ここはガチのレコーディング道場ーー33週連続リリース企画「Biff Sound」7ヶ月目突入、インタヴュー・セッション
倉庫を改造したスタジオ・Ice Cream Studioを舞台に、週末の深夜から朝にかけてレコーディング・セッションを行い、その音源を33週にわたり毎週リリースしていく企画「Biff Sound」も、早いもので27週目を迎えた。筆者は、月に1度ほどIce Cream Studioに足を運び、その日のテンションによって起こる化学変化を眺めているのだが、いつ行ってもその様子は新鮮だ。ミュージシャンたちにとっては、その一挙手一投足を観られながら実力を試される場ということもあり、本番になると集中してそのパフォーマンスを一気に発揮していく。実をいうと、レコーディングに至るまでの時間というのは長く、その間アーティスト同士が雑談をしたり、コンビニで買ってきた弁当を食べたり、趣味の話をしたり、ゆったりとテンションをあげて準備を整えている。というのも、レコーディング・セッションは、ほぼ一発勝負。仲間たちだけでのレコーディング・セッションという状況は、逆にプレッシャーや緊張感というものも生み出しているようである。その様子を、今回のインタヴュー・セッション内で「道場」と例えているが、まさにその言葉通りといえる。
7ヶ月目となる今回のインタヴュー・セッションは、いつもと違う雰囲気のなかで行なわれた。3人とも、ここ最近Ice Cream Studioに来たばかりで、今回が3回目のレコーディング・セッションとなる。そして、普段は交わることのないような属性のメンバー同士でもある。DJ / トラックメーカーのKampow(カンポウ)。元・AnriettaのヴォーカルでPanacea名義でソロ活動をしている女性アーティスト、kokko(コッコ)。そして、精神異常者か犯罪者か芸術家のどれかと評されるラッパーのVENOM。とにかくテンションの高いVENOMを中心に、普段だったら交わることのないであろう3者(そして筆者)が絶えない笑いのなかでインタヴュー・セッションを行なった。こういう思いもよらないメンバーが集い、そのセッションがレコーディングされ、世に配信されていくというのが、このプロジェクトの醍醐味である。その様子を少しでも感じてもらえたら幸いだ。(text by スカムライター西澤くん)
33週連続リリースの企画名は『Biff Sound』!! 第31弾をリリース!!
33RECORD / Biff Sound #031
※まとめ購入のみ
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 240円
【収録曲】
1. eeks tune -- Hiro Ugaya
2. points for tens feat.Hiro Ugaya & VENOM -- dull over pull
3. familiar -- Mike Hannah
4. jive -- Rurico Takashima & Takumi Yoshikawa
5. goodnight,goodnight feat. DJ CLAMP5 a.k.a. wa5hei
33週連続リリースの企画名は『Biff Sound』!! 第30弾をリリース!!
33RECORD / Biff Sound #030
※まとめ購入のみ
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 240円
【収録曲】
1. gh(harmonious)
2. kicks(Huehuecoyotl)
3. acrobat feat.junko minato(山座寸知)
4. superwoman(Constructions)
5. deli(アラカキヒロコ)
6. i1(Yawn of sleepy & Ryo Takezawa)
33週連続リリースの企画名は『Biff Sound』!! 第29弾をリリース!!
33RECORD / Biff Sound #029
※まとめ購入のみ
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 240円
【収録曲】
1. point mutability(Kampow)
2. rhymes(Panacea)
3. hu(Huehuecoyotl)
4. lamp(田中光)
5. BARON(バロン)
33RECORDのセレクション作品第6弾「Biff Sound Selection 06」全11曲を無料配信中!
33RECORD / Biff Sound Selection 06
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 0円
【収録曲】
1. summer remains(Alex Martin)
2. paper craft(mal da kid)
3. balloon 2(sundelay)
4. cafe terrace galaxy feat.kokko,アラカキヒロコ(アクマチクス)
5. D(灰児圭十)
6. the low feat.kokko,関勇太(Huehuecoyotl)
7. against(田中光)
8. pillow(Ryo Takezawa)
9. houses(Kampow)
10. apricot(dull over pull)
11. talking to myself(early)(Alex Keleher)
12. masquerade(VENOM)
Artwork by yukino
Mastering by sleepy it
Mix by Yawn of sleepy
倉庫を改造したスタジオ「Ice Cream Studio」でセッション&レコーディングした音源を33週間ノンストップでリリースする、33RECORDによる企画『Biff Sound』。同企画から、第6弾となるセレクション作品が登場。第1弾から変わらず、今回も勿論フリー・ダウンロード作品となる。3/3にスタートしたこの企画も早くも半年が過ぎ、本作公開時点で29週目。毎週の配信を「週刊少年ジャンプ」に例えるならば、単行本の様な本作品であるが、いよいよクライマックスを迎え始めている。ここにきてまた様々な要素が加わり、むしろ勢いを増していく33RECORDの記録と記憶。まだ間に合う。フリー・ダウンロードという形で届けられるこの「招待状」をこの機会にそっと共有していただきたい。
※Biff Sound Selection第1弾〜第5弾は、現在もototoy内で無料配信中!
Biff Sound Selection 01
Biff Sound Selection 02
Biff Sound Selection 03
Biff Sound Selection 04
Biff Sound Selection 05
山座寸知(soonchee 3the)によるライナーノート
千葉県浦安、金属加工業を主とする工場が立ち並ぶ区域。その一角は、夜が更けると人影もなくなり暗がりの中しんと静まりかえっている。その中にただ一つ煌々と明かりを灯し続ける倉庫が見える。
どこからかふらりとやってくる人があって、その明かりに吸い込まれていく。一体なんの集まりだろうか。闇鍋パーティー? それとも、錬金術の集会? まさかこの倉庫でそんなことはないはずだが、しかし、どこかそんなことを感じさせもする。そんじょそこらには決して転がっていない何やらスゴイものが出来上がるプロセスを、その場に臨んでしかと見届け、最後には腹の中におさめてやろうというホモサピエンス本来の探究心が活性化した者たちの集まり、ということでいえば、上にあげた2例に通じるかもしれない。
やがて、昼間のその辺に鳴り響くのとは別種のマシン・ノイズが走り出し、時折上がる叫び声、突然の破裂音、次々に繰り出されることばの渦。そう、ここはレコーディング・スタジオ。つまり、音を拾い、寄せ集め、それらを一つのかたちにして磨き上げる工房。録音の素材はここに集った人々、彼女や彼が日々の暮らしの中で採取し、発酵させた感性の断片だ。
33レコードの中心メンバーたちは言う。予め作りこんだものを用意してきても、せっかくの場が硬くなってしまい、お互いが作用し合う面白みが出てこない。動きを生むきっかけとなる一部分、あるいはその時に芽生えつつある感覚をその場でかたちにしてみること、ちょっとしたアイデアや気負いのないアクションが空間に振動を与え、エーテル(偏在する媒介)を刺激し、スタジオを生成の場へと導いていく。肩の力をぬいて、そこに身を投げ出してみよう。彼らは言う。大丈夫! ちゃんと受け止めるから、と。
ここには信頼を基礎とする自由がある。この同じ時代を生きている様々な個が、他の誰とも置きかえようのない、それぞれのたった一つの地点で受け止めた、この世界に対する感性の情報が生々しいエネルギーを伴って解き放たれる。誰かが音を発した。それは呼びかけとなって、一人また一人、応答が繰り返され、やがて一つのヴィジョンが生み出される。
33レコードの連続リリース企画『Biff Sound』からの最新報告selection06には、21世紀初頭、関東圏の都市文明のあちらこちらを行き交う者たちが一瞬一瞬に捉えた日常のスナップショットの数々が、即興性を抱いたスピードを以て、集積、解体、構築され、夜更けの空の深い墨色に包まれたネオンのごとくにきらめき、ゆらりと揺らめいている。
日常という何でもないようなことばがある。今ここにいるということが継続していって、それが日常をかたちづくるのだが、われわれに与えられた感受の機能をあらためてよく働かせてみれば、日常は実に独特なあり方で現れてくる。それは、日々、常に変化し続ける過程ではないか。時に不可思議ともいえるような日常の重なり合いのなかから一つの新たな時代が生まれくる。『Biff Sound』のセレクションに耳を澄ますうち、そんな響きが伝わってきた。
ボク、山座はsundelayの弘瀬淳くんの紹介で今回33レコードの現場に居合わせることができた。機動的でよどみのないチームワークで、音作りにおいては微細な質感と間合いにこだわりを見せながら、予め絶対のルールをもうけることなく出来うる限りオープンな向き合い方で触発し合うことによる創造を目指している。その清々しいとも言いたくなるような姿勢に共感を覚えた。静まり返った工場地帯にただ一つ明かりを灯す倉庫の中で夜な夜な繰り広げられるパーティーから発せられたヴィジョンは、確かに、今この時代を生きる一つの精神の貴重なドキュメンタリーとなるに違いない。
山座寸知(soonchee 3the)
カンマレーベル主宰である三村しゅうの創作活動を行う際の名。
90年代前半からヨーロッパ、アメリカのインディペンデント・ミュージック(テクノ、ノイズ、エレクトロ・ポップ、エクスペリメンタル、クラストコア、デスメタル、アザーミュージック等々)の日本国内ディストリビューションに携わりつつ、詩と踊りとポンチ歌謡+ノイズによるパフォーマンスグループ『LOVE LOVE PROJECTION』の公演を山谷の路上、公園でのフリーマーケット会場、都内の公民館など様々な場所で行う。同時に、ギタリストとしてハードコア・パンクドラマーのマル、DUBSONIC中里丈人らと共にライヴ活動を続けた。
97年からは、祝祭的音楽体験を志向するレイブカルチャーを日本独特の雑食ポップ感覚で消化・昇華することをコンセプトとした『カンマレーベル』を開始。DJ光光光、AOA、SOFT、NXS、NUTRON等の作品リリースし、自主パーティー『カンマナイト』を不定期に開催した。00年代後半からはデジタル情報網を基盤とする新しい環境に同調できず、一時身を引き、日本に暮らす外国人に日本語を伝える活動に従事した。
2012年、カンマレーベルのパートナーであり、デコレーショングループ『フニャクラ』の一員であった画家ナガツカモトコが世を去り、以降、ナガツカの遺作となったナマハゲ少女人形と日本を旅し、古代からの記憶を伝える聖なる地と、近現代において列島に刻まれた傷跡を訪れ、象徴的なスポットにて記念撮影を行いながら私たちの国と私たちの生きる時代を見つめ直すプロジェクト『ナマハゲちゃんの巡礼』を開始した。翌年、33RECORDのレコーディングにギタリストとして参加、約15年のブランクを経て自ら音を発する活動を再開している。
33週連続リリースの企画名は『Biff Sound』!! 第28弾をリリース!!
33RECORD / Biff Sound #028
※まとめ購入のみ
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 240円
【収録曲】
1. apricot(dull over pull)
2. against(田中光)
3. balloon 3(sundelay)
4. summer remains(Alex Martin)
5. pillow(Ryo Takezawa)
6. man on the moon(Joern asleep)
33週連続リリースの企画名は『Biff Sound』!! 第27弾をリリース!!
33RECORD / Biff Sound #027
※まとめ購入のみ
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / mp3 : 240円
【収録曲】
1. the high(Kampow)
2. cafe terrace galaxy feat.kokko,アラカキヒロコ(アクマチクス)
3. houses(Kampow)
4. houses-Ryo Takezawa remix(Ryo Takezawa)
5. houses-sleepy it remix(sleepy it)
6. houses -Yawn of sleepy remix(Yawn of sleepy)
7. the low feat.kokko,関勇太(Huehuecoyotl)
INTERVIEW : VENOM、kokko、Kampow
ーーまずは、自己紹介からお願いします。
Kampow : Kampowです。普段はアナログでDJをしています。VENOMとLa?Bellさんというアーティストと3人でアクマチクスというヒップホップ・チームをやっていて、そのLa?Bellさんの紹介で、Ice Cream Studioに来ました。
kokko : 私は以前、Anriettaというバンドで歌をうたっていたんですけど、いまはPanaceaというソロ活動と、芳純秘密というユニットで活動をしています。レーベル・メイトだったミナトさん(Biff Soundにも参加しているjunko minato)がここに来ているのを知って、Twitterで「行きたい!」と言ったら、祐二さん(hydrant house purport rife on sleepy)から「おいでよ」と言ってもらったのがきっかけです。
VENOM : 僕は、VENOMという名前でラップをしています。La?BellさんとYawnさん(hydrant house purport rife on sleepy)が知り合いで、誘われてここに来ました。(KampowとLa?Bellさんと)アクマチクスという名前でユニットを組んでいます。初めて3人集まった日に僕はスタジオをエスケープしてしまって。本当にエスケープしちゃって、荷物とかも全部置いてってしまって。次の日La?Bellさんが持って来てくれたんですけどね。ただ、ヴァイヴスがあっていたからアクマチクスを結成しました。
ーーVENOMさんは、いままでの取材の中で、1番かき混ぜてくれるような感じがするキャラクターですね(笑)。Ice Cream Studioに来たときの印象はいかがでしたか。
VENOM : 僕は普段フリー・スタイルでラップをやっているので、こういう場があるのはいいなと思って来たんですけど、ガチのレコーディング道場みたいな感じで、鍛えられるいい場所だなと思いました。ひたすらノンストップで行くので。
ーー感覚としては道場みたいな感じなんですか?
VENOM : そうですね。普段から鍛えておいて、ここに来たら何も考えない。そうすると、アレンジャーが入ることで、自分がやったものがどんどん変わっていく。それがすごいおもしろくて。実際に来たら、また来たいなって思ったんですよ。フリースタイルでセッションをしていると、その場で偶発的に起こったことがあっても「いまのよかったね!」みたいな思い出にしか残らないけど、レコーディングなんで、作品として残る。それがまたいいですよね。
ーー文字にするとわからないかもしれないですけど、VENOMさんはドン・キホーテで浴衣を買ってきたそうで、ずっと紐を巻き直そうと、くねくねしながらマシンガンのようにしゃべり続けています。Kampowさん、よく一緒にユニットを組もうと思いましたね(笑)。
VENOM : お見合いみたいというか、ハナから一緒にやることになってたよね。僕は、ずっとラップやってるのに、DJと一緒にやったことがなかったんですよ。それが、初めてDJと組んで、どんどんインスト流してくれるんで、便利だなーと思って。DJがいるとトラック自体がどんどん変わっていくので、やっててすごくおもしろいですね。
Kampow : 僕もラッパーと組むのが初めてなんです。僕も便利だなと思ってます(笑)。
ーーあはははは。一緒にやることで引き出されるものがある?
Kampow : 作ってて、目的がわからなくなることがあるんですけど、あいつがラップをすると思うとゴールが見えてくるんです。一人でインストを作ってると、あとでどうするんだろうと思うこともあるけど、ラップがあると想定ができるので相方がいたほうが早く作れます。
VENOM : 骨組みだけできて、いくらフリースタイルで乗せてもかっちり世界が決まらなかったのに、ここに来てトントン拍子決まったんですよ。
Kampow : スタジオでセッションしてるよりも、ここは実際にレコーディングをしているんで、緊張感があるんです。みんなも聴いているし。それがないと作業って早く終わらないじゃないですか?
ーーレコーディングをしてるっていうのがやはり大きいんですね。
Kampow : 人がレコーディングしてくれてるっていうのがやはり違いますね。
kokko : Anriettaも、トラックは出来ているけど歌は決まっていない状況ってあって。その場で一発録りで録って、そのまま出すこともあったんですよ。だから、レコーディング・セッションっていうのは以前もやってたんですけど、いまはすごく楽しいですね。さっき道場って言ってましたけど、たしかに道場っぽい。
VENOM : 大喜利感がいいね。これでいってみよう! みたいな。初めて来た時もフリースタイル・ラップをやるって言ったら、これで行こう! みたいな感じだったし。その偶発性がすごくいいですね。
kokko : 極端な話、自信がなくてもやって出しちゃう。
ーー確かに、どんどん出番が回ってきますからね。
VENOM : うちら、初めて会ったとき、フリースタイルをやったもんね。英語の思いつきで。文法とか関係なく、感覚でさ。それが1番よくてね。
飛び込んだ瞬間を見てるのが好きなんですよ
ーーいろんな人に見られているというのも刺激になりますか? 僕も初めて来たとき歌ってって言われて。
VENOM : いきなり来るんですよね。Kampowくんの彼女も振られてましたからね(笑)。
ーー彼女は何をやったんですか?
VENOM : すごく困ってましたよ(笑)。「えー!」「行こう! 行こう!」みたいな。そこで飛び込むと新しい自分に出会えるんですけどね。僕は、飛び込んだ瞬間を見てるのが好きなんですよ。おー! 行った! みたいな。だから、ここは実験室みたいです。
kokko : 行ける? っていわれたときに、行ってやる! みたいな気持ちになるよね。行けないって言いたくないし、行った結果としても、いいものを出したい。
ーーVENOMさんの言う“飛び込んだ感”みたいなのもあるんですか?
kokko : 終わった後に、周りからよかったよとか言われるのが、自分の自信に直結します。それが飛び込んだ感じというのかな。だから、ここにきて自信がついたなって。
VENOM : 記憶にないくらいのほうがいいものができていたりするんだけど、ここではちゃんと記録に残ってるので、確認して、自分のピークを知れるし、それがすごくいいです。
ーースピード感もあっている?
VENOM : スピード感と緊張感と体力。本当一発勝負なので、2発目とかいくと、周りから時間ないよ感がすごい出てくるんです。そうすると、すごい追い込まれてくる。そのなかで、一発でドンといくと、どうだ! みたいな感じになるのもいいね。
ーーKampowさんはどうですか? それこそトラックを作っていると、もっと直したいなと思ったりとかしませんか?
Kampow : ありますけど、逆に自分のビートを作るスピードを上げようって思います。
ーー逆に自分のスキルを合わせていくと。
Kampow : じっくり直したいと思っていたら、終わらないので。
ーー本当に普段の鍛錬がここに来て出ているわけですね。
VENOM : そうですね。即興フリー・スタイルという形で、現場だけでやっていると、単にノリがいいだけになっちゃう。とある有名なDJに「それじゃあ、今晩ヤバい奴でしかないから、その後がないっていうか。名前を残したかったり、リピーターを作りたいなら、モノ作ったほうがいい」って言われて。ここでは即興と創作が同時に行われて、それがレコーディングされるっていうのがいいですね。
ーーVENOMさんにとって、ここのスタイルが合ってたということですね。
VENOM : そうですね。バンドだったら、ギターのテンションが上がるのに合わせてテンションが上がるし、その連鎖反応でどんどん他の音も増幅していく。そこで一人の世界に入って反応していく。だから、フリー・スタイル・セッションというよりは創作に近いのかなと思っています。
ーーそれが最初に言っていた道場的な感じという意味ですか?
VENOM : 道場なので、力技的な感じかと思えば、すごく繊細なので、すごく勉強になることも多いし、それが道場的な感じですね。
kokko : 実際は、曲が出来上がっていく行程を見た上で歌うから、完全な即興でもないのかな? 完全な即興というより、早く作ることが求められる。頭を使いますね。
常にファックしていかないといけないんですよ
ーー僕が前に見たときは「じゃあ次俺がやる」みたいな感じでどんどんチャレンジしていく感じだったんですけど、みなさんが来たときはどんな感じだったんですか?
kokko : どちらかというと、行ける? 行ける! みたいな感じで。いつ来るかなっていうのもありました。
ーーはじめましての日に、寒天の話で盛り上がったそうですが(内容は割愛)、音楽をしている以外の場もセッションといえばセッションですからね。
VENOM : そう。はじめましてのビートに、ファックするじゃないですか? ガンガンいくときもあれば、焦らすときもある。常にファックしていかないといけないんですよ。でもフリー・セックスじゃなくて、心までは、みたいな感じです。
一同 : (笑)。
VENOM : 誰とでもファックしようと思うけど、その日いくかどうかはわからない。セッションで相対するけど、今日はやめましょう、みたいな感じにはなることもある。
ーー曲のセッションしてる以外でも結構ファックしてる感じですか?
VENOM : 結構ファックしてますね。やっぱ違うなってときもあるし。要するに、コミュニケーションをとるということです。
ーーみんなはじめましてですからね。
VENOM : 僕らだって、今日はじめましてじゃないですか。
ーー確かに。でも、すでにすごいファックしてくれていて。
一同 : (笑)
VENOM : これもセッションだと思う。ここが、山手線内とかだったらこうはならないでしょ。
kokko : うん。インタヴューもセッションっぽくないですか?
ーーそうですね。本当に僕もはじめましてで、ここに来るまで、どなたが出てこられるかわからないときもありますからね。
VENOM : このセッションでなにが伝わるかというのがすごく楽しみですね。
ーー今日は、いつもと違ったテンションが伝わってきます。肉体感があるというか、頭で考えるというよりもガンガン来る感じがして。
VENOM : ここはすごくフィジカル。体力がなくなって、眠くなってきたときに、次はお前だって振られるじゃないですか。断れないから、その時の状況でいくんですけど、その雰囲気もいいですよね。
ーー眠くなるんですか?
VENOM : いま、もう眠いですから。ラスト・スパートです。
ーーさっき、来たばっかりじゃないですか!
一同 : (笑)
VENOM : 基本ラスト・スパートなんで。
ーーこのテンションって、本当に目の前にしないとわからない部分も多いと思うんですけど、ちゃんとレコーディングされているのがいいですよね。3人とも同じ日に来て、はじめて知り合ったってのはドラマチックでもありますよね。
kokko : 普通に過ごしていたら、絶対に会わないですもんね。
VENOM : 話とかタイミングとか、絶対に合わないと思う。山手線で会っても絶対話さないと思う。
kokko : 何? あの人? はだけてる! みたいな(笑)。
ーー今日は、至上最高に明るくていいですね。
VENOM : 僕は、一人になるとすごいネガティヴですからね。地獄ですよ。基本修羅と刹那ですから。本当やめてって言われる。
ーー全然想像つかないですけど(笑)。ちなみに、今日は3人でセッションとかありますか?
VENOM : やりたいっすね。やりましょう。おもしろい感じになると思います。普段出す感じのものではないと思うけど、やってみたら結構よかったって感じになるかなと。ポロシャツ着たら案外似合ったみたいな(笑)。そう、本当は今日、ポロシャツを買おうと思ったんですよ。でもそしたら下も買わないとじゃないですか。したら上下で二千円なんですよ。予算オーバーだなって。
ーー何の話ですか(笑)!! 先ほど、出来上がったラップ曲を聴いたんですけど、全然こういう感じの方が来られるとは思いませんでした(笑)。
VENOM : あれは着いて10分くらいで作ったやつで。あんな感じでドライヴでエフェクトかかってるとは思わなくて、ビックリしました。
kokko : あれすごいかっこよかったです!
VENOM : ああいう感じで、しんと始まって、だんだん盛り上がるのが好きなんですよね。トラックを流している状態でそれが出来るっていうのは、本当にここぐらいしかないんじゃないのかな? トラックが流れているときに、一定な感覚をキープするクールさが大事だと思うんですよ。僕は、レコーディングのときとか、自分の感情を消したほうが上手くいくんじゃないかと思っていて。衝動で行くと後で聴いてなんか違う、みたいなことがある。だからレコーディングはクールに行ったほうがいいんですけど、ここはバン! と行ってもきれいにアレンジしてくれるからすごくいいんです。
kokko : わかります。ライヴと音源と歌い方を変えるんですけど、ここは一緒だから、なんかあんまり考えないようにしています。どうぞ使ってください、くらいの感覚です。
ーー委ねるくらいの感じですか?
kokko : でもそれがいいんだろうなと。
もう本当スポーツみたいです
ーー自分で録った曲は聴きましたか?
kokko : 聴きました。力が入ってなくていいなと。ここは、いろいろ考える余裕がないじゃないですか?
VENOM : 考えるとうまくいかないけど、なにも考えないとなにもできない。無意識と意識の中間というか、無意識で意識を作動させるみたいな感じです。肉体の反応で思考するみたいな。考えるときって、秒単位じゃないですか。でもビートは流れ続けているので、このビートに対してこのスネアでこの言葉って考えるだけで2秒くらい経っちゃうから、もう本当スポーツみたいです。
ーー音でファックしてる感じがしていいですね。
VENOM : すごくいいですね! 音のファックを感じると、もっと知りたいと思って、質問するじゃないですか? それに応えてくれて、だんだん共感するなかで、ファックしてるなって実感があって。人と人とがシンクロできる、こうやって繋がっていけるんだなって。アプローチの仕方とか、合わせ方とかを勉強できる。
Kampow : なんか、まとまったかもね(笑)。
ーーkokkoさんとKampowさん、ほとんどしゃべれてないですけど、大丈夫ですか(笑)。
Kampow : 副音声的な感じで大丈夫です(笑)。
ーーちなみに前々回、こういう感じで話したときに、このあとのレコーディングのテーマは「大宇宙」みたいな話が出たんですけど、今日もなにかテーマはあるんですか?
VENOM : カフェテラスかな。
kokko : カフェテラス! いいですね!
Kampow : カフェテラス・ギャラクシー。
VENOM : コーヒーカップのマーブルから銀河系に、ミクロ to マクロ、マクロ to ミクロ。素晴らしい。
ーーこのあと、この三者が関わるカフェテラス・ギャラクシーを作ってください(笑)。
VENOM : アフリカンで始まって、ヴォサノヴァみたいになっていく。
Kampow : で、コーヒーカップが降りてくる、と。
VENOM : 宇宙エスプレッソにしようか!! 宇宙の1番濃いところ。でもそうすると意味ありげになっちゃうから、カフェテラス・ギャラクシーの方がいいね。宇宙エスプレッソだとなんか狙ってる感出ちゃうし。ギャグを狙ってるけど結局そこに意味合いとかを求めてかっこつけてるんじゃないの? みたいな感じ。
ーーその曲がリリースされるの、いまから楽しみにしています(笑)。
『Biff Sound』第1弾〜第26弾ラインナップ
>>金子泰介、金子祐二、アレックス・ケレハーへのインタビューはこちら
>>アラカキヒロコ、浅田泰生、バロンへのインタビューはこちら
>>長塚大地、mal da kid、DJ CLAMP5 a.k.a. wa5heiへのインタビューはこちら
>>Ryo Takezawa、Alex Martin、Mike Hannahへのインタビューはこちら
>>『Biff Sound』スタート時のインタビューはこちら
PROFILE
33RECORD
ice cream studioに集う作品をお届けする不確定的コミュニティ・レーベル。3月3日より33週連続配信企画スタート! 初回の所属アーティストとして発表されたアーティストは、Lee "Scratch" Perry、Adrian Sherwoodとも共演した経歴を持ち、ドイツの老舗DUBレーベル〈ECHO BEACH〉などからも称賛を集める“E.D.O. ECHO SOUNDSYSTEM”のJINYA、 90年代インディー・ミュージック・シーンを牽引したUK PROJECTの雄、〈SECRET GOLD FISH〉の長塚大地擁する“sundelay”、フリー・スタイル・ラップ・バトル〈UMB 2012〉CHIBA CHAMPION “田中光”、昨年待望の復活を果たした〈downy〉のギタリスト青木裕や〈カヒミ・カリィ〉との共作の発表でも話題を集める“hydrant house purport rife on sleepy”など、既にとても多種多様。
VENOM(ヴェノム)
激情型フリースタイルMC。リアルタイムに構築されるフローに、一貫したメッセージを残す。 語りかける、考えさせる、感じさせる。精神異常者か犯罪者か芸術家のどれかに該当する。
2014年にDJ兼トラックメーカーのKampow、ラッパー兼トラックメーカーのLa?Bellと共に『アクマチクス』を結成。
Kampow(カンポウ)
DJ / トラックメーカー 1984年生まれ。17歳よりDJを始める。 ディスコ、ハウス、ヒップホップなどを中心に、あなたの腰にジンワリ効くミックスをトウキョウ地下ディスコから毎夜お届けしている。 2014年にラッパーのVenom、ラッパー兼トラックメーカーのLa?Bellと共に『アクマチクス』を結成。DJ活動と並行しながらトラックメイクをする日々。
kokko(コッコ)
1990年生まれ。神奈川県出身。 東京都在住の女性アーティスト。 高校時代より音楽に親しみ、2010年にドリーム・ポップ・バンド、Anriettaのヴォーカルとして本格的な活動を開始。 広島のNovelSoundsよりフル・アルバムをリリースし、優しくも力強い声と高い表現力で評価を得る。
2012年、同バンドの解散をきっかけにDTMで作曲をはじめ、2013年には towaenanami(ex.prantron)とエレクトリック・ハーモニー・ユニット芳純秘密を結成。都内を中心にライヴ活動を行なう。
2014年、Panacea名義でソロ活動を開始。メランコリック・ポップをテーマに、ピアノやシンセサイザーなどの鍵盤楽器を使用した、浮遊感のある楽曲を制作。歌のみならずナレーションなどにも挑戦、また、他アーティスト作品への参加も積極的に行なっており、今後の活躍が期待される。