東京BOREDOMは、単なるフェスではない。ライヴ・ハウスをおもしろいものにするために作り上げられた、新しい形のライヴ・イベントである。確かに、お祭りであることには変わりないけれど、決してその日限りのものではない。毎日のライヴ・ハウスをおもしろいものにしようという明確な意思がそこにはある。スタッフをしている大半が出演者自身というのも、自分たちでライヴ・ハウスを盛り上げていこうという意識の現れだろう。それはD.I.Yという言葉で片付けるのも違和感があるくらい、泥臭い。そう、東京BOREDOMにあるのは浮かれた気分なんかではなく、どんな形でもいいから日々活動するライヴを盛り上げ、楽しい場所にしたいという切実な願いである。 以下の取材は、主催者のカシマエスヒロ(BOSSSTON CRUIZING MANIA)、モチヅキアタロウ(GROUNDCOVER.)、コジマナオト(worst taste)に加え、出演者でもあるLimited Express (has gone?)のJJ、たまたまライヴ・ハウスに遊びにきていたライターの遠藤妙子を加え、渋谷のファミリー・レストランで行われた。止まることなく話し続けた1時間半。異様な雰囲気のする8人掛けのテーブルから発信したインタビューを、じっくり読み込んでほしい。主催者3人が最初に発した言葉は、「ビール下さい!」。さあ、始めよう。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
東京BOREDOM in 東京大学 2010
2010年9月25日(土) / 26日(日)@東京大学駒場キャンパス多目的ホール「駒場小空間」
OPEN 11:00 / START12:00 / END 20:30
両日とも カンパ制 ¥2000程度 ※2日間通しカンパ ¥3000程度
出演 :
9月25日(土) 割礼 / outside yoshino / KIRIHITO / プラハデパート / miscorner/c+llooqtortion / 久土'N'茶谷 / worst taste / VELOCITYUT / BOSSSTON CRUIZING MANIA / DODDODO / 撃鉄 / ドラびでお / ゆーきゃん / GROUNDCOVER. / SIKASIKA / the mornings / シャムキャッツ / folk enough
9月26日(日)
非常階段 / デラシネ / ふくろ / Limited Express (has gone?) / Alan Smithee's MAD Universe / YOLZ IN THE SKY / owllights / のうしんとう / SuiseiNoboAz / tacobonds / HB / not great men / and Young… / FAR FRANCE / SUPER DUMB / s-explode / PASTAFASTA / 前野健太とDAVID BOWIEたち
9月25-26日/2日間
VJ : digital cakra (Genome+Akashic) / 屑山屑男(TRUSH UP)
マサラワーラー / 出張いっき
東京BOREDOM MIX CD-R (mixed by L?K?O&DJ FUKUYOKA)発売中!
★ 9月25日 / 26日分 各日 ¥2000 ★ 2日間通し 2枚組 ¥3000
メール予約または下記の店舗にて購入する事で、当日カンパ無しで入場可能!!
各日限定200枚 【残少!!】(カンパ済みチケットが封入されていますので、当日忘れずにお持ちください。)
東京BOREDOM MIX CD-R 販売店
メール予約 : 東京BOREDOM HP
ディスクユニオン : 新宿本店 / 新宿パンクマーケット / 渋谷パンクHM館 / 御茶ノ水店 / 下北沢店 / 吉祥寺店 / 池袋店
吉祥寺toosmell records
秋葉原club GOODMAN
サンレインレコーズ(WEB) : http://www.sunrain-records.com/
東京BOREDOMの主催者に話を聞く!「何故、東京BOREDOMは必要なのか?」
要はつまんなかったんだよね
——東京BOREDOMのアイデアを、どこで思いついたか覚えていますか?
カシマエスヒロ(以下、か) : 石狩亭でもっちー(モチヅキ)と呑んでいたときに盛り上がって、(タナカ)カイタ(worst taste)を呼んだんですよ。フリーのライヴをやりたいって言ったら乗ってきそうなやつを呼ぼうっていって声をかけたんですよ。
——どういうきっかけで、そういう話になったんですか?
モチヅキアタロウ(以下、も) : 要はつまんなかったんだよね。バンドの企画をやっても、主催のバンドだけが何万円も痛い思いをして、お客さんは入らなくて。だったら、みんなでお金払ってでも、楽しいほうがいいんじゃないかって。渋谷LUSHでやった第1回東京BOREDOMの始まりはそれですよね。
コジマナオト(以下、こ) : そうですね。バンドを集めて、始めにハコ代をまかなっちゃえば、集客のこととかを気をかけなくても、楽しく出来るんじゃないのってのが始まりですね。
——それまでは、余計なところに気をつかわなきゃいけなかったってことですか?
か : そうだね。自分たちの主催で企画をやると、動員もお金のことも考えないといけないし、イベント全体のことも考えないといけない。自分の考えでやれるのはおもしろいんだけど、苦労も多い。最初に思いついたときは、もう少しゆるいパーティをやりたいと思っていて、チャージ・フリーにして、ハコ代は自分たちで払ってやろうと思っていたんです。10万円でハコを借りれると仮定したら、10バンド集めて1バンド1万円ずつ払えばフリーでできるじゃんって発想ですよ。
こ : 斬新な考えだと思いました(笑)。
(一同笑)
か : もう一個の理由は、俺が(秋葉原)GOODMANのブッキングをやりながら思っていたことで、ブッキングで出ているバンドがおもしろそうじゃなかったの。毎日ライヴを見ていると面白いバンドはいるのに、お客さんは入らないし、やっているバンドはおもしろそうじゃない。だったら、なんとかして自分たちが楽しいと思ってできるイベントを作れないかなと思っていたんです。
——その思いを実現させ、第1回をやってみてどうでした?
か : 第1回は予想外だったね。
こ : 当日は雨で、お客さんが10人でもいいやって感じだったんです。だから、とりあえずみんなで楽しもうって感じだったんだけど、蓋を開けてみたら100人くらい来て、「何だこれ!」ってなった。
——なぜ100人も来たんだと思います?
も : バンド主催の企画って、バンドがフライヤーとかを作って宣伝するんだけど、東京BOREDOMの場合、全員がお金を払っているから、全員が主催者なんだよ。だから気持ちの問題だと思うんだよね。
か : そうだね。活気があった。始まる前から活気があったよね。
も : そう。完全に人の企画に乗っかるって気持ちのバンドはいなかった。
か : そこはわりと考えて声をかけたからね。自分たちでリスクを背負って参加してくれる人にしか声をかけていない。1バンド毎にそれをちゃんと話して、それでもやりたいと思ってくれんだったらお願いしますって話した。
——短いスパンで、次は6月に2回目の東京BOREDOMが開かれます。1回目と違いはありました?
こ : ゆーきゃんとJJを巻き込んだのは大きかったんじゃないかな。
も : 頭がよくなったよね(笑)。
——(笑)。2人ともボロフェスタなど経験豊富ですからね。3回目は、ついに東京大学で開催されます。あれだけの規模でやるには、最初の主旨をキープするのは難しくなかったですか?
も : 1、2回目と同じように、全員が全てを把握してっていうのは無理だと思ったけど、その状況でも僕らのポリシーとか考えの元に、呼びたいっていうバンドを呼びました。今回も出ますけど、kirihitoとかゲスト的なバンドはそういう点から決めました。
か : ライヴがいいバンドを集めれば、おもしろいイベントになるし、おもしろいライヴになるっていうことが一回目をやってわかった。自分たちのライヴの見せ方がそこで作れたんです。そこに、僕らが尊敬しているバンドとか好きなバンドも入ってきてもらいたいってのがあって呼びました。
——そうはいっても、バンドに負担がかかる分、呼ぶのも大変だったんじゃないですか?
か : だから、ゲスト・バンドにも相当リスクを背負ってもらってますよ。時間も短いし、リハもなしだし、2ステージで交互にやるからサウンド・チェックもろくに出来ない。やるほうからしたらリスクだらけのイベントなので、それを理解して、共感してもらえないと多分出来ない。出てくれているバンドはそれを理解して出てくれていていると思います。
どこかのシーンにくっついているバンドは呼びたくない
(JJ登場。到着するなり質問をはじめる・・・)
JJ : 遅れてすいません。質問していいですか?
——いきなりですか(笑)。どうぞ。
JJ : 僕の意見として、一番のキーワードは、あのメンツにイルリメくんとか七尾旅人くんとかが入っていないことだと思うんだよね。俺とかからすると、来てもらったほうがイベントとして絶対にまとまると思うんだけど。彼らを入れない真意を知りたい。
か : 敢えて呼ばないってわけじゃなくて、呼びたいバンドが先に決まっていて、バランスっていうか、こういうバンドがここにきたら、次はこのバンドだなっていう全体の流れを考えていったら、埋まっちゃったみたいな感じです。呼びたいバンドは沢山いるけど、今回はこのカラーリングで行こうって感じのほうが強い。
こ : ちょっと語弊のある言い方かもしれないですけど、呼べるバンドを入れるってことが、若干嘘くさく感じることがあるんですね。東京BOREDOMだからってことではなく、自分のやっているバンドが日々活動していく中で思っていることでもあって、東大っていうでかい場所があるから、それに見合うアーティストにお願いしようっていう感じで選ぶのは嘘くさく思えちゃう。それはアーティストに対してではなくて、自分たちが呼ぶ行為が様になるかってことなんですよね。
も : 例えば、すごく旬だから呼ぶかっていったら必ずしもそうでないし、旬でなくてライヴをやり続けているから呼ぶかっていったらそうでないときもある。
JJ : ライヴ・ハウス中心で活動しているってことが大きいの?
か : それは大きいかも。ライヴ・ハウスでちゃんと活動しているバンドを選ぶってことがでかい。
JJ : そこで選ぶ理由は?
か : 大前提として、ちゃんと自分たちで動いてる人を呼びたいと思っている。どこかのシーンにくっついているバンドとかは呼びたくない。基準があるとすればそういうとこだね。自分たちで動いて、ちゃんと活動しているバンドと一緒にやりたい。それがコジマくんの嘘くさくってとこなのかな。
JJ : ライヴのよさって何ですか?
全員 : 難しいよね... なんかJJが、恐くなってきた。
遠藤妙子(以下、え) : 好きなアーティスト呼べばいいってわけじゃないもんね?そこの線引きだよね。
か : 自分で考えて、自分のやりたいようにやろうとしているバンドってのはあるよね。みんなそうなんだろうけど、そこが明確というか主で動いているバンド。あとはおもしろいことをやりたいっていう気持ちが全面に出ている人たちと一緒にやりたい。俺のいい方だと、現状に満足していない人たちと一緒にやりたいんだよね。
——現状に満足していないってのは、ライヴ・ハウスや音楽業界に対して満足していないってことですか?
か : そうだね。自分たちをとりまく環境に満足いっていないっていうか。なんかあがいている感じのする人は好きですね。
こ : 満足してないからぶーぶー文句を言うんじゃなくて、何かを変えていこうとする人たちがいるじゃないですか。でも1個1個だと力の限界ってどうしてもあると思うので、そういうやつらが意思を集めていったら、その総和としてもっとでかくておもしろいものになるんじゃないかって。そういうスタンスかな。
も : だから、活動をうまいことやれていて、現状に満足しているなら呼ぶ必要はないかなって思う。
JJ : そんな中で、今回SuiseiNoboAz(以下、ボアズ)を呼んでいるのは?
こ : ボアズは、今みたいにぐっと盛り上がる前の、第1回から呼んでいるんですよ。バンドが軌道に乗り出したときで、ライヴの反応もすごくよくて、今回もやろうって言ってくれたので呼びました。
か : 石原くんと今も話してみても、そこの感じは変わっていないので、これだけは絶対やりたいっていってくれる。そこが変わってなければ、やっている場所が変わっても一緒にやりますよ。
駒の一つになる心地よさみたいなものがある
JJ : 同じく、東京には東京ニューウェーブというシーンもあるじゃないですか。考えのあるなしにかかわらず、彼らは東京BOREDOMを見て、こんなことも出来るんだって思ったと思うんですよね。
か : それはあると思う。東京ニューウェーブの主催者でもある、オワリカラのタカハシくんが2回目のボアダムに来ていて、「これは何かが変わりそうなイベントですね」って言っていたから、それは少なからずあると思う。俺も望むことで、東京BOREDOMみたいなイベントをみんながいろんなところでやったほうがいいんじゃないかなって思う。
——ただ第三者的な視点からみると、東京BOREDOMと東京ニューウェーヴには、決定的に違っている何かがあると思うんですよ。
か : これは悪いことではなくて、いいことだと思うんだけど、東京ニューウェーブには、自分たちにとって一番メリットがあるバンドが多く出てる気がする。自分たちが目立ちたいってのはいいことだと思うし、それで切磋琢磨してシーンが盛り上がっていけばいいと思うんだよね。タカハシくんが、「東京BOREDOMみたいに、なにかひとつのことを盛り上げていこうって感じじゃないんですよ」って言ってたんだけど、決定的に違うのはそこだと思う。ボアダムはどちらかというと、最終的には1つ1つのバンドが大切なんだけど、このイベントをみんなでどうやったらおもしろくできるかっていうほうに重点を置いている。それは今回呼んでいる非常階段とかにも感覚としてはあるんです。
——フェスとかイベントは増えてますけど、イベントを出演者全員で作り上げるっていうのは、この規模ではあまりないですよね。
か : ボロフェスタとかはそうなんじゃないんですか?
JJ : ボロフェスタは、どっかのタイミングからボランティア・スタッフのためのものになったと思ってるんだよね。100人のボランティア・スタッフがいて、その子たちががんばって音楽業界に巣立ったり、お客さんをつれてきたり、その行為がすばらしいなと思って。もちろん俺とかゆーきゃんの気持ちが落ちることもあるんだけど、それでも今も続けていこうと思えるのは、どこかで彼らと一緒にシーンをつくるって部分があるからなんだよね。それがボロフェスタとボアダムのおっきな違いだと思う。ボロフェスタは、実は一番ワイワイしているのはボランティア・スタッフ。東京BOREDOMは、実は一番ワイワイしているのは出演者。それはどっちがいいとか悪いではなくて、今までにない形だよね。
——出演者全員がワイワイしているのって、確かにあまり聞かないですもんね。
か : 実際にそれでやってみると大変なんだよね。だって、自分が主役だと思ってやってきた人たちが、自分をちょっと殺してイベントの為に何かをやらなきゃいけないっていう変換をするわけだから。
こ : 最終的に自分は殺さなくてもいいんだよってとこには持っていってるんだけどね。
か : でも、ボアダムのときは、自分のイベントのときとは違って、その中の駒の一つになる心地よさみたいなものがある。イベントの中の1つのピースってすごく重要で、その形が変わったり材質が変わっただけで、全体がよく見えるようになったりするので、そこにはまる心地よさがすごくある。お客さんも同じ感覚で、一緒に何かを作っている感があるから、ああいう風に熱狂するのかなって気がする。
JJ : その感覚って、Less Than TVのメテオナイトとも違うんですよね。何が違うのかな。やっぱりミュージシャンが働くことかなあ。
も : 多分、レスザンの場合、呼ばれるまではそういう繋がりで呼んでもらっているんだけど、出るときはみんな出演者として全力を尽くすんですよね。でもボアダムの場合、ライヴをしながら裏方もやってって感じだから。
JJ : 僕にしても望月くんにしても、ボアダムのほうがステージに立ったとき疲れているよね。
(一同笑)
——たしかに去年のボアダム、JJはすごくスタッフっぽかった。ゆーきゃんさんもアーティスト・ケアしたりしてたし、それが驚きでしたね。
か : そうだね。出演者が雑用をやるからね。
J : それを、どのバンドも均等にやらなければいけないんだよね。仕込みにも来ないといけないし、ミュージシャンが本当に主体なんだよね。で、ゲストで来た人もなんとなくそんな雰囲気になって...
か : 何なら手伝おうかみたいな(笑)。
J : 福岡の総決起集会に近いのかな。
か : たしかに、最初にコジマくんが、京都にはボロフェスタがあったり、山形にはDO ITがあったりと、ローカルから発信しているフェスはあるのに、東京ローカルのフェスがないっていうことは言っていた。その東京のローカルみたいな雰囲気は強いかも。
JJ : レスザンはレスザンから発信で、東京から発信じゃないもんね。
か : そのローカル性というか地域性はあるかも。