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今最も光り輝く! オストアンデルという4人組
ototoyでpower pushしていたオストアンデルに火がついた!! その反響は、Twitterやブログ等様々! 編集部でも大人気。早くも今年注目バンドとなった彼女達の素の顔を覗くために、下北沢インディー・ファンクラブで上京していた彼らに直撃インタビュー。素直に織りなすこの純粋な音が、どこから生まれて来るのかが垣間見えるインタビュ—内容は、全力で応援してしまう程に眩しい!! ototoyが今一番プッシュするオストアンデル。もう一度じっくり聴いて下さい。病み付きになること間違い無し!
今回アルバムをまとめ購入して頂いた方には、ototoy限定楽曲「三月」がボーナス・トラックとして付いてきます!!
INTERVIEW
音楽は感情のみならず、それぞれの町の匂いをも吸収している。オストアンデルの音がそれを証明している。彼らの新作『ostooandell』を聴いて、最初は淡泊で正しく並ぶ音に都会的な印象を受けた。しかし聴き続けると、乾いた声の奥の湿り気や一つ一つの音に潜んだ郷愁に、泣きたくなるような懐かしさが染み出してくる。一度上京し、四年後に沖縄に帰郷し、今も活動を続けるオストアンデル。対比的な二つの町を見てきたyukaDとmollyLoだからこそ生み出せる音なのだろう。彼らのさりげなくも強い癖は、何一つ欠ける事なくこの音源に録り込まれており、ここまでの完成度は曽我部恵一にだからこそ成せた業なのだろう。聴けば耳から離れなくなる彼らの音楽はどのようにして生まれるのか、沖縄のインディー・ロック・シーンは今どういう状況なのか、彼らに話を伺った。
インタビュー & 文 : 水嶋美和
徐々に木製っぽさが出てくる
——「オストアンデル」って調べたら「押すと餡出る」っていうお饅頭を英語風に言ったダジャレだって出てきたんですけど、合ってますか?
mollyLo(Vo,G) : 合ってるんですけど、お饅頭は特に関係ないです。
——オシャレで不思議な響きだから北欧の国の単語からとったのかと思いました。
yukaD(Vo,G) : みんなそう言ってくれるんですけどね。スペルもややこしくしてるし。
mollyLo : 元々yukaDと僕の二人で宅録で活動してたんですけど、音源にまとめる時に「バンド名どうしようか? 」ってなって、その頃聴いていた大瀧詠一さんの曲からこの言葉を頂きました。意味は無いけど、響きが気に入って。
——初めはyukaDさんとmollyLoさんの二人で活動されていたんですね。
yukaD : 高校の頃から一緒にバンドをやってたんですけど、たまたま二人とも19歳ぐらいで東京に出てきたんですよ。で、オリジナル作って二人で宅録したりメンバー加えてライヴもやったりしてたんですけど、4年後ぐらいに事情で二人とも沖縄に帰る事になって。帰ってからも1年ぐらいは二人でやってたんだけど、段々飽きてきて「もうやめよっか? 」ってなった時にヨシトアンデルと同窓会で再会したんです。
——同窓会って事は同級生?
mollyLo : ゆういち以外はみんな高校も学年も同じで、同窓会で久しぶりに会った時に「そういえばドラム叩けたよね? 」って勧誘しました。
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——元々音楽の趣向は似てたんですか?
ヨシトアンデル(Ds) : 同じ軽音楽部だったけど、僕だけ別のバンドだったんで、元々は全然違いますね。僕はTHE BLUE HEARTSのコピー・バンドをやってたんで、どれだけ強く叩けるかっていうのが重要で、だから初めはおしゃれな音楽に自分のドラムでいいのかって不安でした(笑)。
yukaD : だけどそれがいい風を入れてくれて、「音楽ってこんなに楽しかったっけ? 」って、自分たちの音楽に対するテンションも上がりました。
——3人で1stアルバム『music』を出して、その後のゆういちさんとはどういう出会いがあって加入したんでしょうか?
yukaD : 2年前に『music』を出させてもらった後、このメンバーで出来る事の限界を感じ始めて、音楽に対する意欲が落ちてしまったんですね。オストアンデルはずっとベース・レスでやってきたんで、もうこれは新しい風を入れるしかないぞとメンバーを探していたら、本当に風のようにゆういちくんが現れたんです。
ヨシトアンデル : お客さんとして見てくれて、たまたま知り合いの知り合いだったんです。
yukaD : その人からベースを弾きたいらしいという情報を入手して、「じゃあやりませんか? 」って。
——元々オストアンデルのライヴはよく見に来てたんですか?
ゆういち(B) : いや、入る前に一度見たきりで、その知り合いに「いいね」って言ったらその人が繋いでくれました。見た時にビビッと来たんですよね(笑)。沖縄にはなかなか無い感じのバンドだと思います。東京感もあるし。
——その「東京感」、すごいわかります。一曲目の「Bakyun the everyday」はすごい淡泊で都会っぽいんだけど、二曲目三曲目と進むにつれて徐々に木製っぽさが出てくるんですよ。都会っぽいおしゃれな音楽っていっぱいあるけど、そこが他とは大きく違うなと思いました。
yukaD : それはきっと… 多分、一度東京に出てるじゃないですか。都会を一度見た人は、田舎に帰った後も都会への憧れが残っていて、そういう人と話してもみんな同じで「もう一回出たいよね」って言うんです。私もずっともう一度東京に出たい派で、でもバンドの事とか色々あるからそう簡単にはいかないし、もうちょっと沖縄で頑張ろうって気持ちなんです。だから、都会への憧れ。それも、一回居た場所、住んでいた場所への憧れ。もう一度ここに帰りたい、とは言え、自分の本当のホームは沖縄だしっていう揺れが音に出てるのかもしれないですね。
——今回曽我部恵一さんのプロデュースでリリースという事なんですが、どういう経緯で?
yukaD : 初めてお会いしたのが2004年で、沖縄の伊江島という島で開かれた「伊江サウンドジャンボリー」というイベントに曽我部さんがソロで出演されてたんです。ちょうどROSE RECORDSが立ちあがる頃で、デモ音源を募集してたのでその時に直接渡して、今作に入ってる「外は嵐」はその音源にも入ってたんですけど、「この曲いいね! 」と直接電話を頂いて、「わー! 曽我部さんから電話来たー! 」ってなって。それをきっかけに曽我部さんのツアーのスタッフをしたり一緒にアコースティック・ライヴをさせてもらったりとかで色々とお付き合いがあって、ファーストの帯も書いてもらったんですけどそこに「今度プロデュースさせてください」と書いてくださって、それで今回買って出てくれたんだと思います。
——一週間のレコーディング合宿はどうでしたか?
yukaD : 今年の1月ぐらいから沖縄の北部の山に機材を運んで、レコーディングして、自炊して、怒涛の日々を一緒に過ごしました。
mollyLo : 最初に曽我部さんから条件があって、レコーディング・スタジオじゃなくて倉庫がいいって言われたんですね。
yukaD : 音の鳴りとか空気をすごく大事にされる方なんで、こだわりがあるんですね。あと、地元でっていうのも重要なキーワードらしくて、色々牛小屋とかも探したんだけどなかなか難しくて、最後にペンションにしようって皆で話して、山小屋だったら騒音の心配もないし泊まり込みでやりましょうってなったんです。一週間、みっちり。
ヨシトアンデル : でも僕ら以上に、曽我部さんとエンジニアさんは本当に24時間ずっと動いてたんで、あまり寝てないと思います。
yukaD : でも、あの時の木の柔らかい音とかはすごい入ってて、場所の指定もなるほどと思って、すごいなと思いました。
——歌詞やメロディじゃなくて音に懐かしさを感じたのは録った場所も大きな要素だったんでしょうかね?
yukaD : だと思います。録った人もすごい良い音で録れてるって言ってて、本当にただの山小屋なんですけど。
mollyLo : 普通のリビングだよね。ソファどかして機材置いただけで。
——曲はどういう風に出来るんでしょうか?
yukaD : 基本、歌ってる人が詞も曲も作ってます。だから今回はmollyLoが「夕方のブルーボーイ」で、「外は嵐」は昔に二人でぱぱっと作った曲で。
——曽我部さんが気に入った曲ですよね。どれぐらい温めてたんですか?
mollyLo : 結成時なんで、9年前ぐらいですね。
yukaD : 大事に大事にしてきた曲です。
mollyLo : 「夕方のブルーボーイ」は歌詞が「午後五時」で始まるんですけど、「「ご」が三つ並んでるって、この言葉すごい! 」って、これを言いたいがために作りました。あと、コーヒー飲んでる曲が作りたくて。大体コーヒーって午後五時ぐらいに飲むじゃないですか(笑)。
——そうかもしれないです(笑)。今回みたいに言葉の響きから作る事は多いですか?
mollyLo : 僕の場合はそうですね。
yukaD : 彼は曲を作るペースがゆっくりなんですよ。
mollyLo : そうなんです。曲が出てこない時期が長くて、出来る時は4、5曲ポンと出てきたりするんですけど。
yukaD : すげえ。
mollyLo : 驚かれましたけど(笑)。半年ぐらい出来ない状態が続いて、その間にyukaDがどんどん曲を作っていく感じ。
yukaD : 必然的に私の曲のほうが多くなってしまうんです。
ヨシトアンデル : どっちも無理してないから、それがいいバランスなんだと思います。
——yukaDさんはどういう風に作るんですか?
yukaD : これを言ったら無責任なんですけど、曲を作ってる最中の記憶がないんですよ。
——え!?
yukaD : 生活してて、ある瞬間をひとつのフレーズにするんですね。例えば「Bakyun the everyday」では、はっきり覚えてないけど自分が地図を広げた時に「地図を広げて 指をさして」ていう風にフレーズを作ったんだと思います。そんな単純な事がきっといくつもあって、ギターを持った時に「ビビビビっ! 」となってがーっと一気に吐き出す。その作ってる最中の事は本当に覚えてないんです。怖いんです(笑)。
——じゃあ、ハッと気づいて時には曲ができているという事ですか?
yukaD : そうです。でも「Bakyun the everyday」「謎とロマンの旅」「harmonix sunshine」は、ゆうちゃんが入る前の自分が乗り越えたい時期に作ったので、そういう内容の曲になってるなと思います。乗り越えたい系。「謎とロマンの旅」は本屋で占いの本を立ち読みしてて、自分のページを見たら「謎を解け」って書いてあって、「謎を解けかよ〜」って思って本を置いて帰ったら出来てた曲なんですよね(笑)。
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前向きになってほしい
——確かにこの曲と「harmonix sunshine」はストーリーを想像させる歌詞ですよね。
yukaD : 思い出した!「harmonix sunshine」の時は、ちょうどニュースで派遣切りや派遣村の事ばかりやっている時期で、テレビに映る、仕事も家もなくて前に進みたくても進めない、やらなきゃって分かってるけどなかなか前に進めない、どうしようもなくなってる人たちの表情を見て、そういう感じがすごく切なくて。実際私も派遣で働いてたんですけど、同僚が期限内に切られたりして、それに対して私は文句言って会社にお金出させたりしてたんですよね。そのストーリーも含まれてます。金出せって、そういう物語(笑)。これ言っちゃうとみんな冷めちゃうかもしれないですね。
一同 : そういう曲だったんだ(笑)。
yukaD : 「目を伏せても上を向いて歩いても」っていうのは、どっちみち時間は経つんだから前向きになってほしいっていう背景もあって… じーんとしますね(笑)。
——まさかの背景でした(笑)。先程ゆういちさんはオストアンデルを沖縄にはあまり居ないバンドと話してましたが、沖縄の音楽シーンってどういう感じなんですか?
yukaD : うちみたいな普通のロック・バンドもいっぱい居て、一緒にイベントやったり盛り上げようとしてもなかなか超えない線があって。もっとテレビ的な芸能色の強い方は盛り上がってるんですけど。
mollyLo : 例えば民謡とか取り入れて沖縄っぽくした感じのバンドとかが出てくると、そこにはなかなか勝てない。
yukaD : とは言え、もう自分達は自分達なりにやっていくしかないと思うので、時間かけてもいいから10年後にでも分かってもらえたらいいなと思います。
——東京、大阪、名古屋や福岡など、土地ごとでシーンの色も大きく変わるじゃないですか。で、今作でオストアンデルを聴いて沖縄出身っていうのがすごく意外で、他にどういうバンドが居るのかすごく気になったんです。
ヨシトアンデル : このアルバムで今までの広がり方よりもだいぶ大きくなったと思うんで、有難いですね。
yukaD : うちらを筆頭に盛り上げたいですね。
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——6月に下北沢のライヴ・ハウス9店で開催された「SHIMOKITAZAWA INDIE FANCLUB」に出演されてましたが、東京でのライヴの反応はどうですか?
yukaD : 正直、沖縄より全然反応はあります。沖縄でもCD買ってくれてる人は結構いるみたいなんだけど、なかなかライヴに行くまでに至らないみたいで、きっと沖縄の人は自発的にライヴ・ハウスに行って好きなバンドを見るよりも、部屋で酒を飲んでいる方が好きなのかもしれない。やっぱり田舎者なんで、文化的な違いで。
ヨシトアンデル : 沖縄にもロックのシーンが厳しいのは分かってるんですけど、でもやりたい事やってお客さん集めようっていう気持ちが強くて、なかなか思うようにはいかないけど、徐々に来てくれる人の数も増えてはいるんですよ。だけどこっちに来た時の反応がすごくいいんで、最近はこれをモチベーションにして地元で頑張ってるところはありますね。
yukaD : ライヴも増やしたいんですけど、海を渡ると金銭的に大変なんですよね。まだ陸続きだったら車飛ばして行けるんですけど。
ヨシトアンデル : 距離で遮断されてるところはあるよね。情報的にも。
——大変そうだけど、ライヴは見たいので頑張って増やしてください(笑)。今後の予定など何か考えてますか?
yukaD : 今はリリースに向かって出し切ってるところなので、次の曲とかは何も考えてないです。もっと聴いてもらえるようにしたいですね。沖縄以外のライヴも増やしたい。
ヨシトアンデル : 早く沖縄から本州間の高速道路が開通すればいいんですけど(笑)。
聴けば聴くほど癖になる
相対性理論 / ハイファイ新書
Perfume以降の新世代ポップ・シーンを牽引するバンド、相対性理論の新作『ハイファイ新書』発売しました。萌え文化とリンクしながらアンダーグラウンドとも直結。淡々としているけど、突き刺さってくる言葉の群。『00年代後半のうた姫?』センスが逸脱しております。ネクスト・ジェネレーションのナンバー・ガール的存在。
Spangle call Lilli line / forest at the head of a river
交錯する、スパンコールの光りと影。12年目のスパングル・コール・リリライン9thアルバムは、人気インストゥルメンタル・バンド・toeの美濃隆章との共同プロデュース作品。バンドでのセッション&一発録りを中心に、国籍もジャンルも不明、不思議な世界に迷い込んだかのような曲が集まった長編物語のような作品は、なんと全6曲/50分という密度!! ototoyでは、HQD(24bit/48khzの高音質wavファイル)での販売。少しずつ変化しながら進んでいくサイレントでドラマチックな展開を、高音質でどうぞ。
オストアンデル profile
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左から : mollyLo(Vo,G)、 yukaD(Vo,G)、ゆういち(B)、 ヨシトアンデル(Ds)
01年yuka-DとmollyLoで東京にて結成。04年沖縄に帰郷、ヨシトアンデル加入。05年に3人で初ライブ、3人の初音源完成。08年1stアルバム『music』でインディーズ・デビュー。09年ゆういちが、サポート・ベーシストとして加入。そして、2010年曽我部恵一プロデュースにより2ndアルバム『ostooandell(オストアンデル)』をリリース。
メンバーによるblogはこちら!!
・ヨシトアンデル blog
・yukaD blog
・molyLo blog
LIVE
2010/7/17(土)【amayadori / ameagari】@沖縄 G-shelter
open 19:00 / start 20:00