雨のパレード、ワンマン“Calm Before the Storm”で示した次なるフェーズ

静けさは、嵐の予兆だった。
雨のパレードが掲げたワンマン〈ame_no_parade ONE MAN LIVE “Calm Before the Storm”〉。2026年2月にリリースされた最新EPと同名のこの公演は、そのタイトルどおり「嵐の前の静けさ」と、その先に訪れる高まりを確かに予感させる一夜となった。
福永のボーカルは、ときに独白のような静寂を湛え、ときに内に秘めた感情を解き放つ。大澤のビートは音源以上に肉体的な躍動を帯び、山崎のギターは煌めきと清涼感をもたらす。そうして立ち上がったサウンドは、バンドが新たなフェーズへと踏み出したことを刻みつけていた。この日の模様を、レポートでお届けする。
LIVE REPORT :
ame_no_parade ONE MAN LIVE “Calm Before the Storm”
取材・文 : 小松香里
撮影 : 井崎竜太朗
2026年2月に4曲入りのデジタルEP『Calm Before the Storm』をリリースした雨のパレードが、EPのタイトルを冠したワンマン・ライブ〈ame_no_parade ONE MAN LIVE “Calm Before the Storm”〉を恵比寿リキッドルームで開催した。
開演前のリキッドルームには嵐の音が流れ、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gt/Syn)、大澤実音穂(Dr)とサポート・ベースの永井隆泰が登場。ゴスペルチックなコーラスから、会場は一気に異世界へと引き込まれる。そこへトランぺッターの寺久保伶矢が現れ、最新EPに収録されたネオソウル×ゴスペル曲「innocent feat. 寺久保伶矢」がオープニングを飾った。《正しい結末がこの手を引き剝がした 愛を求めた/I don’t know, why?/We got…》。福永のゴスペルマナーを踏まえた伸びやかな歌声。OTOTOYのインタビューで福永は、「innocent」は自らの幼少期の出来事に基づいた楽曲であり、「書こうと思っても書けなかったものが着地点を見つけられて、『初めてちゃんと書けた』という気持ちでいる」と語っていた。雨のパレードの楽曲に漂う切実な喪失感や深い傷の根本を反映した重要な楽曲でライブの幕を開けたこと自体、この夜の特別性を示していた。

福永が「Calm Before the Stormへようこそ。最後まで楽しんでいってね」と呼びかける。続いて披露されたのは、ゴスペル/ソウルの香りをたっぷり吸い込んだ「Praying Hands」。ハミングのようなコーラスに導かれ、多くのオーディエンスの手が上がる。2023年リリースのEP『Human Being』に収録された楽曲だが、ここでも引き続き寺久保が参加。スペシャルなコラボレーションが続く。さらに2024年リリースの6thアルバム『Strata』収録の「Icarus」でも寺久保が加わり、特別感を一層高めた。
福永が「早速1曲目からゲストを呼んでるんですけど」と笑顔で寺久保を紹介。音源で2組がコラボしたのは「innocent」と「Domino」だが、互いに「あの2曲はかっこいいよね」と自画自賛。相思相愛の関係性がうかがえる。福永が「今日は特別な1日にしたいと思ってます。最後まで楽しんでいってください」と告げ、「paradigm」へ。寺久保のトランペットが重なり、多層的な広がりを宿す。福永がファルセットのパートでハンドクラップを打つと、オーディエンスもそれに応えた。


トライバルなビートが鳴り響いた。「Melt」だ。シームレスに最新EPの「POLARIS」へ。音源以上に躍動的で立体的なアンサンブルがフロアを揺らす。「Count me out」では福永がジャンプを促し、オーディエンスは腕を掲げて跳ねる。会場の一体感は一気に高まった。
ビートが止まり、福永の「今日は寒かったですね。天候も世界情勢も不安定ですが、ここだけはそういうことを忘れて最高の1日にしたいと思ってます。最後までよろしくお願いします!」と語る。続いて演奏されたのは1stアルバム『New generation』収録の「Tokyo」。福永が鹿児島から上京した際の心情がメランコリックなギターロックに乗る。《変わらない夢を残して 変われない今を過ごしてる 戻らない日々をぼかして 戻れない僕を許して》。山崎のシャープなカッティングが福永の想いを拡張し、福永は右手を大きく動かしながらエモーショナルに歌い上げる。《調子はどう? I seem to be crazy》という吐露で楽曲を締めくくった。

ソウルフルなコーラスが響く中、福永がハンドクラップを促し、再び寺久保を呼び込んだ。『Strata』収録の「Yellow Gold」もトランペットが加わったスペシャル・バージョンに。さらに福永が「ここでもう一人スぺシャル・ゲストを紹介させてください!」と告げ、6人組オルタナティブ・クルー、S.A.R.のギター&MC担当、Imu Samを呼び込んだ。最新EPにも収録された「Domino feat.寺久保伶矢」のリミックス・バージョン「Domino2 feat.寺久保伶矢,Imu Sam (S.A.R.)」を披露。福永のマイルドなボーカルとグルーヴィーなImu Samのラップ、そして寺久保の流麗なトランペットが絡み合い、会場の熱量をさらに押し上げていった。


福永はこう語った。「気付けば長いことバンドをやってきました。下の世代のミュージシャンもでてきて、『あの頃あの曲聴いてました』と言ってもらえる世代になったんだなって。一緒にやっていたミュージシャンも辞めたり、また始めたり。音楽っていうのは辞められないのかなって。どんな形でも雨のパレードは続けていこうと思ってます。できるならずっとやっていきたい。これからも力を貸してください」。温かな拍手の後、厳かなシンセの音が響き、ゴスペル・テイストの「morning」へ。微睡むような歌が何気ない日常の幸せを描き出す。続く「if」ではシャープなギターリフとシンセが絡み合う。福永が「まだまだいけますか?」と呼びかけると拍手が沸き起こり、「じゃあみんなの声聞かせてもらってもいいですか?」の一声を合図に、シンガロングが巻き起こった。「summer time magic」だ。本編ラストは「new place」。浮遊感のある音像に低音のビートが加わり、リキッドルームが揺れる。ギターもベースもドラムもフルスロットル。無数の手が上がり、会場は特大の熱気に包まれた。

アンコールを求める拍手がしばらく続いた。メンバーが再登場すると、大澤は鳴り止まない拍手に「うわ、嬉しい! すごく良い笑顔!」と声を上げ、喜びを露わに。「浩平もMCで言ってたんですが、ここまで続けてこられたのは皆さんのおかげだと思っていて。返していけるように、また会える日まで頑張ります!」と口にした。山崎は照れくさそうに「(本編ラストの)『new place』の最後、すごいやかましくなってしまってすいません(笑)。何かバグってしまいました」と、先ほどのゴリゴリのグルーヴを振り返って謝罪し、場を和ませる。さらに、この日のワンマンが雨のパレード史上最多曲数だったという話題でひとしきり盛り上がると、永井がベースで「Happy Birthday to You」を奏で始めた。永井が、4日前に誕生日を迎えた山崎へ誕生日プレゼントを手渡す。箱を開けると、中から現れたのは芋焼酎のARAWAZA。福永が「鹿児島人は毎日寝る前に芋を飲んでるからね」と茶化すと、山崎は洒落たボトルを嬉しそうに掲げた。
和やかな空気のなか、福永は新たな対バン企画「DOUBLE EXPOSURE」の開催を発表。9月21日に大阪Music Club JANUS、10月23日に東京WWW Xで行われるという。「コロナ禍になってからずっと対バンイベントをやれていなかった。BBHFとの対バンもキャパ制限でお客さんをあまり入れられなかったので」と背景を語る。「最後に1曲だけやらせてもらって今日は終わりにしたいと思います。特別な夜になりました。またライブハウスで会えたら嬉しいです!」そう告げてギターを手にすると、最新EP収録曲「Fig」を静かに歌い始める。《じゃあ、愛ってなんだろう》ともの憂げに響く歌声。やがてアンサンブルは厚みを増し、深遠な音像がフロアを包み込む。音数がすっと引いたあと、大澤のドラムが力強く鳴り響いた。スペシャルな一夜は、静かな余韻を残して幕を閉じた。

編集 : 石川幸穂
セットリスト
ame_no_parade ONE MAN LIVE “Calm Before the Storm”
2026年3月13日(金)
恵比寿LIQUIDROOM
1. Innocent feat.寺久保伶矢(Guest:寺久保伶矢)
2. Praying Hands(Guest:寺久保伶矢)
3. Icarus(Guest:寺久保伶矢)
4. paradigm(Guest:寺久保伶矢)
5. Melt
6. POLARIS
7. Count me out
8. Tokyo
9. (complicated)
10. free
11. Hallelujah‼
12. You
13. hwyl
14. Yellow Gold(Guest:寺久保伶矢)
15. Domino2 feat.寺久保伶矢,Imu Sam (S.A.R.)(Guest:寺久保伶矢,Imu Sam (S.A.R.))
16. morning
17. if
18. Summer Time Magic
19. new place
En.fig
フォト・ギャラリー
撮影 : 井崎竜太朗
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PROFILE : 雨のパレード
福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gt)、大澤実音穂(Dr)
2013年に結成。エレクトロ、R&B、ソウル、アンビエントなど多彩な音楽性を独自にクロスオーバーさせたサウンドを展開している。生楽器やシンセ、サンプラーなどを駆使し、枠にとらわれないスタンスで存在感を放つ。
2016年3月に、1stフルアルバム『New generation』でメジャーデビュー。
2026年2月18日にDigital EP『Calm Before the Storm』をリリースし、3月13日(金)には恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブを開催する。
■Official Site : https://amenoparade.com/
■X : @amenoparade
■Instagram : @amenoparade
■YouTube : @ame_no_parade


























































































