斉木祐介(Heart Beat Rockers主宰)インタビュ―
世の中にはたくさんの音楽好きがいる。しかし音楽に寄せる思いは人によって違うし、そこに対してどんなアプローチをするかも人それぞれだ。それでいい。各々に音楽を楽しもうじゃないか。音楽への思いは、それぞれの中にさえあればいい。
そう考えていた私に、「その思いを一つの場に集めて、何かできないか? 」という問いを投げて来たのが、6月に始まったばかりの新しいイベント、Heart Beat Rockers主宰の斉木祐介だ。「何か」について問えば、「まだわからない」と答える。曖昧な印象を受けながらも、第一回目のイベントが行われた渋谷屋根裏へ訪れた。そこに出演したMOROHAのライヴを見ながら、以前、インタビューで曽我部恵一がMOROHAにつて「見届けたい」と話していたのを思い出していた。そして、このイベントを見ながらその気持ちがわかった。斉木の求める曖昧なものはまだ明確ではない。ただ、彼が模索の果てに、いつどこでどんな明確な「何か」を見つけるのか、見届けたいと思った。このインタビューを読んで欲しい。彼はまだまだ模索しっぱなしだ。
インタビュー&文 : 水嶋美和
『Heart Beat Rockers』へ3組6名様をご招待!
『Heart Beat Rockers』
2011年9月18日(日・祝前日)@渋谷WOMB
前売り : 3200円 /当日 : 3700円 (別途ドリンク500円)
出演 : カラーボトル、小林太郎、suzumoku、SOFFet、LUNKHEAD、他
開場 : 14:00 / 開演 : 15:00
チケット購入方法 : 渋谷タワーレコード店頭、e+、ローソンチケットにて、2011年8月6日より販売開始。
【無料招待への応募方法】
件名に「Heart Beat Rockers 招待券希望」、本文に氏名、住所、電話番号、見たいアーティストをご記入の上、info(at)ototoy.jpまでメールをお送りください。
当選者の方には、追ってメールにてご連絡します。
※あらかじめinfo(at)ototoy.jpからのメールを受信できるよう、設定ください。
【応募締切】
2011年9月3日24時まで
『Heart Beat Rockers』 プレ・パーティ開催決定!!!
2011年9月11日(日)@池尻大橋2.5D
出演 : やついいちろう、高山都、O-ant(TOKYO BOOTLEG)、他
→→詳細はHeart Beat Rockers 公式 twitter(@hearbee)にて!
お問い合わせ先 : info(at)heartbeatrockers.com
一回で終わらせたくないという気持ちが先にあったんです
――このイベントを企画しようと思ったのはいつ頃ですか?
3月11日後ですね。前から頭の中では考えてはいたんですけど、これは今やるのがいいなと思ったんです。
――でもチャリティ・イベントではないですよね?
違いますね。3月11日のことは、行動を起こすきっかけにはなったんですけど、あまり強く結び付けるのもしっくり来なくて。
――「音楽で出来ることを模索、行動、計測、発表する」というコンセプトがありますが、この「発表」はどうやるんだろうって、すごく気になってるんです。聴き手としてはライヴって基本その日限りだし、良いライヴだったらレポートにして残しておこうとも思うけど、そこで一度消化が終わるんですよね。だからみんなが各々ライヴで持ち帰ったものを後日集まって見せ合おうよっていうのが珍しいなって。
それ面白いですね。
――え!?
いや、発表方法についてはまだ何も考えてないんですよ。カフェを一週間貸し切ってアフター・パーティー的なイベントを行うんですけど、写真を飾る以外に何をすればいいかなって。
――ではなぜこの方法を取ろうと思ったんでしょう?
まず、一回で終わらせたくないという気持ちが先にあったんです。なので、あまり終わらせ方も考えず、それすら模索しながらやっていくのも面白いかなって。来てくれた人以上に僕が模索しっぱなしな訳ですけど(笑)。うん、ライヴ・レポートを集めるのもいい案ですね! (メモをとる)
――模索してますねえ(笑)。
一人で考えてもつまんないなと思ってて。出演者、スタッフ、お客さんみんなで模索していきたいんですよ。今はスタッフすらいないけど(笑)。
――スタッフは募らないんですか?
Twitterでハービーくんが「スタッフ募集中ダヨ」って呟き始めたところです(笑)。
――斉木さんがRADWIMPSのメンバーだったのは高校の頃ですよね? 何で抜けたんですか?
まあ、音楽性の違いってやつですかね(笑)。
――よく聞くやつですね(笑)。
とは言え、在籍当時はRADWIMPSの自主企画のブッキングも自主制作のCDのアートワークも自分がやってたので、今にかなり繋がってますよね。DIPACK(斉木が代表を務める株式会社)はイベンタ―もやってるし、CDのデザインもやるし。
音楽は新しい人に出会うための、会いたい人に会えるためのもの
――Heart Beat Rockersを2回やって、見えてきたことってありますか?
言い辛いな~。今日言ったこと全部使わないでくださいね。
――いや使いますよ。何で今日来てくれたんですか(笑)。
まだまだ厳しいな、試行錯誤が必要だな、というのが正直なところですね。ブッキングにせよ、宣伝にせよ、イベントの作り方にせよ、工夫を重ねなくては。人が集まらないとコンセプトにある「音楽でできること」も大きいことができないですからね。
――9月に大きいイベントが決まっていて、10月に発表の場をカフェに設けて、その後はどうするんですか?
また屋根裏に戻って繰り返そうかなと。
――どういう基準でバンドを集めているんでしょう?
基本的に屋根裏では若いバンドを、WOMBではみんなメジャーのアーティストですね。
――若いバンドをひっぱりあげたい気持ちはある?
それはありますね。屋根裏版をフジロックでいうROOKIE A GO GOの枠にしたいんです。次はWOMBを目指そう! みたいな。だからWOMBは毎回豪華で魅力的なブッキングにしないといけないんです。
――色々なジャンルのミュージシャンが出演しますが、斉木さん自身は普段どういうライヴへ行ってるんですか?
… ライヴ・ハウスにはあまり行かないです。
――お、おお… (笑)。第1回の時、小南泰葉さんがMCで斉木さんが脳梗塞で倒れた話をしてましたよね。
そうなんです。僕、渋谷屋根裏で倒れたんです。かっこよくないですか?
――軽っ(笑)! そう言えちゃうぐらい今は平気ってこと?
そうですね。でもそれでその時は右半身が不随になっちゃって、そこから楽器を辞めたんですよ。参ったなと思って。そこから退院して、会社を始めたんです。
――楽器を辞めても音楽に関わりたかったんですね。
そういうことですね。裏方に回ってでも関わり続けたいってことですから。 …あんまり音楽聴かないけど。
――さっきからちょいちょいそういう部分が見えてますけど大丈夫ですか(笑)?
楽しみ方は色々ですから!
――単純な発想ですけど、やはりそういう事件はこのイベントの発起にも影響したんじゃないかなって思ったんです。実際、斉木さん自身の「音楽でできること」もそこから変わった訳だし。
影響はありますね。とは言え、僕にとって音楽は新しい人に出会うための、会いたい人に会えるためのものなんですよね。音楽じゃなくても人それぞれそういうものがあるのだろうけど。でも僕は音楽に携わってて良かったな、好きで良かったなっていうのがあるので、そういう気持ちを共有出来る場が欲しいんです。何ができるかもいいけど、みんなが何を得たのか、単純に聞きたいし、僕も話したい。それだ! (メモをとる)
――(笑)。でもいいと思います。仰々しくなくて。
堅苦しくなるのも嫌だなって。でも「楽しければいいじゃん」とも言いっぱなしにして終わらせたくもない。
このイベントを自分のメディア、発信場所にしたい
なるほど! それ俺が言ったんでしたっけ? (メモをとる)
――AR三兄弟です(笑)。でも斉木さんの話を聞いていてそういうことかなって。フットワークが軽くなる言葉ですよね。
それもいいですね。俺が言ったんでしたっけ?
――今のは私ですね! Heart Beat Rockersを続けて、斉木さんがその先に求めているものは何ですか?
規模は大きくしたいですよね。小さい所でこそこそやってても伝わらないので、多くの人を巻き込めるようになりたいです。そしてこのイベントを自分のメディア、発信場所にしたい。今ある訳じゃないけど、言いたいことが出て来た時にいざ叫んでみても声が小さいのは嫌だなって。TwitterでいうところのRTみたいな。
――ん? どういうことですか?
昨日Twitterで友達が「雀を拾ったんですけどどうしたらいいですか? 」ってつぶやいてて、俺、何も出来ないなと思ったんです。困ってる人を見ても的確な意見も言えないし、RTぐらいしか出来ない。でも僕にフォロワ―がたくさん居たらRTだけでも十分大きな声になるじゃないですか。
――震災が起こった日のTwitterもRTだらけでしたよね。その中でもやはり、著名人がするRTは影響力があった気がします。
そういうことです。影響力の大きい人は必要だし、自分もそうなりたいですよね。… 影響力を持ちたいって、ピッコロ大魔王みたいですかね?
――そんなことないですよ(笑)。
うん、でも面白がってもらえる人にはなりたいです。
――イベントとお客さんの距離がもっと近いといいかもしれないですね。
確かに、こういう風にインタビューをしてもらって中の人の顔が見れるのはいい事だなって思います。どういう思いでやっているのかイベント当日にステージでマイク持って話すのもどうなんだって話だし(笑)。あと、考えてくださいって言われないとなかなか考えられないんで、いい場をもらってますね。今も話しながら、我ながらふわふわしてんなって思ってます。
――(笑)。先ほど一回で終わらせたくないと話していましたが、それはなぜですか?
何でだろう。何か、かっこいいじゃないですか、続けることって。みうらじゅんが「ロックするのは簡単だけどキーポンするのが難しい」って言ってて、それいいなって。今はまだ始めてばかりで、内容も漠然としているし周りにとやかく言われることも多いけど、とにかく続けていくことだと思います。それが前提にあるので何を言われても屁のかっぱですね。ブッキングのジャンルにこだわりがないとか言われても、そんなことにこだわらないよ。具体的じゃないって言われても、重ねていくことで固まっていくんだよ。そう思ってます。
――前回のブッキングはどういう風に決めたんですか? 確かにジャンルの統一はされてませんでしたよね?
僕がジャンルで聴かないからよくわかってないんですけど、第一回に来て、どうでした?
――最後にネズミハナビが出た時、わっと女の子が前に集まってきたのが衝撃的でした。バンド・マンってまだやっぱりもてるんだなあって。ロマンチックな感じのギター・ロックでしたね。
あれも特殊な文化ですよね。ボーカルの方は普段小説を書いている方で、前回のアルバムは全部女性目線で歌詞を書いていたそうです。
――あと、小南泰葉さんも驚きでしたね。歌や声は曲しっかりしてるんだけど、本人がすごい… 脆い、危ない感じ。手に包帯巻いてましたよね。
そうですね。彼女はYouTubeでRADWIMPSのカヴァーをしていて、あんまりに上手いんで声をかけちゃったんですよ。
――あとあの中にMOROHAが入っていたのも面白かったですね。あくまでも個人的な感想ですけど、普段見ない感じの音楽をいっぱい聞けた気がします。でも各シーンから集めてきた感じのブッキングだったから、誰の目にもそう映るんじゃないかな。
ジャンルもシーンもバラバラだけど、ちゃんと良さが伝わりやすいようにしたいですね。もっと統一感が出るように工夫しないとなって思います。こんなにジャンルが違うならライヴの間にイベントを仕切り直す司会役の人が居たっていいし。Mステも出演者はジャニーズ、外タレ、ロック・バンドとバラバラだけど、強い司会がいるのと、歴史があるからいいんですよね。
――では、今後のHeart Beat Rockersではタモリを探すと。
そっか、ハービーくんにサングラスかけて七三にすればいいのか(笑)!
――はは(笑)。いや、タモリは七三ではないですし、斉木さんは何で会話にハービーくんが出てくるとそんなに笑うんですか? 自分で作ったんですよね?
あれ、タモリ七三じゃなかったっけ? ハービーくんね、かわいいでしょ(笑)。親バカなんですよ。司会じゃなくてデコレーションとかでも良いかもしれませんね。雰囲気が統一されて。色々な方向からHeart Beat Rockersならではの会場作りを考えていかなくちゃ。いやもう、本当に模索するイベントなんです(笑)。
『Heart Beat Rockers』 アフター・パーティー!!!
『Heart Beat Rockers cafe』
日時 : 未定(イベント終了後の9月下旬~10月上旬を予定)
場所 : 渋谷某所(ギャラリー兼カフェをジャック予定! )
内容(予定) : アコースティック・ライヴ、「音楽で、できたこと。」の発表(初日、最終日)、イベント当日の写真展示、アートワークを担当したイラストレーターの作品展示、録りおろしアーティスト写真(オフ・ショット含む)の展示など
Heart Beat Rockers出演者の作品はこちら!