自主制作版が配信開始! オトトイではライヴ音源を配信限定収録
Alfred Beach Sandal / Alfred Beach Sandal
ベースやアナログ・シンセが加わった曲、そのどれもが不思議なリズム(というか呼吸)とコード進行を絡み合わせていて、その中を人を食ったような歌詞(しかもいい声!)がつらつらと流れてゆく。
【Track List】
1. Mountain Boys / 2. エイブラハムの髭占い / 3. 中国のシャンプー / 4. 彼はマジシャンではない / 5. 風向計 / 6. 運河 / 7. 老人 / 8. やたらとサファリパークに行きたがる男(ライヴ音源) / 9. 無題(ライヴ音源)
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北里彰久が伝える声と音
寝るタイミングを逃した深夜にテレビのチャンネルを回していると、ごく稀に外国の風景を淡々と映すだけの番組に出会う。イタリアの市場の風景、オランダの風車、インドのガンジス川、砂埃が舞う中東の風景。海を越えて地を進んだその先に、本当にこんな景色があるのだろうか? 私が日本で生活するように、本当にここに住んでいる人が居るのだろうか? 思いを馳せながら見入ってしまえば、もう空は明るくなり始めている。もしそれが朝焼けのピンクの空だとしたら、その瞬間に合う最良の音楽はAlfred Beach Sandalだ。
Alfred Beach Sandalとはギター・ボーカル北里彰久による、時には弾き語り、時にはバンドで演奏する不定形ユニット。音と胸に溶けゆきながらもはっきりとした輪郭を持つ声は歌い続けてきた年数を想像させるが、北里彰久はまだ25歳とのこと。木箱の中で聴くようなくぐもった音を出すギターは、彼の祖父から譲り受けたものらしい。また、彼の魅力を語る上で欠かせないのがその歌詞だ。軽妙で飄々とした言い回し、言葉のリズムの山と谷に心地よく身を任せていると、ふとした瞬間に核心を突く言葉が耳に飛び込んでくる。しかし北里は決して語り手にはならない。曲にあるストーリーではなく、そこにある空気と雰囲気を音と声で伝えている。
彼の音楽を聴いていると、胸が沈んでいく感覚がじわじわと広がる。人肌ほどの生温かい音に矛盾して、鳥肌が立ち始める。今すぐ家に帰りたいという古里への郷愁と、今すぐどこかへ行きたいという遠くの地への憧れが、いっぺんにこみあげてくる。一言では言い切れない気持ちにさせてくれるものこそ、素晴らしい音楽というものだ。また、今回の配信のためだけに北里が用意してくれたライヴ音源を聴くと、音源での飄々とした歌い方とは違って熱の上下がある。7月に発表される次の作品では多くのゲスト・ミュージシャンを招いたとのこと。これから様々な顔を見せていくのであろうAlfred Beach Sandalの動向を追って行きたいと思う。(text by 水嶋美和)
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PROFILE
Alfred Beach Sandal
カリブ海のキャプテン・ビーフハート? Alfred Beach Sandal=北里彰久のソロ・プロジェクト。前身バンド「MOXA DELTA(モグサ・デルタ)」のソング・ライター兼ギター・ボーカルとして活動を行った後、2009年頃からソロ名義での活動を開始。現在は都内を中心に、その都度編成のことなるフリー・フォームなソロ・ユニットとして、ライヴを中心とした活動を行っている。また、正規流通盤前にも関わらず、トクマルシューゴが2010年のベストのひとつとして名前を挙げたほか、音楽ライターの磯部涼も注目するアーティストと公言するなど、徐々に評価を高めてきている。