますねえ。
——ねえ。榎本さんはニッケルハルパ以外にフィドルも担当されていますが、バイオリンとはどう違うんですか?
榎本 : 楽器自体は全く同じで、弾く音楽によって呼び名が変わるんです。
野間 : あだ名みたいなものだよね。クラシックで使わなければフィドル、ぐらいの。あとは本人の好み次第。
——なるほど。野間さんはヴィオラ担当なんですね。3歳から続けていたバイオリンではなく。
野間 : 音大に入るタイミングでヴィオラに持ち変えたんです。
——これも5弦バロック・ヴィオラというまた変わった感じのヴィオラですが、普通のヴィオラとはどう違うんですか?
野間 : 昔の楽器って音量よりも響きを重視して作られていて、現代のクラシックで使われているヴィオラよりも丸くてふわっとした音が出るんですよね。ヴィオラって伴奏楽器だから、無くても成立するんですよ。でもスパイスを加えたり、音の間を豊かにできて、そういう所に惹かれたんですよね。
——渡辺さんは、パーカッションといえどかなり種類が豊富なので、一つ一つの説明はできないですよね。
渡辺 : そうですねえ。でも僕みたいなパーカッションの組み方をしている人は日本では特に珍しいみたいです。やはりスウェーデンの音楽自体がすごい特殊で、ドラムのようにリズムを刻むのではなく、メロディーに合わせてパーカッションを歌わせるように叩く人が多い。僕もそういうのを真似るために、日本ではあまり使われない楽器を独自の方法で使っています。
——例えば?
渡辺 : バウロンですね。手に持って演奏するのがトラディッショナルな使い方なんですけど、僕はスネア・スタンドに置いて、インドのタブラと同じ奏法で音程を変えながら叩いてるんですよ。あとは特に国籍に関わらず、楽器じゃなくて音が鳴るものであれば何でも、曲に合うものを並べて叩きます。ホームセンターで売っている種を袋ごと叩いてみたり。
——種! 音を探しながら聴くのも楽しそうですね。みなさん、ファースト・アルバムをリリースされた時はまだ学生だったんですよね?
野間 : はい、ギリギリ。
——ということは、今おいくつですか?
野間 : ナベが25歳で、エモ(榎本)は26歳、僕と浦川は27歳ですね。
——当時は学業と並行しつつ音楽をやっていたと思うんですけど、今はどうしてるんでしょう。音楽以外の仕事ってされてますか?
榎本 : 完全に、これしかやってないですね。
——そっか、ライヴも年間150本とくれば、他のことをする時間はないですよね。とはいえ、音楽だけで生活していける人が減ってきている中で、大変なのでは?
野間 : ギリギリ生きてるって感じです(笑)。
——気になったんですけど、こういう音楽って譜面ありきで演奏されているんでしょうか。
野間 : 最近でこそ譜面を書いて渡すこともあるけど、演奏中は見ないし、作曲中も実際に弾いてイメージを伝えたりするから、結局は資料として残るだけですね。演奏する度に変わっていくし、本作に収録されている演奏と同じものを今鳴らせるかというと、すごく怪しい。
日本の中だけに収まりたくない(渡辺)
——本作はオリジナル曲だけで構成されていますが、ファースト、セカンドには北欧の伝統音楽のアレンジも収録されていましたよね。伝統音楽を忠実に守るか、崩していくか、どちらの姿勢で演奏されていますか?
野間 : 最初から崩していく姿勢ですね。やっぱり日本にいて、現地の人の演奏をそのままやるというのはちょっと違うかな。というか、無理かなと。伝統音楽から吸収できるものはものすごいあるんだけど、それも結局、外から見たものでしかないので。
——じゃあ、スウェーデンのミュージシャンがDrakskipの音楽を聴くと、意外と耳馴染みのない音楽に聴こえるんですかね?
渡辺 : 共演した時は「グッド」って言ってくれるけどね。
野間 : 社交辞令もあるだろうし…。どうですか? 一番英語の出来る人。
榎本 : けなされたことはないけど、来日してるアーティストが日本のアーティストに対して文句を言うことはほとんどないだろうしね。それこそ、今年の7月にスウェーデンのフェスで演奏してアウェイの立場になった時に、本当の反応を確かめられるだろうね。
——「Eileens Folkfest 2012」はどういうミュージシャンが集まるフェスなんですか?
野間 : スウェーデンのフォークが中心で、僕らが憧れている音楽がたくさん鳴っているフェスです。
——じゃあ、Drakskipの音楽とも、色味的には同じなんですね。
野間 : はい。逆に試されると思う。
——Drakskipの曲にはどれも短いコメントのようなものが付いていますが、これを考えているのは?
野間 : 最終的には、僕です。
——これ、すごいロマンチックだなと。曲のストーリーが言葉によって膨らみました。
野間 : Väsenのブックレットにも似たような言葉が添えられているんです。僕も美術を志していた頃、3分ぐらいの短編映画を撮ってたんですよ。短くて詩的なものが好きで、Väsenのそれを読んでいいなあと。これを読んで曲の色が変わって聴こえてくれれば嬉しいですね。
——ちょっと個人的なイメージではあるんですけど、NHKでごくたまに、外国の風景映像とその国の伝統音楽がひたすら流れていて、短い説明だけが入っている番組を見かけるんですけど、それに人と人とのドラマ性を加えたみたいで、これを読んで一気に曲とイメージが紐づいた感じがしました.
浦川 : 歌詞がないんでね。イメージを音楽とタイトルとそういう短い言葉でしか伝えられないから、それが強みでもあり弱みでもあり、どう活かすかが大事ですよね。
——インストであるがゆえに、使える言葉が少ないことに対して、不安や欲求はありますか?
浦川 : 例えば、ボーカルを入れたりとか?
——一番わかりやすい方法で言えば。
浦川 : 歌があるといいのにって、周りからは言われますけどね。歌詞がある方が残りやすいし。でも、曲に言葉を乗せたいとは特に思いませんね。
野間 : 言葉を添えているんだけど、本当は言葉を使わずに伝えられることを大事にしたい。言葉ってフィルターになってしまうから、ぼやっとした繊細な部分を切り取って一色にしてしまう気がする。だから僕らに力があれば、言葉に頼る必要はなくなると思います。
——新作『それでも舵を取る』のタイトルについてはどうですか? この一言だけで過去と現在と未来を表せている、強い意志を持った言葉だと感じました。
渡辺 : 2011年9月10日に京都会館で自分たちでコンサートを企画したんですけど、「オープニングにドンっとインパクトのある曲をやりたい」と僕が言いだして、出来たのが本作2曲目の「それでも舵を取る」なんですよ。このコンサートは僕らにとってはかなり大きなチャレンジで、でもそこがゴールではなく、今後もさらに先に進んでいきたいという気持ちがすごくあって、それを表現しようとした結果がこの言葉になったのかと。
野間 : 北欧へ行くことについても話し合ってた時期だったしね。「行くなら今だろ」って。あと、Drakskipって北欧の船をイメージして付けた名前なんですよ。船や海を意識していて、そういうイメージとも結び付いたいい言葉を探していた。あと、「それでも」っていうところは、このアルバムは本当に急遽作ったアルバムなので、「時間はない、それでも今作る! 」という気持ちもあり。アルバムを作るのが決まったのは、今年の1月なんですよ。
——えっ、じゃあ3カ月ぐらい!? なぜそんなに急いだんですか?
野間 : スウェーデンに行って、すごいたくさんのことを学んで帰ってくると思うんです。でも行って学んでしまったら今持っていくものが少なからず抜けていくことになると思うので、今、自分たちが日本で作ってきたオリジナリティーを、先にこうして作品に残しておこうかと。
——スウェーデンに向けて、すごい気合いですね。
渡辺 : 僕らの長年の目標であり、世界進出のための足がかりにもなると思うんですよ。日本の中だけに収まりたくないし、北欧だけじゃなく、他のヨーロッパなりアメリカなりどこでも、世界各国で演奏して回れるようになりたい。
野間 : それもあるし、本場に行って自分たちが憧れてきた音楽がどういうものなのかを見直して、学んで、自分たちの力を付け直して、それからその先の色んなことを考えたいですね。向こうに行って帰って見えてくるものが多いと思うので、今の段階では決められないことがたくさんある。でも、世界に音楽を発信したいという気持ちは基本的な姿勢として組み込まれているので、今はとにかくそこに向かって走り抜けます。そのために無理なペースで作品を作った訳ですし(笑)。北欧でこれを色んな人に聴いてもらって、またよりよいものを作れるようになって帰ってきます。
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LIVE SCHEDULE
3rdアルバム発売記念全国ツアー「それでも舵を取れ!」
2012年4月24日(火)@京都 磔磔
2012年5月5日(土)@大阪 HEP HALL w / ザッハトルテ
2012年6月1日(金)@大阪 アナザードリーム w / ヨーラン・モンソン from Sweden
2012年6月2日(土)@名古屋 カフェDufi
2012年6月9日(土)@東京 スターパインズカフェ
2012年6月16日(土)@三重 サライ w / ロリグ、カンラン
2012年6月23日(土)@北海道 全久寺 法輪閣ホール
2012年6月29日(金)@神戸 cafe Fish!
2012年6月30日(土)@京都 誓願寺 ツアーファイナル「 Drakskip×誓願寺 出航祈願ライブ」
Drakskip PROFILE
榎本翔太 : Nyckelharpa、Fiddle
野間友貴 : Viola、5strings Viola
浦川裕介 : 12strings Guitar
渡辺庸介 : Percussion
「うねり、戯れ、疾走する」京都発、新世代ユニバーサル・インスト・バンドDrakskip。Drakskipの音楽は北欧を中心に世界中の音楽を取り込んで、そのサウンドは躍動的、前衛的でありながらもどこか懐かしい。 北欧の伝統楽器ニッケルハルパ・5弦ヴィオラ・12弦ギター・パーカッションといった珍しい組み合わせで、4人とは思えない壮大なスケールの音楽を紡ぎだす。海外著名アーティストとも共演多数、年間ライヴ本数は150本を越え、圧倒的なライヴ体験は土地や世代を超えて様々な人の共感を得ている。