indigo la End、待望のファースト・フル・アルバムをリリース
2012年に2枚のミニ・アルバムをリリースし、着実にリスナーを増やしているindigo la End。歌を中心とした柔らかなロックで独自の世界観を響かせる彼らが、待望のファースト・フル・アルバムをリリースした。ライヴでの定番曲、疾走感溢れるロックなナンバーなど、ブレイク目前のindigo la Endを丸ごと体感できる注目の一枚となっている。
indigo la End / 夜に魔法をかけられて
【配信価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム 2,200円
【Track List】
01. sweet spider / 02. she / 03. 大停電の夜に / 04. 鞠の空想 / 05. 彼女の相談 / 06. スプーンで乾杯 / 07. 抱きしめて / 08. マリの回想 / 09. スウェル / 10. fake street / 11. X day / 12. 雨の魔法
INTERVIEW : 川谷絵音(indigo la End)
「お笑い芸人になろうと思っていたんです」。あまりに意外な発言に、indigo la Endのフロントマン、川谷絵音への印象が一気に変わった。そして、「ぶっちゃけ、別になんでもよかったんですよ」という発言で、僕が完全に川谷のことを誤解していたことがわかった。それまでの川谷への印象は、内省的な文学青年というものだった。しかし、川谷は外の世界に目を向け、何が自分の表現に適しているかを見定めていた。その中で、彼が好んで聴いてきた音楽が一番適しているということを確信していった。本作は、そんな川谷を中心に作られたindigo la Endのファースト・フル・アルバムである。ここにある12個の物語は、外に向けられている。それぞれの聴き手がそこから物語を紡いでいけるような幅の広さも持っている。あとは、聴き手が自由に解釈し、その世界を広げていくだけだ。本作を作った川谷絵音がどんな人物なのか、その音楽とともにひも解いていってほしい。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
円熟期を迎えたサウンドに惹かれる
——indigo la Endは、どのようにして結成されたバンドなんでしょう。
川谷絵音(以下、川谷) : もともと大学の軽音部で先輩と一緒にバンドをやっていたんですけど、僕以外全員やめてしまって、メンバーをmixiで募集したんです(笑)。それで最初にメッセージが来た人と一緒にバンドをやり始めて。最初は、コピー・バンドをたまにやれればいいかなくらいの感じで軽音部に行っていました。
——その時は何のコピーをしていたんですか?
川谷 : ゆらゆら帝国とか、レディオヘッド、ホワイト・ストライプス、ブロック・パーティとかですね。アークティック・モンキーズが全盛だった時に軽音部に行き出したので、それらのコピーからUKの音楽に行き着いた感じですね。
——ブログを拝見していると、洋邦問わず様々な音楽を聴いてこられているようですが、川谷さんとしては、どこに音楽の拠り所があると思いますか?
川谷 : 一番は、ゆらゆら帝国ですね。大学に入った頃、日比谷の野音で開催されたゆらゆら帝国とブン・ブン・サテライツの2マンに誘われて行って、そこからハマったんです。それ以降、ゆらゆら帝国のライヴはめっちゃ行きましたね。
——それまで聴いていた音楽とゆらゆら帝国は何が違ったんですか。
川谷 : その時はギターの音がすごいと思って。SGでファズを踏んでたんですけど、そのギターに衝撃を受けてハマっていって。そこから歌の魅力に気づいて、歌詞とかも読み始めて、坂本さんの人間性みたいなものにも段々入り込んでいったんです。
——別のインタビューで、ゆらゆら帝国とホワイト・ストライプス、レディオヘッドの3つが音楽的指針だとおっしゃっていたじゃないですか。ホワイト・ストライプスはアメリカの泥臭いブルース寄りな感じがするし、レディオヘッドは文学性や実験性があるし、ゆらゆら帝国はサイケなロックという感じで、3者を貫く一貫性が見えにくいなと思ったのですが。
川谷 : そうですね。でも特に好きなのがこの3つなんです。
——ちなみにレディオヘッドはいつくらいの作品が好きなんですか?
川谷 : 『イン・レインボウ』が出た頃に聴き始めて、そこから遡っていった感じですね。なので作品で言うと、『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』が好きです。
——じゃあ、ストライプスだとどのあたりの作品ですか?
川谷 : 最初は『イッキー・サンプ』から聴いたんですよ。作品としては『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』が一番好きですね。
——どちらも代表作だったり名盤というよりも、少しバンドが落ち着いてからリリースされた作品ですよね。ゆらゆら帝国も新しめの作品が好きなんですか?
川谷 : そうですね。『Sweet Spot』が好きですね。僕は「タコ物語」からハマったので。
——初期衝動が詰まった1枚目というより、充実期にじっくり作られたような作品に惹かれるんですね。
川谷 : たしかに、ちょっと円熟期を迎えたみたいなサウンドの方が好きかも知れないですね。あまり初期衝動の1枚みたいなものは聴かないです。
——indigo la Endの音楽はエヴァーグリーンなイメージがあるので、そこはおもしろいですよね。バンドはいつから本格的にやろうと思ったんですか。
川谷 : 先輩に誘ってもらってバンドを始めた時、実を言うと僕はバンドをやりたいと思っていなくて。どっちかというと、お笑い芸人になりたかったんです(笑)。
——お笑い芸人ですか?!
川谷 : その頃ちょうど3年生で、お笑いの事務所とかを色々調べていたんです。その時、バンドに誘われて。だから最初は全然やる気じゃなかったんです。
——お笑いと音楽を天秤にかけて音楽を選んだのはなぜだったんですか。
川谷 : ぶっちゃけ、別になんでもよかったんですよ。大学も面倒臭くなってきて、とりあえず自分の居場所が欲しかったというか。
——大学生活は拠り所って感じではなかった?
川谷 : 入学した頃はリア充みたいな生活に憧れて、自分の家にみんなを呼んで鍋をやったりとかしていたんですけど、そういうのに飽きてしまって。結構厳しい大学で、研究しなくちゃいけないし、興味ないことをずっとやったりしていて。
——じゃあ、それまでの道とは違うオルタナティヴな何かをやりたくて、それがたまたまバンドだったと?
川谷 : そうですね。音楽は好きだったから。
自分の目指すものが明確になったし もう助走期間は終わり
——実際にバンドをやることになって、どういう活動をし始めたんですか?
川谷 : ベースの先輩の就職が決まっていたから、最初から終わりが見えてたんです。だから、なんとなくみんなやる気が出てないっていうか、辞めたらどうなるんだみたいな感じでずっとやっていて。先輩が就職してからも土日にライヴをやったりしていたんですけど、なんか煮え切らなくて。そんな時に今のレーベルから声がかかって、CD出せるんならやろうよって。
——デビューしたくて目標を立ててやっていたわけではないんですね。
川谷 : でも、自分達でレコーディングとかもやっていて、デモCDを6枚くらい自分達で出していたから。謎でしたよね。よく分かんないけど活動しているというか。メンバーとコミュニケーションも全然とらなかったので、一切しゃべらないで「レコーディングするから」って言ったりして。みんなお互いしゃべらない人だし、mixiで出会ってるし、友達だったわけでもないし、年も離れてるから。
——そんな他人行儀な(笑)。
川谷 : 僕も最初はリーダーだったわけではなかったんですけど、メンバーが抜けて、能動的にやらざるを得ないメンバーになっちゃったから、やるか、みたいな。
——ちなみに、CDを出すことになってメンバー内のコミュニケーションは増えていったんですか?
川谷 : そうですね。今はタメ語なんですけど、1stレコーディングの手前までは、1個上のギターに敬語でしたから(笑)。2年間くらい凍結されていた時代があって。
——凍結って何ですか。
川谷 : あまりしゃべらないし、いつ解散してもおかしくなかったんです。
——逆にぶつかりあうこともなかった、と。
川谷 : そうなんですよね。だから、無言の圧力みたいな。
——そんな状態で、よくやっていましたね(笑)。
川谷 : ほんとそうですよ。今でも周りのバンドに比べたら、そんなにしゃべんないほうだし。
——去年7月のブログで、「ミニアルバムを2つ作って色々気付いた。自分の目指すものが明確になったしもう助走期間は終わり」と書いていましたね。それを書いたのはどういう時期だったのでしょう。
川谷 : 1stの反動で、2ndは違うものを作ろうとなりすぎてしまって、ちょっとアンダーグラウンドな作品になってしまった反省があって。そのときに社会人になってやめたメンバーともう一回ライヴをしようってことで「sweet spider」を4人で作ったんです。そこで、やっぱりこの4人だといいねみたいになって、これができたならまだ行けるなって思ったんです。
——川谷さんの目指す部分っていうのは、どういうところなのでしょう。
川谷 : やっぱり売れることですね。そのために、もっと届けるような音楽を作らないといけないなと思ったんです。1stを作ってみて、やたらとキャッチーだなって思ったんですけど、今聞いたら全然そんなことなくて。自分の見ている世界が全然違ったんだなって思ったら、もっとキャッチーというか広がる音楽を作らないといけないと思って。
——自分の作品を客観的に見られるようになったわけですね。リリースした作品に対しての反応が、思ったよりも薄かったということなのでしょうか。
川谷 : 1stを聞いていた人からすると2ndは求めていたものじゃなかったのかなって。そもそも自分が聞いている音楽をそのまま消化しようとしたら、誰も聞いてくれないような音楽になっちゃうから、それでも譲歩したほうだと思ったんですね。ろくに音楽を聞いていない人から、1stに収録された「緑の少女」とかを、普通のギター・ロックだって言われるのがイヤだったんですよ。だから、そういう人たちを黙らせるって視点で2ndを進めちゃって(笑)。それは違うかなって気づいたのが夏前くらいだったんですね。
曲を作るときは瞬間的に魔法がかかっているような感じ
——川谷さんは好きなバンドに、ケイジャン・ダンス・パーティとかをあげていたり、2012年の洋楽ベストもかなりマニアックなアーティストをあげていましたよね。そういう音楽的嗜好を出したくならないのかなと思ったのですが。
川谷 : ライヴ・ハウスでやっていると、みんな自分が聞いている音楽を出そうとして、それが格好いいってなるんですけど、もう一個ステージが上になると、それだけじゃないってのがあるんですよ。自分のやりたいことを100%出し切って売れている人はいないと思うんです。サカナクションが、マジョリティの中のマイノリティみたいなことを言っていて、本当にそうだなと共感して。ギリギリというか、そういうのを目指したいです。
——マジョリティの中のマイノリティを目指すにあたって、具体的にどう変えていこうと思ったんですか。
川谷 : とりあえず、歌メロは絶対耳に残るほうがいいなと思って、歌を聞かせるバンドになろうと思ったんです。歌が楽器の一つみたいになっていたのを、ちゃんと分離させようかなと思って。今回のアルバムはそのギリギリが作れたんじゃないかと思っています。
——バンドによっては、ライヴで出来た曲をアルバムとしてまとめるということもあると思うのですが、『夜に魔法をかけられて』はどういった曲が収録されているのでしょう。
川谷 : コンセプトアルバムではないんですけど、キーワードは散りばめようと思っていて。アルバムを作る前から、「夜に魔法をかけられて」っていうタイトルは決めていたんですよ。ただ、別にコンセプトにしようっていうのはなかったです。
——「夜に魔法をかけられて」っていうのはどういうイメージから浮かんだ言葉なんですか。
川谷 : 僕は夜に曲を作ることが多くて。夜って言葉が好きだから絶対入れようと思ったんです。あとは3部作の最後だから、夜にしようみたいな。それと、曲を作るときは瞬間的に魔法がかかっているような感じがして。絶対解けるものだけど、その先がある。だから「かけられて」で終わっているんです。僕らは、常に次の次まで考えているから、3部作で終わりではなくて、その先へって意味も込められています。
——今回のアルバムを作るということで出来た曲が多いんですね。
川谷 : いや、「大停電の夜に」「sweet spider」「she」は昔からあった曲です。「彼女の相談」も昔からあったかな。
——「she」は失恋したときに作った曲だそうですよね。そうした日常の出来事が曲になったりするのでしょうか。
川谷 : それは「she」くらいですね。かなり珍しいタイプの曲です。
——相当な大失恋だったわけですね。
川谷 : はははは。そうですね。
——先ほど歌が楽器の一部ではなく分離させたものとして聴かせたいと言っていたじゃないですか。そのためには歌詞の強度というのも求められるのかなと思ったのですが。
川谷 : そうですね。それは段階を踏もうと思っていて。バンドって長いじゃないですか。だから歌詞をいきなり全開にするのはやめようと思って。布石として、ちょっと開けるくらいに留めておいたんですね。昔の曲も入っているし、これから先もっと開けるかもしれないっていう気持ちもあったので。
——今回が1stフル・アルバムですが、この先、indigo la Endはどうなっていきたいと考えていますか。
川谷 : 沢山の人に聞いてもらいたいってのはあるんですけど、絶対に媚びたくないって気持ちもあります。もともと僕は音楽的だけどチャートに入る、クラムボンみたいなバンドを目指したいと思っていて。どちらかにより過ぎないというか。
——そういうバランス感を川谷さんはすごく持っているなと思っていて。小学生の頃は、チャートのトップ10を全部借りて聴いていたそうですよね。ただ、今の時代にバランスをとるのは難しいんじゃないかなって気もします。
川谷 : でも最近、全体的にCDが売れてないからこそ、フェスとかに人が集まるようになっていて、その影響もあってロック・バンドもチャートに入ったりするじゃないですか。だから全然出来るんじゃないかと思っています。
——今日、川谷さんにお会いするまで思い描いていた人物像とだいぶ違くてびっくりしました。最初にバンドじゃなくてもよかったと言っていましたけど、今は音楽でやっていこうとしているわけですよね。
川谷 : そうですね。初めてですね、こうやって自分で色々やろうっていうのは。今は次の作品に向けて曲を作っていたりしていて、いい感じになってきているとこえろなんです。
——1stフル・アルバムのリリース前から次の作品も出来始めているんですね。
川谷 : フルを出す前はこれで出し切っちゃうのかなって思っていた部分もあるんですけど、やってみたらそんなこともなかったので、次の作品に向けて進んでいけたらと思います。
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LIVE SCHEDULE
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2013
w/ WHITE ASH / tricot / グッドモーニングアメリカ
2013年2月21日(木)@札幌 cube garden
2013年2月23日(土)@仙台 MA.CA.NA.
2013年2月24日(日)@新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2013年2月28日(木)@名古屋 CLUB QUATTRO
2013年3月1日(金)@大阪 BIGCAT
2013年3月3日(日)@福岡 DRUM Be-1
2013年3月5日(火)@広島 ナミキジャンクション
2013年3月9日(土)@赤坂 BLITZ
indigo la End 東名阪ワンマンツアー 「魔法が響く夜」
2013年5月17日(金)@梅田 シャングリラ
2013年5月19日(日)@名古屋 アポロシアター
2013年5月26日(日)@渋谷 クラブクアトロ
PROFILE
indigo la End
Vo/Gt 川谷絵
Gt 長田カーティス
Dr オオタユウスケ
2010年2月より活動を開始。絶対的な歌を中心に美しい音をポップに奏でるロック・バンド。心象風景が音楽で具現化されたような際限のない広々とした世界観、ボーカル川谷絵音の広く深く響く歌声を主軸とし、確固たる独自の世界を多様な音楽で紡ぎ出す。