
全英チャート4位を記録し、20世紀の音楽史に燦然と輝く97年の名盤『宇宙遊泳』を生みだし、08年リリースの6thアルバム『Songs In A&E』で奇跡完全復活を遂げたスピリチュアライズドの約4年ぶりとなる新作が完成! 英人気レーベル・Dominoの姉妹レーベルDouble Sixに移籍して初となる通算7作目のアルバム『Sweet Heart Sweet Light』は、ウェールズ、LA、レイキャビクで約2年間に渡るレコーディングを敢行。その後に自宅で1年かけて仕上げた、愛するロックンロールの全てを包含した作品。最高に優しく、美しい愛と光に溢れた物語。ルールなき傑作アルバムの誕生です。
Spiritualized / Sweet Heart Sweet Light
1. Huh? (Intro) / 2. Hey Jane / 3. Little Girl / 4. Get What You Deserve / 5. Too Late / 6. Headin' For The Top Now / 7. Freedom / 8. I Am What I Am / 9. Mary / 10. Life Is A Problem / 11. So Long You Pretty Thing
虚無感・喪失感をときには蹴散らし、ときには抱きしめる、愛おしい楽曲集
生きていくということは、常に何かを失い続けることに他ならない。いくら今が満ち足りていようとも、いや、満ち足りているのならなおさら、それがいつまでも変わらずにいられるなんてことは、まずありえない。やっとの思いで得たもの、作り上げたものはやがて風化していき、愛するものは去っていく。慎重に、ゆっくりと積み重ねてきたものを、いくら後生大事に守ろうとしても、ちょっとした弾みで呆気なく崩れ落ちてしまったり、時間の経過とともに消えてしまったり。そして最後には、自分の人生も終わりを迎える。だから、失くした分だけ作るしかない。別れた分だけ出会うしかない。もうどうにも取り返しがつかないという喪失感を振り切って、ひたすら進んでいくのみ。

2005年に生死の境を彷徨ったスピリチュアライズドの首領ジェイソン・ピアースは、名作『Ladies and Gentlemen We Are Floating In Space』の完全再現ライヴで、自分の大事な作品が化石化していく様を目の当たりにし、何を思っただろうか。3年の歳月をかけ、じっくりと醸造された新作『Sweet Heart Sweet Light』には、彼が感じたであろう虚無感、喪失感をときには蹴散らし、ときには抱きしめるような、とめどなく愛おしくなってしまう楽曲たちが詰まっている。この作品の通奏低音として静謐に奏でられる「Life Is A Problem」のOvertureに導かれ、8分でも100分でも刹那的に走り続ける「Hey Jane」で幕を開ける。「スリー・コードを超えたら、それはジャズだ」と言ったのはルー・リードであるが、ここでもそのロックンロールの流儀に則り、何かを振り切るように'Show them what you can do'と力強く言い放つ。一方、「Little Girl」や「Too Late」で人生のほろ苦さを素直に吐露したかと思ったその矢先、「Headin' For The Top Now」では、ヴェルヴェッツの「I'm Waiting For The Man」のように2コードでノイズまみれに再びロックする。『Gris-Gris』によって世に降臨したサイケデリック・シャーマン、ドクター・ジョンことマック・レベナックを再び召喚した「I Am What I Am」では、過去の呪縛から逃れるかのように、ブルース・ジャムを祈祷のごとく読経し続ける。ここでのジェイソン・ピアースは、まるで女性コーラス隊を引き連れたレイ・チャールズのようだ。そして、ハイライトである「Life Is A Problem」は、生きることへの迷いや戸惑い、自分の弱さを率直に晒け出し、神に救いを懇願する美しい純ゴスペル曲だ。そうした激しい浮き沈みがそのまま曲調に表れた今作は、全体を通してヴォーカルがくっきりとし、剥き出しになった声が透き通って聞こえてくる。そこには虚無感、喪失感を超えた、濁りのない、どこか達観した清々しさが感じられる。過去の作品での聴く者を圧倒するような混濁した分厚い音の壁は前作から顕著に崩れ去り、本人曰く「隠れる場所がないポップ・レコード」として、等身大のスピリチュアライズドの音楽が今、届けられた。(text by 青野慧志郎)
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PROFILE
1990年、英国ラグビーにて、今や伝説的存在の「スペースメン3」の中心人物であるジェイソン・ピアースを中心に結成。1997年、20世紀の音楽史に燦然と輝く傑作『宇宙遊泳』をリリースすると、スピリチュアライズドの最高傑作と謳われるまでの代表的作品となり、各方面で高い評価を得て大絶賛を浴びる。しかし、2005年にジェイソン・ピアースが病に倒れ、一時は危篤状態までに陥り生死の狭間を行き来する。その後、奇跡的 に病魔から復帰し、2008年に約5年ぶりとなるニュー・アルバム『ソングス・イン・A&E』をリリース。同年夏には、Summer Sonic、09年1月には単独ツアーを行い、大盛況のうちに終了した。2012年2月Hostess Club Weekender出演。