
昨年、開催されたイベント「アイスランドナイト」が、2013年2月24日(日)に再び開催される。今回は会場を、代官山“晴れたら空に豆まいて”と“山羊に、聞く?”に移し、アイスランドのアーティストYagyaの出演も決定、アイスランドの食文化も楽しめるような準備も進められている。まさに、アイスランド好きにとっては見逃すことのできない1日になりそうだ。昨年に引き続き、主催者のTAK.Sを招いて話を聞いた。実際にアイスランドに足を運び、その自然、人、音楽を体験してきた彼がどんな意志をもって「アイスランドナイト」を行っているのか。そこからは、長期的に文化を作っていこうという意志がはっきりと強く見えてきた。「アイスランドナイト」は参加者一人一人が時間をかけて作っていくための、大きな柱になるに違いない。ぜひ、足を運んで、その体験を身近な友だちたちと共有してほしい。
インタビュー&文 : 西澤 裕郎

前回の大盛況に引き続き、1年振りに開催が決定!
「晴れたら空に豆まいて」、「山羊に、聞く?」の2フロア同時開催、往来自由!
『アイスランドナイト』
2013年2月24日(日)
会場 : 代官山「晴れたら空に豆まいて+山羊に、聞く?」
OPEN / START : 18:00
ADV 3,500円+(1D) / DOOR 4,000円+(1D)
【晴れたら空に豆まいて side】
【Guest Live】
Yagya(From Iceland)
【Guest Vocal】
Moskitoo
【Live】
RiLF / Moshimoss / Magdala
【DJ】
DJ 蟻
【VJ】
yuma saito
【山羊に、聞く? side】
【Live】
Meme / Shindo Shohei
【DJ】
DJ エメラルド / sad_hyena / UK / TAK.S
【VJ】
Koichi Nakaie(aikisai)
「その他、イベント内容」
アイスランド料理の提供、「フローシーキャンドル」の空間演出
(株)ヴァイキングによるリーフレット・うちわの配布
アイスランドのヨーグルト「スキール」の提供
【INFORMATION】
>>アイスランドナイト official site
>>アイスランドナイト official Twitter
mail : info(at)islensk-nott.com ※(at)を@に変換
後援 : アイスランド大使館(http://www.iceland.is/iceland-abroad/jp/)
協賛 : アイスランド航空日本総代理店・㈱ヴァイキング(http://www.icelandair.jp/)
主催者TAK.S インタビュー
——昨年2月のアイスランドナイトに遊びにいかせてもらったんですけど、お客さんも大入りで大盛況でしたね。TAKさんとしては、かなり手応えがあったんじゃないですか。
昨年は1回目のイベントで、出演者も日本人だけだったんですけど、反響がものすごかったですね。ただ、内容的にはもうちょっと詰めなきゃいけない部分はあったのかなっていうのが正直なところです。
——イベント前にアイスランド好きの人たちが沢山つぶやいているのを見て、期待されているイベントなんだなと実感しました。前回のインタビューでは、アイスランドで見られるようなアーティスト同士の繋がりを、日本でも作っていきたいとおっしゃっていましたよね。単純にアイスランドのアーティストを呼ぶだけじゃなく、根本の部分から作っていきたいという想いが素晴らしいと思いました。
今回は、アイスランドのアーティストのYagyaさんにも出演してもらうんですけど、それも個人的に繋がっていたレーベル、kilk recordsからCDを出したことがきっかけになっているんです。そういうふうにして、ひょんなことから繋がっていって、最終的には日本とアイスランドを繋げたいっていう想いがあります。昨年11月にアイスランドに行ったんですけど、アイスランド人に日本語で話しかけられたんですよ。

——へえ。それは意外ですね。
アイスランド大学で日本語を教えていたり、ある程度日本語をしゃべれる人もいるみたいなんです。昨年お話した、Rokkurroってバンドのメンバーが日本で留学していたりもしたし、語学留学で来ている人も結構いるみたいで。アイスランドの方も、日本のことに興味がある人がいるみたいです。ちなみに、Yagyaさんにメールをしていたら「ハイクオリティの寿司が食べたい」って返事が返ってきて(笑)。
——ハイクオリティの寿司(笑)?
どの程度のものかは分からないですけどね(笑)。あっちにも寿司屋があるんですけど、そういう文化的な部分から興味を持ったんだと思うんですよ。でも、音楽的なところで言ったら、アイスランドで日本の音楽って、ほとんど伝わっていないのかなと思って。日本にもいいアーティストは沢山いるし、それを伝えて交流を持っていけば、どんどん日本の文化も広げていけると思っています。逆に、日本人もアイスランドの有名なアーティストしか知らないと思うので、それを日本に伝えたいと思っています。相乗的に盛り上がっていければ一番良いのかなって。

——TAKさんのやり方を見ていると、地道に根を張っていくところからスタートしているように感じます。かなり長期的にアイスランドを育てていくことを考えているんじゃないですか?
そうですね。1年とか2年だと、時間的な部分やお金的な部分も含めて難しい部分もあるので、時間をかけてやっていこうと考えています。文化って時間をかけて育てていくものだと思いますし、それこそジャパン・ナイトみたいなイベントっていうのをあっちでやるっていうのも目標の一つではあるんですよね。繋ぐっていうからには、それくらいのことをやりたいなとは思います。あちら側から日本に来たいって思ってる人もいっぱいいるみたいですし。アイスランドからアーティストを呼ぶっていうのも素晴らしいことですけど、それ以上に日本とアイスランドの交流をもっとやっていきたいです。アイスランド人だけで固めるというのは多分しないと思うので、交流がどのくらいのレベルで出来るのかを突き詰めていって、一番良い形を模索してやっていければいいかなと思ってます。
——第1回を踏まえて、今回のアイスランドナイトはどういう形で進めていこうとお考えですか?
今回は、アイスランドからアーティストを呼ぼうっていうのが第1目標としてあったんです。呼びたかったアーティストは何組かいるんですけど、Yagyaさんを呼びたいなと思ってオファーして実現しました。アイスランドナイトは、もともと音楽イベントを軸として始まっているので、音楽ってところを前面に押し出すのは当然かなと思ってやっています。ちょっと話はズレるんですけど、今回の会場である“晴れたら空に豆まいて”はフードも用意出来るので、お店側で協力してもらえるみたいなんです。

——アイスランドの家庭料理が食べられるんですか?
そうですね。家庭料理みたいなものを作ったりする予定です。これは出来るか分からないんですけど、スキールっていうアイスランドのヨーグルトがあって、出します。アイスランドでは有名で、観光で行ったら食べるみたいなもので、僕も食べて来たんですけど、やっぱり独特な感じだったのでぜひ食べてほしいですね。
——TAKさんは、2012年10月にアイスランドに行かれたんですよね。今回は、実際にアイスランドへ行った上でのイベントということで、TAKさんの経験値も確実に増えていると思うんですけど、今回から取り入れていこうとか、変えていこうという部分はありますか?
僕が肌で感じたものっていうのがあるので、そういうものはイベントをやる上でも一番パワーになるじゃないですか。説得力もあるし、そういうものを取り入れられたらいいのかなって思いますね。食の部分とか、あとは自然をどうやって伝えるかですね。実際行けない人や行ってない人に興味を持ってもらいたいので、それをどうやって伝えていくかは課題ですね。
——昨年も相当熱いアイスランドへの想いを語っていただきましたが、実際にアイスランドに行かれてみて、自分の思い描いていた理想像と比べてどうでしたか?
“百聞は一見にしかず”じゃないですけど、写真では収まらないレベルの自然を目の当たりにして。首都のレイキャヴィークを出ると、本当に何もないんですよ。西の果てくらいにあるスナイフェルス国立公園に行ったんですけど、まったく手が入ってないような自然があって。日本の国立公園だと、ちょっと整えられてる感じはあると思うんですけど、そういうのとは違って本当にだだっ広いところに苔が生えてる感じで。すごく夕焼けが奇麗だったので、車を止めてみんなで見ていました。その時に丁度、Kira Kiraっていうアイスランドのアーティストが昨年出したアルバム「Feathermagnetik」がカーステレオから流れてきたんです。その音楽と自然がシンクロしているというか… 完全に“ここから生まれた音楽がこれ”みたいなことを感じて。その場所に行って風景を見たことで感じた事はすごい大きいですね。日本でなかなかアイスランドのような音楽が生まれないのは、ああいう場所が日本にはないからなんだろうなと。
——それは、アイスランドの人が自然に対して感じる脅威だったり、畏敬の念が音に表れているってことなんですか?
やっぱり自然と一緒にって感じじゃないですかね。例えば日本だったら、こんなに土地余ってるんだったら何かやっちゃおうみたいな感覚って出てくると思うんですけど、そういうのがあまり多くない… そんな気がするんですよね。アイスランドでは地熱発電が盛んで、ヘットリスヘイディ地熱発電所はアイスランド人の聖地でもあるスナイフェルスネス半島の氷河を指しているそうです。デザインも自然とマッチするように作られてるってききました。だから、やっぱり自然と一体というか、いい意味で発展を求めていないというか。発展にも色々あると思うんですけど、自然を大事にしている。
こういうイベントがあるっていうのを伝えたい
——日本の場合、自然を人間主体で保存させようって感じがするんですけど、アイスランドは自然があくまで大前提にあって、それに即したものを当てはめていくというか、自然が先立ってるような印象がありますね。
そういう感じはありますね。
——アイスランドに行ったことのない僕の感覚だと、空気がきれいで、癒されるような自然というイメージがあったんですけど、今の話を聞いていたら、人間が作ったものが何もないっていうのは逆に怖いのかもしれないって思いました。畏敬の念といいますか。
そういう意味では本当に怖いと思いますね。だからこそ大事にというか、自然と共存している感じはしますよね。整えられていないところに、いきなり教会がぽつんとあるみたいな(笑)。何もないところに羊が放牧されてたりとか。管理はされているとは思うんですけど、本当に自然と共存している感じなんですよね。僕の感覚ではあるんですけど、自然は本当に大きかったですね。何回も言うんですけど、本当にこんなところがあるのかっていうのを冗談じゃなく思ったので。無言になるというか… 大事な人に見せてあげたいとか、そういう感覚でしたね。地面からパワーが出ているというか、そこからああいう音楽ができているというのが分かりました。

——そうした自然を体験しつつ、現地で行われていたライヴにも行かれていたんですよね。頻繁に音楽イベントがやっていたんですか?
Iceland Airwavesっていう、5日間まるまる町中でいろんなところで音楽をやるフェスがあって。カフェでやってたり、ユースホステルでやっていたり夜も全然関係ないDJイベントがあったりとか、町をあげてのフェスだったんです。公式ではないオフ・ヴェニューっていうのがあって、その他急に関係ないところでやりだしたりとかもしていて(笑)。
——全世界から人が来るからショー・ビジネスにもなっている反面で、そこに住んでる人からするとお祭り的な感じなんですかね?
でしょうね。みんな1年の中で一番好きなんじゃないですかね。

——アイスランド以外のアーティストも出るんですか?
そうですね。日本人や海外の人は、アイスランド人のアーティストを見にいくじゃないですか。でも、アイスランドの人は、他の国から来る人たちを楽しみにしてるみたいですね。アイスランド航空の機内でアイスランド音楽が聴けたりとか観光の一環になっていると思うので、人を呼ぶためにそういうイベントがあって音楽を大事にしているっていうか、それが売りって考えているように見えますね。日本でいうアニメというか、そういう部分もあるのかなって思います。僕のイベントとは関係ないかも知れないですけど、このイベントは形としてすごく面白かったので伝えたいんですよ。例えば、ビョークとかシガー・ロスとかは知っていても、このイベントを知らない人はいっぱいいると思うので。アイスランドで音楽好きな人が一番初めに興味を持つのは、Iceland Airwavesだと思うので、こういうイベント、フェスっていうのがあるっていうのはすごく伝えたい部分です。とっかかりとしては僕もそこだったので。
——アイスランドナイトで興味を持ってくれた人たちにも、Iceland Airwavesはすごくいいきっかけになるかも知れないですよね。
やっぱり僕のイベントも音楽イベントっていうのが軸にあるので、興味を持って行ってもらえたら嬉しいなと。Iceland Airwavesが、今回来場いただく方には一番フィットするイベントだと思うので。その派生としていろんなものがあって、それも興味を持って知ってもらうのがいいかなと。

アイスランドにしても日本にしても、良い部分悪い部分はある
——TAKさん自身はアイスランドのことを知っていくうちに行きたいと思ったわけじゃないですか? そこまでTAKさんの行動を起こさせたものは何でしょう。
やっぱり音楽の部分が強いです。前回も出てもらっていて今回も出てもらうMoshimossさんは、アイスランドに行ってからMoshimossを始めたんですよね。そこの土地に行って始めようと感じたってことは、それだけのものがあるんだと思って、それで自分も行ってみたいって思いが強くなりましたね。そう言った繋がりで行きたいって思ったのですが、今回のイベントもそうですけど、色々な方に協力していただいて、それこそ繋がりで成り立っている部分ばかりです。自分がやっているイベントも、本当にいろんな人が助けてくれないと出来ないことが多いんだなって思いました。募集してやっていただいているスタッフの方なんかも、すごく協力的にお話していただいたり、動いていただいたり。

——TAKさんがやっていることは動機がかなり明確で、表層的な部分ではないですよね。アイスランドの食生活や自然などの文化の中で音楽っていうのがあって、音楽だけではなくそれらを全て並列に紹介していこうと思っているのかなって気がしたんですね。
前回よりはその傾向が強いかも知れないですね。現地に行ったっていうのもそうですし、色んなものを読んだりとか、そういう部分で強まっているのかなと思います。現地の人とも絡んでいけば、より多くの部分を知れるし。アイスランドにしても日本にしても、良い部分悪い部分っていうのはあると思うんですけど、それを学んでもっと色々な形で伝えていけたらいいかなと。
——それを定期的に伝えていくために、アイスランドナイトという場が定着していってほしいですね。
そうですね。何よりも、一番は人だと思うんですよね。僕はそんなにアイスランド人に知り合いはいないのでまだまだですけど、僕よりももっと前からやってる方々とかは現地の人との繋がりもあって、もっとこの人達を繋げたいっていう部分もすごいあると思います。今回のYagyaさんにしてもアイスランドに行ったときに実際にお会いしたりメールしたりすると、人の良さとか優しさだったりとかも伝わってきますし、そういう人柄っていう部分も大きいんじゃないかって。そういう部分をどんどん広げて、日本の人にもアイスランドから来た人に会ってもらいたいし。アイスランドの人にも、日本にもこういうことをやっている人達がいるとか、僕らには分からない日本独特のものをもっと知ってもらいたいなと思います。僕は最近ホームページとかフライヤーに書いてもらっているのは、“アイスランドから日本へ、日本からアイスランドへ”とかそういう感じなんですよ。だから本当に人だと思うので。最終的には人と人との繋がりなのかなっていうのがありますね。

——これで完結ではなくて、色んなところにどんどん派生して繋がっていって欲しいですね。
そこが全てですね。色んなものが繋がっているんだと思います。それを目に見えるかたちで繋げていけるようなイベントにしていきます。
『アイスランドナイト』出演者の配信楽曲はこちら!
TAK.S PROFILE
SPLIT PRYTHM 代表。ベーシストとしていくつかのロック・バンドにて活動後、2008年夏既成の形にこだわる事をやめ「タトエバソレガ嘘ダトシテモ」としてソロ・プロジェクトを立ち上げる。多種多様な音楽に影響を感じられる中に実験を忘れず、ただ模倣でもない、ただ実験的でもない音を出し続ける。2010年7月から、西麻布Bullet'sにてレギュラー・イベントとしてSPLIT PRYTHMを立ち上げる。「完全チルアウト空間」と銘打ち日曜の夜に相応しい空間を作リ出す。その活動の中で数々の眠っているアーティストをシーンへ送り出す。2012年2月、かねてからその素晴らしさに見せられていたアイスランドの音楽・文化に特化したイベント「アイスランドナイト」を開催予定。新しいイベントの形、新しく人に音楽・文化を伝える形を確立のため尽力中。