サニーデイ・サービス、2年ぶりのシングルは極上のサマー・チューン!!

再結成から6年、独自のペースで活動を続けるサニーデイ・サービスが、2年ぶりの新作『アビーロードごっこ』を発表した。2012年夏に2作連続でリリースされた『夏は行ってしまった』『One Day』に続く、再結成後3作目のシングルとなる本作。ロウなガレージ・サウンドで颯爽と駆けていくタイトル曲、そして暑さがもたらす目眩をゆったりとしたリズムで表現したようなカップリングは、どちらも夏の情景や心象を見事に切り取ったナンバーだ。サニーデイ・サービスが贈るこの夏必聴の2曲、ぜひレヴューとともに耳を傾けてほしい。
サニーデイ・サービス / アビーロードごっこ
【配信形態 / 価格】
ALAC / FLAC / WAV : 450円(単曲は各249円)
mp3 : 400円(単曲は各199円)
【収録曲】
01. アビーロードごっこ
02. サンバ
熱情を儚げに描くこの文学性こそがサニーデイの「らしさ」
「痛ましくも輝かしい、我が少年時代に捧ぐ」
というのは、映画監督の大林宣彦が自身の故郷、尾道を舞台に撮影した青春映画「さびしんぼう」の冒頭で流れる言葉。再結成後にサニーデイ・サービスを聴くとき、私はこの言葉を思い出す。ただし、少し単語をもじって。
「痛ましくも輝かしい、彼、彼女らの青年時代に捧ぐ」
2000年代後半から最近に至るまで、バンド再結成ブームが続いている。再び集まった彼らの演奏は、安定感が増していたり、得も言えぬ渋みが出ていたり、はたまた「長い間、楽器触ってなかったのかな…」と思うこともたまにあったり、いずれにせよ「離れていた時間」を感じさせる。実際離れていたのだから当然のことのように思えるが、不思議と6年前のサニーデイ・サービスの再結成にはそれを感じなかった。止めていた時計の針をまた動かし出した。ただそれだけのことという風に、かつての曲は懐メロにもなっていなければ、新曲に劇的な変化も冒険もない。それは今回リリースされた新譜『アビーロードごっこ』にも同じことが言える。
表題曲「アビーロードごっこ」は、駆け抜け去っていく夏の背中を追うような、爽やかな疾走感が印象的。一方カップリングの「サンバ」はもっとまどろみの中にある、夏の暑さに目眩を起こしたようなサイケデリアを感じさせる曲だ。曲調は違えど、両曲ともに季節の中に描かれたラヴ・ソング。相変わらず彼らの曲の中にいる男女は歳を取ることなく、いつまでも何度でも恋に落ちる。その熱情を儚げに描くこの文学性こそがサニーデイの「らしさ」であり、解散後の10年のブランクを感じさせなかった理由なのだろう。
解散後のソロ活動では、生活の変化も、新たに受けた影響も、次々と作品に昇華してきた曽我部恵一だが、サニーデイの再結成後のインタヴューではこう語っている。「もう1回青春をやんなきゃいけない。サニーデイはそういうバンドだったんだ」。彼らはこのバンドの中では、再結成後の新曲であろうと「若者たち」に戻る。それは本作を聴くことでも感じられる。その作品の中にいる男も、女も、「若者たち」のまま。となると、もう1人の登場人物、リスナーは?
90年代にリアルタイムで彼らを追っていた人はすんなり当時の「若者たち」に戻れるかもしれないし、いつまでも相変わらずな彼らの音楽を聴くことで自分の変化に気づくかもしれない。では今まさに10代後半〜20代前半の青年期にある若者にとっては、やはり新鮮に響くのだろうか。それだけではないんじゃないだろうかと、私は期待も込めて思う。彼らは90年代のリスナーとは、時代も違えばとりまく環境も大きく違う。それでも、季節は同じように巡るし、青年期に感じる心の揺れやその因果なんてものは、時代は変われど20年前も今も概ねそんなに変わりはしないだろう。そういった不変のものを、ともに心を揺らしながら、微妙に変わったり戻ったりしながら、描き続けるサニーデイ・サービス。この音楽を世代を超えて共有することで、私も経験してきたあの「痛ましくも輝かしい時代」が今も存在していることを、確認しつづけていきたい。
(text by 水嶋美和)
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LIVE INFORMATION
〈コヤブソニック 2014〉
2014年9月15日(土) @インテックス大阪 5号館
詳細 : http://www.koyabusonic.com/
PROFILE
サニーデイ・サービス
曽我部恵一(Vo, Gt)、田中貴(Ba)、丸山晴茂(Dr)からなるロック・バンド。1995年、『若者たち』でアルバム・デビュー。以来、「街」という地平を舞台に、そこに佇む恋人たちや若者たちの物語を透明なメロディで鮮やかに描き出してきた。その唯一無二の存在感で多くのリスナーを魅了し、90年代を代表するバンドの1つとして、今なお、リスナーのみならず多くのミュージシャンにも影響を与えている。7枚のアルバムと14枚のシングルを世に送り出し、2000年に惜しまれつつも解散。2008年7月、奇跡の再結成を遂げ、以来、〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉に出演するなど、ライヴを中心に活動を再開。そして、10年ぶりとなる待望のオリジナル・アルバム『本日は晴天なり』を、2010年4月21日にリリース。その後おこなわれた再結成後初のワンマン・ツアーは大盛況で幕を閉じた。2012年8月8日に2年ぶりのワンマン・ライヴを開催し、同タイミングでシングル作品を2ヶ月連続でリリース。かつてのようにマイペースながらも精力的な活動を展開している。2014年8月、2年ぶりとなるシングル『アビーロードごっこ』をリリース。