菊地成孔トーク・イベント「ナイト・ダイアローグ・ウィズ vol.4」
Ustream等のインターネット・メディアが盛んになればなるほど、生を求めてライブ・ハウスやイベント・スペースに人が集まっているのも事実。ライブだけでなく、各地で毎晩行われているトーク・イベント等にはたくさんの人が集まり、熱狂や歓喜に包まれています。そんなイベントを、全国の人達に知ってもらいたいという考えの元、OTOTOYでは新企画として、トーク・イベントの配信をスタートします。その内容は、2010年4月27日(火)に東京・Hakuju Hallにて開催された、ジャズ・ミュージシャン、プロデューサー、大学講師、文筆家として活躍する菊地成孔のトーク・イベント「ナイト・ダイアローグ・ウィズ vol.4」。ゲストは、TOKYO CROSSOVER / JAZZ FESTIVAL発起人で渋谷のクラブTHE ROOMのプロデューサー、そしてKYOTO JAZZ MASSIVEとしても活躍する沖野修也と、ジャズ・バンドquasimode(クオシモード)のキーボーディスト平戸祐介。“ジャズは儲かるのか?”をテーマに、ジャズ業界の経済性をめぐってリアル・トークを繰り広げます。ボーナス・トラックとして、トラック4には、菊地成孔の未発売音源「Elizabeth Taylor Fast(LIVE)」も収録。80、90、ゼロ年代のカルチャーを前線で引っ張り続けてきた要人は、一体何を思考し作品を作り続けるのか? 約1時間半のトークに、様々な思いを巡らせてお楽しみください!
菊地成孔のナイト・ダイアローグ・ウィズ vol.4
2010/04/27(火)@東京・Hakuju Hall
HOST : 菊地成孔
GUEST : 沖野修也 / 平戸祐介
1. PART.1(28分22秒)
2. PART.2(27分32秒)
3. PART.3(31分18秒)
4. Elizabeth Taylor Fast(LIVE)(菊地成孔未発売音源)
菊地成孔関連作品をHQDで!
「ナイト・ダイアローグ・ウィズ vol.4」のリリースに合わせ、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールの『記憶喪失学』『ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ』、菊地成孔と南博の『花と水』の音源も一挙販売開始。ファイル形式は、HQD(24bit/48khzのwav)とmp3です。菊地成孔の多才な表現を、様々な角度から覗いてみましょう!
菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール『ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ』
1 キリング・タイム / 2.ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ / 3.アリア 私が土の下に横たわる時〜オペラ「ディドとエネアス」より / 4.行列 / 5.儀式〜組曲「キャバレー・タンガフリーク」より / 6.時さえ忘れて / 7.導引 / 8.嵐が丘 / 9.暗くなるまで待って
菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール『記憶喪失学』
1.映画「バターフィールド8」 〜 バターフィールド8のテーマ / 2.メウ・アミーゴ・トム・ジョビン / 3.クイズ番組のTVCMの悪夢 / 4.映画「アルファビル」 〜 悲しきワルツ / 5.チューインガムのTVCMの悪夢 / 6.バイレ・エクゾシズモ / 7.航空会社のTVCMの悪夢 / 8.ソニア・ブラガ事件 / 9.大天使のように / 10.恋とは何か貴女は知らない / 11.映画「8_」 〜 それから‥‥(ワルツ)より / 12.エアコンディショナーのTVCMの悪夢
菊地成孔と南博『花と水』
1.即興の花と水(一) / 2.フォール / 3.即興の花と水(ニ) / 4.作曲された花と水 / 5.即興の花と水(三) / 6.ブルー・イン・グリーン / 7.即興の花と水(四) / 8.オレンジ色は彼女の色 / 9.ラッシュ・ライフ / 10.即興の花と水(五) / 11.ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング / 12.即興の花と水(六) / 13.チェンバロ協奏曲 第五番 ヘ短調 BWV.1056 第二楽章:ラルゴ / 14.即興の花と水(七)
当事者であり、目撃者であり、証言者である。
一年と少し前の8月中旬、22時頃のこと。何となくテレビのチャンネルをNHKに合わせていると「爆笑問題のニッポンの教養」という番組が始まった。この番組は司会の爆笑問題の二人が毎回様々な大学の教授を訪ね話を聞きに行く… というより、結果的には太田が論争をしかけるという内容で、その日の放送は東京芸術大学キャンパスにて、学長と、あらゆる学部の数百人の学生と、番組の音楽を担当し東京芸術大学の講師も務める菊地成孔が、「表現とは何か?」というテーマで白熱した議論を延々と繰り広げるというものだった。一つの答えが出るわけでもない議題に、それぞれ言いたい放題のありとあらゆる意見が飛び交う中、菊地成孔の発言は常に極めて的を射ていて、彼が一言発するとホールは少しの間だけ静まり返り、落ち着き、また騒ぎ立つのを繰り返していた。テレビに向かって一緒に白熱した討論をしていた父は番組終了後に私に向かって言った。「この菊地成孔って人は何者だ!?」
番組内で「ジャズ界のカリスマ」として紹介された彼は、サックス奏者でありボーカリストであり作曲家でもある。彼の奏でるジャズはロマンチシズムとナルチシズムに溢れ、聴く者を必ず別世界に連れて行く。先日の菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール5周年記念のライヴでは終演時に客席からバラの花束が投げ込まれていた。なんて酔わせ上手なジャズ・ミュージシャンなんだ。しかしその音楽性はジャズに限定されておらず、それは彼主宰のユニットやバンドの活動からも窺える。92年に結成されたボーカル・デュオ・グループSPANK HAPPYはピチカート・ファイヴさながら都会の憂鬱を軽い声でポップに歌い上げ多くの音楽ファンから高く評価されるも、なぜかライヴではカラオケ・トラックと口パクのみ。妙なインパクトを我々に残したまま06年に解散した。そして99年には思想も意も何も込めないただ「戦争そのものであるような音楽」を作るべく、11人構成(後に14人)のビッグ・バンドDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENの計画を始動。07年に解散してしまったが、ステージ上で客席に背を向けひたすらCDJとキーボードをいじる彼の後ろ姿はこれまた妙に印象深かった。これらの音楽活動は、きっとジャンルに縛られないなどという次元の話ではなく、全て菊地成孔の頭の中で起こっている事件がそのまま頭の外に飛び出した結果に過ぎないのだろう。
そして彼の音楽性がジャズに留まらないのと同様に、彼の職業もミュージシャンに留まらない。文筆家としての才能も顕著で、主著・共著合わせてこれまでに13冊の本を出版している。その中でも一冊目に当たる初エッセイ集「スペインの宇宙食」の解説には小説家のよしもとばななが文章を寄せていて、「人の頭の中に映像を残せる文章」と彼の文章を絶賛し、6ページを埋める全ての文字でもって愛情を伝えている。ちなみに彼女はこの本を読んだ後に感極まり直接「あなたは素晴らしい」という感想のメールを送るも、本人だと信じてもらえなかった上に挑発的な返信メールを食らったらしい。
更に、先述のとおり彼は東京芸術大学の講師であると共に、東京大学、慶應義塾大学、国立音楽大学でも教鞭を執り、私塾「私立ペンギン音楽大学」も主宰している。トークショーや他著名人との公開対談も頻繁に開かれていて、行って話を聞けば驚異的な知識の広さ・深さと頭の回転の速さ、饒舌さに度々驚かされる。聞いているこっちもトーク中ずっと頭をフル回転させ、会話の内容に付いていくのにとにかく必死。それでも、80年代から時代の少し先に立ち、ハイ・カルチャーとサブ・カルチャーの間を練り歩き、自らも作品を輩出し表現活動を続けてきた当事者であり、目撃者であり、証言者である菊地成孔の話は、どれも全てが興味深く、これからの時代を見据える為にも聞いておかなければならないことばかりだ。
この度リリースされるトーク・イベントの音源配信は今までに例のないものになるが、3分間ボーっとしてしまえば重要な言葉が100個は流れ去ってしまう、そんな彼のトークが音源化し自分の手元に残せるというのはとても有難い。彼の饒舌な話術と知識にはそれだけの価値があるのだ。更に同時に配信される菊地成孔とペぺ・トルメント・アスカラールと菊地成孔と南博の音源を聴けば、多岐に渡る才能によって見逃されがちな彼の純粋なジャズ・ミューシャンとしての姿も十分堪能して頂けるはず。
自身のホームページでも重度のワーカホリックを公言している程に日々忙しくしている人なので、これでも彼の仕事の全てには到底追いつけていない。今回はただある事実だけを連ねただけになってしまったが、次回では直接話を伺い、菊地成孔という人物の頭の中をもう少し探る事が出来ればと思う。様々な文化が過渡期を迎える今、80、90、ゼロ年代のカルチャーを前線で引っ張り続けてきた要人がこれからをどう見据えているのか、話を聞きたい。(text by 水嶋美和)
BIG NEWS!!!
2010年6月9日(水)に行われた菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールのLIVE音源を配信します。結成5周年記念として行われたそのライブは、見事としか言いようのない完成度。もちろんHQDでの発売のため、ライブでは聞き逃していた音でさえ、じっくり聞くことも可能。発売日は、7月中旬を予定。購入はOTOTOYのみ。詳細は、追ってOTOTOYサイトでお知らせします。
次回の菊地成孔のナイト・ダイアローグ・ウィズは?
vol.5はユナイテッドアローズ上級顧問の栗野宏文さん、WWDモバイル編集長の向千鶴さんとのファッション談義。パリコレに同行するなど気心の知れた仲間ならではの和やかな雰囲気のなか、ファッション界の裏話からジャズとの関わりまで縦横無尽に語り尽くします。vol.5もオトトイにて配信を予定していますので、お楽しみに!
2010年7月10日(土)@尚美バリオホール (東京都)
HOST : 菊地成孔
GUEST : 栗野宏文(ユナイテッドアローズ上級顧問) / 向千鶴(WWDモバイル編集長)
詳細は、こちら
PROFILE
音楽家/文筆家/音楽講師。1963年6月14日千葉県銚子市の歓楽街、観音町にある飲食店の次男として生まれる。大変な難産の末に無言/無呼吸で取り上げられ、死産が危ぶまれたが、数分後に爆発的な産声を上げた。そのまま1歳よりワーカホリックを発症。6〜7〜8〜90年代を通して、あらゆる歓楽街を舞台に膨大な遊びと仕事に耽溺する。音楽家としてのデビューは85年(25歳)、横須賀米軍ベースで、フィフス・ディメンションのバック・バンド、3番サックス奏者として。20世紀中の主なメンバー歴は山下洋輔グループ、ティポグラフィカ(今堀恒夫主宰)、グランドゼロ(大友良英主宰)。98年(35歳)で壊死性リンパ結節炎により東京女子医大・耳鼻咽喉科に入院、生死を彷徨うが完治。この入院(約二ヶ月)が人生最初の休暇となるも、退院後ワーカホリックが激化、DCPRG、第二期スパンク・ハッピーを主宰者として結成。各々ファースト・アルバム『アイアンマウンテン報告』(P-VINE RECORD)『コンピューター・ハウス・オヴ・モード』(キングレコード)を発表後、活動継続中。02年(39歳)不安神経症を発症。精神分析治療と内気効のコントロールをベースにした整体により緩解、治療開始時の約二ヶ月が人生二度目の休暇となるも、再びワーカホリックが激化。04年より新宿歌舞伎町、職安通り沿いのマンション最上階に仕事場を構え、アコースティック・ジャズ界に回帰、初のソロ・アルバム『デギュスタシオン・ア・ジャズ』とセカンド・ソロ・アルバム『南米のエリザベス・テーラー』を発表。各々のステージ・アクトの為にクインテット・ライブ・ダブとペペ・トルメント・アスカラールを結成。05年には「大停電の夜に」(アスミック・エース)の音楽監督として映画音楽界にデビュー、その後1年間で4作品を手掛ける。初プロデュース作は南博『タッチェズ・アンド・ヴェルヴェッツ』(04年/EWE)。
著作デビューは03年「スペインの宇宙食」(小学館)から。以後、精神分析学から服飾文化史、音楽理論史など、膨大な知識と妄想を駆使した饒舌な文体で、異形の批評家/エッセイストとして著書多数。対象は音楽、映画、料理、服飾格闘技に及ぶ。音楽講師としては私塾である「ペンギン音楽大学(*昨年8月を持って生徒募集終了)」をはじめ、02年よりアテネ・フランセ運営の「映画美学校/音楽美学講座」楽理・編曲科主任講師を継続中、04〜5年にかけては東京大学教養学部非常勤講師(「ジャズ〜20世紀アメリカ史」「マイルス・デイヴィス研究」)として講鞭を執り、総ての講義録を出版。06年からは国立音楽大学の非常勤講師(ジャズ理論史)に就任。新たな学術領域に入る。また、「エスクァイア日本版」のジャーナリストとして04年にブエノスアイレス、06年にモロッコとリスボンに赴き取材と撮影を敢行。05年は毎日放送「情熱大陸」、NHK総合「英語でしゃべらナイト」NHKBS2「井上陽水空想ハイウェイ4」などTVにも進出。
「時代をリードする鬼才」「現代のカリスマ」「疾走する天才」等と称されるが自覚まったく無し。「ぜんぜん寝てないでしょう」等と言われるも意外とそうでもなし。当面の目標は海外進出および、健康なまま、自分から申告して取るバカンス二ヶ月ほど。CD、著作とも代表作はオフィシャル・サイトにカタログ化してあるが、パーフェクトなディスコグラフィや活動歴(特に執筆歴)は本人にも編纂不可能。双子座のAB型。日課は散歩とストレッチ。好きな食材は鮪、鴨、メロン。ワインはサンセールのロゼ、パルファムはテュエリー・ミュグレーの「エンジェル」を常用。フォワグラは私財と共に自宅冷蔵庫に大量に保管してあるので大丈夫。
LIVE INFORMATION
- 2010/07/05(月)濱瀬元彦 The ELF Ensemble with 菊地成孔@JZ Brat
- 2010/07/06(火)ジョー・ザビヌル・トリビュート 坪口昌恭&菊地成孔@in F
- 2010/07/08(木)南博×菊地成孔×村井康司@新宿ジュンク堂書店
- 2010/07/10(土)菊地成孔のナイト・ダイアローグ・ウィズvol.5@尚美バリオホール
- 2010/07/25(日)本田珠也・大友良英 DUO@新宿ピットイン
- 2010/08/01(日)菊地成孔ダブ・セクステット FUJI ROCK FESTIVAL'10 @苗場スキー場
- 2010/08/12(木)南博トリオ@晴れたら空に豆まいて
- 2010/08/21(土)菊地成孔 南博「花と水」夏ノ道行@甲府 桜座
- 2010/08/27(金)芸術批評講座 感動を伝えるレッスン@月見の里学遊館
- 2010/08/28(土)菊地成孔 南博「花と水」夏の道行@月見の里学遊館
- 2010/09/04(土)naomi & goro " Afternoon Bossa Nova Live " @めぐろパーシモンホール