
宇宙人 / アメーバダンス、あこがれのネクタイ
タイトなグルーヴに透明感のあるギター。鋭利な音の隙間で独特の世界観を歌った歌詞が浮かび上がり、より独特な印象を残す宇宙人のシングルが配信開始! 相対性理論直系でありつつも、独特な空気感と正体不明なヴィジュアルが、今話題を呼んでいる。
【TRACK LIST】
01. アメーバダンス / 02. あこがれのネクタイ / 03. 脳がかゆい / 04. ヘビィ~メタルバイオレンス
未知との遭遇の瞬間に、一言目には何を話そうか
SF好きを10人ほど集めて夜な夜な「SF飲み会」というのを高円寺の某居酒屋で主催している。外が明るくなるまで自分の好きなSF作品について好きなだけ語る、たったそれだけの夜。熱くなりすぎてしばしば胸ぐら掴まんばかりの討論になるが、それだけ譲れない思いをもっているところに各々の愛の深さがうかがえる。喧嘩しながら仲間意識を高める、変な行為だ。
そこで、「宇宙人とはSFか否か? 」という議論に至ったことがある。「2001年宇宙の旅」「未知との遭遇」はSFで、「E.T.」「マーズ・アタック」はファンタジー。では「グレムリン」はどうなる? などなど。「そもそもSFはサイエンス・フィクションなのであって、スペース・フィクションではないんだ! 」と一喝さえ食らった。それでも私は、宇宙人はSF世界の中に居る存在だと主張した。肯定派、否定派で何が大きく違うのか。それは宇宙人の存在を科学(サイエンス)でいつか証明できると信じているか、人間が創造した完全なる架空の生物と見切るか、そこにある。だから、昨年に世間を騒がせたNASAの発表には心臓が飛び出るほどわくわくした。実際、その内容は宇宙人が存在するという決定的なものではなく、宇宙人を発見できる可能性が広がった、という少し残念なものだったが、それでも可能性は高くなったわけだ。むしろ「そんなこと言って… とっととエリア51見せちゃいなさいよ! 」と思っていた。多分、そのNASAの発表が「宇宙人はこの世には居ません、絶対」という内容だったとしても、私はその存在を信じ続けるだろう。信じ続けなければ、自分が自分でなくなる気すらする。それってもはや宗教では… 実際にUFOを教祖として崇める宗教は世の中に存在する。あの戦後の日本を代表する作家、三島由紀夫もUFO観測に夢中になりUFO愛好会に出入りし、「美しい星」という傑作まで生み出してしまうほどだ。浪漫が偏愛へ、偏愛が崇拝へ、崇拝から奇行へ誘われる。宇宙人とは実に危険な存在だ。

その偏愛あまって国内で最もUFOの目撃例が多い石川県羽咋市まで行ってしまった。そしてそこでテントを組み夜中空を見上げたが、私の元には訪れてはくれなかった。悔しいので駅前に立っているUFO型の街灯を写真に収め、国際UFOシンポジウムが行われたことがある宇宙科学博物館コスモアイル羽咋でNASA Tシャツを買い、温泉施設ユーフォリアで汗を流し、能登半島の砂浜を車で走ることができる千里浜なぎさドライブ・ウェイで夕日を見ながら帰った。と、ただの旅行をなかなか満喫してしまったが、あくまでも私が出会いたかったのはUFOだ。宇宙人だ。ここまでしても出会えないなんて、もしかして、居ないのではないだろうか? その問いに今、はっきりと答えることができる。宇宙人は、居る。ではどこに居るというのだ? 石川県ではない。高知県だ。
と、散々期待値を高めてしまったが、ここで書く宇宙人はバンドだ。だってここは音楽配信サイトですから。しかしこの宇宙人、「もしや本当に宇宙人なのでは? 」と思わせるほどに、謎めいている。摩訶不思議なメロディ―としっかりとしたバンド・サウンド、その上を不安気に所在なく漂う女の子のボーカルから、影響源に相対性理論が存在することは明らかだろう。しかし何かを求めているようで、その実何にも興味のないような奇妙な歌詞からは、実像を持たない半透明の女の子を想像させる。それが「幽霊」にはならずしっかりと「宇宙人」として存在しているのは、スペ―シ―なギターの音のせい。それと、高知出身と聞いても、いや、恐らくどこの出身であろうとピンと来ないであろうローカル・シーンに染まらない「お里が知れない」感のせいだ。なのに胸にじわりとくるのはなぜだろう。それは宇宙が人類の故郷だからではないだろうか。忘郷と望郷を併せ持つこの音楽。そこに確信犯めいたものはなく、あくまでも天然であるということ。そこが相対性理論と大きく異なる点であり、彼女たちにより強く惹かれる理由でもある。このバンド、宇宙人に会いたいと思う。でも会いたくない気持ちもある。それは、彼女らが本物の宇宙人だったらどうしよう、という懸念からだ。会ってしまえば、これから何を追えばいいのか。ゴールはまだ先にとっておきたい。しかしこの音楽の引力に引き寄せられて、いつかライヴで宇宙人の姿を目の当たりにしてしまうだろう。その未知との遭遇の瞬間に、一言目には何を話そうか。怖れながらもわくわくとそんなことを考えてしまっている自分も居る。
(text by 水嶋 美和)
LIVE SCHEDULE
2011年10月2日(日)@下北沢 CLUB Que
"A Touch and Go!!! Vol.3"
出演 : POLYSICS / 宇宙人
open 18:00 / start 18:30
前売 3,500円(ドリンク代別)
PROFILE
宇宙人
高知県より現れた4人組、20代前半~後半。おそらく2008年に現メンバーにて結成。結成当初より県内でのライブは一切行なっていない。デモ音源の配布、販売、無し。ほんの数回のライブの経験を経て、2010年に大阪の老舗レーベル、GYUUNE CASSETTE須原氏が発見。時を同じくして「FUJI ROCK FESTIVAL '10 ROOKIE A GO-GO」に出演。翌年、GYUUNE CASSETTEより1stアルバムのリリースが決定(今秋発売予定)。伴ってPERFECT MUSICより先行シングルを発売。才能と場所が奇跡的に交錯したのか、生み出された楽曲は、宇宙の基準を提示しているかのごとく、上質で少しいびつなポップ・ソングとなっている。不思議な歌詞と、演奏に引き込まれる感覚は、新しい。
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