
ceroや片想い、森は生きている、oono yuukiらと肩を並べる逸材、Alfred Beach Sandalが、2年ぶりのセカンド・アルバム『DEAD MONTANO』をリリース! 今作はバンド・メンバーとして、ウッドベースに岩見継吾(ex. ミドリ、Zycos、Oncenth Trio etc)、ドラムに光永渉(チムニィ、ランタンパレード、あだち麗三郎クワルテッット etc)、サックスに遠藤里美(片想い)を迎え、これまでで最も多彩なリズムとグルーヴィーな演奏に。2013年の終わり、聴いておかなければいけない音楽が増えました。
Alfred Beach Sandal / DEAD MONTANO
【配信価格】
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 2,100円
mp3 単曲200円 / アルバム購入 1,500円
【Track List】
01. Rainbow / 02. Typhoon Sketch / 03. 仕立屋 / 04. ビールの王冠 / 05. Dead Montano / 06. Night Bazaar(Album version) / 07. 殺し屋たち / 08. トーチカ / 09. Coke, Summertime / 10. モノポリー
変わらずあるのはコラージュのような、本物のそれとはちょっとずれたような風景
いまから1年半ほど前、前作『One Day Calypso』をリリースしたAlfred Beach Sandalこと北里彰久に話を伺ったとき、「世界ふしぎ発見!」の話で盛り上がった。「テレビの中の世界に憧れている感じ。この距離感を音楽でやれれば」彼がそう言ったように、前作は曲名を並べるだけで異国の空気が立ちこめていた(「エイブラハムの髭占い」「中国のシャンプー」「メキシコ生まれの甥っ子」など)。未だ見ぬ訪れる予定もない遠くの地への憧れと、テレビから得る中途半端な知識、その隙間を埋める想像力。その国っぽい言葉や音、メロディーを、彼独自の解釈で集め、切り貼りし、まるでジャケット同様にコラージュ作品を作るように1曲を仕上げる。その彼読解による異国の風景画こそが、彼の活動の大きなモティーフになっているのだと思っていた。

それから1年半ほど後、11月に滅多に地方でライヴをしない彼を大阪で見れる機会があった。Alfred Beach Sandalはイコール北里彰久ではなく、その都度編成を変える不定形ユニットなので、弾き語りのときもあれば、即興セッションのように変拍子ドラムの上でスティールパンやサックスが踊ることもある。この日はウッドベースにドラム、そしてギターに歌というシンプルな編成だったが、3人でどっしり構えたバンド・サウンドは前作より音遊びが減った分、曲と詞の素直な良さが際立った。改めて彼のソングライティング力の高さに脱帽し、ライヴ後もなんだか帰りたくなくて友達もいないのに会場に居座って、帰りの電車ではうっとりして1駅乗り過ごした。今作『Dead Montano』はあの夜と同じ編成だ。
この作品には前述したような異国情緒は、ある曲もあるが作品の中心を流れてはいない。変わらずあるのはコラージュのような、本物のそれとはちょっとずれたような風景。でもそれは海の向こうなのか、もしかしたら近所かもしれないし、部屋から1歩も出ない曲もある。語弊を恐れずに言えば、テーマがなくなった。それなしでもいけるということ、伝わりやすいはっきりとしたテーマを掲げずとも、はっきりとしない何かをより深く伝えることができる。自由度が増したためか、作品を介して見える彼の無邪気さも陰影もより濃くなり、チャーミングさもぐっと増している。
また、今作に関して突っ込まずにいられないのはこのエンドレス・サマー感。12月リリースの割に夏の曲がとにかく多い。「ビールの王冠」は前作収録の「finally, summer has come」の続編のようで、夏休み最後の日のようなえも言われぬ気分になる。観たことのある方ならわかっていただけるだろう、「菊次郎の夏」のラストシーンのあの感じ。飄々としながらも高まるテンションを隠せない無邪気で爽やかな「Coke, Summertime」、クーラーの効いた部屋でひたすら机上のマネー・ゲームに興じる「モノポリー」、これは夏というより秋口か、多幸感と緊張感がある「Typhoon Sketch」など。異国情緒でいえば、「Night Bazzar」の混沌とした街の描写はまるでドイツのクリスマス・マーケットのようで、聴けば陶酔、またははしゃぎたい幼心が疼く。「殺し屋たち」「トーチカ」は怖い外国の絵本のようだ。ぞわぞわするけど、音は温かい。
イラストレーター、デザイナー、画家の小田島等さん命名の言葉を借りて言えば、今年はcero、スカート、シャムキャッツ等の「東京ニューポップ・シーン」の活躍がめざましい年だった。夏にザ・なつやすみバンドのライヴを見に行ったときは超満員だったし、去年まではまだギリギリ見つかっていないと思っていた片想いも森は生きているも素晴らしい新作を発表し、表舞台に飛び出た印象がある。シーン的にも注目されているし、さらにいまのAlfred Beach Sandalは広く聴かれるに最良の状態にある。だから、もしも彼を知らないままにうっかりこの文章を読んでしまった方は、ちょっとそこの試聴ボタンを押してみてください。私は早くなるべく多くの人とビーサンの話がしたい。(text by 水嶋美和)
RECOMMEND
7月に7インチで発売するやいなや、すぐに完売となったシングル。曽我部恵一や荒内佑(cero)たちを従えてのバンド編成で、ランタンパレード屈指の人気を誇る一曲「甲州街道はもう夏なのさ」をセルフカバー!! カップリングには、こちらもバンド編成で、コーネリアス「スター・フルーツ・サーフ・ライダー」のカヴァーを収録。
片想い / 片想インダハウス
約10年前に結成、マイペースに活動を続けてきた片想い。ファンク、シティ・ポップ、ヒップホップとさまざまなジャンルを含んだ音楽性、そして、その笑いと踊りがごちゃまぜのヴァラエティ豊かなライヴ。彼らはイベントに出演するたびに絶賛の波を起こしながらも、これまでリリース音源は、即完売ですでにプレミア付きとなっているアナログ・レコードのみという状態。そんな片想いが、ついに待望のファースト・アルバム『片想インダハウス』をカクバリズムよりリリース!
(((さらうんど)))の音楽が僕らの街に鳴り響き、煌めき合い、いつもの風景を違うものにする。(((さらうんど)))の音楽が走り出す。躍動するメロディとビートの詰まった僕らの『New Age』2013年の決定盤!! 山下達郎氏もCDを購入したとインタヴューで発言したり、KREVA氏、吉井雄一氏(THE CONTEMPORARY FIX)にもblogで紹介されるなど、イルリメとTraks Boys、各々のいたシーンにとどまらず、より多くの方面で好評を得た、傑作1stアルバム『(((さらうんど)))』から1年。待望の2ndアルバム『New Age』が完成です!
Alfred Beach Sandalの過去音源はこちら
LIVE INFORMATION
2013年12月9日(月)@吉祥寺 アムリタ食堂
「Dead Montano」発売記念ライヴ
2014年1月9日(木)@渋谷WWW
ライヴ・イン・ハトヤ 2014
2014年2月1日(土)@ハトヤホテル シアター会場
出演 : パッションフルーツ(Alfred Beach Sandal、王舟、oono yuuki、夏目知幸、森雄大)、neco眠る、片想い、やけのはら、Dorian、VIDEOTAPEMUSIC、and more…
PROFILE
Alfred Beach Sandal
2009年に北里彰久(Vo,Gt)のフリーフォームなソロ・ユニットとして活動開始。脳みそでサンプリング&コラージュされた架空のモンド・ミュージックを、ひとりから複数人で具体的なかたちにしている。体内時計のリズム。
これまでに『Alfred Beach Sandal』、『One Day Calypso』、『Night Bazaar』の3作品を発表している。2013年、『モノポリー』(7inch)、『Dead Montano』をリリース。
>>Alfred Beach Sandal Official HP