若き才能が詰め込まれた、デモ音源を配信スタート

ビートルズがロック / ポップスの歴史を変えたように、はっぴいえんどが日本語ロックを生み出したように、このバンドが今までの音楽の在り方を変えてしまうような気さえしている。彼らの音楽が日本の音楽シーンを一旦リセットして大きく深呼吸させるキッカケになるのだと、私は本気で思っている。

“森は生きている”という名前の6人組バンドをご存知だろうか。近頃インディー音楽界隈を騒がせている彼らだが、現在出しているのは自主制作のデモ音源一枚のみだ。公式プロフィールの文章を拝借すると、「カントリー、ソフトロック、スワンプ、アンビエント、モンド、エキゾチカ、トロピカル、ジャズ、ブルース、クラシック、アフロなど… メンバーの雑多な音楽嗜好により、バンドは唯一無二のチャンポンミュージックを奏でる」とのこと。確かにあちこちの音楽要素を兼ね備えていて、ジャンルで括ることすら野暮なことのように思える。

彼らの音の中ではフィルム映画が紡ぐような物語や、懐かしい匂いのする景色が脈々と息づいている。長い年月をかけて積み重ねたような重厚な音が、20代の若者たちによって奏でられているなんて、とても信じられない。

若干21歳でありながらバンドのリーダーを務める岡田拓郎に、森は生きているについて訊いた。まだ聴いたことのない人は是非その音を感じてほしい。

取材 & 文 : 竹島絵奈


森は生きている / 日々の泡沫

【価格】
mp3、wavともに 単曲 150円 / まとめ購入 400円

【Track List】
1. Intro / 2. 日々の泡沫 / 3. 帰り道

※まとめ購入のお客さまにはwebブックレットがつきます。

INTERVIEW : 岡田拓郎(森は生きている)

——まずはですね、「森は生きている」とはなんぞやというところから徐々に掘り下げていきたいなと思います。最初にこの変わったバンド名の由来から聞いていこうかな、と。

岡田拓郎(以下、岡田) : “森は生きている”はマルシャークとか色んなところで使われてるんですけど、僕らはドラえもんの話から名前をとっていて。単語じゃなくて文章をバンド名につけてるのってそんなにいないなあと思ったのでつけましたね。それとあとから決定打になったのが、森っていう字をローマ字表記にすると「mori」、ラテン語で「死」を意味する言葉なんです。それって単純におもしろいんじゃないかなあと思って。

岡田拓郎

——最初バンド名の「mori wa ikiteiru」を見たとき「memento mori(ラテン語で『死を想え』という意味)」がふっと頭に浮かんで「死は生きている」とは何だろう? って気になりましたね。

岡田 : まさにそれですね。僕たちみんな、ある意味何回も死んでる人達なので…(笑)。

——何回も死んでるというのは?

岡田 : それこそ僕なんて大した学生生活を送らず、メンバーの大体がこれまでの人生で何らかの痛い目にあっている人たちばっかなんで。みんな何らかの不満を根に持っている。そして冴えない学生生活を送ってきた(笑)。

——その不満が表に出ることはなかったんですか?

岡田 : そういった不満から各々音楽聴いたり、楽器演奏したりして自分の中で消化していましたね。

——それにしても岡田さんの出す音や聴く音楽は、21歳とは思えないようなものばかりで。なぜリアルタイムで流行っている音ではなく、昔の音を求めるようになっていったんですか?

岡田 : 僕ももちろん、流行っていた音楽とかは小・中の時ずっと聴いていました。ただそれと並行して古い時代の音楽――そもそも親がビートルズとかエリック・クラプトンとか好きだったので、僕も聴いてましたね。それこそB’zも好きだったんですよ(笑)。B’zの松本さんが学生時代に影響を受けた音楽を当時僕は聴いていて、そこで例えばレッド・ツェッペリンとか出てきたら、ジミー・ペイジが聴いていた音楽をもっと聴きたいと思って… という具合に深く深く掘っていったら19世紀ぐらいになっちゃったんです。ひたすら好きなミュージシャンが聴いていたものを辿って聴いていったら、自然と今のスタイルになりましたね。それとやっぱり時代を追って聴いた中で、自分の性に合ったのがやっぱり6~70年代の古いフォークだったりジャズだったりなので、結局同時期に聴いてた音楽は聴かなくなっちゃいましたね。

——なるほど。当時、具体的にどういったルートで色んな音楽を掘っていったんですか?

岡田 : 中1の時はずっと6~70年代のロックを聴いていて、そのルーツにあたるのがブルースだってことがわかったんですね。なので中2の時は黒人ブルースのすっごい古い、音がチリチリ鳴るようなものをたくさん集めて、そればっかり聴いてました。高校ではビッグバンドに入ったのでジャズを改めて聴くようになりました。これもおもしろいなあと思って高校時代はずっとジャズを聴いてましたね。

——ビッグバンドではもちろんギターを?

岡田 : そうですね。ギターは小5から弾いてるんです。うちのおかんがギタリストの高中正義さんをすごい好きで、掃除してるときとか洗濯してるときとかによく流してたんですよ。ずっと聴いてるうちにふと「なんだこの音は!」って思う瞬間があって、それまで何の音かわからなかったんですけど、後にそれがギターの音だったっていうことが分かって「ギターかっこいいなあ」って思い始めたんです。たまたまおとんがフォークギターを弾いていたので、それを引っ張り出して勝手に弾き始めたのが始まりですね。

——でも小5っていうと周りの友だちはギターなんて弾いてなかったでしょう(笑)。

岡田 : そうですね、ほぼ皆無でした(笑)。ただ小学校に、長髪でてっぺんはハゲてるロック好きの先生がいたのでいろいろ教わったりしましたね。ギターを始めていきなりアドリブの練習からさせられたんで、今改めて思い返すと無茶苦茶だなって思います(笑)。ただ学校の先生だったので、教えるのがすごい上手かったんです。

——森は生きているのメンバーは冴えない学生生活を送ってきた方が多いんですよね。そういったメンバーが出会うキッカケはどこにあったんですか?

岡田 : ドラムの増村とキーボードの谷口が最後に入ったメンバーなんですけど、ベースの久山は高校の時の同じクラスのヤツで、管楽器吹いている大久保がビッグバンドの2個上の先輩でした。そのビッグバンドの先輩や友達を集めて一回府中の市民会館でジャズセッションしたんですね。それでその時にたまたま来ていたのが、いま歌を歌っている竹川だったんです。その当時はドラム叩いていたんですけど…。

——ドラムからヴォーカルっておもしろい転換ですね。いつ転換したんですか?

岡田 : 僕が大学入ったばかりの時に、森は生きているの前身バンドを始めて、そのとき竹ちゃんはドラマーだったんです。よくお店とかでセッションをしてたんですけど、馴染みのセッションバーで酔っぱらったマスターが「竹ちゃん歌えよお!」とか言ってその場で長渕剛かなんかを歌ったんですよ(笑)。そうしたらめちゃくちゃ歌が上手くて! コイツうちのバンドでドラム叩いてる場合じゃないぞと思って、次の日からヴォーカルに変わりましたね。

同じような音楽趣味持つ人たちだけで集まったバンドとは違うものができている

——地元周りで仲間を見つけて活動していたんですね。そういえば岡田さんは現在福生に住んでるんですよね。

岡田 : はい、そうですね。生まれは青梅、育ちは福生です。

——岡田さんを形成する上で福生がカギになるんじゃないかなと思って行ってきましたよ、福生に! (笑)。

岡田 : えぇ、行ったんですか?! (笑)。

——はい(笑)。福生はすごく特殊な街なんですね。横田基地の近くに行ったらアメリカ人だらけで、値段はドル表記。「アメリカに最も近い福生」と呼ばれている理由が分かりました。

岡田 : よくセッションしに行っていたチキンシャックというライヴ・ハウスがある通りは、戦後の外国人接待のために開かれたちょっといやらしい商店街だったりしますね(笑)。

——そういうアメリカに最も近いと呼ばれている街で育って、岡田さん自身が街の影響を自覚してる部分はあるんですか?

岡田 : そうですね、アメリカの街ゆえに洋楽志向っていうことは全然なくって、逆にそういった街の影響を受けた日本人ミュージシャンも福生には結構住んでいるので、そういう音楽には影響を受けましたね。高1の頃から出入りしていたチキンシャックで毎週セッションをやっていて、基地の外人も結構遊びに来てたんですね。ずっと黒人の人たちとブルースを弾いていたので、そういう生の演奏を通しての影響はすごい受けましたね。だから福生っていう街がなかったら今の僕の音楽性は変わっていたかもしれないです。

——ライヴを観ても、音源を聴いた時に想像していたものよりもずっと泥臭いなあと思ったんですが、そういう泥臭さもセッションを通して培われたものなんですね。

岡田 : そうだと思いますね。ザ・バンドとかグレイトフル・デッドとか、いわゆる泥臭いバンドって夜な夜なみんな集まってセッションを繰り返しているんです。もうお酒でドロドロになりながらやっているあの泥臭さが、すごいブルースだなって思って。

——森は生きているでもそういったドロドロなセッションは?

岡田 : もうスタジオ入ったら日々セッションです! 曲のリハ全然しないですもん(笑)。僕以外もみんなセッションが好きな人たちなので、スタジオに入ったら増村がアフロビートを叩き始めて、それにみんな乗っかってセッティングが始まりますね。

——ライヴ前のセッティングでもセッションされてますよね。ライヴを観て、お互いが音で対話しているなって感じました。

岡田 : それは嬉しいです! あと、メンバーはコンポーザー志向を持ちながらもプレイヤー志向な人が多いので、ライヴでも昔のロック・バンドみたいにソロもバリバリ入っていて。今のロックの流れってギターめちゃくちゃ弾いたらカッコ悪いと思われがちですが、バリバリに弾きまくりたいですね。

——音源再現ライヴかのような、音源通りのライヴをやるバンドは多いですよね。

岡田 : そうですね、だからグレイトフル・デッドのように毎回のライヴをあまり決め事なしに、フリーキーにやっていきたいなと思ってますね。

——それこそメンバーそれぞれの個性の強さがライヴでもすごく出ているのに、うまくまとまっていい熱量で放たれているのがすごく不思議です。

岡田 : 本当ですよね~(笑)。みんなすれすれのとこなんですよ、好きな音楽とかも結構違うし。ただ、どこかのピースが絶妙にパチッとはまっているから、この6人でやってますね。音楽趣味の根底にある部分は同じ方向を向いてるんですが、改めてみんなで話していると違うところが結構あるんですね。同じような音楽趣味持つ人たちだけで集まったバンドとは違うものができているなあとは思ってますね。

シティ・ポップっていう括りを超えられたらって思います

——そんなメンバーの雑多な音楽趣味に所以があるんでしょうが、森は生きているの音楽は、とにかくジャンル分けできないですよね。付けるタグが見当たらない。

岡田 : 確かにジャンル分けできないですね。… だからシティ・ポップとか言われるのかなあ(笑)。

——こんな言い方するのは少し野暮だとは思うんですが、最近「インディ・ポップ」と呼ばれる波がありますよね。森は生きているもその流れに括られがちだと思うんですが、それが全然違う。森は生きているってすごく特殊な存在だと思うのですが、自身の立ち位置をどう捉えてるんですか?

岡田 : いやあ、立ち位置とかっていうのは何も考えていなくて、本当に各々が好きな音楽を180パーセントくらい発散するという思いだけで作っているので…。とは言えシティ・ポップ括りには若干の違和感はありますよね。でもまあ時代も時代だし、括り分けするにはそうせざるを得ないのかなとは思います。メジャーセブンをコードで使っているくらいで、他にシティ・ポップに当てはまるところはないですけどね(笑)。あと竹ちゃんのヴォーカルが割とシティ・ポップ要素があるのかなあとかは思いますね。

——でも今はもうアルバムを制作しているということで、シティ・ポップとは間違っても言われないようなものに仕上がっていると。

岡田 : そのシティ・ポップっていう括りを超えられたらって思いますね。新しいジャンルを作るわけでもないですけど、ちゃんと自分たちの音に名前が付けられるくらいのものを作りたいなと思います。デモ音源とアルバムで違うのは、アルバムに入っている新しい曲は全部ドラムの増村が詞を書いてるという部分です。僕らは詞については何も言わないので、増村が好き勝手書いていて。だから増村の私小説に僕らが音楽をつけてるんじゃないか? みたいなところはあるかもしれないですね(笑)。増村こそすごいひねくれていて、あいつ明治文学しか読まないんですよ。松本隆っぽいってこれからすごい言われると思うんですけど、あいつの言い分だと松本隆と同じものから影響を受けているとの事です (笑)。

——松本隆もドラマーで作詞家ですもんね。ちょうど歌詞で気になっていたんですけど、メンバーの雑多な音楽趣味があるのにも関わらず、なぜ日本語でやっているのかという部分をお聞きしたくて。

岡田 : 今のくだりのあとに言うのもなんなんですけど、やっぱりはっぴいえんどが好きなんですね。あと日本人である以上は絶対に日本語で作りたいですね。わざわざ日本人が英語にする意味はないなあと思って。あと日本語ロック自体がまだまだ開拓の余地があるような気はしているんです。ほとんどの日本語の曲を聴くと芋っぽいなとかって思いません?

——言葉の乗せ方が野暮ったいということですか?

岡田 : そうそう、本当に芋っぽいんです。ということはまだまだ日本語を乗せるということに関して開拓の余地があるなと思いまして。日本語ロック開拓の、もっともっと何歩も先行けたらなっていうのは増村が詞を書くようになってからずっと2人で話していますね。

——日本語ロックに開拓の余地があるっていう部分の認識はバンド・メンバーみなさんで共通して持っているものなんですね。

岡田 : そうですね。やっぱりはっぴいえんどを聴いていると言葉の乗せ方が抜群にうまいなって思いますよね。はっぴいえんどが始めにありながら、何であんなに7~80年代の日本の音楽は芋っぽくなったのかなっていうのはすごい疑問です。

——はっぴいえんどが始めにありながら何やってんだ! 引き継げ! と(笑)。

岡田 : 何聴いて作ったんだ! と。まあこれは完全に僕らの趣味の世界なんですけどね…(笑)。ただそう芋っぽく感じることが多いので、僕らは徹底してやってます。自分たちなりに。やっぱり日本語って音に乗せるのがすごい難しいんですね、語数も少ないし…。だからその面でも実験のしがいはあるなあって思いますね。森は生きているがそのうちテクノ・バンドになるかもしれないけど、それでも日本語で歌います。

——やはり、はっぴいえんどの影響は絶大なんですね。

岡田 : そうですね、はっぴいえんどには良くも悪くもすごい影響を受けました。

——悪い影響ってあるんですか?

岡田 : やっぱりはっぴいえんど的な音にはなっちゃうなっていうのはありますね。それは詞に関しても同じです。それを悪いって言う人もいると思うので。

——今までの話を聞いて、はっぴいえんど以降廃れていた日本語ロックが、森は生きているによって一回リセットされ再スタート切るという可能性がありありと感じられますね。

岡田 : その間にもいい音楽はもちろんあったけど、それも含めていったん日本語ロック的リセットができればなって思いますね。音楽はお金になんないしなあ… とか、そういう音楽の在り方自体も一回リセットしたいなって思います。具体的にどうするかとかは全然思いつかないんですが、とにかくそういった全てを超越したアルバムを一枚作れれば、今後の音楽の在り方ももしかしたら変わるかもしんないなと思って作っています。

——期待大です。アルバムは八月発売の予定なんですよね。

岡田 : うん、その予定です。でも僕は自主制作のデモ音源でも半年かけて録音したんですよ。「これはダメだ」「あれは違う」とか言いながら、ミックスとかも全然定まらなくて。だから今回もいつ終わるのか分かんないです(笑)。自分が満足しないと絶対出したくないし、例えば中途半端な音楽を世に出して、それを聴いて「いい!」って思う人はいるかもしれない。ただやっぱり人の耳は騙せても自分の耳は絶対に騙せないので、そこは譲らずに作りたいですね。… いやあ、暑苦しいかなあ(笑)。

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PROFILE

森は生きている / mori wa ikiteiru

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インタヴュー

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