シャムキャッツ INTERVIEW

昆虫キッズやceroと共に、東京のインディ・シーンを引っ張ってきた4人組バンド・シャムキャッツが、約3年半ぶり2枚目となるフル・アルバム『たからじま』をリリース。昨年発売のミニ・アルバム『GUM』に引き続き古里おさむ(uminecosounds)がプロデュース、小田島等がアートディレクションを担当。今作新たにマスタリングに益子樹(ROVO)、エンジニアに柏井日向を迎え、P-Vine Recordsからリリース! これまでレーベルに入ること、すなわち外部の人が関わることを拒んでいた彼らが、何故レーベルからリリースすることになったのだろうか? アルバムの話はもちろん、震災と音楽性の関係から熱いカレー談義まで、幅広く話を聞かせていただいた。

インタビュ―&文 : 梶原彩乃

シャムキャッツ / たからじま

抜群のポップ・センスでもって異彩を放ち、数多くのミュージシャンを虜にしてきたシャムキャッツの新作が完成! アンセムとなったシングル「渚」を含む全12曲を収録。ユーモラスでゆるやかな雰囲気と、胸が高鳴るグッド・メロディの数々。都市とその郊外をフィールドに、日々たゆたうような日常を送る中でこそ表現される甘酸っぱい狂騒と倦怠感を纏った、待望のフル・アルバム。

1. なんだかやれそう / 2. 本当の人 / 3. SUNNY / 4. シンパシー / 5. No.5 / 6. 手紙の続き / 7. さよならアーモンド / 8. おとといきやがれ / 9. 渚 / 10. 金太郎飴 / 11. スピークアウト / 12. YOU ARE MINE

時代性を無視するっていうのが一番の時代性

ーー『たからじま』は、楽曲もポジティヴで、落ち着いた熱のあるアルバムだと思いました。レコーディングは前作同様、古里おさむさん(uminecosounds)とやっていますが、やり方に違いはありましたか。

夏目 : 今作は、『GUM』を出して、ライヴをして、バンドの体力もあがったので、その流れの中で次を作ろうという感じで動いたんですね。『GUM』はライヴのフィーリングをそのまま録れればなという意識があったので、ほとんど一発で録音していたんですけど、今回は“曲を録る”という意識が高かったので、別録りもやりました。音色的に遊べたかなと思います。自分たちの出来うる範囲でいい音を録ろうと意識して録りました。

ーー自分たちの考える良い音とはどういう音なのでしょうか。

夏目 : 「渚」を出してから意識的になったのは、4人の顔がちゃんと見える音。演者のフィーリングが伝わる音でやりたいです。それは、すごいできたと思ってるし、ネームバリューとか周りの人がいいよって言うエンジニアに頼んで音を求めるんじゃなくて、自分たちのフィーリングにあう人を選びました。今回は馬場ちゃん(馬場友美)です。巨乳です。馬場ちゃんに最大限頑張ってもらって録ってもらう、それを古里さん(古里おさむ/uminecosounds)に手伝ってもらって良いものにしていきました。

ーーなるほど。音は陽ですけど、歌詞は陰な感じがありますね。「SUNNY」など、前半の曲に多いですね。自分の深いところをえぐってくるような、シニカルな感じがしました。

夏目 : それは図らずとも、このバンドの本質を突いてしまっているね(笑)。特に「SUNNY」はダメだと思った時に書いたから。のび太くんになりたいなと思って「SUNNY」を書いたんですよ。"やる気出すための何かちょうだいよ 君のおなかの中に入らせて"も、母性的なものを求めているという感じもあるし、4次元ポケットじゃないけど、わけわからない世界の方が楽なんじゃないかとね。

ーー以前、別のインタビューで「震災に関しての歌詞は入れたい派」と仰られていましたよね。現在の状況とかを積極的に取り込もうとした結果、暗い歌詞になったのですか。

夏目 : いや、そこは逆で、そろそろ他のバンドが「震災」を出してくるなと感じていたので、僕は時代性を無視した方がいいかなと思ったんですよ。時代性を無視するっていうのが一番の時代性なんじゃないかという気がしていて。歌詞もなるべくそういう風にしたつもりです。 

ーーなるほど。時代性を取り入れずとも、2012年にリリースされているという点で、自然と「これは震災に関してのことなんじゃないか」と勘ぐられてしまったりすることもあるのでは?

夏目 : 歌っていうのはおもしろくて、勝手にその時代っぽく聞こえますよね。全然違う時代に作られた歌も、今歌うと全然意味が変わってくるから。受け手が想像に任せて楽しんだ方が、音楽としては面白いんじゃないかと思います。

ーー曲作りにおいては、今回初めて菅原さんが作曲にも参加されていますよね。

菅原 : シャムキャッツは夏目が作ってればそれでいいかなってずっと思っていたんですけど、結構みんなが背中を押してくれたんです。
夏目 : バンドというものを強くしようと思った時に、ソングライターが2人いるほうがいいっていうか、豊かな気がしたんですよ。そういう方向でやりたいなと思いました。

ーー菅原さんの曲も入って、シャムキャッツの世界観が広がったような気がします。今後はどういうサウンド作りをしていきたいですか。

夏目 : 今回は、バンドで楽曲を骨から作ったイメージがあるんです。僕もしくは菅原が骨を作ってから…。
藤村 : 個人の変態性を入れていく。
夏目 : そう。作っていく1歩前に、ちょっと個人的なものというか、ちょっとしたスパイスを最初から仕込んでおくという作業をしたいですね。

ーースパイスを強化するんですかね。

夏目 : そうそう。個人が持っている色々なスパイスをちょっと濃くしようかなっていう感じ。みんなのそれぞれのスパイスが加わって、うまいカレーになる。で、面白いことに、カレーってね…。
大塚 : カレーの話するの!?
一同 : (笑)。
夏目 : 市販のカレーって、スパイスの感じあんまりしないでしょ。でもあれって、めっちゃ色んなスパイスが入ってるからああいう均等な味になってるんですよ。結構際立った特徴のあるカレーっていうのはスパイスが5個とか6個に限られてて、その強さのバランスでカレーのオリジナリティが決まってくるらしいんです。そういう感じで次はやろうかなって思いますね(笑)。
藤村 : スパイスの入れ方のバリエーションを増やしたのを作りたい。
夏目 : そうそう。急にキーマ来たな、みたいな(笑)。

ヤンキーの兄ちゃんのiPodにも入りたいし、越谷の家族のリビングでかけてもらいたい

ーー(笑)。『GUM』がリリースされたときのインタビューで、「4人での制作に、初見の外部の人が入ってくるのがあまり好きではない」とおっしゃっていましたが、今回の制作にあたってマスタリングの益子樹さんなど、新しい人たちも入ってきましたよね。それは骨がしっかりしたからですか。

夏目 : プロデューサーの古里さんが、あまり自分たちで踏み込めないところに話を振ってくれるし、アイデアを出してくれたんです。益子さんにマスタリングを頼むというのは、自分たちじゃお願いしなかったと思います。思いつかなかったし。
菅原 : 骨がしっかりしたから前作よりも外に一歩踏み出そうという感覚がありましたね。だから頼んでみようかと思いました。
夏目 : レーベルにも入ったことだしね。

ーー『はしけ』を出した頃は、自分たちの知らないところで物事が動くのが不安になって、自分たちで作っていくことになっていったんですよね。

夏目 : そうですね。自分たちである程度できるっていうところまできたから、レーベルと絡むのがあまり怖くなくなったんです。音源を出したときにどういうスケジューリングで物事が動くとか、どうパッケージングされて宣伝されるっていうのはもう大体イメージができているので。そこの共有ができれば問題ない。そこの共有をP-VINEだったらしやすいなって思って。
大塚 : だから結局自分たちの手の届く範囲になったっていう感じ。
菅原 : そうそう。レーベルに入るということも、自分たちの手の届く範囲になったかなと思います。

ーーなぜP-VINEを選ばれたのですか。

夏目 : 経験を積み重ねていけばつながりもできるし、ある程度宣伝とかも自主でできる時代だと思うんです。でも自主よりもひとつ外に出て行けるイメージを持てるレーベルっていくつかあって、その中で一番カラーがないところがいいなあと思って。良い意味でね。だから、そういうところにお願いしたら自分たちの良さが出るんじゃないかなって思ったんです。あんまり何かに組み込まれないでしょ、P-VINE。シンプルにバンドの力を強くしてくれるっていうイメージがあったので、「お願いします」って言ったんです。

ーー自分たちからお願いしたんですね。

夏目 : そうです、そうです。『GUM』を出したときに、自分たちでやったらどれくらいのことができるんだろうなっていうのが見えた気がしたんです。多分もう1回自主制作でやったらもう1個広がりができたと思うんですけど、次はレーベルに入った方がいいかなっていうアイデアが生まれて。その前からレーベルに入りたいっていう意向はあったんですけど、「GUM」を作ってなおさら気持ちは強くなりましたね。

ーーレーベルに入ることによって、どういうところが強化されたと思いますか。

菅原 : 強化されたというよりは、もっと自分たちの知らないところまで音が届くかなというイメージ。 
夏目 : うんうん。あとスタッフが増えるんで、やれる仕事の量も全然違う。
藤村 : 射程距離が広がったかなと思いますね。

ーーシャムキャッツは昆虫キッズやceroと共に、東京のインディ・シーンを牽引するバンドだと思いますが、今後はどのような活動をしていきたいですか。

夏目 : なるべく多くの人に知って欲しいですね。難しいことを考えだすと活動の仕方とか舵の取り方とかあるんでしょうけど、僕はそれよりもあまりにも聴いている人が少ないと思ってるから。
藤村 : いろんなタイプの人と出会いたいよね。ヤンキーの兄ちゃんとかに「良かったよ~」って言われたい。
夏目 : 言われたい言われたい。ヤンキーの兄ちゃんのiPodにも入りたいし、越谷の家族のリビングでかけてもらいたいですね。僕らはあくまでもバンドというもので動いてるし、いろんなことを試してみたいし、色んな景色を見たいっていうのは大きい。「やっぱこれだろ」って感じをもっと欲しいというか。
藤村 : ていうかまぁ、旅かな。4人で旅をしていきたいというか、色んな景色を見たくてバンドをやってるんです。自分が大好きな作品を作るとかそういうのじゃなくて、4人で色んな広がりのあるものを見て行きたい。それに売れるが付随しているんです。
夏目 : 面白くしていきたいんだよね。自分たちも面白がりたいし。どうしたら面白くしていけるかっていうと、ひとつはハコを大きくしていったら面白い。すごく普通の考えですよ。みんなそうしている。
菅原 : ずっと同じ場所でやってても、面白くはないですもんね。
夏目 : 飽きずにやりたいですよね。
夏目 : 面白いことをたくさんしたい by ヒロト。
藤村 : き~が~く~るいそう~♪
夏目 : それ違う曲ね(笑)。
一同 : (笑)。

ーー(笑)。ありがとうございました。

RECOMMEND

cero / My Lost City

前作『WORLD RECORD』がロングセラーを続けるceroの才能が爆発した2ndアルバム。小旅行から大航海へ。彼らには新しい音楽と時代の風が吹いている。新たな時代を築いていく名盤!

昆虫キッズ / こおったゆめをとかすように

新世代の都市型ロック・ミュージック・バンド、昆虫キッズによる、約2年ぶりのニュー・アルバム。豊かな都市という仮面に隠れた貧しい世界を、どこかストレインジな感覚を含んだサウンドで描きます。そこにあるのは見落としがちなリアルな日本の若者による世界観。悲壮感だけでなく、どこか楽天的でもある、そんな矛盾しているとも思える世界が鮮やかに浮かんできます。2012年、生まれるべくして生まれた名作。

トクマルシューゴ / In Focus?

前作『PORT ENTROPY』での大ブレイクによって、今や世界の音楽シーンをリードする大注目アーティストとなったトクマルシューゴが放つ、キャリア最高作にして新たなる地平に踏み込んだ最新アルバム『In Focus?』登場! 約2年半の濃密な創作期間を経て紡ぎだされた壮大な音絵巻。あらゆるシーンから逸脱したかのような、トクマルシューゴにしか表現し得ないポップかつ驚きとユーモアに満ちた大傑作の誕生です。

PROFILE

藤村頼正 (Drums&Chorus)
大塚智之 (Bass&Chorus)
夏目知幸 (Vocal&Guitar)
菅原慎一 (Guitar&Vocal)

東京を中心に活動している4人組ロック・バンド。

2007年頃から活動開始。2009年4月に1stアルバム『はしけ』をリリース。以降、枠にはまらない楽曲と自由なステージングで、その独特な存在感はじわじわと広がりを見せる。2010年、「DEMO SINGLE SERIES」と銘打ったCD-R作品を3作連続リリースし全てソールドアウト。2011年、3月9日に1stシングル「渚」、8月24日に2ndシングル「サマー・ハイ」をリリース。どちらも良い感じにヒット。11月23日にミニ・アルバム『GUM』をリリース。こちらも更に良い感じにヒット。

2012年12月5日には、待望となる約3年半ぶりのフル・アルバム『たからじま』をリリース。

この記事の筆者