
音楽プロデューサー、作曲家、編曲家でもある戸田誠司が率い、タナカカツキ、鈴木光人、とくさしけんご等の仲間達が周りを固めるスーパー・バンドkappaが、いとうせいこうを迎え、よろよろでろでろな新曲を発表。その名も『よろよろ feat. いとうせいこう』! 延々と続くよろよろビーツは、テン年代の生き方を示す!? さらに、『ヌカカの結婚の音楽』『テロメアの帽子の音楽』に続くサントラ・シリーズ第3弾、『カルシノの贈り物』もリリース。ほぼ日刊イトイ新聞で立ち読みできるガン遺伝子と人体を守る免疫細胞をとりまく9つのストーリーにkappaが音楽をつけました。そして何故か、タナカカツキがひたすらに語る「水草水槽への誘い」をフリー・ダウンロードでお届け。またスペシャル・パッケージとして、『よろよろ feat. いとうせいこう』『カルシノの贈り物』『ヌカカの結婚の音楽』『テロメアの帽子の音楽』の4作に、「水草水槽への誘い」までをセットにした特別版『kappa 2010パック』まで販売しちゃいます! 本人曰く「こんな時代だから、配信でどこまで出来るか挑戦してみたいんだよね〜」とのこと! やりすぎです(笑)!
1、『よろよろ feat. いとうせいこう』
人気電子書籍のサウンド・トラック『ヌカカの結婚の音楽』、『テロメアの帽子の音楽』が記憶に新しい戸田誠司率いるアブストラクト・ポップ・ユニットkappaが、ついにオリジナル・シングルを発表。作詞とラップでいとうせいこう(口口口)が参加!
■収録内容
01-よろよろでろでろ / 02-よろよろてふてふ / 03-でろでろ / 04-てふてふ
・「よろよろでろでろ」歌詞画像
・いとうせいこう直筆『よろよろfeat.いとうせいこう』模写画像
MP3 500円 / WAV 1000円(まとめ購入のみ)
2、『カルシノの贈り物』
ヌカカ、テロメアに続く第3弾。今回はガン遺伝子と人体を守る免疫細胞をとりまく9つのストーリーにkappaが音楽をつけました。
■収録内容
01-カルシノの贈り物 / 02-破壊の子供たち / 03-五体の人形 / 04-乗っ取られた電車 / 05-監視官と死神 / 06-三人の警官 / 07-殺し屋警官 / 08-魔法の手錠 / 09-帰ってきた子 / 10-ギターのメニュー
・『カルシノの贈り物』のジャケット画像
MP3 500円 / WAV 1000円(まとめ購入のみ)
3、スペシャル・パッケージ『kappa 2010パック』
新作『よろよろ feat. いとうせいこう』『カルシノの贈り物』と旧作『ヌカカの結婚の音楽』『テロメアの帽子の音楽』の4作に、タナカカツキがひたすら語る「水草水槽への誘い」音声、そしてアートワーク等を収録した特別版!
■収録内容
・『よろよろ feat. いとうせいこう』
・『カルシノの贈り物』
・『ヌカカの結婚の音楽』
・『テロメアの帽子の音楽』
・「水草水槽への誘い」
・各アルバムのジャケット画像
・「よろよろでろでろ」歌詞画像
・いとうせいこう直筆『よろよろfeat.いとうせいこう』模写画像
MP3 1500円(まとめ購入のみ)
4、「水草水槽への誘い」のフリー・ダウンロード
>>タナカカツキが水草水槽についてとことん語る「水草水槽への誘い」のダウンロードはこちら(フリー・ダウンロード)
面白いものを繋ぐ磁力 text by 水嶋美和
kappaというバンドがいる。いや、集団と呼んだ方がいいのかもしれない。音楽プロデューサー、作曲家、編曲家として多くの楽曲に携わってきた戸田誠司を中心に、作詞家、漫画家、映像作家、ゲーム音楽作曲家、サウンド・エンジニアなど様々な分野からの12人で形成されるアーティスト集団。何か伝えたいものがある訳でもなければ、売れたい欲求がある訳でもない。タナカカツキや鈴木光人など、それぞれ第一線で活躍するアーティストが12人も集まって「毎年やっているバーベキューと忘年会の資金が稼げれば」と言って活動しているのだから、思わず肩の力が抜けてしまう。
そんな彼らの姿勢から、どんなゆるい音が出るかと想像して聴いてみれば、確かに肩肘張らずに聴けるほどよい脱力感はあるものの、内側には常にピリピリとした緊張感が張り詰めている。彼らの曲からは前に進もう、高く飛ぼうという、遠くに向けた躍進力の代わりに、手元にある物を凝視し、その成分を分析して何か面白いものに変化させる可能性を探ろうとする研究者的な好奇心と探究心がある。12人の音の研究者が集まってひとつの作品を作るというよりも、各々の好きな音を持ち寄ってどんな化学反応が起こるのかを実験している感じ。ちなみに結成のきっかけとなったレコーディングの場所も伊豆高原の研究施設だとか。
その集団がいとうせいこうをボーカルに迎え、新作を発表した。前作は電子書籍のサウンド・トラックだったので、今作がkappa初のオリジナル・シングルとなる。戸田誠司といとうせいこうのコラボレーションと聞けば、桑田佳祐のラップが衝撃的なREAL FISHの「ジャンクビート東京」を思い出すが、今作のタイトルは「よろよろ」。よろよろ? 一曲目が「よろよろでろでろ」で、二曲目が「よろよろてふてふ」である。どういうことだと聴いてみれば、確かによろよろででろでろだった。
歌詞の中の男は最寄りの駅から地下へ、ビルへ、スーパーへ、横町へ、街から街へ、視界に入る物をとらえながら歩く。その足取りは確かに右へ左へ前へ後ろへ、よろよろと、ふらふらとしている。その姿を、いとうせいこうが歌ともラップとも語りともつかない調子でなぞる。まるで酔っ払いの冒険シュミレーション・ゲームをしているようだ。酩酊状態の心地よい散歩が都会の混沌に消えていく様子を観察している気分。気持ちよい夜風の中を、妙に冴えた目とぼんやりとした意識でとぼとぼと歩くあの感じ。
彼らの前作『カルシノの贈り物』は、森川幸人がガン遺伝子と免疫細胞をキャラクターに置き換え、アニメーションを用いて体の中のしくみを謎解いていく、電子書籍でリリースされた絵本に楽曲を添えたものだった。純粋に音を作るのが好きで、売りたい意欲が強い訳ではないkappaは、カタログが増えても在庫が増えない配信という形を選んだ。数年前からは考えられない程に、発信する手段は増え、その分可能性は広がり続けている。戸田の言葉を借りれば、「今日の睡眠時間を少し減らせば何か作れる、面白そうなことができる。」そういう時代が来た。彼らの音楽を聴きインタビューを読んでいると、「楽しそう」「面白そう」という子供の頃からある感情こそが、ものづくりへの最大の原動力になるという、シンプルだけど忘れがちなことを思い出した。そして面白いもの同士は強力な磁力で引き合い、手をつなぎ、更に面白いものを生む。前作の『カルシノの贈り物』のように。今作の「よろよろ」のように。さて、kappaの磁力は次にどんなものを引き付けるのだろう? 早くも次の作品が待ち遠しい。
Message from 戸田誠司
1987年という昔のことですが、ラップ音楽と「東京ブロンクス」へのほとんど脅威レベルのリスペクトから(作らなければならなかった)「ジャンクビート東京」がリアルフィッシュの最後の曲であったわけで、20年以上も経って、アゲーンいとうせいこうと「よろよろ」がkappa初のオリジナル音源として作れたことを、何よりもいとうせいこうに感謝する。
先日(来年出そうな)クチロロの新譜の宣伝パンフを音源に同梱したいので、pdfとかないだろうか、とメールしたところ、数時間経って、ジャケット(タナカカツキ作)を模写したものがjpgで送られてきた。そんな手間のかかったものの発注はしていない。最高である、ありがたく同梱させていただく。
もうひとつ。「歌ってもらうってさすがですね」と言われましたが、これは僕のディレクションではない。レコーディング当日に、彼がなんの説明もなく歌い出した。もうひっくり返りました。みなさんもどうぞひっくり返ってください。
2010年11月13日 戸田誠司
>>戸田誠司インタビュー「kappaとは、いったいなにもの?」
PROFILE
戸田誠司を中心とした「脱力系」の大きなバンド。機械と人力、両方あり。コンセプトと感覚、両方あり。かなり感覚に偏重。それぞれがミュージシャン、エンジニア、作編曲などで活躍しつつ、時にkappaとして招集がかかり作品を作る。