ロック界の“コストコ”目指しハッタリをかませ!!ーーTHIS IS JAPAN、スライディングが普通の歩き方とともに業界にもの申す

2011年の結成から間もなくして〈FIREJAM 2012〉、今年には〈下北沢SOUND CRUISING〉に出演を果たすなど、話題と勢いの絶えないオルタナティヴ・ポップ・バンド、THIS IS JAPAN。コーラスの利いたギターと鋭利なリズム、その上を突き進む叫び声の入り混ざったヴォーカルとポップ・センスを感じるギミック。そんなニューウェイヴ・サウンドが詰まった、彼らによるファースト・アルバム『THIS IS JAPAN TIMES』を1週間先行配信。しかも今作収録の2曲をフリー・ダウンロードでお届け! とにかく聴くしかない!!
そして今作発売を記念して、彼らとほぼ同時期に結成されたオルタナ・ヒップホップ・バンド〈スライディングが普通の歩き方〉からORKII(MC)、young suck kick(MC)を招いて対談を敢行。後半では、音楽業界のキーワードを投げて、それについて本音トークをしてもらった。いびつなようでしっくりハマる彼らのやり取りから、漠然としながらも、しかし確実に何かを壊してくれるようなエネルギーを感じとっていただければ幸いだ。
>>THIS IS JAPAN TIMES収録曲「TAXI DRIVER」、「アメリカのカー」のフリー・ダウンロードはこちらから(2014年8月6日〜2014年8月13日まで)
THIS IS JAPAN / THIS IS JAPAN TIMES
【配信形態】
alac / flac / wav : 単曲 216円 まとめ購入 1,944円
【Track List】
01. TAXI DRIVER
02. FightClub2
03. BUDDHIST PUNK
04. STEAM BOY
05. アメリカのカー
06. フランケンシュタインズロンリーハーツクラブバンド
07. humber girl
08. INSTANT文明
09. 自由の女神
10. うる星ぼくら
11. 靖國デート
※特典として、ブックレットが付属します。
対談 : THIS IS JAPAN × スライディングが普通の歩き方
若いバンドたちがライヴハウスで演奏を繰り広げているのは、いつの時代も一緒だが、ここ最近とくに東京における若手バンド・シーンというのが見えづらい。そこにはいくつかの理由があるのだけれど、一歩ひいた視点を持ってバンドをすることが今の世代のスタンダードになったということは要因として大きい。自分たちの手だけでシーンを作って同世代でのし上がっていこうみたいな姿勢は、少なくとも2000年代後半の東京ニューウェイブ以降、東京においては見ることができない。とはいえ、新しい価値観を提示するバンドは数多く出てきている。むしろ、その動きは活発だ。このたび、1stアルバム『THIS IS JAPAN TIMES』をリリースする4人組バンド、THIS IS JAPANもまた、そういったバンドである。
メイン・ヴォーカルの杉森ジャックはライヴの最中、日本語を話さない。かといって、完璧な英語を話すというわけでもない。どこかちゃかしているようにも見え、挑発的でもある。その上で鳴らされるバンド・サウンドは、ソリッドで直球だ。XTCのようなギター・サウンドに、ナンバーガール時の向井秀徳のようなシャウト。初期衝動に満ちたようなライヴ・パフォーマンスでありながら、どこかさめているようにも見える。この分裂症のようなスタイルは新鮮である。今回は、同じように、どこか挑発的な雰囲気を持ちながらも、攻撃的なサウンドを鳴らすバンド、スライディングが普通の歩き方をお呼びし、対談を行なった。THIS IS JAPANのイベントに呼んだことがきっかけで付き合いが始まったという両者だが、実はちゃんと話すのは今回が初ということ。そんなところまでも新世代のバンドという雰囲気がする対談をお送りする。
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
写真 : 外林健太
ロック界のコストコを目指しているんですよ
ーーぶっちゃけ、この2組がどれくらい仲いいのか、最初に知りたいんですけど。
杉森ジャック(THIS IS JAPAN / 以下、ジャック) : (笑)。最初に対バンしたのが2年前のはじめての自主企画のときなんですけど、炊飯器がステージの真ん中に置いてあって、これはおもしろいぞと仲よくなったんです。
ーーじゃあ、THIS IS JAPANからしたら後輩バンドっていう感じ?
ジャック : いやあ、こいつら恐いんで。
一同 : (爆笑)
ジャック : 「最近流行っているジャパンじゃないっすか?!」って感じで絡んでくるので、もはや同期って感じですね(笑)。
ーーあははは。THIS IS JAPANは、どうやって結成されたバンドなんですか。
ジャック : 大学のサークルの先輩・後輩で組んだんですけど、僕とドラムが先輩、残り2人が後輩です。「BECK」みたいな感じですね(笑)。フガジとかキャップンジャズを聴いて育ちました。あとはXTCです。
ーー対して、スライディングが普通の歩き方はどのように結成されたんですか?
ORKII(スライディングが普通の歩き方) : 最初は4人だったんです。遊びで始めたってこともあって、サークル内のライヴにしか出ていなくて。外ではじめてライヴをやったのは3年前くらいかな。そのときメンバーは6人でした。

ーー徐々にメンバーが増えていっているわけですね(笑)。THIS IS JAPANのイベントに出たときの、スライディングのライヴはどうでしたか。
ジャック : おもしろかったですね。やる気のない感じがかっこよくて。やる気のないやつが集まってやったらすごいものが出てきたっていうか。僕の印象だと、最近真面目なバンドが増えている感じがしたので、おもしろいなって。
ーー逆にスライディングからみて、THIS IS JAPANのライヴはどうでしたか。
young suck kick(スライディングが普通の歩き方) : いや、かっこよかったっすね。はじめて観たときは、なんというか… ずるいバンドだなと思いました。ギターをめっちゃ鳴らして叫びたいとき、かっちり決めたいとき、ポップっぽい歌をうたいたいときって、いろいろあるじゃないですか。それを一つのバンドでやっていたっていうのがずるいと思いましたね。
ORKII : ぼくは対バンしたときにはじめて観たんですけど、「タクシードライバー、カモン」っていうだけを知っていたので、それを観れて本当にかっこいいなって。
ーー「タクシードライバー、カモン」っていうのは?
ジャック : 次の曲は「タクシードライバーです」っていう意味なんですけど、僕自身はライヴで日本語をしゃべらないようにしていて、インパクト押しというか、はったりみたいなものです。
ーー(笑)。この2組に共通しているところって、なんていうのか、ステージ上での態度というか、いろんなものを舐めきっているような感じのふてぶてしさかなと。
ジャック : たしかに。ロック界のコストコ(※)を目指しているんですよ。どーん!! すごいだろ!! って。はったりをかましていきたいですね。
※高品質な優良ブランド商品をできる限りの低価格にて提供する会員制倉庫型店。
言いたいことはない
ーーわかるようでわからない(笑)。率直に、いまのバンド・シーンってどう思います?
ジャック : 等身大の自分自身を歌うって人と全然関係ないことを歌うっていう2種類あると思っているんですけど、等身大で歌うバンドが多いなと思っていて。僕はそれができないし、そういうのに対してカウンターを打っているのかなと。
ーージャックさんから見て、スライディングはどちらのタイプだと思いますか。
ジャック : スライディングも等身大の歌詞はゼロだと思っていて。言いたいことってある人のほうが少ないから。
ーーTHIS IS JAPANに言いたいことはない?
ジャック : ないです(きっぱり)。

一同 : (笑)
ーー気持ちいいですね(笑)。あと気になったのが、例えば東京ニューウェイブみたいに、同世代のバンドたちでシーンを作ろうみたいなものが、いまの東京の若いバンドにはあまりないのかなって気がするんですけど。
ジャック : そうですね。分離している感じはありますね。
ーー共同体意識みたいなものはない?
young suck kick : あんまないですね。なんというか、人見知りが多いです。
ジャック : あはははは。でも、確かにそうかも。
young suck kick : それこそ、東京ニューウェイブの人たちって仲いいじゃないですか。僕たちの世代だと、ちょっとしゃべるくらいで、一緒になにかやっていこうとか、音楽を熱く語ったりとかってのは少ないですね。
ジャック : 実は、うちら(THIS IS JAPANとスライディング)もちゃんと話したことないしね。
‘’ーーあんま仲よくないじゃないですか!?
一同 : (爆笑)
ジャック : こいつら、こえーし。
悩む前に、楽しいことしたほうがいいよって思います
ーーあははは。だから、2組ともつっぱるしかないのかもしれないですね。スライディングの2人はTHIS IS JAPANのアルバムを聴いてみて、どう感じましたか。
young suck kick : なんか、まあ、いいんじゃないですかね(笑)。熱い感じを押していきたいんだなってのが伝わってきました。ほんといろんなことをやっているバンドではあるんですけど、核としてはそのエネルギーをそのままぶつけるタイプでいくんだってことを感じましたね。
ジャック : 確かにそれはちょっと考えていました。直球が芯にあって、そこにラップ的要素も加えたバンドにしたいねって。
ーーORKIIさんはどう思いました?
ORKII : バランスのとり方がかっこいいっていうか、いまラップみたいって言っていましたけど、ヒップホップっぽい感覚があるなって。
ジャック : ヒップホップの人って、ファッションとかもかっこいいなと思って。クールだけど熱い、っていうのがヒップホップの武器だなと感じていて、そういう感じはちょっと出せたらいいなと思ったんです。
ーー多くの人が気になるところなんですけど、それぞれバンド名には意味があるんですか。
ジャック : たぶん、ないですね。ないけど、アメリカ人から観た「ゲイシャ、フジヤマ」みたいな横文字日本語感を出したかったんです。だから、アメリカ人が言っている感じですね。
ーースライディングは?

ORKII : この名前は、ドラムが決めたんです。これは俺の考えじゃなくてドラムの考えなんですけど、人って普通に歩いていたら普通なわけじゃないですか。
一同 : (笑)。
ORKII : でもスライディングしながら歩くことによって、それが普通になれば普通の人になれるんじゃないかって意味です。
koyabin(THIS IS JAPAN) : … けっこうメッセージ性つまってるね。
一同 : (爆笑)
young suck kick : たぶん後付けだろうけど。ただ、基本的にこのバンドに対して真面目な人はいないよね。
一同 : あははは。
young suck kick : みんな本業のバンドがあって、その寄せ集めみたいな形ではじまったんですよ。そのお遊びの延長線上でやっているからこそ、今こうやっておもしろがってもらっている感じでもあるので、その感覚ではいたいですね。
ーー実際、真面目なバンドばかりだとね。
ジャック : 疲れちゃう。日本に生きていたら、それなりに楽しいというか、そこまで悩みばかりじゃないでしょって。悩む前に、楽しいことしたほうがいいよって思います。
ーー特に音楽になると、ちっちゃいことでも大きな問題として歌うってことも少なくないですからね。
ジャック : そう。ちっちゃい悩みも、でっかいことしたら忘れるよって思うんですよ。
楽しくないとマジで意味がないなって
ーーさて、ここからはキーワードを投げるので、素直な感覚で思ったことをバシバシ言ってください。最初は「オモチレコード」。
koyabin : 誰がいるレーベル?
ジャック : NATURE DANGER GANGとかHave a nice day!、ゲスバンドとか。
young suck kick : 楽しそうではあるよね。
ジャック : いつもぶちあがっていて楽しそう。DJなのにいつもよりテンション高かったりね。
ORKII : リア充なのかな? 楽しそうすぎて恐い。
ジャック : 絶対、反動とかきちゃいそう。一人でいるときとかってどうなんだろう? って考えちゃう。
ーー次は「カクバリズム」。
ジャック : ぼくギターの音が小さいバンドは聴けなくて、ぶわーんって出てないと聴けないってときが人生の7割くらいあるので、なかなか聴く機会がないんですけど。
ORKII : ceroとか好きですけどね。いいなと思って聴いているんだけど、悔しいんですよね。
ジャック : わかる!! 悔しさが残る。はめられている感じというか。
young suck kick : ceroはいいんですけど、ceroフォロアーはほんとダサいと思います。
ジャック : めっちゃ好きですって言いづらい感じもあるよね。
ORKII : それって、自分がそうなれないから悔しいのかなって。普通にいいなって思うし、コンプレックスがあるんですよ。感覚としてはいいなと思うんですけど、認めたくない感じはあります。
ジャック : 好きなんだけど、いいって言っちゃったら悔しい。
ーーでは、「レスザンTV」。
ジャック : すごい硬派なイメージがあります。
ORKII : メテオナイトには普通に行きたいです。硬派でかっこいい。
ジャック : それこそ、はったり感を感じてかっこいいよね。
ーー「ロキノン系」。
ジャック : 僕は世代なので、アジカン、バックホーン、アシッドマンとかの、原体験を与えてくれたという意味で感謝してます。でも最近はギターのちっちゃいバンドが多いなって。なんでちっちゃいんだろうなあ。
ORKII : この間TSUTAYAに行ったら、○○っていうバンドが、ヒップホップ・プログレ・バンドって言われていて、俺のやりたいやつ全部やっているなって。それはむかつきますね。
ジャック : 直球じゃない感じのスタンスでやっているのが、斜に構えているのを意図的に見せつけている感じはありますよね。
young suck kick : 「みんなが好きって音楽きらいでしょ、みんな?」みたいな。
ジャック : そうそうそう、それそれそれ。
ORKII : ああいうの、本気でやっているのかなって思うよね。

young suck kick : ああ。でもさ、ちゃんと話を聞いたら、いま俺たちが言っているのと同じこと考えているのかもしんないね。
ORKII : みんなにうけるためにああいう曲をやっているだけで、わざとやっているのかもしれないよね。
ジャック : となると、俺たちが欺かれているのかもしれない。たぶん、そうなんでしょうね…。
young suck kick : … じゃあリスペクトですね。
ジャック : そこまで考えて、売れるための音楽をやっているんだからすごいよ。自分の言っていたことが、恥ずかしくなってきた…。絶対そこまで考えてやっているよね。
ーー確かにそうやって自分たちのこと客観視しながらやっている人が多いと思いますよ。いまって、「ロック(笑)」みたいな感じで、ロックに「(笑)」がつくスタンスが普通になってきていて、例えばキュウソネコカミは、メジャーにいった自分たちのスタンスを極めて冷静にみながら、それをネタにしてユーモア化しているじゃないですか。わかりますか、ああいう感覚って。
young suck kick : 俺はあまり聴いたことがないんですけど、サブカル女子をいじってるイメージがあります。僕はサブカル女子好きなんで(笑)。
ジャック : 俺はわからんでもないって感じです。MVとかも、そういうスタンダードなロックが好きだなってのが伝わってきて好感が持てます。
young suck kick : 俺もわかりますよ。でも… って感じはあって。
ORKII : スタンスとしてはわかるけど、そんなに出すかって。
ジャック : やっぱり、はったりでいきたいですから。
ーースライディングのはったり感は、THIS IS JAPANと近いものですか?
ジャック : 僕らのはったり感とは違うなと思っていて。僕らはパワー系のはったり感で、豪華絢爛どうだ!? って感じなんですけど、こいつらはやる気ないけどできるよ、みたいな、余裕なはったり感がありますよね。
young suck kick : 俺らヒップホップなんで。悪ガキ感は出したいなっていうのはありますよ。
koyabin : スライディングは、普段とライヴでキャラクターを切り替えている感じもしないよね。いつも通りやっている感じがする。
ORKII : あんま切り替えてないですね。ただテンションがあがっただけなのかも。
young suck kick : うん。人数が多いから、本当に楽しいだけなんですよ。
ORKII : 楽しかったらそれでいいんで、スライディングは。売れたいですけど。
young suck kick : 楽しんでいてお金もらえたらいいよね。
ーーかなりフラットに素直にバンドをやっているんですね。THIS IS JAPANはその点どうですか。
koyabin : 根底は一緒です。楽しくなきゃやる意味はないでしょって。
ジャック : 特に等身大じゃなく、言いたいこともないんで、となると楽しくないとマジで意味がないなって。本気でそう思いますよ。とにかく、はったりをかましていきたいなって。

RECOMMEND
バンド・サウンドを軸にヒップホップといびつなグルーヴを掛け合わせたミュータント・サウンドで話題を呼んでいる彼らのファースト・アルバム。今対談でも明らかになった、確信犯的はったり感とどこか毒を感じるスタイルからは、なにものにも動じないエネルギーに溢れている。
NATURE DANGER GANG / THE BEST OF NDG NONSTOP MEGAMIX
突如現れた“東京でいま一番おもしろいだけのバンド”として話題の絶えないNATURE DANGER GANGによるノンストップ・メガ・ミックス。破門された落語家、ラッパー、上裸の女性など、無礼講のライヴ・パフォーマンスは、見た目のインパクトだけではない、全力でライヴに参加することの何事にも変えれない楽しさを、肉体から感じさせてくれる。
LIVE INFORMATION

THIS IS JAPAN EXPO VOL.3
2014年8月11日(月)@新宿MOTION
時間 : open 18:30 / start 19:00
出演 : スライディングが普通の歩き方 / otori
料金 : ¥1000(+2drink)
CONNECT歌舞伎町
2014年10月4日(土)@新宿MOTION
出演 : THIS IS JAPAN / and more…
PROFILE
THIS IS JAPAN
大学のサークルの先輩後輩である、杉森ジャック(Gt,Vo.), koyabin(Gt,Vo.), 水元(Ba.), this is かわむら(Dr.)の4人で2011年在学中にTHIS IS JAPANを結成。ツインギター、ツインボーカルバンド。XTCに影響を受けたネジれポップにナンバーガールをリスペクトした直系ギターとビート。koyabinと杉森ジャックが歌う、僕らの日常非日常の歌詞、尖ったリズム、コミカルとシリアスが同居するオルタナティヴ・ポップ・サウンドが売り。
スライディングが普通の歩き方
2010年に東京で結成されたグルーヴ・ポップの新星。
重厚かつ軽妙なドラムビートに、ブラックでうねりのあるベース・サウンドが絡むカラフルなビート感覚。エッジの効いた粘りあるギター・ループと、煌びやかなシンセサイザーとが作り出すトリッピーな音響世界をバックに、2MCから放たれるリリック達が溢れ踊る。
洗練され、一切の無駄が排除された彼等のサウンド・ライブ・パフォーマンスは、東京の音楽シーンを席巻する。