亜熱帯経由、宇宙行き? くふきの1stアルバムが到着
くふき / くふき
どれにも似て非なる宇宙規模の無国籍ポップ・サウンドが新春一番にやってきた! タイの屋台と乾いたジャングル、ガンジス川とチャイナタウンとの交差地点を、ミラーボールと赤提灯が照らし出す、騒げや踊れの万国大博覧会! 2011年夏に活動休止を発表したtobaccojuiceのボーカル・松本としまさ参加の新ユニット・くふき、満を持してデビュー!
「ウリチパン郡に大瀧詠一が加入したら」という謳い文句でくふきのことを知った。アジアン・サイケの要素とポップの要素を絶妙に絡めているところはなるほど言い得て妙だが、聴けば聴くほどそんなに穏やかなものではないことがわかってくる。足は地に着いているのに、脳は直接宇宙とコンタクトしている。コーヒー2杯で少しハイになった状態で「大迫力」のPVを見た時には、めくるめく色彩のパレードと静かに重なる信号的な音にトリップしそうになった。
と、少し危険な香りを漂わせながら紹介しつつも、そこまで神霊・宗教じみている訳でもない。雅楽やお囃子のような日本固有の音を混ぜながら、YMOばりのにくいシンセ・サウンドでレトロ・フューチャーな世界を作りだす。と思えばバリ島に古くから伝わる「ケチャ」の掛け声も登場し、「コップンカー」とタイ語でご挨拶。曲名も「サムギョプサル」「アジアの旅人」「香港ヤキソバ」と、極東のキーワードが多く散りばめられている。亜熱帯地方の妖しさと危うさ、合間に聴こえるエキゾチックな声はLAKI LAKI was 真保☆タイディスコを想起させる。しかしプロフィールに「くふきのサウンドは人類540万年の祈りであり、悠久の地球をたたえるものである」と記載されているように、身近な音を手にしながら、視線はもっと遠くの点をとらえているようだ。亜空間か? 桃源郷か? また、「こんのの力強いビートにさいとうが壮大な電子音をのせ、それをとしまさが念力で制御」とも書かれている。やはり危険な香りがすることは訂正しないでおこう。
彗星のごとく突如現れたかのようなくふきだが、メンバーのとしまさとは2011年夏に活動休止宣言をしたtobaccojuiceの松本敏将のこと。ロック、ブルース、レゲエを基調とした優しい音楽を奏でるバンドで長年ボーカルを務めて来た彼だが、くふきでは「念力」も担当している。そこにこんのの「リズム」、さいとうの「シンセ」が加わり、この3人組の“愉快な肉体派音響ユニット”が完成した。本作がデビュー作となるが、既にライヴでO.N.O a.k.a Machine Live(THA BLUE HERB)ややけのはら+DORIANなどとも共演を果たしている。彼らの音を初めて見た時、昔どこかで見た「強すぎるひらめきは狂気です」という言葉を思い出した。くふきにぴったりの妙に変でかっこいい言葉だ。この言葉を見つけた場所は、チャネリング(宇宙人、神、使者などの霊的存在と交信するための儀式。U.F.Oを呼ぶ時などに円陣を組むアレです)の方法を説く、少し怪しげなウェブ・サイト。それを頭に置いて再び「大迫力」のPVを見ると、彼らもまさに円陣を組み手を合わせ、チャネリングしていた。再生ボタンを押したが最後、あなたの脳は1時間8分の宇宙への小旅行に出かけてしまうだろう。ライヴに行けば体ごと連れ去られてしまうかもしれない。なんて考えるとわくわくしてしまう。2012年初っ端から、色んな意味で危険な作品が出ましたね。(text by 水嶋美和)
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PROFILE
こんの(electronics)、さいとう(syn.)、としまさ(vo.)が結成した肉体派音響ユニット。構想30年、交遊10年余、制作2週間を経て、待望のデビュー。こんのの力強いビートにさいとうが壮大な電子音をのせ、それをとしまさが念力で制御。世界中の音楽に思いを寄せ、何も考えず念力に従い楽曲を制作するそのスタイルは他に存在し得ない独自の音楽次元を生む。くふきのサウンドは人類540万年の祈りであり、悠久の地球をたたえるものである。例えるならテクノ・スピリッツ溢れるワールド・ミュージックにR&Bの力強さを加え日本の土壌で熟成させたコズミック・サウンドである。2010年春にはファースト・ライブ・アルバム『ふかみどり』を発表。2010年秋、初のスタジオ録音盤はwonderyouから世界同時発売。