ミュージシャンは成功より幸せを求めたほうがいいーーte' × Have a Nice Day! × Tokyo Recordings鼎談

日本を代表するポスト・ロック・バンド、te'が、ミニ・アルバム『閾』を残響レコードよりリリース。chouchou merged syrups.の高垣良介をドラムに迎えてのレコーディング、自身初のハイレゾ配信、初の一文字だけのアルバム・タイトル(過去の作品タイトルが20文字を切ったことがなかった)など、12年の活動の初心に返り改めて自らの立ち位置を認識するための作品となっている。OTOTOYでは、te'のギタリストであり残響レコード代表konoの提案により、年齢も活躍しているシーンも異なる3人を集め鼎談を敢行。クラウドファンディングで集めた資金で昨年11月にリキッドルームのフリー・パーティを成功させたHave a Nice Day! の浅見北斗。水曜日のカンパネラ「ナポレオン」を楽曲提供したことが話題となった楽曲から映像まで手掛ける気鋭レーベルTokyo RecordingsのOBKR。そしてkonoの三者でシーンにまつわる関係者の本音、これからの展望まで語り尽くしてもらった。
te'、初のハイレゾ音源を先行配信スタート
te' / 閾(24bit/96kHz)
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/96kHz)、AAC
【配信価格】
まとめ購入 1,500円(税込)
【Track List】
1. 『眩暈』
2. 雨滴は重力を信仰し、その軌跡は官能を伴い世界を『紗』で覆う。
3. 過剰な豊潤が退廃である様に、禁欲も過ぎれば陶酔に『溺』れる。
4. 具体を脱ぎ捨て潜勢を放てば、有為転変は『虛体』の夢に収斂す。
5. 彫琢した理念は音に宿り、感受する聴衆を『桎桔』から開放する。
te' / 雨滴は重力を信仰し、その軌跡は官能を伴い世界を『紗』で覆う。te' / 雨滴は重力を信仰し、その軌跡は官能を伴い世界を『紗』で覆う。
kono(te') × 浅見北斗(Have a Nice Day!) × OBKR(Tokyo Recordings)
もともと1バンドマンであったkonoがDIYで立ち上げたレーベル、残響レコード。9mm Parabellum Bulletを見出し、cinema staffやPeople In The Boxなど、現在の音楽シーンを形成するバンドを数多く輩出。日本のポスト・ロックというジャンルを形成してきただけでなく、マネジメントからスタジオ経営、CDショップ・残響shop、残響塾など、多様なアプローチで音楽業界に挑戦してきた功績は計り知れない。そんな残響レコードの社長であり、te'のギタリストであるkonoは、近年の残響レコードはいまいちだよね、と屈託のない笑顔で話す。そして、10年前の俺のようなヤツらと絡みたいよねと語る。
詳しくは下記対談に譲るが、現在の残響レコードはレーベル業務とマネジメント以外からは手をひき、わずか5人くらいのスタッフで運営している。また、ポスト・ロックのイメージが強いけれど、現在もっとも注目を浴びているバンドの一つ、雨のパレードをマネジメントしているのも残響レコードである。このたびte'が残響レコードよりミニ・アルバムをハイレゾ配信でリリースすることをきっかけに、年代も活動するシーンも異なる3人に集まってもらって鼎談を行った。顔をあわせるのは、3人ともこの日がはじめて。年齢もバラバラ。忌憚なき言葉で溢れ、たくさんのヒントと希望に満ちた鼎談となった。ミュージシャンの幸せとは? 一緒に考えてみてはいかがだろう。

取材&文 : 西澤裕郎
写真 : 大橋祐希
残響というより、俺自身が面白くねえ奴になっちゃった(kono)
ーー先日konoさんとお話したとき、いまの残響レコードをかなり客観的に捉えていてビックリしたんですけど、改めてkonoさんから見た現在の残響レコードについて話していただけますか?
kono : 僕が残響レコードを始めたのが30歳くらいのときなんですけど、突然インディペンデントから訳のわからない奴らが出てきてヒットを爆発させている状況で、言ってみればその時代の新世代だったわけですよ。ただ、そもそもがオルタナティヴで日本の音楽業界はダメだっていう勘違いも含めて始めたはずなのに、売れてしまったことで、気がついたら自分らがメインストリームにいた。その惰性で今まで来てしまったというか、自分の会社なのに超つまんねえなと思っていて。

一同 : (笑)。
kono : 残響というより、俺自身が面白くねえ奴になっちゃった。音楽業界の中で、ある程度認知されて、何かを言えば誰かが動いてくれる状況になったんだけど、どんどん新しい世代の人たちが出てきた時に、「俺はその人たちと戦えるんだろうか?」「共存できるんだろうか?」と思ったわけですよ。そう思うと、やっぱり今の若いバンド達は僕らの価値観で作っている音楽と全然違う。ぶっちゃけ、残響のこと、どう思いますか?
浅見北斗(以下、浅見) : konoさんがそこまで思っているんだったら言いやすいんですけど、はっきり言って、あまりかっこいいとは思っていないかな(笑)。
OBKR : 何がターニング・ポイントだったんですか? 例えば、あるバンドが抜けてから歯車が狂い始めたとか。
kono : それがね、じわじわと古くなってきている。5年目くらいで、もう過去の人だなっていうのは自分でもわかっているんですよ。
浅見 : それ、すげえ話だなあ(笑)。
kono : 残響ショップをやっていたとき、残響塾っていう音楽を教える講座をやっていたんですけど、そこの塾長から「0からレーベルを始めようとした時に今と同じことやる?」って聞かれたことがあって。SpotifyとかBandcamp、Kickstarterが始まった頃だったから、正直、配信レーベルでもいいなと思ったんですよ。でも、現実的に自分のレーベルはCDを出して、ラジオとかテレビとかに出て、プロモーションやライヴ・ツアーに回っていて、やっていることとのギャップがおかしいかったんです。でも、会社を維持するためにはやり続けなきゃいけないんですよ。ビジネスとして走り始めちゃっているから、古いと気づいても修正できない。

浅見 : 残響がポスト・ロックっていうイメージと一緒に出てきたから、ポスト・ロックってジャンルが衰退することによって、それを象徴しているレーベル自体のイメージが古くなっちゃった感じがする。マイク・パラディナスがやっているPlanet Muっていうレーベルは、もともとエレクトロニカのレーベルだったんですけど、ジュークとかダブステップとかをリリースしているんですよ。それを見ると、ジャンルを維持したりすることよりも、結局は音楽的欲求みたいなものが強烈なやつのほうが、おもろいことをし続けていくんだなって。吉村元年ってやつがいて、そいつはジュークやってるんですけど、自分で歌も入れる。最近、YouTubeに映像をあげたのがリアーナのカヴァーで、ジュークでさえないっていう。そういうのを、残響でやってほしいなと思っていて(笑)。
ーーあははは。OBKRくんはいまの残響についてどう感じていますか。
OBKR : 僕は残響ショップから残響レコードを知ったので、正直あまり知らなかったんですよね。今回の対談を機に昔の音源を聴いてきたんですけど、以前はすごくグルーヴがあった気がしたんです。『閾』を聴いていて、総合のグルーヴっていうよりは音作りを新しくしていく方向に進んでいる印象というか。これは予想なんですけど、今回のアルバムは、ドラムとベースを一発同録で、あとはギターを別空間で、同時じゃなく録ったんですか?
kono : まさにそのとおりです。
OBKR : やっぱりそうだ。リズム隊ががっちりグルーヴしているんですけど、ギターがそれぞれ別のグルーヴで揺れてるんですよ。この揺れがお互いの相互作用じゃない印象だから、これはかつての残響らしくないというか。いい悪いじゃないんですけど、そういう方向なんだと、アルバムを聴いた瞬間に思ったんですよ。

kono : 昔はアナログ一発録りだったんですよ。卓を通さず、スタジオのマイクからテープに直接つなぐだけとか、間違いも全部そのまま出すみたいな感じで。それが今の時代に合わなくなってきたというか。当時はiPodとかiPhoneがなかったからmp3で聴く文化もなくて、CDのサウンド感がアナログで通用したんですよね。それが、ある時期からテレキャスがバカ売れし始めたんですよ。テレキャスってiPodのレンジ感がもろに出るんですよね。それと、ギター・アンプ2000がバカ売れし始めた。その組み合わせの音楽がいっぱい出てきた時に「こういうサウンドは俺が一番嫌いなサウンドだ、あ、また遅れてるな」と。気持ち的には若者のサウンドに近づけることをやりたくなかったんですけど、やらないと遅れてる人みたいになるし、でも葛藤っていうか、今までやってきたことも守りたいって気持ちもあって、今すごく悩んでいるところなんです。サウンド以外の部分に関しても、全盛期に20人くらいいた社員が今は数人、しかも23、4歳くらいの子しかいない。そうしないと残響レコードが新しくならないと思って。ガンガン新しいバンドやレーベルも出てきて、俺はこいつらと戦わないといかんと思いつつ、共存もしなきゃいけない。ある意味、僕らはオルタネイティヴがエネルギーになってたから、戦う人がいないとどうしたらいいかわからないんですよ。今、倒すべき敵は若者だなって(笑)。
国内はキャッシュがまわるビジネスが大事になっちゃっている(OBKR)
ーー僕が思う近年のバンドの対抗軸って、アイドルだったと思うんですよ。そんな中、Have a Nice Day! は積極的にアイドルシーンに飛び込んでいったグループだと思うんですね。
kono : なんでアイドルとやろうと思ったんですか?
浅見 : もともとアイドルとは絶対にやらないと思っていたんですけど、バンド3つとアイドル1組で対バンをしたら、アイドルが大勝しちゃったんですよ。今のロックンロール・バンドのシーンに、こういう熱気はないなと思って。結局、アイドルのお客さんのほうが反応がわかりやすいし、そういうテンションの中でやっていると、バンドとの対バンがだんだんきつくなっていったんです。
kono : イメージだと、活動の仕方がまさに現在のバンドを象徴している印象がありますよね。
浅見 : そうですね。規模を大きくしようってことは常に思っているんですけど、メジャーのやり方とは全然違うやり方というか。それこそクラウドファンディングで新作音源を発売するって体でお金を集めて、リキッドルームをフリー・パーティーにしたんです。音源を買っていない人も、キャンプファイヤーが成立していたら誰でもタダで入れるよってことにした。結局、このやり方って、メジャーだと成立しないじゃないですか? まったく儲からないから(笑)。だからこそ意味があるなと思って。オルタナじゃなかったら成立しねえよってことを俺はやるべきだと思うんですよ。
満を持してアンセムを集めたベスト盤をVirgin Babylon Recordsよりリリース
Have a Nice Day! (ハバナイ) - Blood on the mosh pit (MUSIC VIDEO / 新編集版)Have a Nice Day! (ハバナイ) - Blood on the mosh pit (MUSIC VIDEO / 新編集版)
kono : すごくいいと思います。ぶっちゃけ、俺も何回もクラウドファウンディングをやろうと思ったんですけど、できないんすよね。客観的に自分がお客さん目線で見た時に、ある程度お金も集められる環境にいるくせに、なんで今さらそんなことをやるんだって。それぐらいの金あるでしょって見られるわけですよ(笑)。正直、お金なんて全然ないけど(笑)。
ーーOBKRくんがTokyo Recordingsで思い描いているのはどういう未来ですか。
OBKR : 僕は海外、特に東南アジア、アジアに行きたいですね。日本ですごく成功したバンドが、LAとかのレーベルから出してアメリカで1位をとれるのかって言ったら、またピラミッドの最下層から積み重ねなきゃいけないんですよ。いわゆるUS、UKの文化的経済圏があって、チャートも工夫されている。そこでどう闘っていこうかと思った時に、アジアの中に文化圏を作らないといけないと思って。いまは、マレーシア標準時やシンガポール標準時も変更されて、GMT+8に15億人が集まってるんですよ。YouTubeで何かを公開するってなったら、15億人が一気に見れる市場がある、距離は近いし、LCCもある。しかもメイド・イン・ジャパンっていうブランドが通用する中で、僕は出ていくべきだと思うんですよ。The fin.ってめったに語らないんですけど、向こうですごいんですよ人気が。平気で600人700人くらい集める。英語で歌えるっていうところに勝機も確実にある。僕はそっちにどんどんいきたいと思っています。

kono : そこの目の付けどころはすごく良いと思います。まだ日本で誰も台湾に行っていない時に、かなりの回数行って台湾は僕らが開拓したって言っても過言ではないくらいポスト・ロックが流行りはじめて、台湾にいくと僕らが1万人のヘッドライナーなんですよ。そこまではいけたかなと思っているので、そこから向こうですよね、今おもしろいのは。
OBKR : タイとかそうですし、ベトナムもおもしろいですよね。OKAMOTO'Sがベトナムに行った時、空港でファンが待っていたらしくて。インターネットの普及率が高いんで、アニメの主題歌を歌っているバンドとかが来た瞬間、ぶわーって人が集まるんですよ。僕が遊びに行った時は、メジャー・メーカーの方が視察に来ていて、僕らも早く開拓しないとって思いました。
ーー日本国内はあまり興味ない?
OBKR : 0になっちゃいましたね。たまに音楽業界がどうなるとか聞かれるんですけど、今はなにも思い浮かばないし、(日本の音楽業界のことは)片隅にもない(笑)。
ーー好奇心も見返りも含めて、あまり得るものがないと。
OBKR : 国内はキャッシュがまわるビジネスが大事になっちゃっていると思うんですよ。アイドルは、まさに現場でキャッシュ化できるから盛り上がれる訳で。そうなると曲も短くなるし、展開も早くなる。僕が好きなのは小説とか映画とか、家でゆっくり聴いて味わえるもの。僕らは、そういうものをしっかりと咀嚼して、音を作るプロフェッショナルでいたい。それを売るっていう人は手をあげて売ってくださいと思いますけど、売れなかったらあなたのせい、売れたらあなたのおかげだと。俺らは確かなものを作ってるんだからって言えるくらいのテンションでいたほうが、よっぽど心が健全だなって。
Tokyo Recordingsがプロデュースした綿めぐみの全国デビュー作をハイレゾ配信スタート
綿めぐみ「ブラインドマン」綿めぐみ「ブラインドマン」
kono : いやー、わかります。僕らは心が全然健全じゃないですもん。汚れっぱなしです(笑)。これを俺が言うと。ちょっと重いですけど(笑)。でも、まじでおっしゃるとおりで、毎日ストレスしかない。自分の会社もそうですけど、お金をまわすことにしか時間を割けなくなっちゃっている。それって全然クリエイティヴじゃないんですよね。
OBKR : 暇じゃないとクリエイティヴは産まれないですからね。
サブカルクソ野郎っていうのも、やっぱり定型化されている(浅見)
浅見 : 俺はkonoさんにもっと巨大なところを目指してもらいたい。オルタナでそんなことできるんだってところが面白いと思うんですよ。
kono : そこでいくと、残響の方針は最近ようやく目標が定まって。100万枚を売るか、全然売れないけどめちゃくちゃかっこ良い価値観しかもたないバンドしかやらないって決めたんですよ。
浅見 : そしたらぜひ吉村元年をお願いしたい。YouTubeの再生回数が240回とかですから。まじで売れないと思いますよ(笑)。
kono : (笑)。浅見さんって、アバンギャルト系が好きってわけでもないんですか? それっぽい匂いがすごいするのに。
浅見 : いや、俺、サブカルクソ野郎って大嫌いなんですよ。全然おもしろくないと思って(笑)。
kono : でも、浅見さんってサブカルクソ野郎に見えてますよ(笑)!!
一同 : (爆笑)。
kono : サブカルクソ野郎と浅見さんは、なにが違うんですか?
浅見 : KK mangaっていうバンドが、ヤンキーとオタク以外のものに興味があるってことを言っていて。両方とも、ジャンル化されたアウトサイダーじゃないですか。ヤンキーはこういう格好するとか、オタクもアイドルやアニメが好きみたいに、定型化されてるじゃないですか。その2つのアウトサイダーが実はもうアウトサイダーじゃねえんじゃないかって。僕が言うサブカルクソ野郎っていうのも、やっぱり定型化されているんですよ。そうじゃなくて、真のアウトサイダーは、いかなるものなのか? それがロックンロールなんじゃないか、オルタナってことなんじゃないかなとを常に思ってる。

kono : すごくおもしろいし、いい発想ですね。そこでいうと、残響も中途半端に音楽好きの中では、マジョリティになっちゃっていて、そこを踏まえつつどこがオルタナティヴなのか探っているんですよね。良くも悪くも、残響って言えば、ああ残響ねみたいになって。今は自分たちの居場所を見つけにいっているというか。ちゃんと客観的にフィールドが見えるようにしたい。そこを貫き通す男ってかっこいいじゃないですか。浅見さんも、わかってやってるんだぞ感をみせていくと、すごくいいと思うんですよね。
浅見 : 俺、今の発言をふまえたうえで、OBKRくんとかの世代は、そういうことに対して無頓着だなって思うんですよ。そこが強さだと思う。俺がいちいち自意識を持っちゃうところに対して、自意識をほぼ持たずにいるところが、勝てねえなって思っちゃうんですよ。ちょっと迷いが生じたり、そこに対してのこだわりみたいなのがあって、毎回遅れをとるんですよ。それがないから、こいつらは強いなって。こいつって言ってすみません(笑)。
kono : わかります。僕らはジャンルがメインみたいな感じだったんですけど、今はなんでもオッケーだから、このギャップが俺らめっちゃ苦しいんですよ(笑)。俺らにとっては、勝手に思ってますけど、アイドルは最大の敵なんですよ。サブカルも手強い敵。当時はいきすぎると、ライヴハウスで喧嘩が起きちゃうみたいな時代でした。世代でそんなこと絶対起きないじゃん今。
浅見 : もっとフラットですもんね。
kono : だから羨ましいですよ。僕なんか完全にルーツがメタルなんですよ。最近はアイアン・メイデンへのコメント依頼がギタマガ(『ギターマガジン』)からきたくらい、メタルが好きなんですね。でも、僕らの世代からすると、メタルはダサいと言われいてた時代がある。それが今ないじゃないですか?
OBKR : 僕、アイアン・メイデンめっちゃ聴いてました! 「フィアー・オブ・ザ・ダーク」のライヴ盤を聴いて、家でずっと頭振ってました(笑)。
kono : でしょ! でも俺らの時はメタルを聴いてたらダサかった。ハロウィンって何? みたいな。だから、ちょっとかっこつけなきゃと思ってポスト・ロックみたいな音楽を始めたんですよ(笑)。最近はメタル・バンド始めようかなみたいなことを堂々と言える時代になったなと思っていて。だからオフィシャルでメタル・バンドを募集している(笑)。特に美メロが好きなので、デフレパードやフェアウォーニング、クイーンズライクみたいなメタルですね。でも、めちゃめちゃ募集してるのに、応募が来るのはポスト・ロックなんですよ。ポスト・ロックとかギター・ロックばかりがくる。まさに「WHY JAPANESE PEOPLE!!」です(笑)。
浅見 : アイアン・メイデンのコピー・バンドが残響から出たら衝撃ありますよ!! 一気に残響に勢いが戻りますよ!! 残響やっぱり攻めてるわーって。
ミュージシャンは幸せを求めたほうがいい(kono)
ーーいろいろな意味で残響は抱えているものが多くなりすぎたから、自由に動けない部分もあるわけですよね。
kono : そういうのも、本心としては嫌なんですよ。俺、そんなやつじゃないんで。いつも攻めの姿勢でいたいんです。レーベル自体が中途半端に大きくなっちゃったから、下手なことは言えなくなっちゃったっていうか。そこのストレスがすごいんですよ。
OBKR : 求められているものを出さなきゃいけないから、だんだんそうなるっていうのもわかります。
kono : 例えば、いま流行りの音を研究したとして、それが自分のすごく好きな音とかジャンルだったらいいけど、そうじゃないものをビジネスとして出していかなきゃいけないし、フェスに出るためにたくさんの人にお金を払って、お願いしてとかしないといけないんですよね。でも、本心はそんなことやりたくないんですよ。残響をはじめた当時は、全部受け身だったんですよ。いいものを作っていたら、みんなが来てくれて、出てよ出てよ、って感じで。普通に何も考えず受けていたら大きくなっていった。でも、そうなったときに、最初からセーブしとくべきだったなと反省していて。気づいたら、音楽業界という枠にはまってしまったという。
OBKR : すげー、よくわかります。僕も水曜日のカンパネラの「ナポレオン」を作ったあと、ああいうトラックを作ってくれって依頼がたくさん来たんです。でも、本来あれを作りたかったわけじゃなくて、彼女(コムアイ)だったからあれを作りたかった。最近、そういう依頼に対してずっと悩んでいて。OASISのインタヴューとかたまに読むんですけど、プロモーターの言うことを聞いたら音楽は終わるとかめちゃくちゃなこと言っているじゃないですか?
kono : 本当にその通り(笑)。
OBKR : だから最近は「俺らの制作に一切口を出すな」って、こっちから言うようにしていて。嫌われるとか、売れるとか考えていないから、「今、好きな音楽はこれなんですけどどうですか?」って提案しようと思っていて。
kono : そのほうがいいですよ。頼まれたものをどんどんやっていくと、俺のようになるので、自分の価値観を守る作業をやったほうがいい。売れているからそのレールに乗ろうと思ってやっていたんですけど、知名度があがると同時にストレスも上がっていって、若干鬱っぽくなった。今は売れるってことが本当に幸せなことかっていうと違うなって思うんです。だから、今やっていることと、考えていることは矛盾だらけです。
一同 : (重い沈黙)
kono : 売れることと幸せを求めることって違っていて、多分ミュージシャンは幸せを求めたほうがいいと思います。売れること=幸せになるのは結果を求めた人たちで100万枚とか50万枚いく人たちだと思うんですよ。そこにいく見込みがないのであれば、幸せをとっていったほうがよかったなと思っていて。俺らはいま、幸せをできるだけ選択してとりにいっている。だからストレスも減ってきています。
ーーte'自体、幸せをとった?
kono : 幸せをとりながら、ヒットも目指して活動しています。前作はメジャーで出しても売り上げの数字も変わらなかったから。もちろんメジャーでお金を使ってくれる立ち位置にいるアーティストにとっては、やる意味があるけど、te’の場合は、よりフットワークが軽くなるし、海外リリースもやりやすくなるので元に戻しました。結局インディでやっていたときが一番売れていたので。浅見さんと一緒で、僕らもリキッドくらいまではいったんですよ。そこからメンバー・チェンジとかがあって、活動休止したりとかして、動員はちょっと減ってきましたけど、またそこにはいきたいなと思っている。
リキッドから上へは客観性とポップソングがあればいけます(kono)
ーー浅見さんはリキッドより大きい場所に行くために、試行錯誤している状況だと思うんですけど、どうすればそれ以上の場所にいけるとか秘訣はあるんでしょうか?
kono : リキッドから先はZeppの壁っていうのがあって、1000人から3000人の壁があるんですよ。Zeppを超えると武道館に行けます。言ってしまえば、リキッドから上へは客観性とポップソングがあればいけます。
ーー客観性っていうのは?
kono : 要するに、メンバーだけでも頑張ればリキッドに行けるんですよ。そこから上にいくには、客観的にアドバイスしてくれたり、客観的にそのバンドを見てくれる人がいないと上にいけないんです。僕らもリキッドのときにメジャーに行って客観的なことを求めたんだけれども上にいけなかった。もうちょっと的確なアドバイスをしてくれる人がいればってところなんです。
浅見 : そうですよね。そこですよね。
kono : 僕の経験ですけど、日本ではそこで音楽を聴いてくれる人の層が変わるんですよ。リキッドくらいまでは、コアな音楽ファンが支えてくれるんです。そっから上にいくためには、それ以外の、ちょっと音楽好きな人たちが好きにならないとZeppまでは行かない。今の日本だと、その壁を乗り越えないと上にあがれない図式ができあがっているんですよ。フォーマットというか、メディアだったり、企業との座組のようなものができている。そういう意味で、OBKRくんはそこにいかないほうがいいと思う。
OBKR : ぶっちゃけ、憧れはありますよ。
kono : 知っていて行くのと、そうじゃないで行くのはまったく別で、フォーマットに入っちゃうと、そこから抜け出せない。そして、実は売れているバンドはそこを通ってないんですよ。OBKRくんは、いままだ未開の地に立っているので、日本の大きなマーケットをごっそり持っていける可能性があるんですよ。俺がはじめてOBKRくんを知った雑誌がWIREDなんですけど、それっておかしいじゃないですか。音楽誌にはほとんど出ていない。僕がこんなこと言っちゃダメだし、喧嘩売っているわけじゃないんですけど、もっと上に行きたい人はそのフォーマットを理解した上でうまくコントロールしないとダメなんです。
OBKR : ちょうどマーケティングを考えていたところなので、グサっときました。
kono : 僕はそのフォーマットのなかで争ったことで、半分ははみ出ているってところにいけた。でも正直、本当に売れたければ、その枠に入らないほうがいいと思います。浅見さんもそこにいないじゃないですか? だから、そこを目指さないで、サマソニとかフジに出ることを目標にしていったほうがいい。いきなりフジに出てきたとかってほうが、いいなと思いますよ。

ーーコンサルみたいになってきましたね(笑)。
kono : 全部僕の失敗談なんでいくらでも教えますよ。どのバンドも残響が成功していると思わないでほしいんです。できたら、残響を踏み台にしてほしいんですよ。失敗も成功もあるから、それをうまく使ってほしい。この2人の世代と絡むことが僕自身もなくて、でもこういうことを話したいし聞きたい。考えていることも聞きたいです。俺は隠すことなんてないからなんでも聞いてほしいです。それか、Tokyo Recordingsに入りましょうか? 営業マンとして(笑)。
一同 : (笑)。
kono : 最後に、僕は1バンドのギタリストです。社長っぽいですが、みんなと同じバンドマンです。毎日もがいてます!
配信中の作品
te'
te' / 其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / AAC
【配信価格】
単曲 249円 / まとめ購入 1,800円
【Track List】
1. 『緒』。
2. 夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。
3. 意味を喪失した時、虚無は私を冒し、享楽だけが『慰』みとなる。
4. 離散的な欠片の集合が混沌から『秩序』に変わる時、美は発現す。
5. 『鍵』。
6. 自由と孤独は秤の上の矛盾であり、その均衡にこそ『檻』がある。
7. 終焉から振り返る我が夢は、陰影の濃淡に浮かぶ『光』の残り香。
8. 『有』。
9. 道徳はうつろう教義であり、その『閾』は昼と夜でさえ変容する。
10. 『盈』。
11. 思想も共感もいらず、ただ幻聴を誘発する『起因』としての音楽
12. 私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。
※情報掲載時、内容に間違いがございました。お詫びして訂正いたします。
特集 : 日本を代表する“アグレッシヴ・インスト・ポップ”・バンド、te'ー自分たちの“型”を広げた6thアルバムに迫るインタヴュー掲載集!!
Have a Nice Day!
LIQUIDROOMでのリリース・パーティーを収録したモッシュ・ライヴ・レコーディング音源
Have a Nice Day! / Dystopia Romance release party@LIQUIDROOM(24bit/96kHz)
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/96kHz)
【配信価格】
まとめ購入 1,500円
【Track List】
1. GORILLA Feat.BOOL
2. Are You Ready?(suck my dick)inst〜フォーエバーヤング
3. MC
4. com'on boogie nights
5. ZOMBIE PART
6. ロックンロールの恋人
7. ハートに火をつけて
8. Dive to the Bass Feat.Y.I.M
9. CAMPFIRE
10. Blood on the moshpit
11. SCUM PARK
12. ZOMBIE PARTY Feat.Limited Express (has gone?)
13. Heaven Discharge Hells Delight Feat.Limited Express(has gone?)
14. エメラルド Feat.おやすみホログラム
15. FUCK YESTERDAY
16. 秘密警察
17. Are You Ready?(suck my dick)
18. フォーエバーヤング
>>モッシュ・レコーディング当日の様子はこちらから
特集 : 東京アングラ・シーン台風の目、Have a Nice Day! 浅見北斗とは何者?
Tokyo Recordings
初の全国流通盤をハイレゾ配信スタート!
綿めぐみ / ブラインドマン(24bit/48kHz)
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/48kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 300円 / まとめ購入 1,650円
【Track List】
1. ブラインドマンは知っている
2. この街の夜は明るい星だけがきらり
3. ブラインドマン
4. 決心
5. ラン!ラン!ラン!
6. 追憶
7. インビジブルマン
特集 : 「インディだからこそインディに甘んじたくない」——平成生まれのクリエイターたちによるD.I.Y.レーベル、TOKYO RECORDINGSを大特集!!
PROFILE
te'

Guitar : kono
Bass : matsuda
Guitar : hiro
LIVE INFORMATION
過剰な豊潤が退廃であるように、禁欲も過ぎれば陶酔に溺れる。衝動に脚色を与えず、 無垢を晒し不謹慎を徹すれば、頓て諧謔を生む
2016年4月16日(土)@心斎橋pangea ワンマン(OA有り)
2016年4月17日(日)@名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL ワンマン(OA有り)
2016年4月23日(土)@札幌サウンドクルー
出演 : te' / 空中メトロ / プリメケロン(3マン・ライヴ)
2016年5月15日(日)@代官山UNIT ワンマン
※全公演、高橋宏貴(ELLEGARDEN Scars Borough THE PREDATORS)がサポート・ドラマーとして参加。
Have a Nice Day!

トーキョーシティーアンダーグラウンド2016。Welcome to SCUM PARK。
LIVE INFORMATION
Helter Skelters Disco Showcase
2016年5月25日(水)@渋谷TSUTAYA O-WEST
開場 : 19:00 / 開演 : 20:00
前売り : 2,500円
Tokyo Recordings

平成生まれのクリエイターのみで構成された2014年7月設立の音楽レーベル。
平成27年9月より法人設立。
LIVE INFORMATION
NEW SWEETIE VOL.2
2016年4月23日(土)@Hot Buttered Club
開場 : 19:30
前売り : 2,500円(ドリンク代別)
出演 : WONK、Capeson