
ひとたび声を出せば、途端に世界を自分のものに変えてしまう。女性シンガー・ソングライター、Kajon(カオン)の9月10日にリリースされるファースト・アルバム『Hallucination』を先行配信&フリー・ダウンロード配信開始。本作では、サックス、ヴァイオリン、鉄琴など様々な楽器を従え、作曲、アレンジ、プロデュースまでを一人で行い、ジャズ、ソウル、クラシック、たまにロックの要素を含む。幼少の頃より合唱団に所属し、世界を回り見て来た彼女の独特の声。純真な世界観を、十二分に楽しめる作品となっている。
>>>フリー・ダウンロード曲「Crowded Clouds」はこちらから
メランコリックでドラマチックなファースト・アルバム
Kajon / Hallucination ~すべてのひとびとが笑いあって うそや偏見のない世界を信じていた女の子のおはなし~
【Track List】
1. Intro ~World of~ / 2. Hallucination / 3. Crowded Clouds / 4. Sweets / 5. 別腹の曲 / 6. World of… / 7. I'm here / 8. I'll reach the park / 9. YOU
ビザールでポップな悲喜劇
個人的な話から始まり恐縮だが、今回紹介する内田香織ことKajonとはもう8年の付き合いになる。初めて出会ったのはお互いにまだ10代の頃、ただの大学のサークル仲間として知り合った。その後同時期に上京し、私は文章の、彼女は音楽の道を志し、互いの気持ちを高ぶらせるためにしょっちゅう顔を合わせては熱く語り合った。そんな彼女をよく知る人間として私がこの文章を書くこととなったのだが、この作品を聴き、私はもう彼女について知った顔は出来ないなと思った。彼女の活動遍歴をずっと追い続けてきてはいたが、こんなアーティストを、こんな音楽を私は知らない。

「Sweets」は在学中、彼女を中心に結成されたジャズ風味のポップ・バンド、内田香織 with SWEETS BANDで生まれ、もう5年以上歌い続けられている楽曲だ。この曲は無邪気さと純粋な欲求(食欲)が溢れ、彼女自身の天真爛漫なキャラクターをそのまま映し出している。お菓子の家の中で、にまにまと歌いながらドーナツやキャンディを頬張る彼女の微笑ましい姿が目に浮かぶ。これが私の知っているKajonの音楽だ。しかし「Crowded Crlouds」では全く違う顔を見せている。木製のからくりおもちゃのような、カタカタコロコロと楽器がぶつかり合う音で始まり、トイ・ポップなのかと思いきや、突如その音の向こうで笑い声が響く。マイケル・ジャクソンの「スリラー」のエンディングに聴こえる、あのモンスターの笑い声にそっくりだ。「何者だ? 」と警戒しつつも、このドラキュラ伯爵の様な低音で高らかに響くその笑い声は、初めて聴くものではなかった。そう、これはKajonの声だ。その後、さ迷い歩くかのような不安げなテンポで歌が入る。こちらの声はとても女性らしく、先ほどの笑い声とはまるで別人だ。その周りでは彼女を導くかのように、危険な道へ誘うかのように、様々な音がところ構わず鳴り続けている。その道を歩く中で彼女は何かを発見したのだろうか。突然、確信めいた声で高らかに歌い出す。そう、これは完全なるミュージカル・ソングだ。奇妙な世界観と無邪気さを持つ物語、「不思議の国のアリス」、それもディズニー版ではなくヤン・シュヴァンクマイエル版の方。ビザールでポップな悲喜劇だ。

純真無垢、天真爛漫、そんな言葉がよく似合っていたKajonは、どこで何に出会い、このような不快感と快感を同時に感じさせる音楽を作れるようになったのか。実は思い当たる節がある。大学4年生の頃、それまで主にポップスを聴いていた彼女が、誰かに勧められたのか、急に熱心にbjorkに傾倒し始めたのだ。しかしその頃はまだ「bjorkに憧れている女の子」だった。それでもその歌声を似せれるだけで十分才能だと思っていた。しかし今、彼女は何かに憧れているだけのシンガーではない。影響源の音楽を食べ、自分の体内で消化し、誰の介入も許さない自分だけの音楽世界を吐き出す一人の女性アーティストだ。ある日、彼女が急に「来年、ヨーロッパへ行こうと思うの」と言いだした。「ヨーロッパの、どこ? 」「どこかはわからないけど、ヨーロッパ。」「旅行? 」「ううん、3年ぐらい住もうと思う。そこで音楽を作りたい。」あまりの無計画さに少し心配していたが、このあまりにも自由奔放な作品を聴いて考えを改めた。彼女は、彼女が知らない世界へ行った方がいい。帰ってきたらそこで見た景色を音で教えて。私の知らない世界を見せてほしい。 (Text by 水嶋美和)
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レコ発開催決定!!
Kajon レコ発ワンマン・ライヴ虹
2011年9月4日(日)@吉祥寺MANDA-LA2
OPEN / START 19:00 / 19:30
adv / door 2,300yen / 2,500yen
PROFILE
Kajon(カオン)
歌好きの父の影響を受け、幼少より歌を歌う。初ライヴは3歳。地元広島の合唱団へ所属し約10年間ソプラノを担当。度々オブリガードを任される。その活動の一環として、国内、海外で幅広く演奏する。大学進学のため大阪へ。 上京前大阪ラスト・ライヴを心斎橋Club☆Jungleにて自主企画ワンマン・ライヴを行い100人近く集客する。 2008年4月に夢を追い求めて上京する。11月に声だけを多重録音し、一人でステージに立ち始める。2009年9月Ponta Boxのオープニング・アクトを務める。2010年6月広瀬香美のUstream生放送Friday Kohmiに出演する。現在、東京、大阪を中心に活動中。