11月18日より全曲フル試聴企画「EVERYBODY LISTEN!」で紹介してきた白波多カミンの『ランドセルカバーのゆくえ』が、遂にリリースされる。リリース元は、これまであふりらんぽ、ミドリ、宇宙人などを輩出してきた大阪の老舗インディー・レーベル「ギューンカセット」だ。「巫女シンガー・ソングライター」という風変わりな肩書きが示すように、彼女は今年2011年に大学を卒業した後、神事に奉仕する巫女となった。しかし楽曲内の彼女は、常に何かを信じ身を委ねることを拒否している。なぜ彼女はその仕事を選び、且つ音楽を続けることを選んだのだろう。

今回のインタビューで彼女の口から頻繁に発せられた言葉、「せめぎ合い」。彼女の音楽はこの一言に集約されている。「あなた」を守ることと「あなた」を破壊することのせめぎ合い、幼さと大人のせめぎ合い、巫女であることと音楽を奏でることのせめぎ合い。それらの摩擦による痛感と快感のせめぎ合い。これほどに温度を持った荒々しい作品は、彼女本人であろうとも二度と作れないだろう。そしてこの先にはどんな作品が生まれるのか。今ある巫女シンガー・ソングライター、白波多カミンをインタビューで切り取り、ここに記録しておきたいと思う。

インタビュー&文 : 水嶋美和

満を持してリリースされるデビュー・アルバム

レーベル Gyuune Cassette  発売日 2011/11/25

※ 曲名をクリックすると試聴できます。


※全曲フル試聴は終了致しました。
※Twitterのつぶやきの反映には時間がかかることがございます。その場合は少々お待ちください。

自分一人の力は微々たるものだった

——プロフィールに「小5でギターを始めた」とありますが、小学生でギターって早いですよね。

白波多カミン(以下、白波多) : 楽器を始めたいと思って親に「ピアノ弾きたいなあ」と言ったら、「ピアノやったら小さい頃から習わなあかん。みんな弾けるし、違う楽器にしたら? 」と言われて。叔父から古いギターをたまたまもらい、なんとなくギターをさわるようになりました。

——なぜ楽器を始めたいと思ったんでしょう。その時の気持ちって覚えてますか?

白波多 : 内気な子やったんで、何かアウト・プット先が欲しかったんでしょうね。その頃は家で当時流行ってたゆずや19の全曲集を片っ端から弾いていて、中学生に上がってから一人で近所の駅前に行って弾き語りをし始めました。

——中学生で人前で弾き語りって、結構な度胸がいりますよね。内気ではなかったのでは?

白波多 : ねえ(笑)。家にこもるか外で弾き語りするか、両極端だったんです。外に向かって歌っていないと生きていけない感じがあった。それは今も変わらないですね。

——作曲を始めたのは高校で結成した「衝突ランドセル」から?

白波多 : そうですね。ちゃんと作り始めたのは高3でした。チェロを弾ける女の子がいたんですけど、その人が多才な人で、自分が書いた詩や絵や小説を私に見せてくれたんですね。ある日歌詞を見せてもらったときに、読むのと同時にメロディーが頭の上からきらきら降ってきて、早速、家に帰ってギターを弾いて曲をつけました。それがきっかけでチェロとギターで衝突ランドセルというユニットを組んだんです。自分で作詞を始めたのは高校を卒業する前。その曲が「ランドセルカバー」です。

——初めて作詞作曲した曲を今も歌い続けているんですね。白波多さんは1988年生まれだから、今は23歳?

白波多 : そうですね。

——白波多さんの曲からは中高生の思春期の青々しさや荒々しさが感じられます。白波多さん自身は中高生の頃はどういう曲を聴いていましたか?

白波多 : くるり、椎名林檎、ZAZENBOYS、BLANKEY JET CITY、ゆらゆら帝国とかですね。当時は学校のクラスで音楽のこと話せる人がいなくて、自分だけの音楽として聴いていましたが、大学行くとみんな知ってて、自分はマニアックでも何でもないな、普通だなって思いました(笑)。人間のパワーが、どーんと前に出てる音楽が好きです。音楽だけが好きというよりも、そこから出ている人間の生命を垣間見るのが好きなのかな。あと、言葉遊びが好き。音楽に限らず、詩や文学でもそうです。

——70、80年代のフォーク・ロックの香りもしますが、その時代の音楽は聴きますか?

白波多 : 山崎ハコや友川カズキとか、最近になって聴き始めました。自分の音楽はここら辺なのかもしれないなとも思います。

——羅針盤は知っていましたか? レーベル・オーナーの須原敬三さんがやっていたフォーク・ロック・バンドですが。

白波多 : 結構聴いていたんですが、須原さんが羅針盤のメンバーだったということをお会いしてからしばらく知らなくて、「面白いおっちゃんやなあ」ぐらいに思ってました(笑)。

——ギューン・カセットからリリースすることとなった経緯について教えてください。

白波多 : 京都のnanoというライヴ・ハウスで、須原さんとゆーきゃんさんがコンビで出ていた時に私も出演していたんです。その時、須原さんはゆーきゃんさんから「怖い歌を歌っている子だよ」と紹介されていたみたいですね。ゆーきゃんさんに怖い歌って言われるってどういうことやねんって思いましたけど(笑)。nanoの楽屋に続く階段に須原さんが座っているのを見て「お土産の置物みたいですね」と話しかけて「えー、ほんま? 」と答えてくれたのが最初の会話でしたね。

——ほっこりする会話ですね(笑)。

白波多 : ふふ。っていうか初対面でいきなり失礼なことを言ったんやな(笑)。そこから私のライヴをよく見に来てくれてはって、感想を聞いたりビデオを撮ってもらうようになったんです。それはまだ学生の時で、卒業して働き始めたら忙しくなるだろうから、今のうちにレコーディングして早く音源を出したいって相談したら「うちから出せばいいじゃない」と言ってくれて、「わーい! 」という流れです。

——小学生の頃にギターを触り始めた頃は何かアウト・プット先があればいいという感覚だったと思うのですが、「作品として成立したものを出したい」という、アーティストとしての意識が高くなったのはいつ頃でしたか?

白波多 : これからどんどん違う曲を作っていく気がしたので、初めて作った曲を歌い続けているうちに一度作品として残しておかないとって思ったんですよね。アーティストとしての意識… 音楽をやりながら、「自分はこれだな」という気持ちはずっとふわふわと心の中にありました。

——「自分はこれだ」と思ったけど、それを生業にしようとは思わなかったんですね。

白波多 : すごく悩みましたね。悩んでいるんですね。

——今も?

白波多 : はい。でも欲張りなので、巫女の仕事もしたかったんです。どっちも出来ると思ったんです。

——大学を卒業してから巫女さんになったんですよね。周りが就職活動で忙しくなる時に、なぜ白波多さんは巫女を選んだんでしょう?

白波多 : 就職する気はなかったので、まずはフリーターしながら音楽かなと思っていたんですけど、毎日働くというのはどんなもんかを経験したかったんですね。それがなぜ巫女さんだったのかというと、大学の民俗学の授業で祇園祭について学ぶ機会があったんですけど、その中で祇園祭の巫女さん体験をして、すごく面白かったんです。

——具体的に、どういうことをやったんですか?

白波多 : 参拝の方が来られて、その人達の手に水をかけて、鈴も振ったかな? 自分は普通の人間なのに参拝に来たおばあちゃんたちに有難がられて、神様と人の仲介役をしている気分になったんです。その不思議な立ち位置に「これは面白いぞ」となって、履歴書を送りました。

——巫女さんになるのにも履歴書が必要なんですね!

白波多 : そうなんです。普通なんですよ(笑)。今は鈴を振ったり舞いを踊ったりする役についたんで、他と比べて宗教色の強いところで働いていますね。でも力仕事も結構あるんで、なかなかハードな仕事です。

——巫女の仕事を始めてから、音楽面で変化はありましたか?

白波多 : あります。今までは自分一人で始めて一人ぼっちで終わっていく感じだったけど、最近は自分一人の力は微々たるものだったんだなと思うようになりました。あと、人が毎日何かを信じて神社にやってくるんですけど、それはすごく不思議な光景ですね。信じるという行為が客観的に見えるので、自分が信じているものが一体何なのか、それは本当に信じれるものなのか、より考えるようになりました。信じることの危うさを感じます。

歌の中でしか怒れない

——白波多さんの歌詞も、何かに身を委ねることを避けようとしている気がします。求めはするけど、手に入らなかったり、届かないという結末が多い。

白波多 : 独占欲がすごく強い頃に作った曲なんですよね。人を自分が独占することは不可能だと気付いているけど、それでも自分のものにしないと気が済まない幼さ。でも、どんなに頑張ってもその人の神様にはなれないし、誰かを自分のものにすることは出来ないし、してはいけない。逆に、自分が誰かのものになるということも信じられない。その気持ちのせめぎ合いは、今も続いていますね。

——先日、「歌姫達の女子会」というテーマで女性ミュージシャンが集まって話をしていたのですが、その中で「女は幸せになったら曲を作れない」と話していたんですよね。

白波多 : すごい議題ですね(笑)。

——でも、白波多さんの曲もそうですよね。

白波多 : 最近は幸せな曲も作るんですが、「幸せなんて信じない」という気持ちもあります。そこもせめぎ合いですね。幸せになったら曲が作れなくなるというのは、わかる気がします。

——自分から幸せを遠のけることもありますか?

白波多 : 「幸せ=自分じゃない」というイメージはありますね。信じあえない関係でしか起こらない摩擦と刺激。だから命が感じられる。そういうものを音楽にしているのかも。

——白波多さんが曲を作る時に原動力になる感情は、喜怒哀楽でいうと?

白波多 : 怒りが多いですね! 8割を占めています。私は日常生活で怒るのが苦手で、歌の中でしか怒れないんです。怒る場所が欲しくて楽器を始めたのかもしれない。

——以前のプロフィールに「少女漫画的宣戦布告系弾き語り」とありましたが、これは戦う感覚で歌っているということでしょうか。

白波多 : 中二病って感じですよね(笑)。ちょっと言葉が過激になってしまうのですが、当時、人前で歌う事はテロ行為をしている感覚だったんです。大学生の時に組んでいた女の子の3ピース・バンド「つのかくし」で、学生祭典というお祭りで京都駅の大階段でライヴした時に、誰も私たちのことを知らないすごくたくさんの人達の前で「ギャー! 」って演奏して歌い始める。それが気持ち良かった。

——「ギャー! 」という感じのバンドだったんですか?

白波多 : 自分の中では常に激しいんですよ、今も。でも後でビデオで見るとそうでもなかったり(笑)。

——では最後に、高校生の時に結成したユニットが「衝突ランドセル」、初めて作った曲が「ランドセルカバー」、今回のファースト・アルバムのタイトルが「ランドセルカバーのゆくえ」と、「ランドセル」というキーワードがよく登場しますが、白波多さんにとって大事な言葉なのでしょうか。

白波多 : 「私たちは衝突ランドセルにしましょう! 」と、チェロの女の子がユニット名を決めたんです。その言葉に、ずんと来るものがあったんですね。「ランドセルカバー」という曲についてですが、まず、ランドセルカバーって何のことだかわかりますか? 全国共通のものじゃないというのを後から知ったんですが。

——ランドセルに付ける、黄色いカバーですよね。

白波多 : そうそう。交通事故から子供を守る為のものなんですけど、守りたい子がいて、自分はその子のランドセルカバーなんだ。でもランドセルを背負っちゃうと、目は前に付いているからその子には見えなくなっちゃいますよね。見えなくても、ちゃんと守っている。そういう意味の曲なんです。

——『ランドセルカバーのゆくえ』というのは?

白波多 : うちの小学校では一年生の時だけ義務的にランドセルカバーを付けなきゃいけなかったんです。でも二年生になると義務じゃなくなるので、外したんですね。それからどこにやったかもうわからない。探せばあるかもしれないけど、わざわざ探さない。その程度なんです。

——ランドセルカバーは健気に守り続けていたのに、忘れられてしまうんですね。

白波多 : その守られていた子は自由だし、ランドセルカバー自体も忘れられることで自由になったんです。今頃どこかで楽しくやっているんだろうなあと思います。

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PROFILE

白波多カミン

1988年京都市生まれ。シンガー・ソングライターであり、巫女でもある。小5でギターを触る。高校時代、名簿ひとつ後ろの女の子とユニット「衝突ランドセル」を組み、合作で曲を作る。楽器はチェロとギター。
大学で組んだ3ピース・バンド「つのかくし」でギター・ボーカルを担当。京都学生祭典'08に出場し、2位入賞。2009年ソロ活動開始。京都、大阪を中心にギター、ピアノ、ドラムなどで弾き語りライヴを精力的に行なう。同年、宅録音源「empreinte」を発表。2011年巫女になる。
2011年11月1stアルバム『ランドセルカバーの行方』を発表。バンド・サウンドを中心にピアノ弾き語りや、ギターとバイオリンの楽曲など多彩な楽曲を収録。巫女シンガー・ソングライター現る。

白波多カミン『ランドセルカバーのゆくえ』についてつぶやこう!

 
 

インタヴュー

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