*雨ニモ負ケズ『逆光/瓦礫の城』
シーンに登場以来、アルバム、シングル・リリース、ARABAKI ROCK FEST. 12出演など、全力で駆け抜けてきた仙台の雨ニモ負ケズが、配信&USBメモリー限定のシングルをリリース。バンド初のインスト曲となる1曲目、そして2曲目と3曲目は3.11への強いメッセージが込められた曲となっています。OTOTOYではwav音源での配信も開始しているので、雨ニモ負ケズの新たなスタートを、是非とも高音質で感じてみてはいかがでしょうか。
雨ニモ負ケズ / 『逆光/瓦礫の城』
【価格】
※まとめ購入のみ mp3 450円 / wav 600円
【Track List】
1. 逆光 / 2. 瓦礫の城 / 3. イツカ-2013.3.11 live.ver-
傷を知らない人には持てない優しさと決意
この度リリースされるこの作品を聴きながら、自分は音楽になにを期待しているのかを考えた。未知の世界を覗きたかったり、ときめきたかったり、胸を焦がしたかったり、ただただはしゃぎたかったり。アーティストたちの感性がそれぞれ違えば、その数だけ期待することがある。例えば、私は音楽を通じて、私が体験し得なかったことを体験したアーティストに、その景色やそこで湧いた感情を教えてもらいたい。片鱗でもいいから受け取って、自分の中に落とし込んで血肉にしたい。そういう期待もある。そんな期待をもって、私は今雨ニモ負ケズを聴いている。
宮沢賢治、没後に代表作とも言える作品となった遺作メモから名前が付けられたこのバンドは仙台市を中心に活動している。その名から童話のような世界観を想像できるが、音は疾走感のあるエモーショナル・ロック。刺々しくも哀愁のあるメロディーを奏でる鍵盤、それを追い込むように切迫したビート、安定と不安定の間で揺れる女性ヴォーカル。さらに歌詞は内省的で傷だらけだ。でもそれ以上に、傷を知らない人には持てない優しさと決意もある。どの曲も緊張感で溢れているが、それと同時に音は美しく、脆さ、儚さもある。
そんな彼らがこの度リリースした『逆光/瓦礫の城』。2曲目の「瓦礫の城」というタイトル、そして3曲目に、前作『不撓ノ一奏』の最後を飾った「イツカ」のライヴ・ヴァージョンが収録されていることに、本作に向かった彼らの覚悟が読み取れた。「イツカ」は2011年3月後半、バンドの中心人物であるsotti(piano)が震災直後の避難生活のなかで「今なにかを残さないと」と思い、小松拓哉(Bass)と作りはじめた曲だ。そしてこれは2013年3月11日に収録されたライヴ音源。音源にはこんな言葉が添えられていた。「震災直後に作ったこの曲を2年後の3月11日に演奏できた事の意義、あの日から今この時までずっと続いている事の意味を込めて収録」。「瓦礫の城」もまた、震災後、彼らが各地で目にした瓦礫の山のことを指している。新作を聴き、彼らの言葉を受け、あの日から終わったことなんてなにひとつもないんだということを改めて感じさせられた。
震災直後、彼らが「イツカ」を作ったことは、彼らにとっても救いになったと思う。その曲を携えてさまざまな地を演奏して回っただろう。多くの「瓦礫の城」もそのなかで見た景色なのかもしれない。では1曲目の「逆光」とはなんだろう。前作のインタヴューで雨ニモ負ケズは言葉に重きを置いているバンドだと認識していたが、この曲は初のインストゥルメンタルだ。私はこう想像する。“逆光”とは瓦礫の向こうから差した光で、その景色には絶望だけではなかったと。実際に見たわけでもないのにこんなことを言ってしまうのは憚られるが、そうとしか思えないほどにこの「逆光」のなかで泳ぐ音は豊かで煌めいている。
先ほど内省的と言ったが、今彼らの意識は外に向き、自分たちが見たものを自分たちのフィルターを通して、世に伝えようとしている。雨ニモ負ケズの変わりはじめにあたる本作を、作品として、記録して、多くの人に聴いて欲しいと切に思う。(text by 水嶋美和)
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PROFILE
雨ニモ負ケズ
2008年仙台にて結成。
2010年現メンバーになり、ディストーションピアノを中心とした、エモーショナルピアノロックバンドとして仙台のライブハウスを席巻。風刺や悲哀、人生を歌う文学的インテリジェンスと破天荒なライブパフォーマンスにより、その注目度は加速度的にアップ。比類なきスタイルと世界観が脚光を浴びる。地元仙台を拠点にし、2011年から全国に進出。
2011年8月 ガクセイウンドウ東北決勝大会@ZEPP仙台に出場
2011年11月 NomadicRecordsより1stアルバム『不撓ノ一奏』をリリース
2012年4月29日 ARABAKI ROCK FEST.12に出演!
2012夏 会場限定short album 「暁光」リリース