OVERROCKET INTERVIEW

8年ぶりのアルバム・リリース!!
…なんて書くと、そこには壮大な紆余曲折があり、苦難の果てにアルバムを完成させた、なんて想像を働かせてしまうかもしれない。しかし、本田みちよと渡部高士の2人組エレクトロ・ポップ・ユニット、OVERROCKETにとって、今作はあくまでもごく自然体で作った作品のようである。とはいえ、この8年の間にはメンバーだった鈴木光人の脱退があったり、決して何事もなかったというわけではない。変わらないのは、2人とも音楽に関わる環境に身を置き続けていること。そしてその継続は、少なからず本作に影響を与えている。2000年にデビューし、イギリスやヨーロッパでも高評価を受けている彼らの、2012年における音楽を高音質でぜひ楽しんでもらいたい。そして、渡部の音への考え方を読んで、音楽をいつの間にか消費している自分自身のことについて、考えてみてほしい。

インタビュー : 西澤裕郎 / 文 : 宮川純

>>「Ichitasuichiganijanainante」のダウンロードはこちら(期間 : 5/10〜5/17)


OVERROCKET / MUSIC KILLS

電気グルーヴ/FPMなどのエンジニアやMIX/プログラミングを手掛ける渡部高士と、本田みちよの2人組エレクトロポップ・ユニットOVERROCKETの8年ぶり、待ちに待ったニュー・アルバムが完成! 妥協のない音作りはそのままに、さらに進化したOVERROCKETの誕生です。

【収録曲】
1. Stairs 2 / 2. That Timbre This Voice / 3. Music Kills / 4. Acid Rain / 5. Stairs 1 / 6. I was wrong / 7. Ichitasuichiganijanainante / 8. Time Boat / 9. Inside Out

打ち込みの音楽は、ドラムを聴くと年代が判ってしまう

――今回は8年ぶりのアルバムとなりますが、その間は主にどのような活動をされていたのですか。

渡部高士(以下、渡部) : 二人とも音楽関係の仕事をしているから、バンドで活動はしてなかったけど音楽はずっとやってました。僕はエンジニアとしてミックスをしたり、アレンジをしたり。ライヴは年に何回かやっていましたね。
本田みちよ(以下、本田) : 私もCM曲歌ったり、ゲームやアニメの曲を歌ったり、他のアーティストのコーラスしたり、楽曲提供したり、ソロ出したりしてました。

――2000年代前半はコンスタントに作品を出していましたが、今回8年も期間が空いたのはどうしてでしょう?

渡部 : もともとメンバーだった鈴木光人が曲をいっぱい作る人で、前まではそれを皆で作品にまとめてたんですよ。でも光人が抜けて、いい加減な二人が残ってしまってなかなか進まなかったというのはあると思う(笑)。
本田 : 確かにそれはあるかも(笑)。まとめてくれる人がいなくなったよね。約束をして、集まって、決めて、というのをできない性格な二人だから(笑)。
渡部 : そうそうそう。ディレクターっぽい人がいなくなったよね。

――鈴木さんが抜けて活動の仕方も変わりましたか?

渡部 : いや、それは変わらないですね。光人にほぼ頼っていた曲作りが僕に移ってはきたけど。あと、2004年に事務所がなくなって(笑)、焦点が定まらなくなったというのはありますね。

――でもライヴは続けていましたよね?

渡部 : そうですね。前々からインプロ(即興)的なこともやっていたので、ライヴは出来ちゃうんですよ。

――ライヴでは新曲をやったりもしますか?

渡部 : 最近はやってますし、あと前作を出した直後もやってました。2006年が一番一生懸命活動してて、そのときにアルバムを出そうとして何曲か作ったから、それはライヴでやってましたね。

――その状態から、実際に作品として形にしようと思ったのはいつ頃ですか? 何かきっかけはありましたか?

渡部 : なんだろうね(笑)。たぶん、個人的に一番大きかったのは去年の頭に友達がアルバムを作ったことですかね。彼とは昔から一緒に仕事をしてて、そのアルバムは僕がマスタリングをしたんですけど、すごい良く出来ててモチベーションになった気がしますね。「やべー俺もやんなきゃ」と思って(笑)。
本田 : 私のソロも手伝ってもらったしね。
渡部 : そうだね。周りとの関係は続いていたし、あとライヴをすると「高校生の時に聴いていました! 」なんていうお客さんがいて「やればまだ聴いてくれる人がいるのか、じゃあまとめて作品にしましょう」と思いましたね。

――なるほど。じゃあ「自分の中から湧き上がってくる何か」とかではないわけですね。

渡部 : そうですね。周りの環境の変化の方がデカイかもしれないです。僕は音楽を職業にしているので、毎日音楽を聴いていて、「新しいアイディアが浮かんでは試してみる」というのを毎日やってるんですよ。湧き上がるものなんていうのは自分では一回も感じたことがなくて。だから、8年間何もやってなかったわけじゃなくて、8年間ずっと色んな人のアルバムを作り続けてて、今回はみちよさんと作ったという感じですかね。

――仕事として他の方のアルバムを作る時と、自分の名義で作る時で何か違いはありますか?

渡部 : たぶん、最初に転がし出す人が違うだけかな。一度転がり始めればそんなに違いはないと昔から思ってますね。あとは、最終的に「はい! ここでオッケー! 」と決める人が他人なのか自分なのか、という違いはある。

――本田さんが転がし始める曲もあるんですか。

本田 : 今回はないですね。今回は”たかし祭り”です(笑)。私は後ろでぼーっと「それ違う」とか「それイイと思う! 」とかを言ってました。
渡部 : そういう意味では、みちよはさぼってたね(笑)。
本田 : さぼってないよ(笑)。何曲か作ったけど使わなかっただけで。

――渡部さんは、普段から様々な音楽を聴いているわけですが、その中で自分のやっているOVERROCKETに収録する曲というのは、何か意図的な考えを持って選んでいるんですか。

渡部 : どうだろうな。曲を作っている時は、どうにかして歌を入れようとは思ってるけど、意図とか考えてない気がする。
本田 : 結局やらなかったけど、最初は全曲ドラム抜きのヤツをやりたいって言ってたよね(笑)。
渡部 : そうそう。訳わかんないですよね(笑)。ここ何年か、全曲ドラムなしで『ドラム』ってタイトルのアルバムを出したいって言ってました。

――ええーー。面白い。

渡部 : 打ち込みの音楽は、ドラムを聴くと「これは何年の音楽です」と判別できちゃうんですね。ドラムが入ってない場合はそれがすごいおぼろげになるから、一度作ってみたいと思ってて。スネアの入る位置とか、キックが入る位置、あるいはそれらの組み合わせはすごい時代を反映してて、その年代ごとのスタンプみたいなものを押してしまうんですよ。だから逆に言えば、ドラムが入ってなければ時代がないんです。

――ドラムをなしにしようと思ったきっかけなどはありますか。

渡部 : 僕、たまにドラムが聴けなくなるんですよ。例えば、97年頃にドラムンベースとかハード・ミニマルが流行って、その次に80’sがきましたけど、そういう狭間の時に何が一番変わるかというとドラムが変わるんですよ。その狭間の時ってすごいドラムが嫌いになるんですね。一切聴けなくなっちゃう。今もあんまし聴けない(笑)。
本田 : よく抜くよね。ライヴでもドラムなしでやったりするし。
渡部 : あるね(笑)。でもあれは人が踊ってないからだよ。踊ってない時はドラムはいらないや、と思うからカットしちゃうんですよ。
本田 : そうだけど、ドラムがないと大概の人は不安になるじゃないですか。

――確かに今回も最後の曲にドラムがないのはちょっと不思議でした。

渡部 : あれもライヴではドラム入れてやってるんですよ。でもライヴではその場の気分でドラム・マシンで鳴らしてるし、ドラム・マシンを使ったテクノのドラムは30秒もあればできちゃんですよ。いくらでも作れちゃう分、人に聴かせたりずっと残るものにするにはどうしたらいいか決まらなくて結局抜いちゃいました。2曲目も生のパーカッションを自分で叩いてみたけど入れませんでしたね。壺叩いてみたけど「やっぱりだめだ」っていって(笑)。

――ドラムがないトラックの上で歌う大変さはありますか。

本田 : いや、もう慣れているんで。人生初めてのバンドがOVERROCKETだからこれが普通ですね。
渡部 : 一番最初は「ドラムだけのトラックで歌え」なんて言ったよね(笑)。極端だよね。

――そもそも、本田さんとはどういった経緯で組んだんですか?

渡部 : 最初はデモを聴いてですね。当時はダンス・ミュージックに生ギターとか、生の音色をいれるのが難しかったし、歌を入れるとしても感情いっぱいのソウルフルな歌よりも平たい歌の方が良かった。彼女の歌い方は完全にそれと一致してたからすぐ決めましたね。
本田 : 私の歌い方には感情がないらしいんです(笑)。私の中ではサビの部分に、ものっすごい感情を乗っけて、ソウルとかハウスのおばちゃんをイメージして歌ってる最中に「そこはサラッと歌う方向なんですね」と言われたこともあります。

――本田さんとしては感情をこめて歌っているんですよね?

本田 : こめてますよ!! 人間ですもの(笑)。実は、OVERROCKETはデビュー・アルバムからボーカロイドをバック・コーラスとして使ってますけど、周りの人は私の声をサンプリングした音だと思うみたいですね。
渡部 : 彼女の歌はテクノ界隈にはすごい人気なんですよ。音楽が意味をもったり感情をあるとシチュエーションを選ぶようになっちゃうから、僕は歌に感情がない方が好きですね。

――お話を伺っていると、なんだか「8年間の思いが!!! 」なんていう強い気持ちはなさそうですね(笑)。

本田 : なんにもない(笑)。
渡部 : ないですね(笑)。こういう風に「8年ぶりの! 」なんて書くのは好きじゃない。なんだか「8年さぼりました」て言われてるみたいで。

――(笑)

渡部 : ただ早かったですね。2007年くらいまではライヴをやってたし、ウクライナに行ったりもしたから、そんなに空いた気はしないです。
本田 : ライヴでの曲順が体になじんでしまっていて、今回の曲順も1、2、3曲はライヴの構成そのままですね。アルバムにまとめている最中もアレンジをどうしたらいいかわからなくて大変でした。

子供達に音楽を無視することを叩き込んでる

――渡部さんは普段から色んな音楽に触れているわけですけど、OVERROCKETでやる音楽は時流に合ったものを意識したりしますか?

渡部 : いや全然。作ってるときは考えてないです。ただ、どちらかというとドラム抜きにしちゃって、ずーと未来永劫、古くならずに聴ける音楽がやりたかったですけどね。ドラムって本当に時代を反映しちゃうんですよね。

――それはどういったところが?

渡部 : 音色もそうだし、パターンもそうだし、テンポもそうだし。なんでもいいから僕に曲を聴かせてくれたら「これは2000年の曲です」とか当てますよ。本当の80'sか、そうじゃない80'sかの判別基準は完全にドラムしかないですからね。

――そういう意味で、今回は”2012年のアルバム”ということですか?

渡部 : 後から聴いたらわかっちゃうでしょうね。3曲目「Music Kills」でシュワシュワいってるハイハットとかは、完全にここ3~4年を示唆しますね。あのハイハットはそれ以前には存在しないギミックですから。もう音楽の話じゃないけど(笑)。

――今出てきた「Music Kills」はアルバムのタイトルでもありますが、何か意味深な内容なんですか?

渡部 : あれは、ずいぶん前ですけどアメリカのタバコに「Smoking Kills」と書いてあるのを見て「それは楽しいな」と思って決めました(笑)。

――「今までの音楽は一回終わった」なんていう意味ではないわけですね。

渡部 : 全然、全然。「Smoking Kills」は「タバコを吸っていると死にますよ」という意味だから、それと同じで「音楽を聴いてると死にますよ」という意味です。「音楽を好きな人の70%は今後50年で死にます」みたいなね(笑)。まあ本当じゃないですか。

――そうですね(笑)。

渡部 : 日本はすごい音楽を消費する国で、どこに行っても音楽が流れているんですよ。エスカレーターの所で音楽が流れてるのは日本だけ。音楽を買わないし、音楽が全然売れないし、新しい音楽を作らないなんて言われているけど、実は日本はめちゃくちゃ音楽を消費しているんです。
本田 : デパートとかに行くと、「なんの闘いなんだ」と思うくらいあらゆるお店がそれぞれ別の音楽を爆音で流してますよね。

――確かに。

渡部 : それが僕はすごい嫌いで、そんなことするならホワイト・ノイズを流してくれた方が落ち着くんですよ。

――普段から音楽を聴いているのに、外へ行っても音楽が気になるんですね。

渡部 : すっごい気になりますよ。
本田 : 特に渋谷の商店街とかうるさいよね。
渡部 : うるさいうるさい。しかも覚えてないじゃないですか。例えばファミリーレストランに行くと、打ち込みで作った歌抜きのJ-POPが延々と流れてて、しかもそれを誰も聴いてなくて皆何にも覚えてない。
本田 : オルゴールのものあるよね。
渡部 : ある。あれ売れるんだけどね(笑)。お金にはなるけど、あれがすごい嫌なんですよ。子供達に音楽を無視することを叩き込んでるんですよ、この国は。それが大人になって音楽を買うようになるわけがないですよね。

――確かにそうですね。

渡部 : ヨーロッパのレストランは絨毯を引いたり、音が響かないように作るんですよ。でも日本はピカピカにしようとするから、めちゃくちゃ響く。響くところで隣のテーブルの音を聞こえないようにするには音をでかくするしかないんですよ。

――なるほど。大きな音でかき消そうとするんですね。

渡部 : そうですそうです。この国は本当にどこ行っても音楽が流れてるから気が狂いそうになるんですよ。そういうタイトルです。
本田 : まとめたね(笑)。

――そういう意味では「Music kills ”me”」なんですね。

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本田みちよ / Restless World

2011年に行なわれた本田みちよのソロ・プロジェクト【 Michiyo Honda Monthly Release Project ]第6弾。OVERROCKETのメンバーだった鈴木光人との数年ぶりのコラボ作品。清々しい朝の淡い風景を歌った1曲。

福原まり / karakuri

流麗なピアノのタッチと甘味な映像を喚起させる、美しい風景画のような音楽。古いものと新しいもの、双方に対する審美眼とフェアな眼差しをもった天性のアーティスト・福原まり。前作『pieta』から5年、そのクラシックの素養を反映した音楽性で知られる一方、サンプラー、シンセ等を使ったプロダクションにも早くから親しんできた彼女の新作は、全身ロマン派の彼女が心の近景と遠景を描ききった、眩暈とため息のマスターピース。

Language / Northern Lights

DJ SynthesizerことYosuke Kakegawaと、Naoyuki Honzawa、KaoriによるユニットLanguageのセカンド・アルバム。本作に収録されている楽曲は、どれも透明感に溢れ、煌めいており、北方の澄みきった空気と光を連想させる。OTOTOYではwav(CDと同クオリティの16bit/44.1k)での販売に加え、DSD付きで販売。

PROFILE

ボーカル本田みちよ、電気グルーヴ/FPMなどのエンジニアやMIX/プログラミング渡部高士の2人組エレクトロ・ポップ・ユニット。透明感あふれる女性ボーカルと先端のエレクトロニック・ミュージックを融合させた独自の音楽性は、日本語のリリックを多く含む作品であるにもかかわらず、イギリス、ヨーロッパにおける評価も高い。2000年、7曲入りミニ・アルバム『blue drum』(UPRI-001)でデビュー。2001年2月、ファースト・フル・アルバム『Mariner's Valley』を発表、12インチEP、ミニ・アルバム等、話題作も次々にリリース。2003年1月発売のアルバム『POP MUSIC』ではoverrocket流80年代回帰作とも言える内容で多くのリスナーの支持を集めた。その後も『POST PRODUCTION』収録の“SUNSET BICYCLE”がイギリスのクラブ誌「MIX MAG」のシングル・オブ・ザ・マンスに選ばれるなど常に話題を築いてきた。2004年にはユニット名をタイトルにした快心の傑作『OVERROCKET』を発表。それまでの作風とは違った深淵なトーンで綴られたサウンドは、唯一無比の世界観を響かせた。ここ数年目立った活動はしていなかったが、2011年5月より活動再開。2012年春には8年ぶりのアルバム・リリースを予定している。

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インタヴュー

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