single file project vol.2 「our music」
第2弾シングルは「our music」。相対性理論とのコラボCD『アワー・ミュージック』にて演奏されたローズ・ピアノのフレーズが織り込まれた、全く新しいヴァージョンの「our music」を高音質音源でお送りします。
【アルバム購入特典】
「our music」をダウンロードされた方に特典として、ジャケットとして使用されている新津保建秀氏撮影によるライヴ写真をプレゼントします。
>>>ジャケット画像のダウンロードはこちらから
single file project vol.1 DAVID BOWIE「Starman」
2009年12月25日(金)、26日(土)にラフォーレ・ミュージアムで行われた渋谷慶一郎によるピアノ・ソロ・ライヴ「for maria concert version Keiichiro Shibuya playing piano solo」のライヴ音源を、2010年2月5日(金)より毎週1曲、合計8曲をototoy限定で高音質配信。完全PAによってホール自体をまるでピアノの内部にいるかのように音響化されたライヴを、24bit96KHzと24bit48KHzの高音質wavファイルでお送りします。第1弾シングルはDAVID BOWIEの名曲「Starman」のピアノ・カバー。美しく綴られたそのメロディを高音質で体感してください。
【アルバム購入特典】
「Starman」をダウンロードされた方に特典として、ジャケットとして使用されている新津保建秀氏撮影によるライヴ写真をプレゼントします。
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【96KHzのファイルと48KHzのファイルについて】
KHzはサンプリング・レートのことです。数字が大きければそれだけ細かい音までしっかり入り、高音質になります。96kHzのサンプリング周波数であれば、44.1kHzのおよそ2倍の細かさで情報を変換することになります。
※ 96KHzのファイルはiPhone、iPodなどのプレイヤーでは再生できません。デジタル・プレイヤーで楽しみたい方は48KHzのファイルをご購入ください。(iPodの世代によって、48KHzのファイルを再生できないものあります。)
→HQDファイルの再生方法はこちら
“for maria concert version Keiichiro Shibuya playing piano solo” LIVE REPORT
12月25日/26日、2日間に渡りラフォーレ・ミュージアム原宿で行われた『for maria concert version Keiichiro Shibuya playing piano solo tour 2009』。筆者は25日、クリスマスの夜に足を運んだ。
会場に入ると、インスタレーション用に制作されたピアノ音がホールの様々な角度から鳴り響いている。ステージ上にピアノ1台というシンプルな場内は、表参道のきらびやかなイルミネーションとは対照的である。アルバムのレコーディングやミックスを担当したサイデラ・マスタリング・チームをPAに迎えた会場は、渋谷慶一郎が意図したようにピアノの内部にいるような雰囲気で、音を“聴く”というよりも身体全体に“浴びる”感覚をもたらした。椅子に座っているだけで非常に心地よく、場所や空間全体を作品として体験させるインスタレーションという手法を身を以て体感した。この空間では、間接的に観客も作品の一部を構成していることになる。どれくらいの観客が入るか、その人たちがどんな反応をするかなど、一つ一つの要素が今夜のコンサートの作品を形作る。流動的でコントロール不能な一回性の強い演奏会が始まろうとしていた。
YCAM(山口情報芸術センター)で展示中の渋谷の最新サウンド・インスタレーション「for maria installasion version」が再構成された音響が流れる中登場した渋谷慶一郎は、客席に目を向けることなくピアノまで歩き、言葉を発することなくピアノを弾き始めた。インスタレーションによるサウンドは鳴り響いたままで、その音とセッションをするように演奏をし始める。それは始まりもなければ終わりもない流れ続ける液体のようである。一連の音楽ではあるのだが、常に予測のつかない変化を見せ、様々な方向へ流れて行く。クリスマスとはかけ離れた緊張感に溢れた空間に、僕は言語化する作業を忘れ、ただただ身を預けることしかできなかった。
2曲目以降、背景のインスタレーション音は鳴り止み、『for maria』からの楽曲と共に、エリック・サティやヨハネス・ブラームスも織り交ぜながら二部構成のステージが進んで行った。楽譜を凝視しながらピアノと対面する渋谷の姿は、観客を忘れて1人きりで演奏に没頭しているようにも見えたが決してそうではない。渋谷は前日の夜、リハーサルの様子をU-streamで中継していた。そこで演奏されていたのはデヴィッド・ボーイの「Starman」。僕は、翌日会場に足を運ぼうと思っていたこともあり途中で観るのをやめてしまったのだが、それよりも深夜に一人でピアノに向かい合う彼の姿に、どこか興奮とも哀愁とも違うなにかを見た気がして、中継を見るのを中断してしまったのだ。それは最愛の妻を失った哀しみという一元的な理由で割り切れるものではない。だから僕は必至で、<『for maria』を発表することで次の場所を模索し、踏み出すのにもがいている渋谷慶一郎>というストーリーを組み立ててしまうことを避けようとした。
そもそも彼が何気なしにU-streamでリハーサルを公開していたとは到底考えられない。その返答とでも言えるシグナルは『for maria』の最終曲で提示されている。「our music」。“私たちの音楽”というタイトルが示すように、渋谷は自分の音楽に“our”という複数形を用いている。そして同曲を最終曲に持ってきたことは大きな意味を持つ。U-streamという不特定多数の視聴者と繋がってしまうツールを使用した理由も、その点とは無関係ではないだろう。だから、僕はコンサートで直接演奏を観る事に自分の判断を委ねた。そして当日の演奏を体感して判断したのは、“私たちの”という言葉を選択したことが、渋谷にとって非常に切実なことであるということだ。それは彼の音楽が「ノイズなどの音響を突き詰め“点”で捉えること」から「メロディを伴う“線”で捉えること」に変化していることからも読み取れる。メロディのある曲をピアノ一台で聴かせる、というシンプルな方法かもしれないが、渋谷は音楽を外部に向けて発信しようとしている。そこから更に手を広げた例は、先日発表された相対性理論との共作『アワー・ミュージック』であろう。メロディに歌を乗せるだけでなく、外部のアーティストと共作するなどの今までとは違う試みを通して、渋谷はより多くの人たちに自分の音楽を発信しようとしている。
渋谷慶一郎は変革期にいる。実は当日の様子はDSDで録音されており、OTOTOYで高音質配信することが決定した。一回性の音楽と書いたが、それを改めてリアルな音で体感してほしい。そして、「our music」が何を示しているのかを各自で感じ取ってもらいたい。そうすることで、本当の意味で『for maria』は完成を見せる、と筆者は思っている。
(text by 西澤裕郎)
渋谷慶一郎 PROFILE
音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。2002年ATAK設立。音楽レーベルとして国内外の先鋭的な電子音響作品をCDリリースするだけではなく、デザイン、ネットワーク・テクノロジー、映像など多様なクリエーターを擁し、精力的な活動を展開。2006年に発表したサウンド・インスタレーション作品「filmachine」とそのCDバージョン「ATAK010 filmachine phonics」を発表。2008年には毎年ベルリンで開催されている世界最大のテクノロジー・アートのフェスティバルであるトランス・メディアーレで「filmachine」の発表、及びコンサートを行う。2009年にはヨーロッパ数カ国から日本に渡るATAK NIGHT4ツアーを行い、初のピアノ・ソロによるソロ・アルバム『ATAK015 for maria』を発表、その中の3曲を相対性理論とコラボレーションし2010年1月6日に『アワーミュージック 相対性理論+渋谷慶一郎』として発表。
- official website : http://atak.jp/
- 新春ケイイチ鼎談 鈴木慶一×渋谷慶一郎×曽我部恵一
DISCOGRAPHY
ATAK010 Filmachine Phonics / Keiichiro Shibuya
世界初のヘッドフォン専用3D立体音響作品。音がヘッドフォンの中で縦移動する、前方から自分を通り過ぎるなど、既存のサラウンドでは不可能とされていたテクノロジーを最大限に駆使して作曲された、誰もが未体験なipodで体験できるサウンド・アート。音の運動がメロディやコードと同様に緻密に作曲されたことによってヘッドフォンのなかだけで体感出来る、誰も聴いたことの無い音楽。未知の体感と構築の均衡。
※コンピュータにイヤホン、またはヘッドフォンをさしてお聴きください。