
7/23-24 TOKYO BOREDOM in KYOTO@club METRO
2011年7月23日(土)-24日(日)
会場 : 京都川端丸太町Club METRO
出演 : FLUID / TACOBONDS / BOSSSTON CRUIZING MANIA / Alan Smithees MAD Universe / TRIPMEN / SuiseiNoboAz / and Young… / VELOCITYUT / DODDODO / キツネの嫁入り / odd eyes / skillkills / イデストロイド / のうしんとう / ワッツーシゾンビ / bonanzas / UltraFuckers / ドラびでお / JAILBIRD Y/ BIOMAN(from:neco眠る) / 真保☆タイディスコ / KA4U / deejayおしゃれ / 非常階段 / ULTRABIDE / GROUNDCOVER. / Limited Express (has gone?) / worst taste / ふつうのしあわせ / ゆーきゃん / したっぱ親分 / PANICSMILE / シャムキャッツ / BED / オシリペンペンズ / OUTATBERO / YOLZ IN THE SKY
2週間経った今も、TOKYO BOREDOM IN KYOTOの事を忘れることができない。なぜなら、大トリのLimited Express(has gone?)の激しいモッシュの中で肩甲骨あたりの筋を痛め、今も整骨院に通っているからだ。この痛みが完全に失われる前に、あの日のことをここに記しておきたい。

台風が過ぎた翌朝、7月23日は真夏だというのに肌寒かった。出演バンド、スタッフの面々で一台のバスをチャーターし京都へ向かった。会場であるCLUB METROに到着したのは16時頃。18時からFLUIDのライヴが始まり、すぐに多くの人でフロアが湧いた。かと思えば見たことのある顔ばかり… 出演バンドとスタッフばかりじゃないか。いや、それでいい。まずは当事者が楽しむ。そこに一般客が巻き込まれてゆき、バンドもスタッフも客も区別がつかなくなり、混沌が生まれていく。その混沌に呑まれるもよし、遠目から観察するもよし。東京ボアダムの楽しみ方は色々ある。
何はともあれ腹ごしらえ。夕飯を食べるためにMETROを出る。そこで友人にSuiseiNoboAzの素晴らしさを存分に語り、SuiseiNoboAzのライヴを見逃すという大失態を犯してしまった。METROに戻ったと同時にTACOBONDSが始まる。見る度にストイックさが増していくTACOBONDS。なのに踊れる。なのに叫びたくなる。彼らのライヴでかなりフロアの温度は上がった。が、私が期待する混沌にはまだ程遠い。TACOBONDS終了後、紙袋をかぶったタンクトップ姿の怪しい男がステージの周りに段ボールを積み始めた。Ultra Fuckersだ。轟音ノイズの中で歌とも叫びともつかない声を出す。段ボールでどういうパフォーマンスをするのだろう? と見守っていたが、積み上げては叩き潰して中に入ってうずくまるだけだった。「何じゃこりゃ」と最初は引き目で見ていたが、積み上げられた段ボールが崩壊した瞬間、9.11の同時多発テロの映像を思い起こした。その前でうずくまり叫ぶ男。押し寄せる世紀末感。意図的なのだろうか? いや、深読みだろう。でも忘れられない。その後、ドラびでおが始まる。タラちゃん(サザエさん)が「殺せ 殺せ 親など殺せ」とデトロイト・メタル・シティを歌ったり、「けいおん!」キャラがデスメタルを歌ったり… こうして文字で説明すると面白さが半減するな。直接見に行ってください。
見たもの全てに触れていきたいが出演アーティストが38組もいるので、割愛。一般客も入り盛り上がり始めつつも、2009~10年の東京大学で行われた東京ボアダムの異常な熱を体験してしまっているので、まだまだ物足りないと思っていた。そんな私のテンションのメーターがふりきれたのは意外にもワッツーシゾンビを見ている時だった。この面々の中ではかなり正統派なロックンロール・バンド、ワッツーシゾンビ。ひねくれたサウンドを立て続けに聴いていたせいか、直接胸に来るわかりやすい言葉と音楽を求めていたらしい。ワッツーシのライヴであんなに素直に拳を上げられたのは初めてかもしれない。その後すぐに真保☆タイディスコのDJが始まり、ロックな空気が満ちたフロアが一変、エキゾチックな怪しいクラブに変化した。

丑三つ時が近付く頃、bonanzasが出て来た。ドラムが同じリズムを淡々と刻み始め、何が始まるのかと注目していると、徐々に他の楽器が重なっていく。ミニマルな音楽なのかと見守っていると気付かぬうちに轟音に飲み込まれ、カオティックな舞台が完成された。そこに登場したのは頭にターバンを巻き、すごい形相で客を睨む男。とっさに千夜一夜物語に出てくるようなナタを持っていないか確認した。そして言語とも付かない言葉でまくしたてる。身振り手振りも激しく、必死にこちらに何かを伝えようとしている。まるで異国の地ですごいバンドを見つけてしまったような興奮を得た。ここからのうしんとう、and young...の流れが素晴らしかった。and young...をステージ後方から見ていると、前列で幸せそうにand young...の音楽で酔っ払いながら揺れている、特に目立つ3人を発見。SuiseiNoboAzはand young...が大好きらしい。確かに、熱を帯びつつもどこか飄々としている感じは確かに彼らの音楽にも通じている。

そして待ちに待ったVELOCITYUTはやはり5分で終わった。初めてモッシュやダイブは起こらない彼らのライヴを見たが、その分5分間をじっくり堪能出来たからやはり来て良かった。そして知る人ぞ知る大阪のデジタル・ハードコアの獣、YDESTROYDEがそこに続いた。出演前に「俺、失恋してん! 」と大きな声で話しているのを聞いたが、ステージ上での彼は笑いが絶えなかった。そして豪快な笑い声からは想像がつかないほどの男前な声。地下にいると時間の感覚が狂う。もう朝か。1日目最後のバンド、BOSSTON CRUSING MANIAが始まった。
朝方にBOSSTON CRUSING MANIAを見るのは初めてだったが、とても似合っていた。陽が昇る頃に地下でこういう退廃的な音楽を聴くというこの行動は、ものすごく不健康なことをしている気がしてぞくぞくする。終了し、BIOMANのDJを聴きながら眠りに落ちかけ、慌てて朝日を浴びに外へ出た。明日もあるのか… いや、もう今日か。
2日目、少しだけ京都観光を楽しむ。どうしても銭湯に行きたかったがためにworst tasteとふつうのしあわせを見逃してしまった。会場に着くと「ふつうのしあわせ良かったね」と話しかけられて「ごめん、銭湯行ってた」と答えると、「それも普通の幸せだからね」と上手く切り返された。そして久しぶりに見るシャムキャッツ。こういうハードコアな面々の中に居ても一切見劣りしないのは、彼らの音楽がどんなにポップであろうと、彼ら自身の「変」な部分が演奏からにじみ出てしまっているからだろう。そして京都オルタナティヴの雄、OUTATBEROを久しぶりに見た。日本人離れしたセンスを持ったバンドだと思っていたが、こうやって東京のバンドたちと聴き比べてみると確かにちゃんと「京都らしさ」を持っている。そして京都といえばゆーきゃんと言いたいところなのだが、ちゃんと生きて彼を見れるだろうか? ゆーきゃんの前には非常階段とULTRA BIDEが立ちはだかっているのだ。
非常階段は相変わらず怖かった。右往左往しながら逃げた。けれど、JOJO広重が遠くに行くと寂しくなってついつい追いかけてしまう。非常階段のライヴは暴動のシミュレーションだ。俯瞰できる位置で事の始まりと終わりを観察する人間か、熱狂の渦の中に飲み込まれ、中で起こっていることを体験する人間か。どうやら私は後者らしい。そしてULTRA BIDEが始まる。非常階段の前に激しい音出しをし、ライヴは始まったのか!? と思うと、「マイクチェック! 」とHIDEが叫んだ。そしてようやく始まるのだ。ULTRA BIDEが持っている絶対的な力は歴史や経験では説明ができない。いや、どんな説明も彼らの前では無粋になる。何か言うとすれば「最高」という一言で十分だろう。

そしてここでゆーきゃんが始まることによって、イベントは完全に混沌の塊と化する。このタイム・テーブルの流れを考えた人は天才だ。ゆーきゃんはステージ間のスロープの手すりにひょんと乗り、足を組んでギターを抱え演奏を始めた。ここは地下だというのに、屋根裏部屋でこっそりと秘密を打ち明けられるかのようなしんとした密な空間が出来上がる。先ほどまで大騒ぎしていた人間が一斉に体育座りでゆーきゃんの声に耳をすませる様はとても不思議だった。そしてPANIC SMILEが続く。変拍子の極みなのに、洗脳的なほどにポップで、彼らのライヴを見ているといつも気が違いそうになる。休憩を挟み、オシリペンペンズが始まった。さすが二日目、凝縮濃度がすごいことになっている。
その後に始まったGROUNDCOVER.が私のこのイベントのベスト・アクト。ボーカル/シンセの望月は、どこぞのブラックなカルト集団の教祖のようにすら見えた。かつ、エモくもあった。メンバーの脱退が来月に決まっているからだろうか。今のうちに今のGROUNDCOVER.を目に焼き付けておかなければ。そしてYOLZ IN THE SKY、bedと関西勢のバンドが続き、最後はLimited Express(has gone?)で締めくくられた。が、このイベントのハイライトは完全にゆーきゃんに奪われてしまう。Limited Express(has gone?)で激しいモッシュが起こる中で、にょきっとゆーきゃんが生えて来たのだ! 正確に言えば、TACOBONDSの小川さんがゆーきゃんを肩車してメトロ内を徘徊したということなのだが。最後はバンドもスタッフも客も、東京も京都もその他も全てごった煮になってステージ前でぶつかり合った。ここで肩甲骨を痛めた訳ですな。そして知らない人とビール片手に語り合い、METROの前に帰りのバスが到着した。

打ち上げ足りない輩がざわざわと騒ぐ狭い車内。遠くの席から「次は長島スパーランド… 」という声が聞こえて来た。まさか、次回東京ボアダムの開催場所ではあるまいな? いやいや、どうせやるならそこまでやってほしい。東京ボアダムはただ続けていくことに意義をもたない。日常への倦怠を破壊し続けることにこそ意義をもつイベントなのだから。既存のものを壊すものが既存のものになってしまい、空っぽの伝統行事に成り下がるぐらいならやめた方がいい。私もただの「東京ボアダム」は求めない。私の知らない「東京ボアダム」にしか期待しない。期待してますよ。
text by 水嶋美和
photo by Naoki Ogawa
【NEWS!】8/15 東京BOREDOM×FUKUSHIMA!

今年は京都のみでの開催と思われていた東京BOREDOMが、7/23~24の京都開催から約一ヶ月後の8/15に東京でも開催する事が決定! 場所は初の開催地となる秋葉原CLUB GOODMANとその地下のSTUDIO REVOLEの2会場を繋いで行われる。しかも、今回のBOREDOMは、ミュージシャンの大友良英氏、遠藤ミチロウ氏。詩人の和合亮一氏が代表を務める福島復興の為のフェス「PROJECT FUKUSHIMA!」の一環として、その日、世界各地で同時多発的に開催されるイベントのひとつとして開催される。出演者もECD、 RUMI&SKYFISH、赤い疑惑、KIRIHITOなどなど、この件に関しては一家言ありそうな面子ばかり。どんなライブが繰り広げられるかかなり楽しみな2011年初の東京での“東京BOREDOM”!!!!!!!!!! 泣く泣く京都行きを断念した人は8/15AKBを目指せ!!!!!
2011年8月15日(月)
open 16:00 / start 17:00
adv¥2000 / door ¥2500(+1drink)
会場 : 秋葉原CLUB GOODMAN + STUDIO REVOLE
出演 : KIRIHITO / ECD / RUMI&SKYFISH / BOSSSTON CRUIZING MANIA / Limited Express(has gone?) / GROUNDCOVER. / L?K?O / TACOBONDS / worst taste / MELT-BANANA / yudayajazz+HIKO / 見汐麻衣 / Alan Smithee's MAD Universe / 日比谷カタン / 平井正也全身バンド / 赤い疑惑