
「何者! ? 」このバンド名を聞いてそう言った人間は、私だけではないはず。彼らの音楽を聴いてもう一度私はこう言った・・・「だから、何者! ? 」。ゆるゆるなあるある話を割れる様な爆音に乗せて叫ぶ。疾走感とズッコケと重低音が同居する音楽に、不思議とはまってしまった。
日常生活の中で頭の隅っこに生まれる小さな呟きに、わざわざ曲を付けて息を吹き込む。「今日は疲れたから早く帰って寝たい」、「朝ご飯を食べそこなった」、「お姉さん、ビールまだ? 」。これが歌になってしまうのだ。労働者階級のどうでもいい方の深層心理を叫び、庶民派が内に抱える爆弾を爆発させなくてもいいのに爆発させる。しかも爽快に! そんな“魂の叫び”を世に放ち続ける彼らが、この度ベスト盤を発売した。フジロックへの出演も決まり勢いに乗る彼らに「今度はどんな爆弾を投げるつもりなのか? 」を直接聞いてみる事にした。
インタビュー & 文 : 水嶋美和

INTERVIEW
—まず、インパクトのあるバンド名の由来を教えて下さい。
大澤敦史(以下 大澤) : バンド名を決める時、ドラムの河本あす香が「和風の名前がいい! 」と言って提案したのが「ちょんまげトリオ」だったんです。このままではどこのコント集団かもわからなくなってしまう。まずい、阻止せねば! と思って考えたのがこのバンド名でした。
—重いサウンドなのに歌詞がゆるゆるというギャップが衝撃的でした。結成当初から今の形は完成していましたか?
大澤 : 結成して最初に出来た曲が「Breakfast」という朝ご飯の事を歌った曲で、それがエスカレートして「SAWAYAKA」のような曲も作るようになりました。「さわやか」は静岡の炭焼きファミリー・レストランで、この曲の歌詞は静岡県民にしかわからないと思います。
—食べ物に関する曲が多いですよね。「デリシャスティック」もうまい棒の曲ですが、どの味が好きですか?
大澤 : 現行販売してる中ではチーズ味ですね。過去にたこ焼き味というのがあって、ソースが二度付けで、普通のうまい棒よりちょっと固いんです。一番コストがかかっていて、僕はそれが一番好きだった。ところがその製造工場が火災にあってしまって、生産ラインが途絶えてしまったんです。最近、元祖たこ焼き味というのが出たんですけど、あれはソース二度付けをやめて、パウダーにしてしまったので、当時のクオリティは再現できていないですね。残念です。
河本あす香(以下 河本) : 最初、私はうまい棒に関して初心者で、この曲が出来るまではうまい棒の事はそんなに知らなくて…。それなのに歌詞を覚えさせられていくうちに、いろんな味の事を覚えてしまいました。

—「88」では四国の八十八個ある寺の名前全てを並べていますが、歌詞を覚えるのがすごく大変そうですね。どんな記憶術を使いましたか?
大澤 : あれは大変でした。通勤途中に多摩川の土手を歩きながら、寺の名前をひたすらに呟いて覚えました。しかもその時は冬だったから、いかつい服で赤い長髪。そんな出で立ちの男が向こうから遠い目をして、ぶつぶつ寺の名前を言いながら歩いてくるのを見てしまったら、OLさんはもうその道から帰れなくなりますよね。
—確かに(笑) どの曲も非常に歌詞が面白いですが、歌詞と曲どちらから作っていますか?
大澤 : ものによりますね。「デリシャスティック」「88」のようにテーマがはっきりしてるものは歌詞から。逆に「爆走体勢」や「若年層爆弾」や「逆転トライアングル」はアレンジやメロディから作りました。
河本 : 「フローネル」も歌詞からだよね。
大澤 : 「フローネル」は「家帰って速攻風呂入って寝る計画」と呟いたら「絶対それを曲にしろ」とメンバーに言われて作りました。

—楽曲はどういう所から生まれますか?
大澤 : 大体に通勤中にフレーズが思いつきます。それを携帯に保存して、(携帯を開く)「この日有給取らせろ」とか「生えろ生えろ生えろ永久に」とか…これは髪の毛の事です。携帯無くしても大変だけど拾ってしまった人も大変でしょうね。
—作詞作曲両方とも大澤さんが担当されていますが、他のメンバーが口添えをする事はありますか?
Junko(以下 J) : 歌詞はおまかせにしています。
大澤 : 「南国猫ラーメントコナツニャ」は彼女(Junko)が南国好きなので、彼女の意見をたくさん取り入れました。歌詞の「夕日見つめて」の夕日の‘日’は‘陽’にしろとか。細かい(笑)。
J : 南国が好きなのでそこはこだわりました。
ーゆるい歌詞をがなり声で叫ぶ姿に筋肉少女帯の大槻ケンヂの匂いがしました。影響を受けたアーティストはいますか?
大澤 : 筋肉少女帯はよく言われます。でも、あまり聴いた事ないし、ライブも見た事ないんですよ。なのにMCまで似てるらしく、何ででしょう? アレンジ面だと洋楽をよく聴くんで、System Of A Downとか。僕は元々はギタリストで、ボーカルを兼ねることになったのも、探すのがめんどくさいからなんです。だから歌詞書くとなった時も「どうでもいいや」って。「どうでもいいから朝メシの歌にしてまえ」と思って生まれたのが「Breakfast」なんです。もともと「どうでもいい」んで、歌詞に関しては誰の影響も受けてないですね。
ー今回はベスト盤という事ですが、次のアルバムの予定はありますか?
大澤 : 次に出せるのはいつになる事やら。またネタが揃ったら出します。「こういう作品を作りたい」というよりも出来たものを詰め込む方なんで、いつも統一性がないんです。今はパンク調のミスター・ドーナツの曲を作っています。
ーミスター・ドーナツと言うと、既に山下達郎さんが…。
大澤 : はい、今後はミスター・ドーナツといえば、山下達郎か打首獄門同好会になりますね(笑)
ー楽しみです(笑) 今回『庶民派爆弾さん』を聴くにあたって、先に曲だけを聴いて、次は歌詞を見ながら聴かせて頂いたのですが、歌詞を意識するかしないかで印象が全く変わりますね。音源だと妙にマッチしているのが余計に面白いのですが、ライブではどんな風になるのかがすごく気になりました。うまい棒を配るらしいですね。
大澤 : ライブだとあまり歌詞が聴こえないので、歌詞が聴こえる様なハコじゃないなと思ったら爆音で出して曲調で攻めます。うまい棒は「デリシャスティック」前のMC中に、客席に袋を渡して一本ずつとってもらうんです。食べながら見る人もいるけど常連客はそこで食べずに、曲終盤にうまい棒を振るんです。で、粉状になったものを後で食べる。

ー今回フジロックのルーキー・ア・ゴー・ゴーに出演することが決定していますが、初出演の意気込みを教えて下さい。
大澤 : ルーキー・ア・ゴー・ゴーには毎年出してたんですけど、今年もどうせ無理だろうと思ってライブの予定も入れちゃってたんですよね。それぐらい油断してて、発表の電話がきた時は知らない電話番号だったからスルーしました。ネットで番号調べて「フジロック」と表示されて…『フジロックってあれじゃねえか! 』と急いでかけ直しました。24日の深夜に出演で、25日の夜には山梨でライブです。せっかくの通し券もったいないなあ。二日目の筋肉少女帯、見てみたかったです。
河本 : 本番では何の曲で攻めようかな、と思っています。
大澤 : フジロックでは、うまい棒何本用意すればいいんだろうって。あと「88」をやる時はお遍路の笠を冠って祈りながらやろうと思ってます。
ーフジロックは一つの大きな目標だったと思いますが、その後の活動や目標はありますか?
大澤 : 沖縄へ行くことです。一応名目はライブですが、いかにオフ日を設けるかが重要です。旅行ですね。北海道も行きたいな。全国ツアーも、全国のうまいもん食べれるんだ! と思うとすごい興味があります。四国でうどんも食べたい。香川でライブないかな。とにかく今は、武道館に出演するよりも沖縄に行きたいです。
ー行く先々で食べ物の曲が出来そうですね。すごく楽しみです。ライブ活動と作曲活動とただの願望がすごく上手いことリンクしているんですね。
大澤 : 野心溢れるバンドです(笑)

PROFILE
打首獄門同好会は、2004年に結成された男女混合スリー・ピース・バンド。生活密着型などうでもいいテーマを重低轟音に乗せたけったいな音楽を武器に、ゆるく荒々しいライブ・バンドとして首都圏インディーズ・シーンをマイ・ペースに席巻しているけったいなバンド。
【MEMBER】
大澤敦史 (Vocal&Guitar)
Junko(Bass)
河本あす香 (Drums)
- ホームページ : http://homepage.mac.com/oswatch/Temporary/index.html
- blog 打首獄門同好会新聞 : http://yaplog.jp/uchikubi/

LIVE SCHEDULE
- 6/28 (日) LoungegGate企画 Break Artist Catalog 2009 Vol.3〜激〜@渋谷DESEO
- 7/11 (土) no-men-face企画 抱かれる覚悟で来い。vol.8@渋谷ラママ
- 7/18 (土) ORGASM VOL221〜LILY HEADS REUNIONセレクション〜@下北沢MOSAiC
- 7/24 (金) FUJI ROCK FESTIVAL'09 ROOKIE A GO-GO
- 7/25 (土) 黒猫ディストーション企画@甲府KAZOOHALL
これを聴いて疲れを吹っ飛ばせ!!!
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