インストゥルメンタルで起伏のある曲が簡単に”ポスト・ロック”と区分されてしまうくらい、その手のサウンドは飽和状態だ。そうした条件など気にする様子もなく、少し離れた立場からインストゥルメンタルなサウンドを奏でるのが、2nd ミニ・アルバム『capital of gravity』を発表したsgt.である。

2008年にギタリストが脱退し、サポートだった田岡が正式メンバーとして加入後リリースされる初めてのミニ・アルバムの今作。sgt.のサウンドの大きな特徴は、メンバーのヴァイオリン奏者・成井幹子が奏でる哀愁漂うヴァイオリンの音色である。とはいっても、その音色が一人歩きしたり、強い主張をしているということはない。あくまでも、全体の中の一つの楽器という立場の上で主張をしている。そのため、ギター、ベース、ドラムという編成とうまく同居し、違和感なく調和を見せている。シューゲイザーのようなフィードバック・ノイズを施してみても、ピアノをフィーチャーしてもバンドとしてブレがなく、むしろ一層の厚みを帯びているのはそうした理由が大きい。「Apollo Program」におけるヴァイオリンとギターの掛け合いは圧巻で、sgt.が単なる“ポスト”・ロックのバンドではなく、クラシック音楽などに近いオーケストラルなバンドであることを物語っている。

そのような職人的な部分が作品作りに意識の高い共演者を呼び寄せている。今作の最終曲「銀河の車窓から -reprise-」をリアレンジしているのは、先日ツジコノリコとの共作「penguin2009」をリリースしたばかりの<Tyme.>。10月に新宿LOFTで行われる<DRIVE TO 2010>ではROVOの勝井佑二が全面参加をしたスペシャル編成でのライヴが予定されており、対バンにはNATSUMENが決定している。可能であればライヴに足を運んで現場の臨場感を味わうべきだろう。パッケージ版に短編小説が封入されているように、sgt.の音楽は生活の一瞬を切り取った短編小説にも似ている。不特定多数の観客が集まるライヴ会場という舞台で、どんな物語がサウンド上で繰り広げられるか。それはその日になるまで誰にも分からない。我々観客の息づかいもsgt.の演奏の一部として調和していくのだ。『capital of gravity』に収められた6つの短編の物語。まずはそこに静かに耳を傾けることから始めようじゃないか。

(text by 西澤裕郎)

パッケージ版『capital of gravity』に収録された短編小説がBccksで読める!

パッケージ版に封入された旅団のリーダー・毛利元佑の書き下ろしによる短編小説「月虹」を本のようなレイアウトで楽しめる、”BCCKS”というウェブ・マガジンで読む事ができます。

URL : http://bccks.jp/dept/recommuni/#B28482,P0

PROFILE

1999年結成。2003年より現在のメンバー編成にて活動。映画音楽的な手法にロック、ジャズ、ノイズ、エモや即興といったサウンドが融合したマルチ・インストゥルメンタル・バンド。2005年11月に1st mini album『perception of causality』でデビュー(mastering engineer : mino takaaki/toe)。翌年11月にgood music! とのSplit CD『sggmt!! 』を発売。これまでにオリジナル、ライブ盤、DVD、オムニバスも含め8作品を製作/参加。
主にライブを活動の主軸に置くスタイルで、ジャーマン・プログレの“CAN”のボーカリストDamo Suzukiと共演(60分の即興ライブ・セッション)や、山本精一(ROVO)を中心に千住宗臣(ボアダムス、ウリチパン郡)やEXPEも参加する PARA、中村達也×勝井祐二とも共演。また、The World Heritage(勝井祐二、鬼怒無月、ナスノミツル、吉田達也)、芳垣安洋(ROVO、ONJQ)率いるVincent Atmicusや、54-71、twin electric violins band(勝井祐二、定村史朗、芳垣安洋、益子樹)とのツーマン・ライブも開催。近年はOTONOTANI、アラバキ・ロック・フェスに出演や、rega、nhhmbase、Saxon Shore(us)等のツアー・サポートも勤める。2008年9月には約3年振りとなるオリジナル作品を初のフル・アルバムとしてリリース。また作品の全てのアート・ワークを新進気鋭のクリエイター迫田悠が手掛け、楽曲とリンクしたコンセプチュアルな内容となり話題に。作品自体も海外で高い評価を受ける。現在はサポートだったギターの田岡が正式メンバーとなり4人編成に戻り精力的に活動中。
またメンバーの成井幹子は、大友良英率いるONJOのライブでストリングスへの参加や、木村カエラ、ILL(ex.SUPERCAR)のバック・バンド参加などの経歴がある。ソロとしても勝井祐二とのデュオや、坂本弘道や巻上公一などと共演。

Live Schedule

  • 10/4(日) @大阪 SUNSUI
  • 10/15(木) @新宿 LOFT
  • 11/23(月) @仙台 Zepp Sendai

sgt. "capital of gravity" RELEASE TOUR!!

  • 11/3(火) @名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
  • 11/8(日) @大阪 SUNSUI
  • 11/25(水) @下北沢 ERA(ワンマン)

sgt.関連作品を紹介

銀河の車窓から-reprise- / sgt.
映画音楽的な手法にロック、ジャズ、ノイズ、エモや即興といったサウンドが融合したマルチ・インストゥルメンタル・バンド。配信限定シングル「銀河の車窓から-reprise-」は、ニュー・アルバムには収録されないオリジナル・ヴァージョン。さらにレコミュニでは、 24bit/48KHzの高音質HQDファイルでの配信。繊細な世界観を高音質でどうぞ。

sgt. 「銀河の車窓から-reprise-」特集

penguin2009 / Tujiko Noriko + Tyme
今作の最終曲「銀河の車窓から -reprise-」をリアレンジしたTyme.ことヤマダタツヤ(MAS)とツジコノリコとイラストレーターの木村敏子の3人により制作された楽曲。今年のtaico clubでも演奏された楽曲です。 ツジコノリコの透明感あふれる歌声とヤマダタツヤ氏による高揚感あふれるトラックが見事に融合した作品。レコミュニ限定、高音質HQDファイルでの配信です!

ツジコノリコ+Tyme. インタビュー

ONJQ+OE / ONJQ+OE
菊地成孔、芳垣安洋を擁するONJQ(大友良英ニュー・ジャズ・クインテット)とOE(タツヤ・オオエ)という異色の組み合わせによる共演作。ノイズ・コラージュによる演奏が数十分をすぎるといつの間にかブルースへと変化していく冒頭曲。20分を超える大曲が全3曲。繊細に電子音を紡いでいく OEの手捌きも驚きの、70年代初頭におけるジャーマン・ロックの隠れた逸品的趣きを持った奇跡の一枚!

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レヴュー

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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