2011年12月2日より、今も継続して収録曲全曲フル・レングス試聴で展開され続けているEeLの『BOSSA NOVA』が、遂に配信開始! エレクトリック・パンクにキュートでファンキーなウィスパー・ヴォイスを乗せ、破天荒なサイケ・ポップを歌い続けた彼女が今回リリースする作品は、まさかの全篇アコースティックからなるボサノヴァ・ソング集。12月11日の配信開始時に公開したEeL本人によるセルフ・ライナー・ノーツと、EeLワールドの仕掛け人、milch of sourceによる楽曲解説ならぬ「EeLまるごと解説」に加え、この度は2人へのインタビューも公開! この作品が制作されたのは2000年。なぜ今、11年も前の作品をリリースしようと思ったのか? そしてこれからEeLはどこに向かうのか? EeL=うなぎ=つかみどころがない彼女の脳内宇宙を、彼女の話を聞きながら、過去作を辿りながら、『BOSSA NOVA』を聴きながら探りましょう!
インタビュー&文 : 水嶋 美和
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EeL初のアコースティック作を配信限定でリリース!
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EeL & milch of source インタビュー
――今作はシンプルな作品だったので、今までのEeLさんの音数の多いイメージとかけ離れていてとても驚きました。でも2000年に制作されたものだから、こちらの方が先なんですね。11年も前の作品をどうして今出そうと思ったんでしょうか?
milch of source : 『BOSSA NOVA』を出そうと言ったのは僕なんですよ。EeLが昔に出したCD-Rが何枚かあって、今ではもう手に入らないんだけど、それって勿体ないしEeLのファンは聴きたいだろうなと思って。
――この頃、まだmilch of sourceさんはEeLさんの曲作りに関わってないですよね? 完全に一人で作ってたんですか?
EeL : いえ、milch of sourceくんと一緒にやる前はサンドウくん(SANDOU RECORDS)と制作していました。音楽をやり始めたきっかけもサンドウくんに誘われてなんですよ。
――じゃあ『BOSSA NOVA』はサンドウさんとEeLさんで作ったアルバムなんですね。
EeL : 最後に入っている「Magic To A Sweet Dream」だけ最近作った曲なので、これはmilch of sourceくんと。他の曲のちょっと味のある(笑)ギターは、サンドウくんです。私の歌唱力も味というか、かなり拙いものですが(笑)。今だったらもうちょっとくらいは上手くできるかも。
――今でこそブレイクコアでポップなイメージが強いEeLさんですが、元々はボサノヴァのような静かな音楽が好きなんですか?
EeL : こだわりなくどちらも好きでしたよ。当時ヨーロッパ映画を好んでよく見ていて、ボサノヴァがちょこちょこ使われていたので、サンドウくんに「こういう曲好きなんだよね」と話して、「じゃあ、やる? 」という感じで作り始めたのが『BOSSA NOVA』なんです。
――11年も前の作品を今改めてリリースするのに、恥ずかしさはありませんでしたか?
EeL : 私、自分の作品を聴き直すことはほぼないんですよね。作り終えた時点で飽きちゃうんです。ライヴ前ぐらいは思い出すためにi Podで聴くんだけど、ついつい飽きて結局他の人の曲ばっかり聴いてしまう。だから『BOSSA NOVA』を聴いたのも10年ぶりぐらい! もちろん恥ずかしいですよ(笑)!
――埋もれてしまっているCD-Rが数枚ある中で、milch of sourceさんがこの作品を選んだのはなぜでしょうか? 今までEeLを聴いてきたリスナーの意表を突きたかった?
milch of source : 『BOSSA NOVA』だけアコースティックだったんですよ。EeLってうなぎって意味で、つかみどころがないというのが由来だし、ジャンルにとらわれず色んな顔を見せていきたいんですよね。もっとつかみどころをなくしたい。だから今まで出したことのないアコースティック作を選んだんです。
EeL : そうなんだ。今知りました(笑)。
――あまりmilch of sourceさんとそういう話はしないんですか?
EeL : 基本受け身なんですよ。深く考えないし。私からアイディアを発信することはほぼないですね~(苦笑)。
――なるほど。EeLさん、というか「EeL」は、他の人が発信したイメージを反映させる、言わばアイコン的な存在なのでしょうか。
milch of source : でも完全に受け身って訳じゃないんですよ。クリエイターではないけど、セレクターではある。その投げられたイメージを受け入れるか受け入れないかの判断はしていますね。
EeL : あまり主張はないんだけど、感覚的にこれはやりたい、これはやりたくない、というのは自分の中に割とはっきりありますね。お人形にもなりきれないし、かと言って自分から進んで何かを発信する訳ではなくって。でも全てにおいて感覚的だから、可否の理由はうまく言葉で説明するのが難しいんですよね。うーん、我ながらなかなか面倒くさいですね(笑)。
――いやいや(笑)。でも、そっか。EeLさんはご自身で作詞もしているので、発信もしてますね。作詞は言葉の響きを選びますか? 意味を選びますか?
EeL : それこそ『BOSSA NOVA』に入っている「Marche」はフランス語っぽい響きの言葉をでたらめに歌っているだけなので、昔は完全に響きで作っていましたね。他の曲も全部ポルトガル語なんだけど、辞書を引いて適当に語感だけで選んで繋ぎ合わせていく、パズルみたいな作り方をしていました。今は日本語でも作っていて、日本語だとどうしても意味がダイレクトに頭に入ってきてしまう気がするので、そういう遊び感覚だけの作詞は難しくなりましたね。
――では、響きから意味に比重を置くようになった?
EeL : 今でも響きが一番重要ですよ。ただ、昔のように響きだけで中身は何でもいいということではないのかも。でも色々考え過ぎてもしんどくなるので、試しにmilch of sourceくんに「書いてみて」って言ってみたこともあるんだけど、作ってもらった歌詞を見て「嫌だな」と思って。何一つ気に入らなかった。
(一同笑)
EeL : その時に気付いたんです。歌詞だけは人に任せられないのかもしれないって。歌詞に関してmilch of sourceくんと合わないだけなのかもしれないですけどね(笑)。
milch of source : (苦笑)。
かなりフラットな感覚で、気が付いたら10年経っていた(EeL)
EeL : それはそんなに。今まで続けられているってことはほどよい距離感なんじゃないかな。
――もう10年以上音楽を続けていますが、これからああなりたい、こうしたいという構想はEeLさん自身にはありますか?
EeL : そんなに続くとは思ってなかったです。かといってすぐやめると思っていたわけでもないし。辛くてやめたいと思ったこともないし、絶対一生続けたい! と強く思うこともなく、かなりフラットな感覚でずっと音楽というものをそこまで意識せずに、自然と気が付いたら10年経ってたという感じ。
――EeLさんと音楽との距離も、大阪・神奈川間ぐらい開いてるんですね。
EeL : そうかもしれないですね。元々サンドウくんに誘われるまで音楽をやるとか考えたこともなかったし。
――EeLさんって何が一番好きなんですか?
EeL : 映画とか漫画とかゲームとか、基本は家にこもって一人で過ごすことが多いかな。ここ2、3年はテニスにはまってます。
――急にアウトドアになりましたね!
EeL : インドア・コートなんですけど(笑)。何が一番好きかと聞かれると… 気持ちは常に流動的なので難しいです。ほどよく音楽をして、映画を見て、漫画も読んで、でもどれも浅いからオタクと呼べるまでには至らないんですよ。色んなものを気まぐれにちょこちょこランダムにしているから全部長く続くし全部好きでいられるのかも。
――そんなEeLさんが音楽をやっていて一番楽しい、好きだと感じる瞬間は?
EeL : 曲が完成する直前ですね。最初は形すらなかった素材が、曲として全体像を見渡せるようになると「うわー! 」って世界が広がるような感覚になれるんですよ。そこがピークなので、完成して発売する頃にはもう、ちょっと飽きちゃってるんですけどね (笑)。
――最後の「Magic To A Sweet Dream」だけ新曲とのことでしたが、じゃあ次のEeLさんのオリジナル・アルバムはアコースティック調の静かな感じ?
EeL : 今後アコースティックのものを出すことはあるかもしれませんね。私もあの頃よりはもうちょっと頑張って歌うんで(笑)。
milch of source : でも次の作品は、「aimaina nazonazona」のような生ドラム、生ギターのバンド・サウンドっぽいものを考えています。
――では最後に、EeLさんをネットで検索するといつもうなぎの画像が出てくるんですが(笑)。
EeL : そうですよねー(笑)。
――自分自身、つかみどころがない自覚はありますか?
EeL : 全くないです。この名前は「うなぎみたいにつかみどころがないから」ってイメージでサンドウくんが付けてくれたんですよね。人にその由来を話すとみんなに「ぴったりだね」って納得されるんです。でも私は不思議ちゃんでも天然でもないつもりなので全くピンとこないんですけどね(苦笑)。
――でも、私もぴったりな名前だと思いますよ。どんどんつかみどころがなくなっていく気がする。それをこれから期待しています。どうもありがとうございました!
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EeL ★ DISCOGRAPHY
EeL ★ PROFILE
エレクトリック・パンク・ミュージックをベースに、キュートかつ、ファンキーなポップ・ミュージックを作り出す関西在住女性アーティスト。1999年に初の音源をリリースし、フレンチ・ポップ、ボサの要素を取り入れた音楽を作り出す。2000年1月には、高速打ち込みビート+ウィスパー・ヴォイスのテクノ・ポップ・サウンドへと展開を広げ、アルバム『Kung-Fu Master』(2001年4月)、『EeL early works』(2001年9月)、『people people』(2001年12月)をリリース。2002年4月からトラック・メーカーにROMZ recordのmilch of sourceが参加し、2004年12月、オールド・スクールからブレイク・コア、ファンク、レゲエ、エレクトロニカなどあらゆるジャンルをエレクトリック&ポップに再構築した4thアルバム『Little Prince』をリリース。その他、国内外多数の作品へのコンピレーションに参加したり、ゲーム・ミュージック(pop’n music、beatmania)への参加。capsuleへのゲスト・ヴォーカルでの参加(シングル『プラスチックガール』、アルバム『CUTIE CINEMA REPLAY』)、エレクトロニカ・アーティスト、Hidenobu Itoとのコラボレート・アルバム発売など幅広く活動。