
活動20周年を迎えたCHARAの新作
CHARA / うたかた
伝えたいことがあるから歌う。彼女の声で紡いだ音楽を"怖じけず素直に"感じてほしい1枚。前作「Dark Candy」と合わせて作られるCHARAのパラレル・パーフェクトな世界。
1. Feeling Feeling / 2. Magic View / 3. 永遠を知らないか / 4. Oshiete / 5. 真夜中の約束 / 6. わかんない / 7. あいしたいな
現れた新しい扉
今年でデビュー20周年目を迎えるCharaが、2枚の対になる作品を発表した。一枚は3月にリリースされたフル・アルバム『Dark Candy』。もう一枚は11月にリリースされたばかりのミニ・アルバム『うたかた』だ。彼女の20年のキャリアの先にこの音源があったのではなく、20年という歳月を裏切る為にこの音源が生まれたのではないだろうか。そう思わざるを得ないほど、両作品ともに要素的にCharaらしさは保ちつつも、全体像としてはあまりにもCharaらしくない。
『Dark Candy』は「Rachel」を始めとするカラフルな音を散りばめたポップスを中心に構成された、ぱっと聴きとてもCharaらしい作品になっている。しかし本作には彼女の歴代の作品にはなかったブラック・ミュージックの要素がふんだんに盛り込まれている。それはきっと、収録曲10曲中7曲を共作したmabanuaの影響が強いのではないだろうか。Sick TeamのBudamankyと並び、アンダーグラウンドのビート・シーンで注目されている20代のビート・メイカー/ドラマー/シンガーのmabanua。彼女が先天的にもつ彩り豊かなポップ・センスにブラック・ミュージック独特のグルーヴ、妖しさ、刺々しさが加わり、今まで培ってきた「らしさ」を守りつつも、今まで聴かせたことのない音を鳴らしている。攻めの姿勢が見受けられる作品だ。

一方、『うたかた』は繊細な音を重ねて作られた曲が多く、ジャンルでいえばポップスよりもオルタナティヴに近い。ジャケットの絵でも比較できるが、『Dark Candy』がカラーなら『うたかた』はモノクロ。叙情的な風景と心の内側で揺れる情緒を色の明暗だけで描いていく。音が静かな分、彼女の声がもつ包み込むような母性と幼い子供のような純真無垢さが今まで以上に際立って聴こえる。と思えば、「永遠を知らないか」では獣のような猛々しさも垣間見せ、「Oshiete」では気だるい色気を醸し出し、様々な表情を音と声だけで見せてくる。今作『うたかた』は音楽家として歩く道中に現れた新しい扉だったのだ。そして今、その先を歩いているところだろう。次はどのような作品になるのだろうか。
1991年、小学生だった私は思春期を迎える頃にCharaを知り、ステレオの前で正座し、『Juniour Sweet』(97’/大沢伸一によるプロデュース作でミリオンセラーを記録した)を夢中で聴いた。2011年、私にCharaを教えてくれた当時のクラスメイトは一児の母となり、私もパソコンを前に、ヘッドフォンを耳に、今この文章に向かっている。ヘッドフォンの中で鳴る声の持ち主は同じだが、その音楽は大きく変化し続けてきた。子供が大人になるのに十分な時間、20年は決して短くはない。その歳月を音楽を作りながら過ごしてきた彼女が、音楽を続ける理由を自分自身に問うた時、「伝えたいことがあるから歌う」という答えが出たという。常に時代と流行の一歩先を歩き、それに伴い音楽も変化させてきたCharaだが、ポップ・クリエイターとしてではなく一人の女性音楽家として、本当に化け始めるのはこれからなのかもしれない。(text by 水嶋美和)
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LIVE INFORMATION
Chara Live Tour 2011「Very Special」
- 2011年11月24日(木)@横浜BLITZ
- 2011年11月26日(土)@Zepp Fukuoka
- 2011年11月27日(日)@熊本Be-9
- 2011年11月30日(水)@なんばHatch
- 2011年12月01日(木)@なんばHatch
- 2011年12月03日(土)@高知BAY5 SQUARE
- 2011年12月04日(日)@岡山CRAZYMAMA KINGDOM
- 2011年12月09日(金)@Zepp Sapporo
- 2011年12月11日(日)@Zepp Sendai
- 2011年12月14日(水)@SHIBUYA-AX
- 2011年12月17日(土)@新潟LOTS
- 2011年12月20日(火)@広島クラブクアトロ
PROFILE
CHARA
1991年9月、シングル「Heaven」でデビュー。オリジナリティ溢れる楽曲と独特な存在感により人気を得て、ファッションでも注目を集め、1992年の2ndアルバムでは日本レコード大賞ポップ、ロック部門のアルバム・ニュー・アーティスト賞を受賞。1996年には女優として出演した岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」が公開され、劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加して制作されたテーマ・ソング「Swallowtail Butterfly〜あいのうた」が大ヒットとなる。この頃からライフ・スタイルをも含めた新しい女性像としての人気も獲得し、1997年のアルバム「Junior Sweet」は100万枚を超えるセールスを記録。以降「CHARAのような」と他の女性アーティストを形容するような個性を完全に確立する。音楽的探求を各アルバムでなし続け、2006年にはユニバーサルシグマへの移籍を発表、現在もなお精力的な活動を見せ続けている。