6/26 Shimokitazawa Indie Fanclub 2011
去る2011年6月26日、下北沢は音楽好きの若者であふれ返った。そして男女ともにボーダー・シャツ、眼鏡率が異様に高かった。この日はShimokitazawa Indie Fanclub。総勢100組以上のアーティストが下北沢のライヴ・ハウス、カフェ、レコ―ド屋など15カ所のスペースで演奏した。昨年はあっという間にチケットが売り切れてしまい、涙をのんだ。当日券目当てで下北沢へ行ったものの、もう一度涙をのむはめとなった。楽しそうに回遊するボーダー眼鏡男女を横目に王将を食べて帰った。「下北なんぞ二度と来るか! 」そう誓ったものの、今年も出演者の豪華さに目が眩み、気が付けばShimokitazawa Indie Fanclub 2011のチケットを手に握り、代わりに財布からは4500円が消えていた。100組以上のうち、私が見れたのは10組。個人的な趣味や目線ではございますが、ここに思い出を記させて頂きます。
まずは12時半からCLUB251にてyounGSounds。体力温存のために後ろの方で大人な楽しみ方をしようと思ったものの、不可能。始まった瞬間に拳を振り上げてステージ前方の男たちの混沌に飛び込む。一番最初にyounGSoundsは、ずるい、せこい、かっこいい。背骨、蹴られる、痛い。踊らないやつは殴られるという危機感あふれるモッシュ・ゾーンで全力を使い果たしてしまう前に何とか脱出。13時からのMaNHATTANの会場へ向かう。
勘違いして440に入ろうとしたところ、「そこは会場ではない」との突っ込みを受けてBASEMENT BARに移動。エンターテインメント・ビッグ・バンドとしての印象が濃い赤犬と、スカ・バンドとして他のバンドと一線を画す人気を誇っていたThe Miceteeth。この大阪出身の2バンドのメンバーが集まり結成されたバンドがMaNHATTAN。しかし想像以上のスタイリッシュさに驚いた。バンド名にふさわしく、都会的なサウンド。でも冷たく尖った音ではなく、ピアノの音に人肌ほどの温もりがあり、心地よい。また見に来よう。
さあ、次はシャムキャッツだ! とSHELTERへ向かう途中、友人に「あれ? さっき終わったよ」と告げられる。ちくしょーと叫ぶと急に腹が減ったので、とりあえずは昼食。そして15時、二階堂和美を見にCLUB QUEへ。しかしまさかの入場規制。ならばしかたあるまいとタイム・テーブルを開くと、なんと風知空知でyukaDがちょうど今弾き語りをしているじゃないか! yukaDは既に解散してしまったostooandellの女性ギター・ボーカル。彼女は沖縄から上京し再び沖縄に戻ったという経緯をもち、以前のインタビューで「もう一度東京に出たい」と話していた。その半年後、実際に上京し、今では一人でSSWとして活動している。伸びがある訳ではないけれど一音一音を丁寧に並べる声と華奢な体と意志の強い目が相変わらずとても素敵だった。
すさんだ気分も晴れ渡り、15時半からの奇妙礼太郎トラベルスイング楽団を見に行く。全会場の中で最もキャパが広いGARDENがあっという間に人で埋め尽くされた。前に大阪で見た時は銭湯の脱衣所でライヴしていたのに… 。どうやら彼のライヴは地元・大阪と東京で盛り上がり方が違うようで、大阪のファンは見守るように、東京のファンは気分を高揚させてくれるのを期待しながら、彼を見つめている。もちろん当の本人はそんな事気にもせず、この日ものらりくらりと気ままにふるまっていた。その振る舞いは大きい会場ととても似合っていた。
そして途中で抜け、チッツを屋根裏に見に行く。昭和歌謡の香りを漂わせつつも、歌えば歌うほど傷ついていく危うさも持っている。そして見ている者はその姿に強く引き付けられる。引き付けられつつも、やはりどうしても見たいショピンのためにmona recordsへ移動する。超満員でバンドの姿はほとんど見えず「音声のみでお楽しみください」状態。ボーカルの野々歩が「ズンバ」の演奏前にその振付をレクチャーしてくれたが、長いし難しい。「いやこれ覚えられないすよ」と思ったら曲が始まり、しかもテンポが速い! 客席がいっせいにわたわたし始め、前後左右の人に腕がぶつかって笑いながら謝り合う。この一期一会のささやかな交流こそが彼らの企みなのかもしれない。
そしてOORUTAICHIを見るべくCLUB QUEへ移動。こっそり隠し持っていた韓国のりをパリパリと食べつつ彼の登場を待った。毎回素晴らしいステージを見せてくれる彼だが、今回もいつものように良かった。でも欲を言えば、やはり彼のライヴは深夜もしくは明け方の、こちらのバリアーが薄い時間帯に見たい。あの宇宙と隣り合わせで踊っている感覚。なので、次はオールナイトのイベントを狙っていきたいところ。
ぎゅうぎゅうのGARDENに体をねじり込み、COOL WISE MANを見る。ちょうどゲストにカコイミクが登場したところ。存在は知っていたけれど、こんなにキュートでソウルフルな歌い手だったとは。そのままハンバートハンバートの登場まで待とうかと思いつつも、バンバンバザールだけは何としても最初から最後まで見たいと思い再びmona recordsへ。会場の人々は床に座り今日の疲れを癒すかのようにのんのんとした表情。ウクレレ、ギターとウッド・ベースの3人編成で、まるで田舎の親戚の家に遊びに来たかのような和やかな空間がmona recordsに広がる。最後はステージを降り、フロアで観客に囲まれながらの生音演奏を見せてくれた。
バンバンバザールのライヴの後、入場規制で入れないに違いないと半分諦めながらSAKEROCKを見にGARDENへ戻る。が、入れた! 入場規制にならぬよう会場が配慮してくれていたらしい。SAKEROCKのメンバーたちも「あと二歩左にずれて! 」とステージ上から指示をしてくれていた。ありがとうみんな! やはりShimokitazawa Indie Fanclubは、カクバリズムのイベントらしSAKEROCKで締めるのが一番だ。南風のようなトロンボーンの音に分厚いグル―ヴが加わり、何とも気持ち良い。本格的に始まる夏の心構えに、Shimokitazawa Indie Fanclubが6月のフェスとして音楽ファンに定着しつつある。そして下北沢が昔から謳われる「音楽の町」らしい姿を取り戻すのに間違いなく一役買うであろう大きなイベントだ。(text by 水嶋美和)
Shimokitazawa Indie Fanclub 2011
2011年6月26日(日)
Open 11:00 / Start 12:30
会場 : ERA / GARDEN / CLUB Que / CLUB251 / SHELTER / 下北沢屋根裏 / THREE / Daisy Bar / FEVER / BASEMENT BAR / mona records / ReG / 風知空知 / MORE / DUKE CAPO
主催 : Shimokitazawa Indie Fanclub 実行委員会
企画制作 : カクバリズム / ギャラクティック / シブヤテレビジョン / PUNK ROCK CONFIDENTIAL JAPAN
協力 : RADIO DRAGON / 出演アーティストレーベル及びマネジメント各社
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