
“商店街ポップ”バンド、来来来チームがミニ・アルバムと共に初見参
来来来チーム / 天国
これぞ、2012年のシティ・ポップならぬ「商店街POP」。自らそう標榜する来来来チーム初のプレス・ミニ・アルバム! 淡々としたメロディとツボを押さえた演奏はクセになること間違いなし。かつてのバンド・メンバーでもある大竹康範(ex.マヒルノ、LAGITAGIDA、sajjanu)が1stDEMOに引き続き、マスタリングまでを担当。
1.ミラクル / 2.天国 / 3.ゴールデンタイム / 4.シャボンボール / 5.来来来世紀(2012年1月9日ライブテイク) / 6.シャボンボール(2012年1月9日ライブテイク)
商店街(日常)の隙間から桃源郷(非日常)を見つけたような高揚感
70年代のはっぴいえんどを始め、80年代から90年代にかけてはピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギター、90年代終盤にはキリンジ。渋谷系の盛り上がりと共に、地方出身者の東京に対する憧れがピークを迎えた90年代、シティ・ポップもピークを迎えた。しかし00年代以降、誰もが都会的なイメージを抱けるいわゆる“シティ・ポップ”は登場しただろうか? 代表的なアーティストがなかなか現れない中、2007年、「シティ・ポップになりきれない“商店街ポップ”」という新ジャンルが誕生した。もっとも、このジャンルのバンドはまだ一組しかいないのだが。

2007年に結成し、2010年より本格的に活動を始動した商店街ポップ・バンド、来来来チーム。ボーカル&ギターの山下泰平、ギターの荒本祥典、ベースの柴田裕史、ドラムの張江浩司からなる4人組で、都内を中心に活動を続けている。そんな彼らの音楽にはクールさ、ドライさはなく、シティ・ポップ特有の要素として残っているのは飄々としたポップさだけ。この潔さから察するに、「なりきれない」と言いながら、敢えて削ぎ落としているのではないかと思う。その代わり、肌馴染みのいい音、声、耳触りよく刻むリズム、身の回りにある日本語中心の歌詞からは、溢れるほどの生活感が感じられる。しかし生活感はあれど、「地に足が付いた」という感覚とはまた違う。むしろ聴いている間、足が少し宙に浮いているよう。漂い続けるメロディーを耳で追い続けながら、曲の最後で着地する。浮いている間はうっとりするほど夢心地で、ふと「桃源郷」という言葉が脳裏をよぎる。例えば、日曜の夕暮れ時の買い物帰り、店から出ると街全体がピンクに染まっている。振り返るとオレンジの夕焼けが空いっぱいに広がっている。ノスタルジーとファンタジーが入り混じる風景、来来来チームの音楽を例えるならそれだ。商店街(日常)の隙間から桃源郷(非日常)を見つけたようなお得感と高揚感。生活していくことにいっぱいいっぱいで遠くの街へ憧れる余裕を持てない今、こんな風に日常をより愛させてくれる“商店街ポップ”の方が時代にしっくりきているのかもしれない。
聴く時の気持ち次第で日常の音に近い穏やかなポップスにも、現実から桃源郷への逃避行を誘う柔らかなトリップ・ソングにも成りえる来来来チームの音楽。そこに表現への苦悩は感じられず、とにかく楽しもうとする彼らの姿勢が窺えるので、ラフな気持ちでヘッドフォンに向かうことができる。また、先ほど「宙に浮いている」イメージをくどくどと説明したが、最後のライヴ・テイク2曲では印象ががらりと変わり、ステージ上の躍動がそのまま伝わる男前な演奏を聴かせてくれている。6曲でこのバンドのほぼ全景が見渡せる本作『天国』は、これから名刺代わりになる作品として完璧だ。タイトル曲「天国」のPVもTHE BEATLESの「Lucy in the Sky with Diamonds」を彷彿させる秀逸なトリップ・アニメーションに仕上がっているので、そちらと併せて来来来チームというバンドをこの機に存分に楽しんでほしい。(text by 水嶋美和)
RECOMMEND
シャムキャッツ / GUM
東京インディーズ・シーン新世代の大本命バンド、シャムキャッツによる初のミニ・アルバム!! 日本語ロックの歴史を継承した、ユーモアと閃きに満ち溢れたストレンジ・ポップ集!!
夏目知幸(シャムキャッツ)×カシマエスヒロ(BOSSSTON CRUIZING MANIA)対談はこちら
ウリチパン郡 / ジャイアント・クラブ
時空を超え日本へ! 新世界ポップ・ミュージック絵巻の誕生!!! 心の琴線に触れるメロディアスな歌と、斬新かつ安定感のある楽曲アレンジ。あくまでJ-POPのフィールドに落とし込まれたジャズ・ブラジル、はたまたアフロビートやフォルクローレまでも彷彿させるサウンドに日本語詩が共鳴する。太古の時代から近未来まで、歪曲した時空で生まれた全く新しい宇宙ポップスの登場!
ヨシュアカムバック / 組曲「明日」
2000年、音楽サークルの先輩・後輩で結成。“オルタナ〜プログレに恋をしたユーミン”とも言うべき風変わりな音楽性が一部の好事家から支持を受ける。 05年、PANICSMILE吉田肇氏が主宰するheadache soundsのコンピ『headache sounds SAMPLER CD Vol.4』に参加。メンバー・チェンジ、活動休止を経て、3年ぶりの新音源『組曲「明日」』を発表。
LIVE SCHEDULE
来来来チームプレゼンツ「来来来世紀で会おうよ 5 天国よ! ここは、天国よ!」
2012年4月30日(月・祝)@秋葉原CLUB GOODMAN
【出演】来来来チーム、the mornings、スカート、杏窪彌(アンアミン)、ライムベリー
OPEN 17:30 / START 18:00
adv¥2,000 /door¥2,500
PROFILE
ボーカル、ギター、作詞作曲 : 山下泰平
ギター : 荒本祥典
ベース : 柴田裕史
ドラムス : 張江浩司
2007年聖夜結成。
当初は仕事が忙しかったり他のバンドが忙しかったりで全く活動できなかったが、会社辞めちゃったりバンドクビになっちゃったりで、2010年やむにやまれず本格始動。「商店街ポップ」を標榜し、新宿motion、秋葉原GOODMAN、東高円寺二万電圧を中心にライブを行う。2010年9月より自主企画「来来来世紀で会おうよ」を開始。盟友H mountainsと共同で2011年6月に「山に来い」、2012年1月に「とんちんかんマンデー」を開催。どちらも盛況のうちに終了。今後も継続する予定。2012年4月に初の正式音源「天国」をtake a shower recordsより発売予定。
なお、チームメイトはいつでもいくらでも増員募集中。
希望はないが、毎日わりと楽しいのである。