2013/12/12 00:00

「シュガーベイブが演奏しそうな楽曲」をコンセプトに結成された大学生バンド、あっぷるぱい。2012年10月にリリースされた初作『あっぷるぱい』は、新人ながらタワレコメンに選ばれるなど、耳の早いリスナーの間で話題を呼びました。その注目度に反して、インタビューやメディアへの露出はほとんど行なわなかったため、どんな人たちがやっているのか気になっていた人も多いはず。そして、このたび、OTOTOYからの熱い要望に応えていただく形でインタビューを行なうことに成功しました!! それだけではなく、完全オリジナルの新曲を1曲書き下ろしていただき、レコーディングしていただいちゃいました!! もちろんハイレゾで配信いたします。ceroや森は生きているにも通じる、日本のルーツを現代にアップデートさせた彼らのサウンドをチェックしてみてください。あっぷるぱいを知らないなんて後悔しますよ!!

あっぷるぱいの書き下ろし完全新曲をハイレゾでリリース

あっぷるぱい / ココナツ・ホリデイ
【配信形態】
HQD(24bit/48kHzのwav)

【価格】
単曲 250円
タワレコメンにも選出された名作アルバム

あっぷるぱい / あっぷるぱい
【配信形態】
mp3

【価格】
単曲 200円 / まとめ購入 1,350円

【Track List】
1. アップルパイの薫り / 2. にわか雨 / 3. マーマレードの朝 / 4. あっぷるぱいのテーマ / 5. カルピスソーダの夏 / 6. ジャンクション / 7. デイドリーミング

INTERVIEW : あっぷるぱい

2012年10月、レコード屋にずらりと並んだ大学生バンドのファースト・アルバムは、アレンジもメロディもシュガーベイブ風で、思わず視聴機の前でにやりとしてしまったのを覚えている。「シュガーベイブが演奏しそうな楽曲」をコンセプトに結成された大学生バンド、あっぷるぱい。胸がキュンとしてしまうような甘酸っぱさと爽やかさを持ち合わせながら、今の若者らしいちょっぴりシニカルでクールな質感も含んでいる「2010年代のシュガーベイブ」といった感じだろうか。現在出している唯一のアルバム「あっぷるぱい」のタイトルから見ても、「ドリーミング・デイ」に対して「デイドリーミング」、「こぬか雨」に対して「にわか雨」。さらにはヴォーカルを担当する二人の名前が「山下達郎」に対して「山下」、「ター坊(大貫妙子の愛称)」に対して「ダー坊」ときた。こうした気の利いたオマージュは彼らのもつ若い感覚が成せる技だろうし、気難しいことなんてどうでもいい、古いとか新しいとか関係なく良いものは良いんだと言い切ってしまったように思えて、その眩しいほど真っ直ぐなスタンスにどうしようもなく惹かれてしまった。

今回の取材があっぷるぱい初のメディア露出となる。青春の瞬きのようにフレッシュなメロディと甘く香るような歌詞の新曲「ココナツ・ホリデイ」のお供にぜひ。

取材 & 文 : 竹島絵奈

身内だけで盛り上がって終わっちゃうのが嫌だった

――あっぷるぱいは2012年10月に『あっぷるぱい』というアルバムを出しましたが、そこに至るまでのバンドの経緯を教えていただけますか?

山下 : まず、2010年にアルバム制作を開始しました。みんな、シュガーベイブが好きだったんですね。それで同じ大学の友だちとかも一緒にいれちゃおっかっていう軽いノリで、あっぷるぱいが結成されました。スタジオに入るのにあわせて、ぼくが曲を持ってきて、それにみんなでコード合わせて演奏して、「もうちょっとシュガーベイブっぽくしようよ」って作っていった感じです。実は結構テキトーなバンドなんです(笑)。

ダー坊 : アルバムの制作は順調に進んでいたんですけど、わたしが2年間大学を休学してしまったんです。そこで2年間ヴォーカル録りがあいてしまって。

――ダー坊さんが休学されていた2年間はどうされたんですか?

山下 : ちょうどダー坊が休学しちゃった時、2010年の7月に流線形のクニモンド瀧口さんとロック・バーで出会ったんです。

――まさに、シュガーベイブがロック喫茶のディスクチャートで出会ったみたいなエピソードですね(笑)。

山下 : あはは、本当ですよね~(笑)。バーのマスターが紹介してくれて、瀧口さんに音源を聴いていただいて。「すごいいいね!」って大学生のぼくらに声をかけてくださったんです。

――そこから本格的な製品としてあっぷるぱいがハピネスレコードからCDを出すっていう流れになったんですね。

山下 : そうですね。本当は自主制作で自分たちで売ろうって思ってたんですよ。ただ流通っていうところを考えたときに、自分たちにはそもそも知名度がない。噂や口コミで満足するなら、瀧口さんが推してくれるっていうだけで満足だったのかもしれないんですけど、いい音楽をやろうと思ってやっていても流通しないと多くの人に聴いてもらえない。だから瀧口さんにハピネスレコードを紹介してもらって、全国流通のアルバムを出すことになりました。

――自主制作であったらやりたいことを自由にやれるという利点もあると思うんですが、あえてレーベルに入って「流通」ってところに着目したんですね。

山下 : 自主制作って、自分たちで完全に最後まで仕上げますよね。自分たちのやりたいことを100パーセント出せる。それはいいんですけど、やっぱりプロの視点が入ることが必要だと、ぼくらは思ったんです。流通をするっていうことはやっぱり広い意味で「晒す」ことになる。ぼくらは、どうせ学生バンドだろうって甘く見られるのが嫌だった。ちゃんと多くの人の耳に晒したかったんです。自主制作で頑張っている人たちもたくさんいると思うんですけど、そうやって身内だけで盛り上がって終わっちゃうのが嫌だったんですよ。作品に対して、いい意見も悪い意見もあると思うんです。そういうリアルな評価ってやっぱり流通に乗せないと得られないかなっていうのはすごく感じてますね。

――それで広く聴かれるような、敢えて厳しい場所に作品を立たせることを選んだんですね。一作目からあっぷるぱいがどう評価されるかを勝負した。

山下 : はい、パッケージも含めて製品としてちゃんと勝負しました。みんなでお金を出し合って500円でCD-Rを売るってこともできたんです。でもせっかく一生懸命魂込めて作ったものが安っぽくなっちゃうなぁと思って。だからジャケットもちゃんとデザインしてもらったし、ミックスやマスタリングにもすごいこだわって出そうってことをメンバーみんなで話していました。やっぱり音楽をやっている以上は、作品として自分たちで納得のいくものを出したいなと思っています。

古い音楽を聴かないのはもったいないなぁって思っちゃうんですよね

――それでは2010年に瀧口さんと出会い、2012年にダー坊さんが復学をしてから本格的なレコーディングが始まったんですか?

山下 : オケもできていたので、あとはダー坊のヴォーカル録りだけでした。ぼくが歌詞をその二年間で詰めてたりもしました。

ダー坊 : 大学にわたしが復学してから歌録りをして、2012年10月にアルバム発売という流れです。

――あっぷるぱいの1stアルバムが発売された時期って、ユーミンや山下達郎がベストを出したり、So Niceの復活やジャンクフジヤマの活躍など、タツローフォロワーの動きと本人の動きが重なって、シティ・ポップの再評価がなされた時期として印象的だったんですけど、私はその決定打があっぷるぱいだと思ってるんです。

山下 : ありがとうございます、嬉しい(笑)。本当はもう2年前に出てる予定だったんですが結局寝ちゃったんですよね、休学で。だから別にわざわざ時期を合わせたわけじゃなくて、たまたまそういう時代の流れとリンクしたっていうだけなんです。

――偶然だったんですね。『SONGS』発売当時の録音状況と比べるともちろん録音技術も発達したと思うんですけど、録音面での今のアプローチは意識されましたか?

山下 : 本当はアナログで全部やれたらいいんですけど、今はアナログで全てはできないんですよ。逆に今ではパソコンで全部作るっていう話もありますけど…。今のCDにありがちなのって、音圧をすごい上げることなんです。試聴機に入れたとき他のCDよりも目立たせるために音圧を上げるということがよく行われているんですけど、そういうものにはしたくなかった。かと言って、あまりにも音圧がなさすぎると音がこもってるんじゃないかな? って今だと思われちゃうんですよ。そこも忠実に当時の音像でやろうとすると、今の人たちは物足りなく感じてしまう。僕たちが届けたいところって等身大の、同世代の大学生なんです。だから多少音圧を上げなきゃいけない。そういう葛藤の中で、中間をとって作りました。音圧が低すぎると若い人は音圧が低すぎるって思うし、逆に音圧を上げすぎると古い音楽を好む方たちは音圧が痛すぎると思う。その間をとっているのでシュガーベイブよりも多少音圧が上がった、今っぽいサウンドにはなっていると思います。

――大学生や20代前半の等身大の若い人に届けたいっていう思いから、あえて「シュガーベイブが演奏しそうな楽曲をコンセプトに結成された大学生バンド」というキャッチを付けたと思いますが、今の大学生がシティ・ポップや昔の音楽をあまり聴かないことに対する、ある種批判めいた気持ちが山下さんの中にあったんでしょうか?

山下 : 新しければいい、新しいものを追い続けるっていう、もちろんそういう人もいると思うんですよ。でも過去の曲はたくさんあるわけで、それを今はカヴァーとかしていますよね。でもぼくはカヴァーに対してちょっと抵抗がある。すごくいいオリジナル曲のカヴァーって、絶対オリジナルを超えられていない気がしちゃって。例えばぼくらのやり方として、シュガーベイブをカヴァーするっていうやり方もあったと思うんですよ。だけどそれをやらなかったのは、やっぱり前に進んでいないと嫌だなって思ったからなんです。山下達郎のベスト盤がすごい売れたり、あまちゃんでYMOの「君に胸キュン」がリヴァイバルとして流行って、それはそれでいいと思うんです。だけど若いぼくらは前に進んでいきたいなというのはあって。だからシュガーベイブのコピーもしないし、自分たちのオリジナルにそういう古い好きな要素が入っているというだけで、決して批判しようとしているわけではないんです。アップデートって新しいものだなって思うので、原型は古い音楽かもしれないですけどぼくらは全然古い感覚ではないし、現代を生きていて新しい気持ちとしてやってる。ただ、歌詞の使い方は現代のポップスとは違うものになってると思います。それはやっぱり、歌詞から風景をイメージしてほしいという思いがあるから。パーソナルに拠りすぎないで、もっと想像できる世界観は現代でもあるし、等身大の若い人たちもそういうことは感じるんじゃないかなと思って。だから、古い音楽を聴かないのはもったいないなぁって思っちゃうんですよね。時代懐古主義みたいなものは全くないんです。

――はっぴいえんどやはちみつぱいがいた時代の歌詞を見ると、自分の中で想像がどんどん膨らみますよね。あっぷるぱいを初めて聴いたときにもその感覚がありました。

山下 : まさにそうです。「カルピスソーダの夏」なんて、まずPVを考えていましたからね、歌詞よりも先に(笑)。本当は夏で浜辺をダー坊が走って、カルピスソーダを飲むっていうPVをやりたかったんですよ。予算がなくて泣く泣く諦めたんですが…。でも最初にPVみたいな映像から入ってるって、正に想像力の世界だと思うので。はちみつぱいの「塀の上で」はまさにその世界観ですよね。

――はちみつぱいといえば、あっぷるぱいのバンド名の由来ってはちみつぱいからではないんですよね。

山下 : そうなんです。野口五郎がむかしあっぷるっていうバンドをやっていたんですよ。それがひらがなだったんです。よく、はちみつぱいなんじゃないかって言われるんですけど、 そうではなくて。ぼくのおばさんが野口五郎の大ファンで、あっぷるっていいなあって思って。で、ひらがなにしたとき「あっぷる」だけじゃ物足りないかなって思って「あっぷるぱい」にしました。

――シティポップというジャンルに色んなアーティストがいる中で、なぜシュガーベイブをコンセプトにしたんですか?

山下 : シュガーベイブってすごく色んな要素が入ってるんですよね。ラテンやソウル、ポップス、色んな要素が入っている。シュガーベイブのリズム・セクションっておもしろいなって思いますよね。「SUGAR」のあのリズム・パターンとか大好物なんですよ。ああいうリズムや遊びのポップスって、最近あんまり聴かないなと思って。あのパターンだけでずーっとセッション出来ちゃうような、そういうものを作りたかったんです。

――そういう欲求にヒットしたのがシュガーベイブだったんですね。

山下 : そうですね。まぁティンパンアレイとかはっぴいえんどとかもいる中で、ちょっと粋な感じのソウル・ミュージックとかを入れた良さっていうのは、一番シュガーベイブがしっくりきました。あと、やっぱり親が好きだったのも大きいですね(笑)。

音楽ってブレちゃうとだめなんですよ

――先ほど音楽には時間軸は関係ないという話が出ましたが、現代のポップスを好んで聴く大学生に「シュガーベイブ、すごく良いから聴いてみなよ!」って言って出されても古い音楽だという先入観が邪魔してハードルが高くなってしまうと思うんです。だけど、そこでシュガーベイブを渡すんじゃなくてあっぷるぱいを渡す方が、逆にシュガーベイブへの近道なのかなって思いました。

山下 : ほんと、まさにその通りなんです。古い時代の音楽を出してもピンとこないような気がするんですよ。それだったら例えばaikoは結構古い手法を使ったりしていて、シュガーベイブも好きなんですよね。だからシュガーベイブを聴くよりaiko聴いた方が分かりやすかったり、aikoがコピーしていた「今日はなんだか」を聴いてみたり。その方が圧倒的に分かりやすいんですよね。あっぷるぱいはシュガーベイブほど古臭くはないと思うんですよ。ただ演奏している内容はシンセサイザーを多用しているわけでもないし、スクラッチが入っているとかループさせてるとかやっていないので、新しいことをやっているわけではないですね。でも古い音楽をまんまコピーしてその音像でやろうとすると、どうしてもこれって70年代のCDでしょ? で終わっちゃうじゃないですか。等身大の人たちに聴いてもらいたいっていう意味では、さきほど言っていただいたみたいにあっぷるぱいをとっかかりに広げていこうよっていうのはアリなんじゃないかなぁって思います。だから逆で、あっぷるぱいを聴いてシュガーベイブを聴こうよっていうことだと思うんですよ。特にぼくと同い年くらいの人たちからすると。

――ここがシティー・ポップを始めとした古い音楽を聴く入り口になれば、ということですね。

山下 : おじさんおばさんに怒られちゃうかもしれないんですけど、ぼくは同世代の人たちに聴いてもらいたいという思いがやっぱり強いんです。

――山下さんが聴いてもらいたい、同世代の若い人たちの反響は耳に入りましたか?

山下 : タワーレコードさんがタワレコメンで推してくれたので、若いリスナーが好んで買ってくれたらしいです! タワーレコードの若いバイヤーさんたちがあっぷるぱいを好きになってくれて、タワレコメンの会議で推してくれたとあとから聞きました。

――タワレコメンって比較的若い人が好む音を出すバンドが多いですよね。だからタワレコメンのポップを見て、すごくしっくりきました。

山下 : びっくりしましたよ。あぁ若い人たちも聴いてくれるんだな~って、まずそれが嬉しかった。もちろん瀧口さんの流線形を聴いている人からの反響もあるんですけど、大学生の方がツイッターやフェイスブックで「聴いてます!」って言ってくれるんですよ。きっかけさえあれば若い人でも想像力の音楽みたいなものって、別に嫌いじゃないんだろうなぁって思いました。

――そのきっかけになりうる一枚ができたんじゃないかという手ごたえはあったのですね。

山下 : そうなっていると嬉しいですね。

――今はシュガーベイブのオマージュとしてのあっぷるぱいですが、今後どんどんアーティストとしての自我が芽生えてそのコンセプチュアルな部分が崩れる可能性はあるんですか?

山下 : それは絶対ないですね。音楽ってブレちゃうとだめなんですよ。あっぷるぱいに関してはブレないでやりたいなって思います。ただ、それぞれソロ活動とかはあるかもしれないですね。

――わたしがなんで今回熱心にインタヴュー依頼をしていたかというと、シュガーベイブは『SONGS』を出して解散してしまいましたが、あっぷるぱいも去年の10月に発売されてから音沙汰がなかったので、もしやここまでシュガーベイブと同じにしてしまうのでは… と心配になってきたからなんです。

山下 : あはは、鋭いですね(笑)。でも実際今はなんとも言えないですね。ただみんな就職活動や卒論で忙しいので、解散するかもしれないですよね。今の活動ペースからすると、今後のことはまだまだ分からないです。

あっぷるぱいは初期衝動なんですよ

――山下さんの音楽的ルーツのお話し伺いたいんですけど、シュガーベイブはフィフス・アヴェニュー・バンドなどの洋楽のエッセンスを積極的に取り入れてて当時じゃちょっと新しすぎたなんてことを言われてますが、あっぷるぱいは洋楽的なルーツや要素を意識的に取り入れたりはしなかったんですか?

山下 : やっぱりシュガーベイブと山下達郎と大貫妙子が大好きなので、そこからの影響大ですね。洋楽とかはよく分からないです…(笑)。

ダー坊 : わたしもシュガーベイブや大貫さんですね、佐藤奈々子さんなんかも好きです。洋楽だとジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロなんか好きです。

――「デイドリーミング」や今回の新曲などからはナイアガラトライアングルからの影響もうかがえますよね。

山下 : そうですね。大滝詠一なんかも大好きです。大瀧詠一や山下達郎の手がけるCMソングっていいですよね。むかしはCMソングって書き下ろしだったんですよね。ダー坊のPVが先に浮かんだっていうのもCMにしたいなあって思ったからで。いまのカルピスのCMは能年玲奈さんが出てますけど、あれに「カルピスソーダの夏」がかかったら最高だな~とかそんなことばかり考えています(笑)。今のCMソングってタイアップばかりで、書き下ろし感のないものが多くてつまらない。

――むかしのCMソングに匹敵するようなものも作りたかったんですね。

山下 : そうですね。その気持ちは強いですね。キャッチーじゃないですか、CMソングって。あと、ひとつすごく言いたかったのは、あっぷるぱいは初期衝動なんですよ。あっぷるぱいをやろうってなってから、曲書いて歌詞書いてアレンジやって、録音までに一ヶ月かかってないですもん。録り自体も二日間で7曲全部録ってるので、結局2010年5月の一ヶ月で終わってるんです。すごく早く録れたわりには休学が重なってしまい、その後が長かったんですけど…(笑)。こういうコンセプトでこういうことやりたいねって言ってから1か月間でばっと録れちゃったのは完全に初期衝動で動いてるんですよ。だから変な邪念がまったくない状態で、シュガーベイブっぽい音楽をやろう! って録ったからよいものを完成させることができたのかなと思います。

――先ほど言った「シニカル」だとか「批評性」だとかいうものはそもそもリスナー側が抱いているもので、あっぷるぱいというバンド自体がもうただ単にシュガーベイブが大好きで、それに近い音楽をやりたいっていうシンプルな理由で組まれたバンドだったんですね。

山下 : そうそう、ぼくらは単純にシュガーベイブっぽいアレンジの音楽をやりたいっていうだけなんです。だからシュガーベイブっぽくない曲は却下して、シュガーベイブっぽかったら採用! っていう(笑)。

ダー坊 : そうそう、「う~ん、これシュガーっぽくないな~」とか、みんなポイかポクナイかで悩んでました(笑)。

――バンド内でシュガーベイブっぽいか議論してから採用するんですね。

山下 : でも、そこは結構テキトーで「カルピスソーダの夏」はシュガーベイブというより山下達郎さんの「ライド・オン・タイム」っぽかったり、スタイル・カウンシルの「シャウト・トゥ・ザ・トップ」ぽかったりもしますよね。「デイドリーミング」はシュガーベイブの「夏の終わり」なんですけど。

ダー坊 : なんだかんだ、山下くんが一番テキトーなんです(笑)。

――あざとさがあるのかなって思っちゃってたんですけど、意外と欲求みたいなものが素直に表れた一枚で、結果的に若い人たちに届いたっていうものになったんだなってわかりました。新曲「ココナツ・ホリデイ」を聴かせていただいたんですけど、最初から「SUGAR」を想起させるリズム・パターンで、にやりとしてしまいました。

ダー坊 : あれは本当は夏前に出そうと思ってたんですけど、気が付いたらもう夏が終わっちゃってて…。オケは去年の12月に録り終わっているんですよ。でも山下くんの歌詞が上がって来なくて。

――「ココナツ・ホリデイ」って聞いて、伊藤銀次の「ココナツ・ホリディ’76」やココナツ・バンクなど、ナイアガラ系のイメージが膨らみました。

山下 : まさにそのイメージですね。この歌詞のなかでは、「ココナツ」「とこなつ」「この夏」で掛けたんです。この曲、録音の朝に書いたんですよ、実は(笑)。お昼からレコーディングっていう日に曲ができていなくって。朝にばっと書いて、そのまま録音しちゃったっていう。

――もう歌詞はこれで決定なんですか?(※この時まだ仮歌状態だった)

山下 : いやまだ仮のものなんですよ。ただ最初テキトーに書いたものって意外と初期衝動だったりして、それを越えられなくなっちゃうんですよ。

――テキトーに書いたつもりのものが、実は本当に書きたいものだったかもしれないっていうことですね。

山下 : そうかもしれないですね。でも歌詞って同じ言葉になっちゃったりするじゃないですか。それは気を付けないといけないですよね。この曲もときめき、あの曲もときめき、ときめきだらけじゃん… ってなっちゃう(笑)。で、こんな風に歌詞に悩んでいるあいだにもうすぐ10月になってしまって、気が付いたら一年経ってしまうわけなんです(汗)。でもOTOTOYさんの配信があるから頑張りますよ!

――最後はすごく長いギターソロが入っていましたね。

山下 : そうそうそう。最後はラテンっぽくなるんですけど、あれはサンタナを意識してます(笑)。

――ほかにあっぷるぱいは、GARO解散以来37年ぶりとなる「マークfromGARO」のニューアルバム「時の魔法」にアレンジ、演奏として参加していますね。高田漣さん、鈴木茂さんなどそうそうたるゲスト・アーティストの中にあっぷるぱいが入っていてびっくりしました。

山下 : 僕らみたいな大学生があんなところに名前を並べてしまって、驚きですよね…。マークさんがあっぷるぱいをすごい気に入ってくれて話が来たんです。ガロも親の影響で聴いてきたので嬉しかったです。あとぼくら、他の方と関わって音楽をやるというのは初めてだったので不安だったんですが、マークさんがすごい楽しんでやってくれたのでなんとかできました。

――最後に、あっぷるぱいの今後について伺えますか?

山下 : こればっかりは何とも言えないですね。もしかしたら解散するかもしれないし、ソロ活動するかもしれない。ただ僕らの曲が、聴いてくれた人にとってシュガーベイブのように20年30年経っても聴いてもらえるようになれば嬉しいですね。

マーク from GARO『時の魔法』にあっぷるぱいが参加


マーク from GARO / 時の魔法 発売日 : 2013年9月25日
発売元 : EPICレコードジャパン
参加アーティスト : あっぷるぱい、小原 礼、加橋かつみ(ザ・タイガース)、鈴木 茂、鈴木雅之、砂田和俊(サンタラ)、高田 漣・伊賀 航・伊藤大地、高橋幸宏、ブレッド&バター、三沢またろう、村松 健、山口洋輔、and more

■収録曲名 : 学生街の喫茶店、時の魔法、虹色のラベンダー、ガラスの涙はもういらない、風の館・ロマンス・Stranger in the City・アビーロードの青い空・四つ葉のクローバー、Pale Lonely Night、地球はメリーゴーランド、たんぽぽ

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PROFILE

あっぷるぱい

「ひたすら爽やかな、あっぷるぱい」

親がシュガーベイブが好きだった事がきっかけで、「シュガーベイブが演奏しそうな楽曲」をコンセプトに結成された大学生バンド。 世代や時代が違う中で、彼等の音楽はどう聴かれるのだろうか? センチメンタルで、胸がキュンとなったり、ドキドキときめいたり… そんな表現がふさわしいアルバム。 シュガーベイブが出てきた当時そうだったように、とくに若い世代に聴いて欲しい。 音楽は大人だけのものではなく、引き継がれていく事も大事なのだ。 このアルバムが、キャロル・キングやジェームス・テイラーのアルバムのように、生活に寄り添うアルバムになってくれたらと切に願う。

〜クニモンド瀧口(流線形)

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この記事の筆者

[インタヴュー] あっぷるぱい

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