赤い疑惑3年ぶりの新作『オレ達は日本で生きてる』
赤い疑惑 / オレ達は日本で生きてる
西東京の3人組ロック・バンド「赤い疑惑」が、3年ぶりの新作『オレ達は日本で生きてる』をリリース。ゲスト・ギタリストとしてフィーチャーされたEKDとのセッション「日本で生きている」から始まり、都会での孤独な人間像を描いた「今日も電車で僕は」、30代ロック・バンドが意地を張り続ける理由を綴った「ダーティーサーティー」等を含む傑作。
【同梱】
アルバム購入者には、歌詞カードが同梱されます!!
赤裸々に歌う赤い疑惑
40代後半の人に「赤い疑惑」と言えば、大半が最初に1970年代に放送されていたテレビ・ドラマを思い浮かべるだろう。山口百恵演ずる主人公が、自分の叔母だと思っていた人が実の母だと知り、かつ学内の爆発事故に巻き込まれ何故か被爆し、通りすがりの医学生に命を救われるも白血病を患い、闘病生活の中で助けてくれた医学生にひかれてゆくが、実は彼とは血を分けた兄妹だった… という、書いてるこっちもちんぷんかんぷんな設定のドラマ、「赤い疑惑」。その横暴っぷりが古き良きテレビ・ドラマ全盛時代の特性だったのかもしれないが。
このタイトルが由来しているか否かは不明だが、2000年に結成された同名のロック・バンド「赤い疑惑」がこの度、サード・アルバム『オレ達は日本で生きてる』をリリースする。ジャケットとタイトルを見て頂ければ分かる通り、醸し出される雰囲気は1970年代どころか戦時中だ。しかし内容ははっきりと2010年代。といっても今らしい音楽が鳴っているという訳ではない。なんたって、一曲目「日本で生きている」は「与作は木を切る~ヘイヘイホ~」で始まるのだ。しかしそこから徐々にラップが入り混じり、歌詞は今の生きにくい世をもがきながらどのように生き延びるか、葛藤する30過ぎの男の物語へと変化する。
この一曲だけではなく、作品全編通して歌われるテーマは変わらない。アクセル長尾(Vo&G)の書く歌詞は自分の現状をありのままに吐き出し、生々しくも痛々しいものになっている。それが暗くならない訳はない。ないはずなのに、ライヴ会場で彼らが登場する時に笑いが起こるのはなぜだろうか? それはメンバーの三人が一列になって中腰で手拍子し「ドゥ~ワドゥワドゥワ、赤い疑惑」と言いながら登場するからであろう。この笑いを誘うパフォーマンスのせいか、今まで歌詞の内容にまで気がいかなかった。いや、彼らをライヴで初めて観た10代の自分に、この歌詞の本質まで理解する事は出来なかったんじゃないだろうか。「赤い疑惑」の赤は、きっと赤裸々の「赤」だ。アクセル長尾は赤裸々に歌う。自己嫌悪の悪循環を、悲しき恋愛事情を、30歳を過ぎてロック・バンドで意地を張り続ける理由を、小金井公園のアスファルトから新宿のネオン街へ向けて歌う。彼らの実家が西東京市と微妙に近いのもまた煮え切れなさを増し、悲しみを誘っているのかもしれない。長渕剛の「とんぼ」のようには格好がつかない。
個人的な話で恐縮だが、私も二十代後半に突入し、上京して3年。ようやく赤い疑惑の本質が見えてきたように思う。10代では知るよしもなかった東京への愛と悲哀、未知の世界だった30代はもはや手を逃せば触れるところに。私も30歳を過ぎれば彼らの様に「ダーティーサーティ」と言っているのだろうか。東京砂漠に足をとられてもがいているのだろうか。それは明るい未来なのか、暗い未来なのか。何にせよ、赤い疑惑を聴いて涙も流せないまま大人にはなりたくないなと思う。(text by 水嶋美和)
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PROFILE
赤い疑惑
アクセル長尾(Vo&G)
松田クラッチ(Ba&Ch)
沓沢ブレーキー(Dr&Ch)
2000年西東京にて結成。ドラマーの変遷を経て2003年現在のメンバーに。アクセル、クラッチ、ブレーキーという冗談まがいの3人組が東京バビロンを相手取り、パンク、ヒップ・ホップ、レゲエ、アフロ、ラテン、お囃子などを武器に闘争を開始。2005年リリースの1st『東京フリーターブリーダー』が各地で評判を呼び、その赤裸裸なリリックは多くの若者から絶賛された。2008年満を持して2nd『東京ファミリーストーリー』をリリース。ラテン・ギタリストの父親との共演を行なうなど野心的に音楽性を開拓。更に磨きがかかったゴッタ煮サウンドに注目が集まっている。